タイラー・コーエン「移民同化の真のジレンマ」

[Tyler Cowen, “The real assimilation dilemma,” Marginal Revolution, February 23, 2017.]

移民をめぐる議論は,ラテン系移民の第2世代・第3世代の同化率に関心を集中させていることが多い.だが,いったんこれを脇に置いて,ラテン系以外でアメリカにやってくる人たちを考えてみよう.彼らがいかに急速に同化するかを見ると,ぼくは目を見張る.ここで言ってるのは,カナダ系だけの話じゃない(「このブログの著者2人のどちらが国境の北側出身でしょう」と出し抜けに聞かれて当てられます?) ラテン系以外の移民には,ロシア系もいればイラン系,中国系,インド系などなどいくとおりもある.ムスリム系移民の大半もそうだ.こうした人たちは,アメリカ生まれアメリカ育ちの人と文化的にそっくり同じになりはしない.でも,経済的・社会的な指標で見ると,これ以上望めないほどの実績を示している.

それどころか,同化問題をもたらしているのは,ずっと昔からのアメリカ人たちの方だ.しかも,おうおうにして伝統的なアメリカ人だったりする.彼らの暮らす国は,急激に変わってしまった.そのおかげで,彼らは新しい現実の事情にあまりうまく同化していない.さらに,べつに自ら選んで移民になって「きっと困難が待ち受けているだろう」と思っている人間でもないので,「そういうもんだからしかたない」と受け入れる態度を内面化する方にいつでもかたむくわけでもない.彼らの多くは不平をこぼし,また,職業生活で落伍したり冴えないニッチに落ち着いたりする.

この点で見て,みずから進んでやってくる移民たちにもっとうまく・早く同化するよう促しても,かえって現実の同化問題を悪化させてしまいかねない.自国〔アメリカ〕の文化をいっそう急速に変えることになるからだ.

移民の真の影響は,賃金や選挙結果に表れないこともよくある.むしろ,昔ながらのアメリカ生まれアメリカ育ちの人々の一部に同化の負担がかかることになる.そして,移民たちがいっそう生産的に首尾よくやればやるほど,こうした問題はいっそう深刻になるかもしれない.

この点の議論につきあってくれたケイトー研究所のリバタリアングループに感謝.議論でのやりとりから,Will のものも含めて発言を使わせてもらった.

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