アレックス・タバロック 「トランプとヒラリーの性別が逆だったら」(2017年3月8日)

●Alex Tabarrok, “Gender Reversal Teaches Uncomfortable Lessons”(Marginal Revolution, March 8, 2017)


ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの性別が逆だったら二人の討論の様子は聴衆の目にどう映っただろうか? 二人の研究者がその疑問に取り組んだ。トランプとヒラリーの(討論会での)セリフだけではなく身振り手振りも完全に再現した芝居を上演したのだ。ただし、トランプの役を演じるのは女性(役名はブレンダ・キング)でヒラリーの役を演じるのは男性(役名はジョナサン・ゴードン)という捻りが加わっている。

女性がトランプのような攻撃的な姿勢――相手の発言を頻繁に遮り、すぐに相手をなじる――をとれば決して見逃してはもらえないだろうし、反対にヒラリーが男性だったらその理知的な感じにしても冷静沈着な感じにしてもずっと魅力が高まるだろうに。米大統領選のテレビ討論会を生放送で視聴している最中にふとそう考えたという。トランプとヒラリーの性別を入れ替えて討論会の様子を再現してみたらきっとその通りになるに違いない。そう当て込んで今回のプロジェクトに乗り出したという。

しかしながら、予想とは大違いの結果が待っていた。(討論会の様子を再現した)芝居(公演は2度にわたって行われ、どちらも完売)を鑑賞した観客たちも事前の予想を裏切られてショックを受けた。 芝居を見終えた後の観客たちはブレンダ・キング(女版トランプ)に好意を覚え、ジョナサン・ゴードン(男版ヒラリー)に不信感を抱くに至ったのだ。

芝居が終わるとあちこちから観客たちの「何でかわかったぞ」――トランプが選挙で勝った理由がわかったぞという意味――という声が聞こえてきました。みんな狼狽していましたね。私の席の2列前に座っていた男性(の観客)なんか頭を抱えていました。文字通り両手で頭を抱えていたんです。その彼は隣にいた観客に肩を揉んでもらっていましたね。トランプ流のシンプルなメッセージが女性の口から語られると聞き取りやすさが増すようです。まさにそれこそが今回のプロジェクトのテーマの一つでした。ある観客はこう語っていました。「トランプのテクニックの緻密さがわかってただただ仰天したよ」。別の観客(職業はミュージカルの作曲家)はこんな感じの感想を漏らしていました。トランプ(ブレンダ・キング)はまるで「口ずさみやすい曲」を歌っているかのように喋っている。その一方で、ヒラリー(ジョナサン・ゴードン)は口数が多くて発言内容はどれもこれも正しくて事実だけれど「フック」が効いていない、というのです。・・・(略)・・・ジョナサン・ゴードン(男版ヒラリー)の顔を見ていると「無性に殴りたくなる」と語った観客もいました。ずっと笑みをたたえているからだそうです。多くの観客は芝居の鑑賞中に感じた感情が事前に予想していたのとは大違いだったようで非常に驚いていましたね。

芝居のリハーサルの模様を収めた映像は以下だ。

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