ポール・クルーグマン「共和党はレーガン神話を守るのに懸命だ――中身におかまいなしで」

Paul Krugman, “Republicans Are Devoted to Protecting the Reagan Myth, No Matter What,” Krugman & Co., August 15, 2014.
[“Sliming Rick Perlstein,” August 5 2014; “On Reaganolatry,” August 8, 2014]


共和党はレーガン神話を守るのに懸命だ――中身におかまいなしで

by ポール・クルーグマン

Paul Hosefros/The New York Times Syndicate
Paul Hosefros/The New York Times Syndicate

そうだね,グロテスクな話だ.リック・パールスタインが新著を出した.『見えない橋:ニクソンの凋落とレーガンの隆盛』って題で,すばらしく教えられることの多い保守主義運動の興隆史の続きを書いてる――で,その彼がいま,完全に事実無根な剽窃疑惑で非難されてる.

なんで事実無根ってわかるかって? その非難を浴びせてる連中――わぁびっくりだ,ほとんどは保守運動 (movement conservatism) の関係者ですよ――,あの連中が提示してるのは,他の著作から盗用された実際の文章じゃあない.そうじゃなくて,他人の言ったことをパールスタイン氏がパラフレーズしていると連中は主張してるんだ.

は,なんですと? よほど酷似してるのでないかぎり,誰か他人が言ったのとだいたい似てる話を語るのは,完璧にふつうのことだ――まして,歴史の本が互いになにかの出来事に関して一致してなかったら頭を抱えちゃうでしょうに.

このプロセスなら,ぼくはよく慣れ親しんでる.かつて,あれこれの札付きの連中が,雇用データでぼくが不正なことをやってると主張して回ってた.実際にぼくがやってたのは,完璧にふつうのことだった――ところが,『ニューヨークタイムズ』のおせっかいなパブリック・エディターダニエル・オクレントがそれで思いとどまることはなかった.ぼくが数字をいじっていると非難してオクレントは2005年に最後通告を出した(ぼくには反論の機会も与えずに).それに,内部で聞いた話では,ぼくが剽窃をしているという主張もあったそうだ.でも,明らかに,ぼくをそう言って非難してた人たちは,証拠をつくりあげてそういう主張を堅固にするフリすらできなかった.

ここで理解すべきなのは次の点だ.専門家の不正行為にニセの非難をするのは,ああいう連中が使うおなじみの戦術なんだ.そして,この戦術は報道機関ではっきりと強調すべきだ.「地球は平らだ」みたいな見解をもってる報道の気勢をそのまま伝えるんじゃなくてね.

© The New York Times News Service


レーガン崇拝

パールスタイン氏の新著に向けられた攻撃はほんとに下劣だ.でも,ここからいくつものかたちでわかることがある.

たんに,疑問を投げかける相手をとにかく抑圧して叩いてやろうと考えもなしに励んでるってだけじゃない.道理のわかった教養ある保守派であるハズの人たちが自分を曲げてこの党路線を支持してる様もわかる(ここぞというとき,彼らは決まって党路線を支持する.それ以外のときにどれだけ開明ぶりを疲労していようと関係ない).

なんでそこまでパールスタイン氏を押さえつけようと決心を固めてるんだろう.すべては,レーガン崇拝の問題だ.右派にとって,レーガンは完璧に見える必要があるんだ.

経済面での神話はほんとに目を見張る.右派の誰もが,レーガン大統領が采配をとって達成した雇用創出は,それまでにもその後にも例がないものだと *知っている* ――けど,実はそうでもない.というか,過去6つの政権の月間雇用創出率に目を向けると,その差は実に驚くべきものがある.

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みんなも,クリントン大統領がレーガン大統領よりすぐれた「雇用創出者」だったのは知ってるかもしれない.でも,これはご存じだったかな?――カーター時代に――1977年1月から1981年1月までに――経済に雇用が増えていった率はレーガン時代を上回ってたのよ.もしかすると,1981年から1982年の景気後退はジミー・カーターのせいだったと主張したがる人もいるかもね(もっとも,実際には連邦準備制度のせいなんだけど).あれがカーターのせいなら,レーガン氏の任期の2年近くまでカーターの責任ってことになる.でも,それなら,オバマ大統領にも同じ扱いをしたっていいんじゃない?

一般的な論点は次のとおり.「レーガン氏の経済的な偉業だとされているものは,データからはてんで見えてこない.」

でも,レーガン崇拝者がこれを認めようなんて期待しないことだ.彼らの自己は,ひとえに,信念によって立ってるんだから.

© The New York Times News Service

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