アレックス・タバロック「有料トイレを合法化せよ!」(2018年11月27日)

[Alex Tabarrok, “Legalize Pay Toilets!” Marginal Revolution, November 27, 2018]

有料トイレはヨーロッパではありふれているけれど,アメリカではめったにみない.そのワケを City Lab でソフィー・ハウスが書いている.アメリカでは,多くの地域で有料トイレが1970年代に違法になったんだそうだ:

1969年に,カリフォルニア州議会の議事堂前で March Fong Eu 州議会議員が斧で便器をたたき割って見せた.男性用の小便器とちがって個室の便座の利用が有料なのは女性蔑視だと抗議しての行動だった.いらだっていたのは彼女ひとりではなかった.草の根組織 CEPTIA(アメリカの有料トイレ廃止を目指す委員会)は有料トイレ抗議運動を組織し,季刊のニュースレター(『フリー・トイレット・ペーパー』)を発行し,有料トイレ〔に使うドアロック〕の主要な製造業者だった Nik-O-Lok とパンフレットの発行戦争を展開した.1973年に,同グループはシカゴで市全域におよぶ有料トイレ禁止令を勝ち取る.その後,アラスカ,カリフォルニア,フロリダ,イリノイ,アイオワ,ミシガン,オハイオ,ニュージャージー,ニューヨーク,テネシー,ワイオミングの各州でも次第に有料トイレは禁止されていった.

〔有料トイレ反対の〕論理を見ると,「座って用が足すのが無料にならないかぎり立って用を足すのも無料であってはいけない」と言わんとしているかのようだ.ハウス議員は有料トイレ禁止を性差別に対する勝利と称している.個室の便座と比べて小便器の方が運用が安上がりで施錠が難しい理由って,そんなにわかりにくいものかな?

ともあれ,CEPTIA はめざましい成果を上げた.1970年に,アメリカには5万個ほどの有料トイレがあった.それが1980年にはほぼゼロになっている.でも,注意深い読者なら,有料トイレの陰謀を打ち砕いたところで無料トイレがあちこちで提供されるようにはならなかったと聞いてもきっと驚かないはずだ.

ところが,CEPTIA が解散して数十年後,有料トイレ禁止は犠牲多く益少ない勝利だったのが判明している.CEPTIA は誰もが使える無料トイレの理想を思い描いていたけれど,それはついに実現しなかった.各地の都市は公衆トイレの設置をひたすら拒み続けている.それに,既存のトイレ設備は荒れ果てるにまかされている.トイレを安全・清潔に保つことも難しさを挙げて各地の自治体はトイレ設置に後ろ向きな姿勢を見せたり,そもそも費用を捻出できなかったりしている.公衆トイレを設置する最初の費用は予算を確保できたとしても,その後の維持・運用のコストが設置を難しくしている.

これと対照的に,ヨーロッパ,インド,ラテン・アメリカの都市では,わずかな入室料が設備を良好な状態に保つコストをまかなう助けになっている.これと同じような収入源をつくりだしてトイレの運用コストを負担すれば,アメリカの自治体にとっても有料トイレは魅力的なものになりそうだ.たとえば,トイレの管理人を雇うコストを利用料金で相殺できるだろう――これはトイレを安全に保つのにすぐれた方法なうえに,費用もかさまない.また,有料トイレは運用コストの再分配にもなる.無料トイレは当然ながら納税者のお金で運用される.他方で,有料トイレ方式なら,都市部のインフラを利用する観光客たちもその運営に貢献することになる.

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