アレックス・タバロック 「作品を長持ちさせる秘訣 ~『シティ』のケース~」(2016年8月25日)

●Alex Tabarrok, “The Economics of Building Art to Last”(Marginal Revolution, August 25, 2016)


マイケル・ハイザー(Michael Heizer)と言えば巨大なアート作品の制作を専門とする彫刻家だ。そんな彼の作品の一つが『シティ』。ネバダ州の砂漠に鎮座する作品であり、1972年に制作が開始。未だ完成には至っていない。噂によるとワシントンD.C.の(国立公園である)「ナショナル・モール」だとか(メキシコの古代遺跡である)「テオティワカン」だとかに匹敵する規模と言われているが、確かなことは誰にもわからない。というのも、「訪問客が歓迎されていないことは明らかである。道路から隔たった場所に制作されていることに加えて土壁に囲まれてもいるために、不法侵入の危険を冒さない限りは地上からその一部でさえも一瞥できない」格好になっているためだ。数枚の「盗撮」写真が出回っているくらいだ。

ところで、ニューヨーカー誌にハイザーにまつわる興味深い記事が掲載されている。長持ちする作品作りに向けたハイザーの用意周到ぶりにはあっぱれと言うしかない。

『シティ』の大部分は岩や砂、あるいはコンクリートからできている。いずれもハイザーが現地で調達するなり一から製造するなりしたものだ。どこにでもある素材を使っているのには戦略的な理由があるとのこと。やがてきたる「破壊活動」に備えるためだというのだ。「仲の良い友人でもあるリチャード・セラは軍事用の鋼を使って作品を制作している最中みたいですが、きっとそのうち溶かされちゃうでしょうね。そう思うのはなぜかですって? インカにオルメックにアズテックですよ。数ある古代遺跡に眠っていた類稀なる芸術品の数々がどんな運命を辿ったか思い出してください。どれもこれも片っ端から盗まれてしまいました。徹底的に打ち壊され、バラバラに切り離されてしまいました。金(ゴールド)なんかは溶かされちゃいました。我が『シティ』も同じようにメチャクチャにしてやろう。そう企む連中がいたとしてもすぐに悟ることでしょう。『シティ』を標的にしても労多くして益少なしと。」

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  1. 重箱の隅ですが,orientation away fromはbermsには掛からず,「道路や土手からは大きく隔たった場所に制作されているため」は「道路から隔たった場所に制作されており,土壁に囲まれているため」だと思います。

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