マーク・ソーマ 「『ポール・クルーグマン: パリより来たる希望』」 (2015年12月14日)

Mark Thoma, Paul Krugman: Hope From Paris, (Economist’s View, Monday, December 14, 2015)


“パリは我々に見せ掛けではない本物の希望の種をくれた”:

パリより来たる希望, ポール・クルーグマンの論説 (ニューヨークタイムズ): パリでの気候問題に関する合意によって、文明は破滅の危機から救われたのか? まあ、たぶん。支援声明としては心許なく響くかもしれないが、実際のところ同合意は、久しく我々が耳にしてきた気候問題に関するニュースのなかでも一等素晴らしい知らせとなった。…

ごく最近になるまで、次の2つの障壁が気候問題に関する地球規模の取り決め一切の前に立ち塞がっていた: 留まる所をしらない中国の石炭消費と、一切の譲歩を拒むような合衆国共和党の反対がこれである。… しかし現在、両戦線には重要な変化が出現している。

すなわち一方では、中国に目に見える態度の変化が現れた…中国は大気汚染問題で大きな危機に瀕しているが、同問題は石炭燃焼をその主因としており、それがあって同国は化石燃料消費の最悪の形態からの離脱に以前よりずっと乗り気になっている。そして急速な成長をみせる中国中産階級…はより高い生活水準を要求するようになってきたが、これには呼吸するのに比較的安全な大気というものも含まれているのだ。…

さてさて、合衆国共和党の態度の問題である…: 古き良き政党 [訳注: G.O.P] たる共和党は螺旋を描きながら、否認と反科学的陰謀説の構築という一種ブラックホールに刻一刻と呑み込まれてゆく。この流れを変えるのは、こういった事態も実は我々が考えていたほどの問題にはならないかもしれない、というニュースだ。…新たなテクノロジーが状況を一新したのだ。

多くの人は依然として、再生可能エネルギーというものは軽薄な理想主義者の妄言に過ぎず、我々の未来の重要な一部となるものではないと信じて疑わないようだ。…しかしながら現実に目を向ければ、太陽および風力発電のコストは劇的な減少を達成し、既に特別なインセンティブを設けなくとも化石燃料と競争できる水準近くまでに至っているのだ – エネルギー貯蔵の分野における進歩も加わるから、展望はいっそう明るい。再生可能エネルギーはまた大きな雇用を生み出している領域でもある。

こういったエネルギー革命は2つの重要な事態を示唆している。第一に、急激な排出削減に掛かるコストが楽観主義者でさえ想定しなかった程度にまで低くなりそうだという事だ…第二に、順当な後押しがあれば – それこそパリでの合意が確かにしてくれるだろう後押しのなのだ – 再生可能エネルギーは新たに、地球を保護する事や、またコーク一族やその手の輩への対抗勢力を形成する事に積極的な関心をもつ種々の利益団体を急速に生み出すはずだ。

もちろん、何もかもがあれよあれよといううちに破綻といったケースも考え得る。大統領クルーズないし大統領ルビオが誕生し、取り決め全体を打ち切りにしてしまうかもしれず、そうなれば気候問題に関し何らかの手立てを打つ次のチャンスが我々のもとに再び訪れる頃には、時既に遅しということにもなりかねないのである。

だからといって、そうなるに決まっているという訳ではない。私は、今回パリで生まれた何かが、ここのところずっと、希望というもの一般があまりに稀少であった領域において、我々に見せ掛けではない本物の希望の種を与えてくれるものであると、そう示唆することが世の中を知らない者の行いだとは思わないのである。たぶん、我々は破滅の運命を課されてはいなかった、そういうことなのだ。

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