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スコット・サムナー「日本では人生はより良いものになっているだろうか」

Scott Sumner ”Japan: Is life getting better?TheMoneyIllusion, August 30, 2018


今回は日本を題材にしたが,これはほとんどの先進国に当てはまるんじゃないかと思う。

タイトルの問いに対する答えとしては,「人生1 」をどう定義するか次第だ。つまり,

定義A:一般的な人生の総効用
定義B:一般的な年における人々の効用のフロー

経済学者は大抵定義Aに基づいて考えるけれども,広く使われている効用主義的な枠組みを厳密に適用するのであれば,定義Bのほうが適当であるという主張もできるだろう。 [Read more…]

  1. 訳注:この記事では訳出にあたって「life」という単語を文脈に応じて「人生」「生活」「生涯」と訳しているが,原文はlifeという同じ単語であることに留意されたい。 []

スコット・サムナー「どんな情報を消費すべき?」(2018年9月3日)

[Scott Sumner, “What information should we consume?The Money Illusion, September 3, 2018]

「TEDトーク」はこれで2回目だ.テッドからの質問:

世の中に関する情報を消費するときに選別バイアスがかからないようにする対策はどうしてる?

ひとつの答えは「なんでも消費する」だ.タイラー・コーエンみたいにやればいい.

とはいえ,「そんな時間なんてないよ」という人もいるだろう.その場合には,読むものを「多様に」取りそろえてそれに集中する.多様にあれこれ読むということは,たんにイデオロギーによるバイアスをもっとたくさん避けるのにとどまらず,もっといろんなことをすることになる(イデオロギーのバイアスを避けるのも大事だけど).
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スコット・サムナー「利上げで製造業と輸出が押し上げられるわけないだろ...」

Scott Sumner “Maybe it’s my jet lag . . .” MoneyIllusion, July 24, 2018,

時差ボケと風邪のせいなのかもしれない…が,このコーナー・センのブルームバーグ記事の意味はさっぱりだ。

トランプはFedにアメリカ経済の巻き返しを望んでいる

金利の上昇は製造業と輸出を復活させうる。これは消費者と労働者にとっては痛手となるだろう

副題までしか読んでないというのに,既に意味が分からない。どうやったら金利の上昇が製造業と輸出を押し上げるって言うんだ?仮にそうだとしても,なぜ労働者にとって痛手となるんだろうか。 [Read more…]

スコット・サムナー 「『1Q84』と『サタンタンゴ』と ~超大作を讃えて~」(2012年2月12日)

●Scott Sumner, “Satantango”(TheMoneyIllusion, February 12, 2012)


今回はいつもとは一風変わった話題を取り上げるとしよう。ここ最近ずっと大いに頭を悩ませている疑問がある。「小説や映画の長さって一体どうやって決まってくるのだろうか?」という疑問がそれだ。大抵の小説は分量にして200~500ページくらいで大抵の映画は尺にして2時間くらいというのが相場だ。映画の尺に関しては映画館側の事情――夕食後に2回は上演できるくらいの尺が好ましい――がいくらか関係しているのだろうと推測できるが、しかしそれですべて説明がつくわけではないようにも思う。というのも、「アートフィルム」(前衛映画)にしたって大体2時間くらいの尺に収まっているからだ。小説が原作となっているアートフィルムでさえもそうなっているのだ。普通の分量の小説を圧縮せずにそのまま映像化しようと思ったら(それもアートフィルムのテンポで映像化しようと思ったら)5~10時間くらいの尺になるはずなのに。 [Read more…]

スコット・サムナー 「私に影響を及ぼした『テクスト』」(2010年3月20日)

●Scott Sumner, “Some influential “texts””(TheMoneyIllusion, March 20, 2010)


「『この本には強い影響を受けた』。みんなもそんな本のリストを披露してくれないか?」というタイラー・コーエンの呼びかけ〔拙訳はこちら〕に対する他のブロガーの面々の回答をチェックしているうちに心配になってきたことがある。人様にお見せしても恥ずかしくないリストを拵(こしら)えられるだろうかといささか不安になってきたのだ。『A Theory of Justice』(邦訳『正義論』)に『The Structure of Scientific Revolutions』(邦訳『科学革命の構造』)。『Guns, Germs and Steel』(邦訳『銃・病原菌・鉄』)。『The Bell Curve』。『The Road to Serfdom』(邦訳『隷属への道』)などなど。他の面々が言及している本の一例だが、勿論どれも知っている。が、果たして読んだかと問われると・・・。『隷属への道』は30年前に読んだことがある。しかし、肝心の内容はまったく覚えていないときている。

映画の『メトロポリタン』を観たという人ももしかしたらいるかもしれないが、その中にこんなシーンがある。舞台はニューヨーク。カクテルパーティーの席上で若い男女が対面でジェーン・オースティンを批評し合っている。女が激怒しながら男に尋ねる。「ところで、ジェーン・オースティンのどの作品を読んだことがあるの?」。男の答えはというと・・・、「僕は小説は読まない人間でね。批評(文芸批評)は読むけどね」。 私もこいつと似たり寄ったりだ。学問の世界で名のある古典の(実に数多くの)あれにしてもこれにしても一切読んでなんかいないのに、それのどこがどう間違っているかを30分かけて誰かと議論し合えてしまうのだ。そんなやり方はフェアじゃないというのはよくわかっている。どんな本であれ枝葉を取り払ってその内容をギュッと要約してしまえば、その本の持つ説得力の大半は失われてしまって簡単に批判してしまえるものなんだから。そうそう。ちなみにだが、(ジェーン・オースティンの)『Pride and Prejudice』(邦訳『高慢と偏見』)は読んだことある。 [Read more…]

スコット・サムナー「消費者物価指数と住宅価格」(2018年5月11日)

[Scott Sumner, “The CPI and housing prices,” TheMoneyIllusion, May 11, 2018]

9年前のことだが、住宅価格の計測間違いで消費者物価指数 (CPI) がどう歪んでいるか論じたポストを書いた:

朗報! 住宅バブル崩壊なんてなかったんだよ!

――少なくとも、アメリカ政府によればね.

労働統計局によれば、住宅価格は過去12ヶ月で 2.1% 上昇しているそうだ
それがなんで重大かって? ありとあらゆる理由があるけれど、まずは,実際に起きたことを探ってみよう。労働統計局によれば、財とサービスのコア・バスケットの40パーセント近くを住宅が占めている。

カテゴリ 重み インフレ率
住宅 39 % 2.1%
それ以外 61% 1.4%
全体 100% 1.7%

かりに、2.1% 上昇するかわりに住宅コストが過去12ヶ月で 2.1% 下落していたとしたらどうだろう? その場合、コアインフレ率はゼロということになる。どちらがもっともらしい数字だろう? 過去1年間のかなりにわたって、住宅価格は月あたり 2% 以上で下がり続けてきたんだよ。

ブルームバーグ』で、同様の結論に達した新しい学術研究が伝えられている:

新研究によれば、CPI は物価変動の反映が遅れるという――さらに、同じくらい重要な点として、CPI は物価が上がったり下がったりする度合いを過少に示してしまう。この問題の出どころにさかのぼると、政府による住居費の計算方法にたどりつく。住居費は、この物価指標の3分の1を占める。

3名の経済学者が開発した代替の計測法では、物価が動くとすぐさまこれを把握し、さまざまな変化の全域を示している。大恐慌以来で最悪の景気後退が起きた 2008年〜2009年にもしもこれが存在していたなら、労働統計局が公表した数字よりはるかに深刻なデフレを示していたことだろう。新研究によれば、大不況のあいだに公式の CPI はインフレ率を年率 1.7 パーセントポイントから 4.2 パーセントポイントも過大に示していたという。さらに、もっと近年では、反対方向の問題も生じている:年率の数値が 0.3 から 0.9 パーセントポイントも過少に示されていたと著者たちは書いている。さまざまな予想では公式数値のたった 0.1〜0.2 パーセントポイント の上下変動で大騒ぎしているのを考えると、これは途方もない落差だ。

どれだけ落差が大きかったかわかるグラフを示そう:

実のところ、今回の訂正はぼくの予想よりもちょっとばかり大きかった。だが、彼らの手法が完璧でないとしても、基本的な論点は正しいことにほぼ疑問はない。経済の実際の市場物価を反映する代替の物価指標に比べて CPI は上下変動がおとなしい。

彼らが指摘している問題は、ぼくがかつて2009年に言及した問題に似ている。労働統計局は既存の契約での賃料支払いを計算につかっている。その数字には、現時点で賃貸物件が市場でいくらで貸し出されているのかが反映されない。不況時には、新しい店子が賃貸料1〜2ヶ月分を無料にしてもらえることはめずらしくない:

今回の研究を行なったのは、ペンシルバニア州立大学スミールカレッジオブビジネスの Brent Ambrose と Jiro Yoshida、そしてカリフォルニア大学 Merage Schoold of Business の Edward Coulson だ。研究の最新版は学術論文「住宅賃料とインフレ率」のタイトルで掲載されている。CPI との主なちがいは、新研究では新しい賃貸物件のみ(新しい店子の賃貸契約や以前からの店子が更新した契約を含む)を計測している点だ。これと対照的に、労働統計局は賃貸契約が直近の月に更新されていない店子が払った賃料も含めている。これにより、CPI は市場状況の変化を遅れて拾い上げることになっている。

CPI の重大な欠点にスポットライトを当てた Ambrose, Yoshida, Coulson の3人に拍手。多くのプロ経済学者たちはあまりに無批判に CPI を使ってしまっている。

スコット・サムナー「日本旅行を終えての感想」

Scott Sumner ”Back in the USATheMoneyIllusion, May 1, 2018

日本について書いた前回のポスト1 の続きをさらっと書いてみよう。小奇麗で魅力的,礼儀正しい成田空港を発ち,ごちゃごちゃしていてだらしなくて混沌としていて無秩序なロサンゼルス空港に到着すると,まさに横っ面をはたかれたような思いがする。特に最高なのは,まだ機内にいるうちに航空会社から税関申告書が配られるところだ。着陸した後,税関申告書を誰にも見せる機会はないのにだ。きっと乗客の時間つぶしのためとでも思っているんだろう。数独をやるのと同じように。その一方で,小さな家とコンクリートのビル,電線であふれた日本を訪れた後に見るオレンジ郡南部は楽園のようだ。アメリカと日本を比較するのは本当に難しい。お互いにそれぞれ違った長所と短所があるからだ。 [Read more…]

  1. 訳注;言及されている記事の邦訳はこちら(optical_frog氏訳) []

スコット・サムナー「大人向けSFとしての日本」

[Scott Sumner, “Japan as sci-fi for grown-ups,” The Money Illusion, May 2, 2018]

SFは,特に若者に人気だ.年をとるにつれ,宇宙旅行の物語への私の興味は薄れ,したがってSFを読むことは減って他の文学を読むことが増えた.でも,異世界の物語への興味が薄れたことはない.そして日本が面白いのはその点だ.東京の各部がそれほど未来的に見えるというわけじゃない.江戸時代の日本にだってある種 異世界の暮らしがあったし,それが西洋での暮らしより明らかに劣ってるってわけじゃなかった.実際,1700年まで戻ってみれば東京は世界最大の都市で,120万の人々が実に興味深い文化を育んでいた. [Read more…]

スコット・サムナー「日本は細部にあり」

[Scott Sumner, “Japan is in the details,” The Money Illusion, April 17, 2018]

ずっと前から日本にきてる人たちは、このポストは無視してほかのもっとためになるものを読んでもらった方がよさそうだ――たとえば、ノア・スミスの文章なんかがいいだろう。ともあれ、はじめての日本旅行についてちょっとばかりコメントを書こうと思う。現時点で、日程の6割を消化しているところだ。権威もないただの印象を書き綴った文章だと思ってほしい。
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スコット・サムナー「日本で何を見たらいい?」

Scott Sumner, “Japan Bleg”(TheMoneyIllusion, March 24, 2018)

来月、日本(東京、京都といくつかの地方)を訪問するので、どこに行ったらいいかオススメを教えてくれたらありがたい(食べるところよりも何を見るのがいいのかという路線で)。日本銀行には素晴らしい木版画の美術館があると聞いたが、ネット上で英語の情報を見つけられなかった。

若いとき僕が好きな国はイギリスだった。今は日本だ、そのほとんどの理由は日本美術だ。これは僕にとって初めての日本旅行になる。

それから、歩きの問題(足底筋膜炎かな?)についての提案もあったらありがたい。旅行中、僕はいつもたくさん歩くのだけど、ここ一ヶ月左足が痛む。

何年か振りの「本当の」休暇を楽しみにしてるよ!