タイラー・コーエン「15ドル連邦最低賃金?」(2021年1月21日)

[Tyler Cowen, “Federal minimum wage of $15?” Marginal Revolution, January 21, 2021]

決定打がでた.連邦最低賃金をいまの倍にすれば――2009年からずっと $7.25 だったのを15ドルまで引き上げれば―技能や経験がほとんどない労働者の雇用機会が大幅に減少する件の,決定打だ.労働統計局から出ているデータによれば,2019年(パンデミック以前),47の州において,全労働者の少なくとも4分の1は時給 $15 未満で働いている.20の州では,全労働者の半数が時給 $18 未満で働いていて,さらに 30の州では,時給換算の賃金の中央値が $19 未満だ.

こうした統計からは,$15 が賃金下限としてすごく高いことがわかる.雇用主たちがいまの従業員たちを全員雇用し続けようとすれば,全米の労働力のうちものすごく大きな割合の賃金を引き上げる必要がある.でも,最低賃金引き上げの対象になる労働者たちがあまりに多すぎて,いまのまま雇用が維持されることはなさそうだ.かわりに,低賃金労働力の雇用数はしぼむだろう.

非党派の議会予算局が,この直観を裏付けている.その推計によれば,全米の最低時給が $15 に引き上げられたら失業者が 130万人増える[コーエンの註記: しかもこれはパンデミック以前の推計だ].また,この政策は企業収益も減少させ,消費者物価を引き上げ,GDP を減らすだろうと,議会予算局は結論している.


これは,Bloomberg の Michael Strain の文章からの抜粋だ.ぼくの方でも付け加えておこう.最低賃金に関する近年の研究文献についてキミがどう考えていようと,合衆国の経済的な異質性〔各地の条件がさまざまにちがっていること〕をふまえて,最低賃金は州・市町村の水準で決定されるべきだということが,あらゆる経済理論から導かれる.経済学者が世間に伝えるべきメッセージは,これだ.

プエルトリコはアメリカの州になるべきだと思う? あそこでも最低賃金を $15 にすべきだろうか? どうよ? たしかに,「プエルトリコは例外」と決めるのはかんたんだ.ところで,ミシシッピの製造業賃金の中央値も $15 を下回っているんだよね.あそこも例外にするのかな.

こういう言い方をして申し訳ないけれど,でも,活動家と左派系経済学者たちがソーシャルメディアで徒党を組んで,最低賃金経済学への特定のアプローチをしつこく主張して,異論を言う人たちを脅しつけてるのが現実だ.

単純な問いを自問してほしい:そういう人たちの誰か一人でも,破滅的なパンデミックのあいだ,レストランや小規模事業者の最低賃金を一時的に2年間切り下げるように要求してたかな? もしそうでなかったとしたら,彼らは本当に科学の旗印を掲げているんだろうか?

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