スコット・サムナー 「イングランド銀行は名目GDP目標擁護の主張を無視している」

[この記事の原文:Scott Sumner, “The BoE ignores the arguments for NGDP targeting”  The Money Illusion, 2013年8月7日]


ロンドンのJames氏がイングランド銀行の新政策文書を送ってくれた。その23-26頁で名目GDP目標に対する賛否両論が議論されている。しかし両者ともに名目GDP目標の議論を理解していないか、あるいは意図的に無視することにしたかのどちらかしかありえない。彼らは生産性成長の変化が名目GDP目標に問題を引き起こすかのように言うが、当然ながらこの点は名目GDP目標論の核心部分だ。生産性にショックがあったときにインフレ目標に固執すると景気循環が引き起こされてしまう。そう、名目GDP目標の下ではインフレ率は変動するが、それは好ましいことなのだ。インフレ率を安定させるのは良くない。

他の論点もやはり間違っている。人々がインフレ目標を理解しているという主張は、今の英国の文脈を見ればほとんど爆笑ものだ。インフレ率はもう何年も目標を上回っているのにイングランド銀行はQEのような政策でさらにこれを上げようとしている。これって「理解できる」ものだろうか? 米国のインフレ率が1%になりバーナンキがインフレ率を目標まで引き上げようとした時、人々は大騒ぎしたものだ。インフレ目標を理解している人などほとんどいない。「生活費が上がるのが良いことのはずがないだろう?」。しかしもしイングランド人の総所得を安定的に毎年4.5%上げたいのだと言ったなら、人々はその目的を少なくとも理解はするだろう。

中央銀行は見通しを目標にすべきなのであるから、この新しい文書はレッド・ヘリング(予備目論見書)ということになる。

がっかりだ。

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