スコット・サムナー 「真の解決策はロックダウンじゃない。マスクだ。」(2020年6月12日)/「マスクは空の旅でも有効」(2020年10月23日)

●Scott Sumner, “Masks, not lockdowns”(TheMoneyIllusion, June 12, 2020)


折角のチャンスをふいにしてしまったことが日に日に明らかになる一方だ。それもこれも、あれやこれやの「悪人」たち(私もそのうちの一人)のせいだ。

(新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための)真の解決策は、「マスク着用、検査(PCR検査)、ソーシャルディスタンス(自発的に他人との距離を保つ)」・・・だったのに、ロックダウン(都市封鎖)に乗り出してしまった。(2020年)2月前半の段階で「マスク着用、検査、ソーシャルディスタンス」を徹底していたら、新型コロナウイルスによる死者の総数は115,000人(11万5千人)じゃなくて、115人を下回っていた可能性だってある。この国で「マスク着用、検査、ソーシャルディスタンス」を徹底するのは政治的に無理ってことはよくわかってる。でも、やはり言っておかなきゃいけない。折角のチャンスをふいにしてしまったんだよ。

最新の研究結果によると、人口の半分(50%)が公共の場でマスクを着用するようにしたら、それだけでR0(基本再生産数)を1未満に抑えられる可能性があるとのこと。東アジアの一部の国のように、人口のほぼ100%がマスクを着用するようにしたら、R0の値は1を大幅に下回る可能性があるとのことだ。

この研究によると、多くの人が症状の有無にかかわらず公共の場でマスクを着用するようにすると、症状が現れてからマスクを着用する場合と比べて、基本再生産数を減らす効果が倍増することが見出されている。

件の研究では様々なシナリオが検討されているが、どのシナリオでも、人口の50%以上がマスクを日頃から着用するようにすれば、基本再生産数が1未満に抑えられることになる――それゆえ、新型コロナウイルスの感染拡大が抑えられ、対抗措置としてのロックダウンも比較的緩やかで済む――との結果が得られている。

ついでに、お気に入りのイラストも紹介しておこう。

 

ワシントン・ポスト紙の報道によると、月に700万枚の医療用マスクを製造できる設備を持った会社の製造ラインが5月まで止められていたらしい。政府の愚かしい介入によってね(おそらくは、便乗値上げを規制しようとしたんだろう)。

警察官でさえマスクを着けてないっていうんだから、何て言ったらいいんだろうね?

アメリカ人は、あまりにも長いこと甘やかされてきちゃったみたいだね。

ところで、BCGワクチンが新型コロナウイルスに有効(=感染を予防する効果がある)って説を耳にしたことがあるが、その説に冷や水を浴びせる研究があるようだ。

(結核の予防に効果がある)BCGワクチンには呼吸器感染症に対する免疫力を高める効果があるということで、BCGワクチンには新型コロナウイルスへの感染を予防する効果もあるのではないかとの説が唱えられている。その説の妥当性を検証するために計12のランダム化比較試験が試みられている最中だが、結果が得られるまでには少なくともあと5ヶ月は待つ必要がある。そこで本稿では、国家規模の「自然実験」のデータを利用することにする。スウェーデンでは1975年4月に新生児のBCGワクチン接種が停止された。それに伴い、BCGワクチンの接種率は1975年4月よりも前に生まれた世代では92%だったが、1975年4月よりも後に生まれた世代ではその値(BCGワクチンの接種率)は2%に急落することになった。本稿では、1975年4月よりも前に生まれた世代と1975年4月よりも後に生まれた世代とでコロナの感染者数およびコロナによる入院患者数とに違いがあるかどうかを比較する。その結果はというと、統計的に有意な差は確認されなかった。言い換えると、BCGワクチンに新型コロナウイルスへの感染を予防する効果が備わっている可能性は棄却された。本稿で得られた結果を踏まえると、生まれて間もない段階でBCGワクチンを接種しても新型コロナウイルスへの感染を予防する効果はどうやら無さそうである。

もう一度、繰り返しておこう。真の解決策は、「マスク着用、検査、ソーシャルディスタンス」だ。「マスク着用、検査、ソーシャルディスタンス」を徹底したら、(新型コロナウイルス感染の)第2波も避けられるだろう。しかしながら、この国で「マスク着用、検査、ソーシャルディスタンス」が徹底されそうかというと、はなはだ疑問だ。

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●Scott Sumner, “Masks work well on airplanes”(TheMoneyIllusion, October 23, 2020)


目に留まった記事を紹介しておこう。

コロナ禍がはじまって間もない頃は、空の旅は危険な賭けのように見なされていた。飛行機の機内が新型コロナウイルスの集団感染を引き起こす場になってしまうのではないかと怖れる専門家までいたほどだ。その懸念を裏付けるような出来事も起きている。2020年3月のことだ。ベトナム人のキャリアウーマンがロンドン発ハノイ行きの飛行機に搭乗したが、喉が痛んで咳も出た。飛行機は10時間後にハノイに到着したが、その飛行機に乗っていた15人が新型コロナウイルスに感染していることが判明した。件のキャリアウーマンからうつったのだ。15人のうち半数以上は、件のキャリアウーマンと同じビジネスクラスに搭乗していた乗客だった。

(2020年)4月に入ると、各航空会社はコロナ対策の見直しに踏み切った。機内で乗客にマスクの着用を“お願いする”ケースが多かったが、マスクの着用を義務付ける会社もあった。

・・・(中略)・・・

「エミレーツ航空は4月以降にかなり本腰を入れてマスク対策に乗り出しています」と語るのは、アラバマ大学の名誉教授で感染症の研究が専門のデビッド・フリードマン(David O. Freedman)氏。エミレーツ航空では、すべての乗客と乗務員にマスクの着用を義務付けているだけでなく、乗客がフライト中もマスクを外さないように客室乗務員に見張らせているという。

フリードマン氏は、エミレーツ航空のドバイ発香港行き(フライト時間は8時間)の路線のデータを調査した。対象期間は6月16日から7月5日までの約3週間。その調査結果は驚くべきものだった。新型コロナウイルスに感染した状態(飛行機に乗る前にどこかで既に新型コロナウイルスに感染した状態)でドバイ発香港行きの路線に搭乗した乗客の数は全部58人。しかしながら、その58人から新たに感染が広がることは一切なかった。機内では、新型コロナウイルスは誰にもうつらなかったのだ。フリードマン氏が同僚と一緒にまとめた調査結果は、Journal of Travel Medicine誌に掲載されている

マスクは効く(新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ効果がある)のだ。

(追記)おまけに、もう一丁

ワシントン大学の研究チームの発表によると、公共の場にいる95%の人がマスクを着用するようにすれば、2021年2月の終わりまでの間におよそ13万人の命が救われる可能性があるとのことだ。

詳細は金曜日にJournal Nature Medicine誌に掲載される予定になっているが、件の研究では、ソーシャルディスタンスの度合いの違いが今秋から2021年2月の終わりまでの間に新型コロナウイルスの感染状況にいかなる差を生み出すかがモデルを使ってシミュレーションされている。政府高官や保健当局者らの語るところによると、ワクチンが広く利用できるようになるのは来年(2021年)の3月か4月頃と見込まれている。ということは、来年の2月の終わりまでは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために頼れるのは医薬品以外の公衆衛生対策――そのうちの一つがマスク着用――だけとなる可能性が高いわけだ。

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