アレックス・タバロック「マリファナはGDPを押し上げるか」(2022年1月5日)

Alex Tabarrok “Does Pot Contribute to GDP?” Marginal Revolution, January 5, 2022

タイラーと私が教科書の中で説明しているように、GDPは1国において1年間で生産された全ての最終財とサービスの市場価値の総和だ。そういうと簡単に聞こえてしまうが、常にそうであるように白黒の間に位置する事例があり、その中には違法な財をGDPの計算に入れるか否かといったものも含まれる。定義にしたがえば、違法な財はGDPの計算に入れるべきだ。しかし実際においてはそうされていないことが多い。理由のひとつは、違法な財を計算に入れることがそうした財を承認するシグナルを送ってしまう(あるいは計算に入れないことで不承認のシグナルを送る)と考える人がいるというものだが、それ以外にも違法な財の市場価値を計算することが難しいという理由もある。経済分析局(BEA)が麻薬の売人と売春婦に対して彼らの財とサービスの価格を調査すると思うかね?

しかし、ある違法な財が合法になったらどうなるだろうか。合法な最終財の市場価格は全てGDPの計算に入れるべきだるのは間違いないが、合法化されたその日から単に足し上げてしまうと困ったことになる。経済はマリファナが合法化されたその日に急に拡大したんだろうか。その日に不況が終わったんだろうか。私たちはみんなより豊かになったんだろうか。一部の国は単にこういうことを無視して脚注を付けるだけで済ましてしまう。

イタリアの人たちは所得の申告と税の支払いについて法律を全く無視することで有名だが、1987年、イタリアは地下(といっても必ずしも違法ではない)経済を反映するためにGDPを約5分の1上方修正すると発表した。一晩でイタリアはイギリスを追い越して世界第五の経済となった。続いて国中が有頂天になった。イタリア人はこの出来事を”イル・ソルパッソ”、逆転劇と名付けた。

しかしカナダが2018年にマリファナを合法化したとき、カナダ統計局は単にマリファナをGDPに足すのではなく、過去の全てGDP統計にさかのぼって足しあげて一貫した時系列データを作ったんだ。The Walrusにおもしろい話が載っている。

そのチームは新しい品目の分類を記録するためのコードを作り出さなければならなかった。その中には、大麻の料理法に関する教育プログラム及び大麻調理師訓練(71.0105)や、大麻販売スキル及び販売活動(71.0110)といったものもあった。

(略)意味論上のお作法について徹底的に検討する以外に、カナダ統計局は大麻をどのように計上するかを決めるにあたって2つの大きな障壁に直面した。それは、カナダ人はどれだけ使うか、そしてそれにどれだけ費用がかかるか、というものだ。しかしカナダ統計局の経済学者は、これらの数値を単に大麻が合法になった2018年最終四半期についてだけ計算するのではなく、少なくとも現在の形での国民経済計算を遡れるだけ遡った1961年までの全ての年について計算しようとしたのだ。

(略)そのため大麻チームは、薬物資料、依存症率、法執行、医療データに関する数十年分の調査を掘り起こして、過去においてカナダ人がどれだけ大麻を消費していたかを計算した。最初は少量で、1960年初頭には24トンだったのが、2015年までに700トン近くなった。アメリカが麻薬戦争に着手するまでの1990年代まで、大麻はカナダの国外からやってきていた。今や、カナダは主要な輸出者になっている。

ここまできても、カナダ統計局はさらに詳細を求めた。そのために、カナダ統計局の分析家はマギル大学の化学工学学部の研究者たちと手を組み、ハリファックス、モントリオール、トロント、エドモントン、バンクーバーの廃水を一年にわたって詳細に調査した。(ハリファックスは最も高い一人当たり大麻使用量を記録し、バンクーバーでの使用量の約三倍だった。いったいどういうわけなんだろうか。)このパイロットプロジェクトは今は資金の不足で中止しているとバーバー=デュックは話す。

最新の数字によれば、200万にんのカナダ人が少なくとも週1回大麻を使用し、そのうち3分の1以上は毎日使用している。しかし、彼らはどれだけのお金をそれに支払っているんだろうか。バーバー=デュックによれば、チームは大麻価格に関する過去のデータベースを掻き分け、法執行機関の職員と話をし、長年違法に栽培している人たちを訪ねて彼らの記憶を掘り起こした。ブリティッシュ・コロンビア州の人たちは特に親切だった。「彼らはこのことについてとてもオープンで、これまで何年もそうだった」とバーバー・デュックは話す。

合法化の期日が近づいたころ、チームはStatsCannabis(大麻統計)というクラウドソースのアプリを作成した。アイコンは大麻だ。「カナダ統計局は大麻価格の調査のためにあなたの助けを必要としています」とそのアプリは懇願した上で、「あなたのデータは保護されます!」と付け加えている。

このアプリには欠点もあるとペルーソは書いている。重度の大麻使用者は必然的にこの調査の最も頻繁な参加者となる。しかしそれと同時に、彼らが調査に回答するのは購入した直後であるのだ。「向精神性物質の重度の使用者に調査を行う際、常に誤差の幅は少し大きい区ものになる。そういう人たち、えっと何て形容するのが適切なのかアレなんだけど、意識が少々込み入ってしまっているかもしれない人たち、を抽出してしまっているんだ。」

というわけでマリファナはGDPを押し上げるだろうか。答えは、カナダではそうだったがアメリカではそうではない!

カナダもアメリカも売春をGDPに含めていないが、オランダは含めている。アメリカの一人あたりGDPはオランダやカナダよりも高いが、アメリカがマリファナと売春を含めれば、一人あたりGDPはもっと高くなる上、他の国と比較した私たちの真の生活水準をより正しく反映したものになるんだ!

ライアン・ブリッグスがツイッターでもう一つの結末を指摘している。カナダの消費者物価指数は今やマリファナ価格を含めていて、その重み付けは0.55%だ。情報提供感謝。

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