デイビッド・アンドルファット「賃金が安ければもっと働く」(2018年12月6日)

David Andolfatto, “Working More for Less”, (Macro Mania, December 6, 2018)

先日、労働市場について同僚とおもしろい話をした。会話の中で、彼は労働経済学の授業で教えていたことを話した。もちろん、労働供給の理論を含む重要な授業だ。まず最初に問われる論点というのはだいたい、労働対価(実質賃金)の変化によって労働供給がどれくらい変化すると予測できるのかというものだ。

彼はもう何年も、理論的な考察を始めるにあたって学生たちにある投票を行っていたという。彼はクラスに向かって、何かの職業に就いていると想定するように言う。そして、ある一定期間だけ、賃金が2倍になったと言う。もっと働きたい?(大多数が手を挙げる)。いつも通りの時間だけ働く?(少数が手を挙げる)。働く時間を少なくする?(パラパラっと手が挙がる)。投票が終わると、彼は標準的な労働供給の理論を教え始め、その理論を使って投票結果の解釈をする(代替効果 vs 資産効果)。

同僚はこの投票をもう十年以上実施している。結果はいつも同じだ(なんて素晴らしい)。

だがある日、たいした理由もなく、彼は投票の仕方をちょっと変えてみることに決めた。賃金率が上昇するのではなく、減ることを考えてもらおうというのだ。彼はいつもとは綺麗に正対称の回答が出るだろうと思っていた。ショックなことに、大多数の生徒はもっと『働く』と回答した。労働時間を減らすか変更しないと回答したのはほんの少数だったのだ。

本当にこれは例外だったのだろうか?しかし彼はこの実験を他のクラスでも行い、同じ結果を得た。それで彼は他の同僚にもこの話をし、その同僚も同じ実験を自分のクラスで行い同じ結果を得た。ここでは何が起こっているのだろうか?もしこれが本当なら、雇用主は従業員の賃金を『下げる』ことによってより多くの労働を得ることができてしまうと?

‘The main requirement for this job is the ability to live without money.’

 

この現象は、ある種の労働者に存在する「収入ターゲット」に関係しているように思える。例としては、ニューヨーク市のタクシー運転手についての古典的な研究(Camerer, Babock, Lowenstein and Thaler (QJE May, 1997))だ。この観察事例では、経験の少ないタクシー運転手は収入が多いときに勤務時間を減らすが、収入が少ないときは勤務時間が長くなる。この行動は私の同僚が報告した現象とはあまり一致しない。効果は非対称に見える、なぜなら生徒たちは賃金が低ければもっと働くといい、賃金が高くなってももっと働くというのだから。しかし、(例えば月々の食費や家賃などの)確定債務の存在とすぐに利用できる借入手段がないことが、収入低下状況において労働者がより長時間労働するという理由を説明できるかもしれない。

この発見が今日の労働市場の状況にヒントを与えるかどうかはわからないが、あれこれ考えを巡らすのはおもしろい。従来の需要と供給の分析は、常に最適なガイドになるとは限らないのだ。

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