タイラー・コーエン 「『世界恐慌:経済を破綻させた4人の中央銀行総裁』」(2008年12月22日)

●Tyler Cowen, “Lords of Finance”(Marginal Revolution, December 22, 2008)


今回取り上げるのは『Lords of Finance』(邦訳『世界恐慌:経済を破綻させた4人の中央銀行総裁』)だ。著者はライアカット・アハメド(Liaquat Ahamed)。副題は「世界経済を破綻させたセントラルバンカーたち」。対象となっている時代は今現在・・・ではなく1920年代だ。

本書では第一次世界大戦後に国際金融システムの再建に乗り出したセントラルバンカーたちの努力の軌跡を辿る。1920年代半ばのごく短い期間に限って言うと、彼らはその仕事をうまくやってのけた・・・ように見えた。世界各国の通貨は安定に向かい、国境を越えた資本の移動も活発になり、経済成長も復調の兆しを見せ始めたのだ。しかしながら、にわか景気に沸くその水面下ではひび割れが徐々に生じつつあった。・・・(略)・・・世界経済全体が大恐慌の下方スパイラルに嵌り込みつつある苦境を前にして必死に奮闘するセントラルバンカーたち。しかしながら、その努力も結局は無駄に終わる。本書の最終章ではその軌跡を辿る。

1920年代は今現在と同様にセントラルバンカーに並々ならぬ権力と絶大なる威信が備わっていた時代だった。舞台の中心にいたのは四名の中央銀行総裁。神経質なところがあって謎めいた雰囲気に包まれたイングランド銀行総裁のモンタギュー・ノーマン(Montagu Norman)。外国人嫌いで疑い深いところのあるフランス銀行総裁のエミール・モロー(Emile Moreau)。堅物で傲慢、それと同時に聡明で狡猾なドイツ帝国銀行総裁のヒャルマル・シャハト(Hjalmar Schacht)。そして最後の四人目はニューヨーク連銀総裁のベンジャミン・ストロング(Benjamin Strong)。

ページを繰りながらギョッとさせられはする(恐怖を覚える)ものの、大いに楽しみつつ読み進めている最中だ。初耳だったのだが、後年のモンタギュー・ノーマンは「俺は壁をすり抜けられる」と本気で信じ込んでいたらしい。これもまた初耳だったのだが、1920年代のコロラド州では全人口の3分の1が一時的な療養で訪れた結核患者で占められていたとのことだ。

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