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スコット・サムナー 「どこかがおかしい我が愛車・・・とFedの金融政策」(2019年5月21日)

●Scott Sumner, “There’s something wrong with my car”(TheMoneyIllusion, May 21, 2019)


先週の話になるが、カーディーラーのもとを訪れてきた。買ったばかりの新車の調子がいまいちなのだ。

「高速道路で本線に合流しようと思って制限速度いっぱいの時速65マイル(時速およそ104キロ)まで加速しようと試みたんですが、どうもうまくいかないんです。ブレーキペダルを9回ほど軽く踏んだんですが、それでもうまくいかないんです。時速65マイルまで加速しないんですよ。どこか故障してるに違いないと思うんです」。

・・・と我が愛車が抱える問題について伝えたところ、珍妙な顔をするディーラー。ブレーキペダルを踏んだら希望する速度まで車が加速しないのも当然ですとかなんとか口からでまかせを言い出す始末。

「Fedにはインフレ率を2%にまで引き上げる能力は備わっていない」。そんなコメントがひっきりなしに寄せられる。Fedはインフレの抑制を狙って2015年以来計9回にわたって政策金利を引き上げた。そして2019年現在、インフレ率は未だに2%に届かずにいる。Fedに搭載されている「インフレ加速メカニズム」のどこかにおかしなところがあるに違いない。

スコット・サムナー「ツイッターポリコレ棒の原理」

Scott Sumner ”ShamingThe Money Illusion, January 11, 2019


私はTwitterを利用していないが,誰々は政治的に正しくないと告発するツイートについて議論するニュースを時折目にすることがある。こうしたツイートについてどのように考えればいいだろうか。原則的には,告発は攻撃的なコメントや振る舞いを抑えるという大事な公的機能がある。しかし,政治的に正しくないスピーチを告発することは効果的ではないように思える。どうしてか。

真正面から解釈すれば,告発ツイートは様々なレイシスト(民族差別的)あるいはミソジニスト(女性差別的)的なコメントに対する罰だ。これは真実かもしれないが,現実にあまりうまく当てはまるようには見えない。実際のレイシストないし性差別主義者は,彼らを罰しようとする告発ツイートによって打撃を受けていない。対照的に,一般的に打撃を受けるのはレイシストや性差別主義者ではない人たちだ。告発はドナルド・トランプやスティーブ・バノンとっては痛くも痒くもない。実際,バノンは自身の熱狂的支持者たちの前で,「レイシスト」のラベルを勲章として着けるよう主張している。その一方で,こうした類の〔告発ツイートによる〕攻撃は,凝り固まった考え方をしていないラリー・サマーズのような人たちに対してかえって悪影響を与える。レイシストないしミソジニスト的な言説を意図的に行う人々は,まさに表立った告発が彼らにとって痛くもないからこそそうしたことを行うのだ[Read more…]

スコット・サムナー「そりゃクルーグマンもイラつくよMMTさん」

Scott Sumner “As I predictedThe Money Illusion, March 1st, 2019


MMT派の有名人ステファニー・ケルトンがクルーグマンのいくつかの質問に対して答えた記事を今朝読んだが,この記事を読んだらクルーグマンは髪をかきむしるほどいらだつだろうと予想した。というのも,彼女の回答はまったくどうしようもないもので,クルーグマンの単純な質問をまるで理解していないかの如くだからだ。以下はEconlogの記事に私が書いたものの抜粋:

これすべてについて,クルーグマンの反応は予測することすらできない。なによりもまず,彼女は質問その1に対して「ノー」と言っているのに,彼女の説明は彼女が実のところは「イエス」と答えていることを如実に明らかにしている。質問その1と2を合わせた場合は特にそうだ。クルーグマンは,所与のマクロ経済環境(所与の民間支出水準を含む)を仮定した場合に,完全雇用と整合的な財政赤字は一つしかないのかどうかを尋ねている。彼女は明らかに答えはイエスだと考えている。ではなぜ彼女は「ノー」と答えるのか。彼女はクルーグマンの質問(非常に分かりやすいもの)を理解していないのではないだろうか。

〔ケルトンに対して〕クルーグマンが反応したが,予想どおりに完璧にいらだってる。私が指摘した1点目に対する彼の回答は次のとおり: [Read more…]

スコット・サムナー「魔法の杖は振れないのだよ」

Scott Sumner ”Magical thinking”, The Money Ilusion, February 21st, 2019


ポール・クルーグマンがMMT(現代金融理論)を批判する記事いくつか書いている。彼は礼儀正しくも,ゼロ下限においてはMMTの政策提案は緊縮の擁護者ほどは悪くないと指摘している。しかし奥底ではこのモデルが純然たる狂気であることに気づいているに違いない。

ステファニー・ケルトンの返答は,その思想について明確な説明を与えることができないというMMT派の長き伝統に連なるものだ。莫大な財政赤字はやがて金利が納税者にとって大きな負担となって圧し掛かるほど高まるまで公的債務を積み上げかねない,というクルーグマンの懸念に対する彼女の回答は以下のとおり。

まず,経済学者ジェームズ・K・ガルブレイスが説明したように「金利の仮定には悪魔が潜んでいる」。審判の日シナリオを防ぐのは難しいことではない。ガルブレイスが説明するとおり,「慎重な政策的結論は,予想される金利を低く保つこと」,もっと雑にいえば「重要なのは金利なのだよ,馬鹿者め1 」ということだ。

ではどうやって政府は「予想される金利を低く保つ」とされているのだろうか。魔法を使って?

そう,魔法を使うらしい。 [Read more…]

  1. 訳注;ビル・クリントンの大統領選挙時のスローガン”It’s the economy, stupid”のもじり。 []

スコット・サムナー「人々はどこに移住してる? そのワケは?」(2018年12月21日)

[Scott Sumner, “Where are people moving? And why?” TheMoneyIllusion, December 21st, 2018]

Econlog の方に投稿したポストで,アメリカの人口増加が減速しているという話を書いた.2018年現在は 0.6% という伸び率になっている(1937年いらいもっとも鈍い伸びだ).『ウォールストリートジャーナル』の記事にも,アメリカの州別にみた人口増加に関する面白いデータが掲載されている:
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スコット・サムナー「日本では人生はより良いものになっているだろうか」

Scott Sumner ”Japan: Is life getting better?TheMoneyIllusion, August 30, 2018


今回は日本を題材にしたが,これはほとんどの先進国に当てはまるんじゃないかと思う。

タイトルの問いに対する答えとしては,「人生1 」をどう定義するか次第だ。つまり,

定義A:一般的な人生の総効用
定義B:一般的な年における人々の効用のフロー

経済学者は大抵定義Aに基づいて考えるけれども,広く使われている効用主義的な枠組みを厳密に適用するのであれば,定義Bのほうが適当であるという主張もできるだろう。 [Read more…]

  1. 訳注:この記事では訳出にあたって「life」という単語を文脈に応じて「人生」「生活」「生涯」と訳しているが,原文はlifeという同じ単語であることに留意されたい。 []

スコット・サムナー「どんな情報を消費すべき?」(2018年9月3日)

[Scott Sumner, “What information should we consume?The Money Illusion, September 3, 2018]

「TEDトーク」はこれで2回目だ.テッドからの質問:

世の中に関する情報を消費するときに選別バイアスがかからないようにする対策はどうしてる?

ひとつの答えは「なんでも消費する」だ.タイラー・コーエンみたいにやればいい.

とはいえ,「そんな時間なんてないよ」という人もいるだろう.その場合には,読むものを「多様に」取りそろえてそれに集中する.多様にあれこれ読むということは,たんにイデオロギーによるバイアスをもっとたくさん避けるのにとどまらず,もっといろんなことをすることになる(イデオロギーのバイアスを避けるのも大事だけど).
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スコット・サムナー「利上げで製造業と輸出が押し上げられるわけないだろ...」

Scott Sumner “Maybe it’s my jet lag . . .” MoneyIllusion, July 24, 2018,

時差ボケと風邪のせいなのかもしれない…が,このコーナー・センのブルームバーグ記事の意味はさっぱりだ。

トランプはFedにアメリカ経済の巻き返しを望んでいる

金利の上昇は製造業と輸出を復活させうる。これは消費者と労働者にとっては痛手となるだろう

副題までしか読んでないというのに,既に意味が分からない。どうやったら金利の上昇が製造業と輸出を押し上げるって言うんだ?仮にそうだとしても,なぜ労働者にとって痛手となるんだろうか。 [Read more…]

スコット・サムナー 「『1Q84』と『サタンタンゴ』と ~超大作を讃えて~」(2012年2月12日)

●Scott Sumner, “Satantango”(TheMoneyIllusion, February 12, 2012)


今回はいつもとは一風変わった話題を取り上げるとしよう。ここ最近ずっと大いに頭を悩ませている疑問がある。「小説や映画の長さって一体どうやって決まってくるのだろうか?」という疑問がそれだ。大抵の小説は分量にして200~500ページくらいで大抵の映画は尺にして2時間くらいというのが相場だ。映画の尺に関しては映画館側の事情――夕食後に2回は上演できるくらいの尺が好ましい――がいくらか関係しているのだろうと推測できるが、しかしそれですべて説明がつくわけではないようにも思う。というのも、「アートフィルム」(前衛映画)にしたって大体2時間くらいの尺に収まっているからだ。小説が原作となっているアートフィルムでさえもそうなっているのだ。普通の分量の小説を圧縮せずにそのまま映像化しようと思ったら(それもアートフィルムのテンポで映像化しようと思ったら)5~10時間くらいの尺になるはずなのに。 [Read more…]

スコット・サムナー 「私に影響を及ぼした『テクスト』」(2010年3月20日)

●Scott Sumner, “Some influential “texts””(TheMoneyIllusion, March 20, 2010)


「『この本には強い影響を受けた』。みんなもそんな本のリストを披露してくれないか?」というタイラー・コーエンの呼びかけ〔拙訳はこちら〕に対する他のブロガーの面々の回答をチェックしているうちに心配になってきたことがある。人様にお見せしても恥ずかしくないリストを拵(こしら)えられるだろうかといささか不安になってきたのだ。『A Theory of Justice』(邦訳『正義論』)に『The Structure of Scientific Revolutions』(邦訳『科学革命の構造』)。『Guns, Germs and Steel』(邦訳『銃・病原菌・鉄』)。『The Bell Curve』。『The Road to Serfdom』(邦訳『隷属への道』)などなど。他の面々が言及している本の一例だが、勿論どれも知っている。が、果たして読んだかと問われると・・・。『隷属への道』は30年前に読んだことがある。しかし、肝心の内容はまったく覚えていないときている。

映画の『メトロポリタン』を観たという人ももしかしたらいるかもしれないが、その中にこんなシーンがある。舞台はニューヨーク。カクテルパーティーの席上で若い男女が対面でジェーン・オースティンを批評し合っている。女が激怒しながら男に尋ねる。「ところで、ジェーン・オースティンのどの作品を読んだことがあるの?」。男の答えはというと・・・、「僕は小説は読まない人間でね。批評(文芸批評)は読むけどね」。 私もこいつと似たり寄ったりだ。学問の世界で名のある古典の(実に数多くの)あれにしてもこれにしても一切読んでなんかいないのに、それのどこがどう間違っているかを30分かけて誰かと議論し合えてしまうのだ。そんなやり方はフェアじゃないというのはよくわかっている。どんな本であれ枝葉を取り払ってその内容をギュッと要約してしまえば、その本の持つ説得力の大半は失われてしまって簡単に批判してしまえるものなんだから。そうそう。ちなみにだが、(ジェーン・オースティンの)『Pride and Prejudice』(邦訳『高慢と偏見』)は読んだことある。 [Read more…]