ダイアン・コイル 「『どこからはじめたらいい?』と悩む経済学初心者へのお薦め」(2013年8月22日)

●Diane Coyle, “Where to start learning about economics?”(The Enlightened Economist, August 22, 2013)


ツイッター経由(@alaninbelfastに感謝!)で知ったのだが、シテ科学産業博物館(@citedessciences)が経済学をテーマにした特別展(期間は1年間)を企画しているらしい。その絡みで、「経済学について何も知らない初心者にもってこいの入門書はどれでしょう?」との質問が発せられている。

入門書の数は多い。あまりに多い。そのことを踏まえると、「一体どこからはじめたらいい?」というのは、実にいい質問だと言えよう。個人的には、ティム・ハーフォードの『The Undercover Economist』(邦訳『まっとうな経済学』)を強くお薦めする。この本では、ミクロ経済学(個々人の選択や個々の企業の行動、個別の市場を対象とする分野)の分析道具を使って、ごく日常の問題の解剖が試みられている。経済学嫌いだった我が(10代の)息子が、読後に経済学者を志すきっかけとなった一冊ということも、本書を推す大きな理由の一つ。ハーフォードの新作である『The Undercover Economist Strikes Back』では、マクロ経済学(一国全体の経済の動きを対象とする分野。GDPとかインフレーションとかいう話題が対象)がテーマとなっているが、私は未読。きっと素晴らしい出来に違いないとは思うが、マクロ経済学という分野は、ミクロ経済学に比べると、いくらか発展途上なところがあるのよね。


『The Undercover Economist Strikes Back: How to Run or Ruin an Economy』

デイビッド・スミスの本は、どれも説明が明快で読みやすい。彼の代表作の一つである『Free Lunch』の新版も出たみたいだ。ジョン・ケイの本もお薦め。彼の本では、市場やビジネスの方面に深く切り込まれているが、まずは『The Truth About Markets』(邦訳『市場の真実-「見えざる手」の謎を解く』)とか、『Everlasting Lightbulbs』あたりから手を付けるといいだろう。ジョージ・バックリー&スミート・デサイの二人の手になる『What You Need to Know About Economics』も個人的に大好きな一冊だ。拙著で恐縮だが、『The Soulful Science』(邦訳『ソウルフルな経済学』)もお薦めせねばなるまい。本書では、経済学の最先端の動向――行動経済学をはじめとしたエキサイティングな新展開――について詳しく扱われている。経済思想史の分野の古典と言えば、ハイルブローナーの『The Worldly Philosophers』(邦訳『入門経済思想史:世俗の思想家たち』)だが、一般読者だったり初心者だったりが経済思想史を学ぶのであれば、今でもやはり本書から入るのがベストなようだ。


『The Soulful Science: What Economists Really Do and Why It Matters (Revised Edition)』

tutor2u社のジェフ・ライリーが作成している、経済学方面の推薦図書リストはこちら。入門レベルの本だったり、最近出たばかりだったり、読みやすい本だったりが、多数列挙されている。学生や初心者は得るところがあるだろう。

経済学初心者向けにどんな本がお薦めされているのかをネットで調べてみた範囲では、私のこれまでの紹介とかなり被るようだ。例えば、キングスミード・スクールがA/ASレベル課程で学ぶ学生向けに用意しているこちらの推薦図書リスト(pdf)なんかがそう。ただし、このリストでは、経済学への関心が相当強い(大学への進学を目指す)学生向けに代表的な教科書もあわせて紹介されている [1] 訳注;どうやら内容が見直されたようで、リストの最新版では教科書は紹介されていない。。最後になるが、経済学を学ぶ上で大いに役立つネット教材(本じゃないけれど)も紹介しておこう。MRUniversityがそれだ。素晴らしい教材がたくさん揃っている。

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1 訳注;どうやら内容が見直されたようで、リストの最新版では教科書は紹介されていない。
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