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VoxEUアブストラクト:「マスクの義務的着用とその他の都市封鎖政策による合衆国における COVID-19 の感染拡大は減少した」(2020年7月15日)

[Victor Chernozhukov, Hiro Kasahara, Paul Schrimpf, “Mask mandates and other lockdown policies reduced the spread of COVID-19 in the US,” VoxEU, July 15, 2020]

COVID-19 に直面して,人々は合理的かつ自発的にリスク情報に対応して行動をとった.このため,封じ込め政策の効果を自発的対処の効果から区別しにくくなっている.このコラムでは,合衆国において義務的なマスク着用政策が COVID-19 の感染者数と死者数にどう影響したか検討する.もしも,合衆国において,2020年4月1日時点で,不特定多数と接触する事業者にマスクの着用をするようが全面的に義務づけられていたなら,6月初めの時点で死者数は 40% 近く少なくなっていただろう.封じ込め政策は,直接には感染率を減少させることによって,そして間接には人々の行動を制約することによって,COVID-19 の感染者数と死者数に多大な影響を及ぼした.その影響は,感染者数と死者数の増加率で実際に観察された変化のおよそ半分を占める.

(コラム全文(英語)はこちら.)

ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.8/End」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

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結び

第一次世界大戦のさまざまな起点を叙述して世評の高い歴史書『夢遊病者たち』で,大部分においてよかれと思って行動している政策担当者たちが,意思疎通の失敗と誤解によって宣戦布告にいたり,大陸を騒乱に導いたさまをクリストファー・クラークは明らかにしている.世界貿易体制に関するかぎり,この歴史の顛末は今日の事態とさまざまな点で類似している.
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ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.7」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

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グローバル化の潜在的な貢献は,政府どうしが協力したときに増幅される

「国際貿易や生産拠点の国外移転,ひいてはグローバル化全般は,COVID-19 パンデミックを乗り越える国民衛生の自主的な行動を阻害する」と考える人たちがいる.典型的に,自国単独の政策選択肢しか考慮していないときに,この結論が引き出される.だが,歴史を見れば,生産の急拡大には国際協力が必須なのがわかる.第二次世界大戦での生産努力は,まさにそうやって機能した.
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ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.6」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

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ボックス記事 #1: 輸出制限は裏目に出る

3M は保護マスクの世界的な製造業者で,ヨーロッパ・アジア・ラテンアメリカ・合衆国に工場をもっている.2020年1月時点で,COVID-19 の発生を見た 3M は N95保護マスクの生産能力を年間11億枚にまで倍増させた.合衆国内では,3M は生産を 40% 増やすことを目指している.2020年6月までにN95保護マスクを月間 5,000万枚生産する見込みだ.
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ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.5」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

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内向きに転じてもうまくいかない

本 eブックの論考がそろって発しているとくに重要なメッセージのひとつはこれだ:保護主義は COVID-19 パンデミックのさなかにうまくいっていない.」――お好みならこう言い直してもいい:「外国の利害よりも国内の利害を優先した政府の行動は,うまくいっていない.」 そうした保護主義は COVID-19 に苦しむ外国の犠牲者たちを害し,外国での公衆衛生介入の効果も低下させてしまうばかりでなく,自国でもパンデミックに対抗する行動をほぼ利さないのだ.
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ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.4」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

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さまざまなショック,さまざまな保護主義

保護主義をとりたくなる誘惑は,さまざまなかたちをとって現れうる.「保護主義」という用語には〔よくない印象の〕負荷がかかっている.さらに,「保護主義」というともっぱら輸入制限ばかり連想されることも多い.そこで,もっといいアプローチをとりたい.それは,〔ある国の〕政府の行動が外国の通商に関わる利益関係者に反する差別となるパターンを網羅することに傾注するアプローチだ [n.9].そうした利害関係者には,輸入者・輸出者・製造業者・外国投資家・知的財産の外国の朱勇者・外国の労働者・外国データの所有者がいる.
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ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.3」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

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保護主義の誘惑と,自由主義貿易体制への恐れ

景気後退は保護主義の召使いだというのが通説だ.すでに述べたように,1930年代序盤の経験という歴史の実例を見れば,この通説にもなっとくがいく.その帰結は,陰惨だった.傑出した経済史家たち Barry Eichengreen と Douglas Irwin はこう論じている:「大恐慌にはいまなお論争が続いている側面が多々ある.だが,それでもただひとつ,諸説が一致している点がある.それは,制限的な通商政策を採用したのは破壊的で逆効果だった,という点だ.」(Eichengreen & Irwin 2009).

2008年と同じく,今日も世界の指導者たちは過去の教訓にならわない陥穽を警戒している.世界銀行の David Malpass 総裁は,先日こう発言している――「諸国は踏み込んでこう発言する必要があります,『我々はこの危機を利用して自国市場を閉じたり自国市場を囲い込んだりする口実にはしません』と」(Malpass 2020).IMF のチーフエコノミスト Gita Gopinath 教授は,保護主義の難点を正しく見定めている:「グローバル化の利得を逆戻りさせてしまう未来を招かないことが非常に重要です.」[n.5] だが,指導者たちがもれなくこのように考えているわけではない.

保護主義は勝手に空から降ってくるわけではない――苦境につけこんで保護主義を主張する人々がいてはじめて存在するのだ.もちろん,保護主義を唱える人々も,内向きに閉じようという切り口で自説を述べたりはしない.供給を確保するといった主張で保護主義を唱えるのだ.2020年2月に,医療用品の供給が不足しそうな見通しに触れて,トランプ大統領補佐官のピーター・ナヴァロはこう主張した: [n.6]

「長年にわたって密かに合衆国の経済と国民の安全を脅かしていた問題にいよいよ目覚めてとりかかるときがきたのです(…).今般のコロナウイルスや2009年の豚インフルエンザ H1N1 から我々が学んだことがあるとすれば,それは,必要不可欠な物品は,マスクからワクチンにいたるまで,その供給を他国に必ずしも依存するわけにはいかないということです.たとえ関係の深い同盟国といえども,それは同じです.」

これほどあからさまではないまでも,もっと穏やかな〔保護主義的な〕心情は,他の高官たちも表明している.そうした表明は,必ずしも経済なしょなりすむと結びついてはいない.欧州委員会の保健衛生担当委員ステラ・キリアキデスは,問題をこう述べている:「中国をはじめとする諸国に対する EU の依存という問題は(…)COVID-19 以前は議題にのっておりませんでした」「[今回の危機によって]この問題が大きく浮かび上がり,これに目を向ける必要が生じています.他国への依存を減らす必要があります.」[n.7] キリアキデスの同僚で欧州委員会の域内市場委員のティエリー・ブルトンは,産業政策をはじめとする職務を担当している.彼は次のような意見を述べている:「グローバル化は行き過ぎています.」 さらに,こうも述べている:「今回の危機以後,我々と世界との関係はいままでとちがったものとなると確信しています.」[n.8]

これまでのところ,新たな産業政策・貿易差別などの具体的な提案は出ていない.だが,反貿易の地域主義が勢いを得るのは容易に予想がつく――欧州復興開発銀行 (EBRD) のチーフエコノミストをつとめる Beata Javorcik 教授が,この eブックへの寄稿で指摘しているとおりだ.

pt.4 に続く


原註

[5] Rappeport & Smialek (2020) での引用.
[6] Politi (2020) での引用.

ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.2」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

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きたるべき世界貿易の崩壊: 2008-2009の規模を上回るか?

2008年の第4四半期に,突如として世界貿易はいっせいに深刻な崩壊を経験した.これが「大貿易崩壊」(‘Great Trade Collapse’) と呼ばれるのにも,もっともな理由がある [n.2].この貿易崩壊では,大恐慌いらい,歴史の記録に残っているなかでももっとも急激かつ深い貿易の減少がおきた.貿易の崩壊はありとあらゆる国におよび,財とサービスのほぼ全カテゴリーにまたがった.
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ボールドウィン & エヴェネット「COVID-19 と通商政策: pt.1」(2020年4月29日)

[Richard Baldwin & Simon J. Evenett, “Introduction,” in COVID-19 and Trade Policies. VoxEU, April 29, 2020]

訳者の註記: この記事は,VoxEU の電子書籍「COVID-19 と貿易政策」の序文を訳したものです.長文のため,セクションごとに区切って掲載していきます.なお,この電子書籍全体の要約を山形浩生さんが公開しています: こちらを参照.

アブストラクト
COVID-19 パンデミックによって,医療用品や食品に輸出制限をかけようという動きが広まっている.本 eブックでは,次の問いを立てる:「政府は健康面・経済面・貿易面での危機に対して,内向きになる対応をとるべきだろうか?」 本書の寄稿者たちは,共通の答えを提示する:「否.」 内向きになっても,COVID-19 に対する今日の戦いの役には立たない.製造プロセスが国際化されている世界で,国々が貿易障壁を強くすれば,必要不可欠な医療用品の生産がどの国にとってもいっそう困難になる.貿易が問題なのではない.貿易は解決法の一環なのだ.また,内向き政策は経済の回復をはぐくむのにも失敗するだろう.さらに,内向き政策は,今回の脅威を退けるために人類が必要とする協働の精神も脅かすことになる.
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ボウルズ&カーリン「COVID-19物語で次にくる戦い」(VoxEU, 2020年4月10日)

[Samuel Bowles & Wendy Carlin, “The coming battle for the COVID-19 narrative,” VoxEU, April 10, 2020]

大恐慌や第二次世界大戦は,経済や公共政策についての考え方を変えた.同じく,COVID-19 パンデミックも(気候変動とならんで)同様だ.変わるのは,セミナーや政策シンクタンクの考え方だけではない.ふつうの人々が生計や将来について語る日常の言葉も変わることだろう.政策のさまざまな選択肢がなす政府 vs. 市場の尺度では,左寄りの〔政府重視の〕方向への移行が促されるだろう.だが,もっと重要なのは次の点だ――そうした政府 vs. 市場という一次元の尺度に選択肢を並べる時代錯誤なメニューに替わって,コンプライアンスと物質的な利益を超えた社会的な価値を用いたアプローチが取り込まれるかもしれない.
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