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ステファニー・ケルトン「MMTの『レンズ』が映し出す下院議員たちの誤り」(2021年8月9日)

Stephanie Kelton, “House Members’ Letter to Pelosi Mostly Barking Up the Wrong Tree”, The Lens, Aug 9, 2021

CNNの主任議会特派員マヌ・ラジューは昨日、下院議員が共同で作成している書簡の草稿を紹介した。草稿の作成には、ジョシュ・ゴットハイマー(ニュージャージー州選出)、ジャレド・ゴールデン(メーン州)、カート・シュレーダー(メーン州)、ヴィンセンテ・ゴンザレス(テキサス州)、エド・ケース(ハワイ州)、フィーレマン・ヴェラ(テキサス州)などの民主党下院議員が携わっている。 [Read more…]

ビル・ミッチェル「MMTと『力関係』について- Part 1」(2021年5月6日)

Bill Mitchell, “MMT and Power – Part 1”, Bill Mitchell – Modern Monetary Theory, May 6, 2021

「現代貨幣理論(MMT)には、〔制度的な〕力関係(power relations1 )の理論がないので欠陥がある」という言説をよく目にする。批判者の中には、このことを、「MMTにはインフレの理論もない」という主張に結びつけて語る人もいる。

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  1. このエントリで頻繁に出てくるpowerを「権力」と訳すと「政権」の意味でも取れてしまうので、一方が他方に行使する支配的な影響として純粋に「力」と訳している。power reationsも同様に「権力関係」とするとやはり語弊があるので「力関係」に。 []

ランダル・レイ「現代貨幣理論への“カンザス・シティ”アプローチ:成立史から辿るMMT入門」(2020年7月)

The “Kansas City” Approach to Modern Money Theory
by L. Randall Wray
Levy Economics Institute of Bard College
Working Paper No. 961
July 2020

目次

  1. 表券主義ー貨幣国定説
  2. 信用貨幣:貨幣サーキットと内生的貨幣
  3. 貨幣の性質
  4. バランスシートの統合および整合: あるいは、政府支出の実態
  5. 部門別収支
  6. 金融不安定性
  7. 機能的財政、需要管理、完全雇用
  8. MMTと雇用保障
  9. 結論: MMTと政策

要旨

現代貨幣理論(MMT)は、異端派経済学内の流派の一部を統合したものである。主権通貨を発行する国家において、金融・財政の運営を記述することに焦点が当てられている。以上の観点から、ジョージ・フリードリヒ・クナップの国家貨幣のアプローチ(チャータリズム:表券主義)を応用し、さらにジョン・メイナード・ケインズの『貨幣論』を採択している。MMTは「主権通貨の発行者と、その主権発行通貨の利用者の違い」を強調している。この違いが強調されているのは、「財政・金融の政策余地」「期日までに全てを支払う能力」「信用力」「超過債務」などの問題に関係しているからである。しかし、MMTは、A・ミッチェル=イネスに倣って、主権通貨発行者と非主権通貨発行者の間には類似性があることを認めている。それゆえ、信用貨幣論(ポストケインズ主義者が通例呼ぶ用語では「内生的貨幣理論」)と、貨幣国定学説(Staatliche Theorie des Geldes)の統合を行った。MMTはこの統合を、政策分析に活用し、為替制度、完全雇用政策、金融・経済の安定性、そして現代経済が直面している現状課題(不平等の拡大、気候変動、人口高齢化、長期停滞、開発の不均衡)などの問題に応用している。本論文では、ミズーリ大学カンザスシティ校(UMKC)とバード大学レヴィ経済研究所におけるMMTへの取り組み、「カンザス・シティ」アプローチの発展について焦点を合わせてみたい。

キーワード:現代貨幣理論(MMT)、機能的財政、チャータリズム(表券主義)、貨幣国定学説、部門別収支(三部門収支バランス)、カンザス・シティ・アプローチ、雇用保障(ジョブ・ギャランティー)、主権通貨(ソブリン通貨) [Read more…]

フィル・アームストロング&ウォーレン・モズラー「現代貨幣理論(MMT)のレンズでみたワイマール共和国のハイパーインフレ」(2020年11月11日)

Weimar Republic Hyperinflation through a Modern Monetary Theory Lens
by Phil Armstrong and Warren Mosler
11/11/2020
翻訳:朴勝俊

抄録

 1922-23年のワイマール・ドイツにおけるハイパーインフレは、「健全財政」のルールで政府を拘束すべきだとする論拠として、主流派経済学者(特にマネタリスト)のお手本とされている。彼らは、政府は必ず分限を超えた支出をする傾向があり、放っておけばインフレは「手に負えなくなり」、ハイパーインフレが起こると主張する。つまり破局的な貨幣価値の崩壊が起こり、それは継続的で、加速的で、止めることが出来ないものだというのである。

 このような主流派の常識的分析とは対照的に、我々はインフレの原因は全く別物だと認識している。持続的で積極的な政策的支援が行われなければ、インフレなど起こらないと考える。そして、そのような政策がなくなればインフレは急速に沈静化するのである。我々は主流派の誤った理論を、物価水準とその変化の決定要因を明らかにする現代貨幣理論(MMT)の知識で置き換える。我々はワイマールに関する歴史家ではないので、包括的な歴史的分析を行うことを目的としているわけではない。我々は、これまで伝えられてきた、ワイマールのハイパーインフレの背景にある因果関係を、それを突然収束させた要因とともに検証する。

 本稿の目的は、これまで伝えられてきた情報を、 MMT の観点から考察することである。  この中で、インフレの原因は、ドイツ政府が政府支出の調達価格を高め続けたことだと明らかにする。それは特に、賠償金支払いのために、連合国が要求した外貨を購入する際の価格上昇である。そして貨幣量の増加と紙幣の増刷は、ハイパーインフレの原因ではなく、むしろ結果であることを示す。 

 本稿は、ワイマール共和国のインフレは、ドイツ政府がライヒスバンクと協働してマネーストックを積極的に拡大させたことに起因するという、主流派の見解に異議を唱えるものである。 第1節では、まず新古典派の視点から、次にMMTの視点から、物価水準の決定要因とインフレの原因を検証する。 第2節では、ワイマールのハイパーインフレを分析する。 第3節では、MMTの洞察をワイマールのハイパーインフレに適用し、我々の代替シナリオを提示する。 第4節で結論を述べる。 [Read more…]