タイラー・コーエン 「女性はフィクションがお好き?」(2003年12月2日)

●Tyler Cowen, “Who buys fiction?”(Marginal Revolution, December 2, 2003)


「フィクションの購入層の6割以上を占めているのは女性。それも、その大半は35歳~55歳の女性」。Publishers Weekly誌の記者である、ジョン・ベイカー(John Baker)がそのように語っている(記事のリンクはこちら [1] 訳注;リンク切れ)。翻って、男性は大してフィクションを読んでいない(買っていない)ようだ。何でだろうね? 進化生物学的な観点からうまいこと説明できないものだろうか? 得心のいく仮説を持ち合わせているという御仁がいれば、是非ともお知らせ願いたいものだ。

ちなみに、前世紀(20世紀)のフィクション部門のベストセラーを網羅したリストはこちら、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されている最新のベストセラーリストはこちら。(2003年12月時点での)第一位は依然として『ダ・ヴィンチ・コード』。第五位には『Shepherds Abiding』(「野宿で夜番にあたる羊飼いら」)が食い込んでいるが、本作品についてAmazonでは次のように説明されている。

本作品は、ジャン・カロンの最新作。素朴な物語を巧みに操るカロン流の魔力が、毎度のごとく、余すところなく発揮されており、胸躍らされずにはいられない。舞台は、ノースカロライナ州にある(架空の町である)ミットフォード。眠気を催すような静かで穏やかな町。頑固親父のティモシー・カバナー(Timothy Kavanagh)――ミットフォードシリーズではお馴染みの登場人物の一人――は、70歳の誕生日を目前に控えていた。そんなある日のこと、カバナーは、友人で、骨董品屋の店主でもある、アンドリュー・グレゴリー(Andrew Gregory)の店で古い絵画に出くわす。イギリスの画家の手になるらしいその作品には、キリスト降誕のシーンが描かれている。かなりくたびれていて、ボロボロだ。「誰かがこの絵を修復してくれないものかねえ」と店主のグレゴリー。人生の岐路もとうに通り過ぎた感があり、退屈しのぎを何よりも必要としているカバナー以上に、適任の人物が他にいるだろうか? カバナーの脳裏には、幼い頃の記憶が蘇る。暴風雨によって破壊された飼い葉桶の記憶。熟考の末に、絵の修復を買って出ることに決めたカバナー。この絵を、妻であり、アーティストでもある、シリアナへのクリスマスプレゼントにしよう。きっと驚くぞ。・・・(略)・・・カロンの温厚な魂と、活気溢れる祝祭精神が吹き込まれたミットフォードシリーズの第8作目。「待ってました!」の心温まる一作だ。

やはり、本作(『Shepherds Abiding』)にしても、買っている男性はそんなに多くないらしい。

私がかねてより驚かされてやまないことがある。一人ひとりの文化生活のパターンは、人口統計学的な属性によって、かなりの部分が予測できるのだ。一人ひとりの文化生活のあり様には、独自のアイデンティティの確立に向けたその人なりの自由意志と決意が反映されているというのが世間一般の考えのようだが、実際のところはどうだろうか? 音楽を購入する(ないしは、ダウンロードする)層の大半は、若者だ。映画を観るのも大半が若者だ。そして、フィクションを購入するのは、大半が中年の女性だ。ここに、才気溢れる女の子がいるとしよう。19歳で、ブラウン大学で学ぶ学部生。そんな彼女は、きっと、ヘヴィメタル(ヘビメタ)は好きじゃない一方で、トーリ・エイモス(Tori Amos)だとか、R.E.Mだとかの曲には共感を抱く女の子のはずだ [2]訳注;おそらくは、次の論文なんかを踏まえての発言と思われる。 ●Bethany Bryson, ““Anything But Heavy Metal”: Symbolic Exclusion and Musical … Continue reading。人口統計学的な属性の中でも、所得水準よりは、学歴(教育水準)だとか、属している「社会階級」といった属性の方が、一人ひとりの文化面での好みに関する予測力は高いのだ。

冒頭でリンクを貼った記事では、フィクション専門の物書きを生業とすることの大変さについても詳しく取り上げられている。何作か運良くヒットしたとしても(前払いでそこそこの原稿料が貰えたとしても)、かなりの大ヒットとならない限りは、(エージェントに報酬を払ったり、税金を払ったりした後に)手元に残る稼ぎは年間で2万ドルに満たないらしい。とは言え、物書きの収入も、昔に比べると全体的には増えてはいるようだ。物書きを生業とするつもりなら、上位中産階級(アッパーミドル)ないしはそれよりも上の階級に属する配偶者を持てるかどうかが鍵になる。将来的にそうなるのではないかというのが私なりの見立てだ。

冒頭で触れた記事は、(いつもいい仕事をしている)www.2blowhards.com経由で知ったものだ。感謝する次第。

References

References
1 訳注;リンク切れ
2 訳注;おそらくは、次の論文なんかを踏まえての発言と思われる。 ●Bethany Bryson, ““Anything But Heavy Metal”: Symbolic Exclusion and Musical Dislikes(pdf)”(American Sociological Review, Vol. 61, No. 5. (Oct., 1996), pp. 884-899)
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