Simeon Djankov:通貨が崩壊するとき

Simeon Djankov: When Currencies Collapse, (PIIE Realtime Economic Issues Watch. December 30th, 2015)

12月の終わり頃、アゼルバイジャンの通過であるマナトは1日でその3分の1の価値を失うことになった。それは、中央銀行が米ドルに対し固定相場制を取っていたマナトを変動相場制に変更する、と決定した後に起こったことだ。この一連の動きは国民を怒らせることになったが、それに止まらずコーカサス地方にまたがって波紋を広げることとなった。その直後に、隣接するグルジアで首相が辞任することとなり、通貨価値の変動はその突然の辞任の一因である、として引き合いに出された。これはコーカサス地方における痛みを伴う金融改革期の始まりに過ぎないのかもしれない。

 

2月初頭の平価切り下げと合わせて、アゼルバイジャンはその通貨価値を2015年中に対ドルで55%下げることとなった。その最大の原因は、主要な輸出品である石油とガスの価格の下落である。国家予算のこれらの産品への依存度は非常に大きいため、2015年における財政赤字はGDPの10%近くに達する見込みだ。アナリストたちはアゼルバイジャンの銀行部門における混乱を予想している。多くの企業及び一般家庭は、米ドルで多額の借り入れをしており、それをマナトを基準とした収入から返すことになるからだ。

 

他の国々もまた、同様の問題を抱えている。カザフスタンの通貨であるタンゲは2015年に対ドルで47%価値を下げ、グルジアの通貨価値は25%、ロシア通貨ルーブルは24%、トルクメニスタン・マナトは19%、それぞれ価値を下げた。これらの国々はどこも過去10年にわたる高い経済成長を享受しており、それは燃料の輸出とその運輸税に依っている。そして幸運な時代は終わりを告げた。

 

通貨価値が崩壊したとき、政府は何をすべきか。短期的には、過去の計画に沿った政府支出が可能である。たとえそれが大幅な財政赤字状態であったとしても。実例を見るならば、グルジアとロシアの2015年における財政赤字はGDPの3%を超え、アゼルバイジャンではそれよりもさらに大きい。そして長期的には、公共支出の削減による赤字の解消という難しい決断が迫られる。

 

通常では、公共部門の給与及び年金の凍結が最初に発効される。多くの消費者向け製品が海外からこれらの国々に輸入されることを考え合わせるならば、この凍結は国民が貧しくなる方向へといきなり方向転換することを意味する。二番目に行われることが、教育及び医療といった公共部門への支出の削減である。これらの部門では、以前と同等の業務水準が求められるのに、少ない予算でやりくりせねばならないことになる。そして三番目に、公共設備投資の削減が求められる。ロシアでは2018年のワールドカップ予算は据え置かれるものの、以前に計画されていた設備投資計画の60%の削減がすでに発表されている。さらに同様の発表がロシア以外の政府からも出されることが予想される。

 

民主主義社会では上記のような公告は政権交代、そしてしばしば選挙へとつながる。上記4カ国のうち唯一の民主主義国家であるグルジアではすでに政府内部の入れ替えが見られる。その他の国々では、個々の大臣が政府の支持率を上げるための犠牲となっている例が見受けられるものの、政権そのものは維持されている。ただし、それが維持できるのも通貨価値が下落し続けない限り、だ。

 

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  1. 資源価格は一定ではなく、予期せぬ事象で変動する。
    予算をいい時の収入で組んで、悪くなっても改めなければ破綻するのは当たり前。翻ってみれば我が国の資源は人間。果たして枯渇はするのか?しないのか。

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