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アレックス・タバロック「ウソでした:ヒステリーをバイブで処置してた説」

[Alex Tabarrok, “Hysteria Was Not Treated With Vibrators,” Marginal Revolution, September 2, 2018]

こんな話をご存知だろうか?――「ビクトリア朝時代に、「ヒステリー」の処置用に新しく発明された労働節約的な機械式バイブレータを使ったために、男性医師たちは意図せずして女性患者たちにオーガズムをきたさせてしまった。」 これはただの都市伝説とはちょっぴりちがう。学術書や論文で広まった話なんだ。Hallie Lieberman と Eric Shcatzberg が書いた新論文「学術的な品質管理の失敗例:オーガズムのテクノロジー」では、不正行為という言葉こそ使ってはいないけれど、ほぼそれに近い言い方をしている。

1999年に公表されて以来、Rachael Maines の「オーガズムのテクノロジー」は性とテクノロジーの歴史を扱うさまざまな著作でもっとも広く引用されてきた (Maines, 1999)。薄い本ながらもかなり広い範囲を扱っているとはいえ、Maines が述べている議論の骨子はごく単純だ。彼女の主張では、ビクトリア朝時代の医師たちはヒステリー症の女性患者たちの治療にあたって電動式バイブレータを使ってオーガズムを引き起こしていたのだという。Maines によれば、それまでヒステリーの治療では通例の医療行為としてクリトリスのマッサージを行なっていたのだが、このバイブレータは労働を節約するテクノロジーだった。彼女が言うには、医師たちは手作業でのマッサージもこのバイブレータも性的なものとはとらえていなかった。どちらも、ヴァギナを貫通する行為が関わっていなかったからだ。

この主張は何十もの学術的な著作で繰り返し述べられ、幾度となく肯定的に引用されてきた。ごくわずかながら、同書のさまざまな部分を批判した研究者たちもいる。だが、Maines の主張の骨子に異論を唱えた人はいなかった。少なくとも、ピアレビューを受けた文献にはそうした異論は見当たらない。彼女の主張は大衆文化にも広まり、ブロードウェイの戯曲や長編映画、数点のドキュメンタリー、そして多くの一般向けの本・記事に登場している。かつて賛否のわかれていたこのアイディアは、いまや事実として受け入れられている。

だが、Maines の主張にはたったひとつ問題があった:そもそも医師たちが医療行為としてバイブレータを使って女性患者たちにオーガズムを引き起こしていたという証拠がまったく見当たらないのだ。Maines がこの中心的な主張の論拠に挙げている情報源を我々はすべて検討した。そうした情報源のどれひとつとして、実際に彼女の論拠にはなっていない。また、Maines の主張の要となっている部分と矛盾するこの時代のほかの証拠もここでは論じる
こうした証拠からは、実のところバイブレータは〔女性器を〕貫通するかたちで使用されていて、しかも手で女性器をマッサージする処置がヒステリーに対して通常ほどこされる医療行為だったことはなかったことがわかる。

(…)『オーガズムのテクノロジー』が19年にわたって成功を納めてきたのは、学術的な品質管理が失敗していたことを示している。この失敗はあらゆる段階で起きた。ジョンズホプキンス大学出版局でこの研究を評価する段階での失敗にはじまり、その後も品質管理は失敗しつづけた。だが、なにより露骨な失敗は、ただひとつの学術文献として、同書の骨子となっている主張の実証的な欠陥を公表から19年間にわたって指摘することがなかったという点だ。

わーお。ぜひ全文読んでほしい。

多謝: クリス・マーティン (Twitter)


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