3-7. 需要と供給の組み合わせ

これまで需要曲線とは何か,また供給曲線とは何かを説明してきました。それにより,それぞれのグラフから,与えられた価格に対してどれだけの需要量があるのか,また供給量があるのかを読み取ることができるということを理解して頂けたかと思います。

それではこれら二つのグラフを並べてみましょう。ここでは供給曲線の説明で用いた革靴の問題を例として引き続き考えることにします。

ここで一足の値段が少し高めの3万円だとしたら,需要量と供給量はどのようになるでしょうか。おそらく次の図のように,需要量は相対的に少なく,供給量は相対的に多くなるでしょう。
反対に価格が低すぎても,今度はそんなに安いのであれば買いたいと思う消費者が多く存在するのに対して,そんなに安いのであれば作るのをあきらめる生産者が出てくるため,需要量が相対的に多く,供給量が少なくなるはずです。

それではちょうど需要量と供給量のバランスがとれるような価格を考えてみましょう。両者が一致しているときは,品物が余ることもなく,また買いたいのに買えない人もいない状態であり,靴がちょうど売り切れることになります。次の図では,価格がちょうど2.5万円のときに需要量と供給量が一致するという状況を表しています。

需要量と供給量が一致するのはどのような価格のときなのかを考える際に,このようにいちいち二つの図を並べて比較しなくても,実はもっと便利なやり方があります。それは需要曲線と供給曲線の図を重ね合わせてしまうことです。二つの図の縦軸と横軸が同じく価格と数量だからこそできることですね。

上の図にあるように,需要と供給の二つの曲線が交差する点を市場均衡点といいます。市場均衡点では,縦軸から読み取ることができる均衡価格で横軸から読み取ることができる均衡取引量だけの売買が成立するのです。

均衡しているとは安定的な状態であることを指す専門用語なのですが,この均衡点はどのような意味で安定的なのでしょうか。それは均衡価格よりも高い価格のときには値下げ圧力が,また低い価格のときには値上げ圧力が働くことから,仮に均衡価格ではないどのような価格が市場で付いていたとしても,売り手と買い手の交渉を通じて次第に均衡点に近づいていくという意味で安定的なのです。

まず市場における価格が高すぎる場合を考えてみましょう。このときは先ほど価格を3万円とした場合の図を見れば分かるように,供給量が需要量を超えていますね。これを超過供給があるといいます。このとき一足あたり3万円も貰えるなら靴を作りたいという生産者がたくさんいるのに対して,実際にその値段で買うつもりがある消費者の数は少ないことになります。

このとき生産者側は,少し値下げをしてでも自分の靴を販売したいと思うでしょうし,消費者の中には3万円なら買わないがもう少し安ければ買っても良いという人がいるため,値下げ圧力が働きます。

反対に市場における価格が低すぎるときには,超過需要があることになります。この場合は品薄状態であり,消費者の側としては,もっと払っても良いからぜひ商品が欲しいという奪い合いをすることを通じて値上げ圧力が働きます。

これに対して市場均衡点の所では,値上げ圧力も値下げ圧力も働かず,消費者が欲しい数と生産者が売りたい数も一致しているため,そこから変化する余地がありません。これが安定的な点であるということの意味です。

注目すべき性質として,市場が均衡している場合には,取引している人は全員得をしているし,取引していない人も損していないという意味で,全員が満足している状態になっています。

まず一人の消費者は,買うとしても1足まで,つまり買うか買わないかという判断をするケースを考えてみます。この場合,市場が均衡しているときにこの靴を買っているのは,靴に対する評価額(=価値)が均衡価格よりも高い人たちです。この人たちは売買を通じて得をしています。一方で靴を買っていない人は,評価額が均衡価格よりも低いため,買うと損する人たちなのです。

次に一人が買うのは1足までとは限らない状況も考えてみましょう。この場合でも,均衡価格が提示されている場合に例えば靴を2足買っている人は,1足目を買わないよりも買う方が得であり,また2足目について考えたとしてもやはり得しているが,3足目の価値は均衡価格を下回っているために買わない方が得だという判断が行われています。

これは生産者側についても同様です。実際に靴を生産して販売している人は皆が得をしていますし,生産していない人にとっては,無理に生産しようとすると損してしまう状態になっています。これらについては是非自分で図を描いて,確認してみてください。

ここでは,市場価格に値上げ圧力や値下げ圧力が働くことを通じて市場均衡が自動的に実現してしまうということを説明しましたが,これには重要な意味があります。それは分権的な意思決定により均衡点に到達できるということです。

つまり消費者や生産者は,現在の市場価格だけを見ていれば良く,それを基に買うか否か,また作るか否かといった単純な意思決定だけをすれば良いのです。これは消費者も生産者も他の消費者が何を考えているかや,他者の生産能力がどのようになっているかなどといった情報を何も知らなくてもかまわないということです。このことを価格がシグナルとして機能していると表現することがあります。