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ヴィンセント・ゲローソ他『パンデミック、経済的自由、制度のトレードオフ』

Pandemics, economic freedom, and institutional trade-offs
19 July 2021
by Vincent Geloso (King’s University College at Western University Canada), discussing Werner Troesken’s ‘The Pox of Liberty’

〔訳者まえがき:本サイトで、ジョージ・メイソン大のマーク・コヤマ教授の論考を翻訳したことをきっかけに、その論考で取り上げられていたピッツバーグ大のヴェルナー・トレスケン教授の著作『自由の国と感染症――法制度が映すアメリカのイデオロギー(みすず書房)』が翻訳出版されることになりました。サイトの参加訳者の2人が翻訳を担当しています。邦訳版の出版に際して、関連した論考を複数投稿します。〕

パンデミック、経済的自由、制度のトレードオフ

抄録

制度とは、公衆衛生に影響を与える公共財を提供する政府の能力における、トレードオフを伴う束であると我々は主張する。経済的自由の基盤となる制度は、商業病(天然痘やCOVID-19など、人の自由な移動に関連する疾患)よりも貧困病を減らすことによって、疾患構成に影響を与えるという仮説を立てた。本稿では、19世紀末から20世紀初頭の天然痘と腸チフスに焦点を当て、ヴェルナー・トレスケンが『自由の国の感染症』で示したフレームワークを中心に、我々と同様の議論を展開した最近の研究を紹介する。我々のエビデンスは、20世紀後半に天然痘が根絶される以前の複数の時代と環境において、経済的自由は腸チフスの死亡率を低下させたが、天然痘の死亡率には影響を与えなかったことを示している。COVID-19の意味するところは、パンデミック対策と経済的自由の維持とのトレードオフは、短期的にはそれほど深刻ではないかもしれないということである。しかし長期的には、経済的自由から得られる富の恩恵は、主に併存疾患(糖尿病や心臓病など)への影響を減らすことによって、商業病に対する脆弱性を軽減する上で極めて重要であると考えられる。このように公衆衛生にとって、経済的自由は全体としては良いものであり、トレードオフは考慮に入れなければならないが、パンデミックに対処するための最良の制度である可能性が示唆される。

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