タイラー・コーエン 「ご先祖様効果 ~ご先祖様に思いを馳せて自信をつけてから試験に臨もう~」(2010年12月22日)

●Tyler Cowen, “Is there an ancestor effect?”(Marginal Revolution, December 22, 2010)


まずはじめの実験では、総勢80名の大学生が3つのグループに分けられた。第一のグループには、15世紀に生きた遠い祖先について5分間だけ思いを馳せてもらう。第二のグループには、近い祖先である曽祖父母(ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん)について5分間だけ思いを馳せてもらう。第三のグループには、最近した買い物について5分間だけ思い出してもらう。その後で、それぞれのグループの学生に、近々ある試験について自信の程を聞いたところ、祖先について思いを馳せた二つのグループ(第一のグループと第二のグループ)の学生は、最近した買い物について想起したグループ(第三のグループ)の学生よりも、強気な(近々ある試験でいい点数が取れるに違いないと自信を持って答える)傾向にあったという。ご先祖様のように、自分も人生を己の力でコントロールできるはずだ。祖先について思いを馳せることで、そのような感覚が強まったことがどうやら要因の一つとなっているようだ [1] … Continue reading

同論文では、その他にも3つの実験が試みられているが、祖先(遠い祖先と近い祖先)について思いを馳せたり、祖先について知っていることを書き出すように求められた学生は、そのようなことを求められていないコントロールグループの学生に比べて、実際にも(語彙力や空間認識能力などを測る)知能テストで高い点数をたたき出す傾向にあったという(3つの実験のうちの一つの実験では、遠い祖先について思いを馳せた学生グループのテストの平均点は(16点満点中で)14点、コントロールグループの学生の平均点は(16点満点中で)10点という結果になっている)。祖先について思いを馳せた学生は、一つでも多く問題を解こうという気になり――論文では、突撃志向(’promotion orientation’)の高まりと表現されている――、そのことが「ご先祖様効果」を生み出す要因の一つとなっているようだ。

全文はこちら。同様の結果が再現可能かどうか、実験の設定の違いによって結果に違いが生まれるかどうかも検証してもらいたいところだが、興味深い研究結果ではある。

References

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1 訳注;この点について、論文の執筆者は次のように語っている。「我々の祖先は、数多くの問題――プライベートな問題だけではなく、深刻な病気の流行、戦争、最愛の人の死、景気の急激な悪化といった社会的な問題――をどうにか潜り抜けてきています。祖先について思いを馳せると、人間(それも、自分と似た遺伝子を持つ人間)には数々の問題や逆境をどうにか乗り越えられるだけの力が備わっているんだということに思いが至るわけです」。
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