タイラー・コーエン「ドクター・ファウチのシュトラウス主義(蒙昧論法)」(2020年12月24日)

Dr. Fauci, Straussian
by Tyler Cowen December 24, 2020 at 2:01 pm in Medicine Science

ドクター・ファウチは、何百万ものアメリカ人が指針が求めている人物であり、トランプ政権でアドバイザーを務めており、次期バイデン政権でも務める予定の人物だが、最近になって、集団免疫の推定値を徐々に引き上げ始めている。

パンデミックの初期だと、彼は、ほとんどの専門家と同じく60~70%の推定値を持ち出す傾向があった。一月ほど前、彼はテレビのインタビューで「70ないし、75%です」と言い始めた。そして先週、CNBCのインタビューでは「75ないし、80ないし、85%です」や「75から85%以上ですね」と言っている。

翌日の電話インタビューで、彼は、徐々に、しかして意図的にゴールポストを動かしているのを認めた。ファウチ曰く、「私がポストを動かしているのは、ある理由では新しい科学的知見に基づいているからですよ。でも別の理由もあります。それは自分の本当の考えを、国がやっと聞く準備ができたからなんです」と。

「受け入れるには困難かもしれませんが、ウィルスを封じ込めるには90%近くの集団免疫が必要になるかもしれないと私は考えています。これは、麻疹の流行を止めるのに必要な数値とほぼ同じです」とファウチは語っている。

有名な疫学学者は、ファウチが出した結論について尋ねられて、「彼が正しいと証明されるかもしれない」と述べた(略)。

ドクター・ファウチは、「私は数週間前だと、公に集団免疫の推定値を高くするのに躊躇していました。アメリカ人の多くが、ワクチンを摂取するのに躊躇しているように感じられたからです。国家として集団免疫を獲得するためには、アメリカ人はほぼ例外なくワクチンを受け入れる必要があるでしょう」と語った。

以上引用したニューヨーク・タイムズの記事の全文はここだ。いくつかの要点は以下となる:

1.たしかに、シュトラウス主義(蒙昧主義)は、これまで一般理論として説得力をもってきた。

2.ファウチは、多くの人から、「反トランプ」として偶像視されているが、リスクを伝達する人間としては無惨な存在である。これは、彼が最近、何種類かのワクチンを大して「効果が少ない」と攻撃したことからも裏付けられる。(こういったワクチンは、適正に使用すればそれでも有効に機能する可能性がある)。彼の以前のマスク〔には効果がない〕との発言は触れるまでもないが、3月半ばの船旅の安全性についての発言もそうだ。「ファウチをどう把握するのか?」これは、実際かなり良いリトマス試験紙になている。

3.FDAの一連の行為について、〔ファウチという〕内部関係者が話している。これは全て信用すべきなのだろうか?

4.僕は、集団免疫の閾値が何なのか一切分からないが、この件(あるいは他の案件)私は真実を語ろうと努力しているのだということは保証しておく。僕が提唱する蒙昧主義は、僕自身がコミュニケーションのときに「こうすべきだ」と考える規範的理論ではなく〔つまり私は裏のあるような言い方をしようと思っているわけではなく〕、「世の中は実際こうなっている」という実証的な理論であって、その正当性がまたもや立証されたというわけだ。

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