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ドレシェル&カレムリ=オズカン「雇用を守るため中小企業にマイナス税を支給せよ」

Thomas Drechsel, Sebnem Kalemli-Ozcan “Standard macro and credit policies cannot deal with global pandemic: A proposal for a negative SME taxVOXEU, March 24, 2020

新型コロナウイルス・パンデミックでは,経済を支援する強力な政策介入が必要だ。本稿では,中小企業に対する給与総額に基づくマイナスの定額税の費用とコストについての推定を示す。従業員500名未満の全ての企業の給与総額を3か月に渡ってまかなう政策により,アメリカの6,100万が恩恵を受けることができ,その費用はGDPの3%である。

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カムルル・アシュラフ、オデッド・ガロー「文化的同化、文化伝播、諸国民の富の起源」(2007年9月13日)

[Quamrul Ashraf, Oded Galor, “Cultural assimilation, cultural diffusion and the origin of the wealth of nations,” VoxEU 13 September 2007]

一千年前、アジアが先進地域であった。なぜ現在ではヨーロッパの方が豊かなのだろうか。アジアはヨーロッパに比べて地理的に文化伝播に対してあまり脆弱ではなく、それゆえ文化的により高い同化の程度やより低い文化伝播、より多くの社会特殊的人的資本の蓄積から恩恵を受けていた。これは農業の段階では強みであった。しかしながら、より高度の文化的な硬直性は新しい技術のパラダイムに適応する能力を減少させ、その結果工業化を遅らせた。

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サイモン・エベネット「汝の隣人を愛せよ:パンデミックにおける医療物資の輸出規制」

Simon Evenett “Sickening thy neighbour: Export restraints on medical supplies during a pandemicVOXEU, 19 March 2020

多くの国際サプライチェーンにおける中国の中心性から,世界の貿易フローに対する新型コロナウイルスの影響については大きな関心が払われている。さらに,貿易政策のやっかいな一面が今や明るみに出てきている。本稿では,24か国が最近になって医療物資に輸出規制を課したというGlobal Trade Alertによる発見の紹介と評価を行う。

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ロバート・バロー他「過去のインフルエンザ・パンデミックに照らした新型コロナウイルス危機」

Robert Barro, Jose Ursua, Joanna Weng ”Coronavirus meets the Great Influenza Pandemic”, VOXEU, 20 March 2020

新型コロナウイルスによる被害の最悪のシナリオとして妥当なものはどんなものだろうか。本稿では,1918年から1920年にかけてのインフルエンザ・パンデミックからの教訓を示す。43か国のデータから分かるのは,インフルエンザに関連する当時の死者数は3,900万人,世界人口の2%に及び,これを現在の人口に当てはめると1億5,000万人になる。第一次世界大戦による影響を取り除いた場合でも,GDP及び消費は平均的な国でそれぞれ6%と8%減少し,株式と短期国債による実質収益も有意に下落した。大規模な潜在的損失が人命と経済活動に見込まれることは,被害を抑えるための現在の政策を正当化するものであるが,そこには死者と失われる産出との間の困難なトレードオフが存在する。このトレードオフについて議論することが必要だが,これまでのところそうした議論がなされていないのだ。

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ボールドウィン & ディ=マウロ「コロナウイルス経済危機の軽減:序文」(2020年3月18日)

[Richard Baldwin and Beatrice Weder di Mauro, “Introduction,” in Mitigating the COVID Economic Crisis: Act Fast and Do Whatever It Takes. VoxEU, 2020]

訳者の註記: この記事は,VoxEU が出版した電子書籍『コロナウイルス経済危機の軽減:なすべきことは迅速になんでもすべし』の序文です.同書の PDF は,VoxEU のウェブサイトで無料で公開・配布されており,アカウントをつくれば誰でも閲覧できます.同書に収録されている論文を日本語で要約した文書は,こちらで利用できます(山形浩生さん作成)


2020年3月9日に,COVID-19 に関する我々の初の VoxEU/CEPR 電子書籍『コロナウイルス感染拡大時の経済学』を公開した〔序文の日本語訳〕.その後,世界は異様な様相を呈している.COVID-19 の感染事例と死者数は全世界で急増している.いまやヨーロッパはパンデミックの中心地となっている.そればかりか,合衆国も,巨大な人口(3億3000万人)をかかえている上に〔大統領や連邦政府に〕国の指導力が欠如しているために,次のパンデミック中心地となりつつある.株式市場の変動は激しく,1日に 5%〜10% も動いている.ときに値上がりはするものの,その変動の大半は下落だ.他の金融市場も同様に急激に変動している.ヨーロッパ諸国の政府は,他の状況下であれば行き過ぎに思われるだろう公衆衛生上のさまざまな封じ込め策を強制的に敷いている.合衆国では,〔大統領・連邦政府の〕指導力が空白ななかで,各地の都市や州どうしの連携も一貫性もなく,さまざまな封じ込め政策が広まっている.だが,なにもかもが不確実さを増しているわけではない.
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リチャード・ボールドウィン「新型コロナ暴動シナリオ:格差と感染の混合爆弾」

Richard Baldwin “The COVID-19 upheaval scenario: Inequality and pandemic make an explosive mixVOXEU, 15 March 2020

医療専門家の推測が示唆するところでは,アメリカの病院の収容能力はイタリアと同程度の新型コロナ症例の急増に対処するに足りていない。患者の選別をしなければならない状況にアメリカの病院が陥るのを避けることは,非常に多くのアメリカ人が医療へのアクセスに問題があり,数十年に及ぶ経済的低迷と格差の拡大に由来する激怒の兆候,幅広く銃が所有されていることを考えれば,とりわけ重要だ。そのためには,注意深すぎるほどに注意し,即時かつ大規模に社会的距離をとることが必要だ。

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アンナ・マリア・メイダ&ケヴィン・オルーク 「大きな政府とグローバリゼーション;政府と市場の補完的な関係」(2007年11月12日)

●Anna Maria Mayda and Kevin H. O’Rourke, “Big governments and globalisation are complementary“(VOX, November 12, 2007)


貿易の自由化は勝者と敗者を生み出すが、勝者は敗者が被る痛み以上の利得を手にする。政府は、勝者と敗者がお互いの利害得失を分かち合うメカニズム(勝者が敗者に補償するメカニズム)を前もって用意することを通じて、自由貿易に対する世間一般の支持を醸成するべきである。政府が前もって用意する補償メカニズムには、自由貿易に対する支持を醸成する力が備わっていることを示す証拠もあるのだ。

経済学者は、2世紀以上の長きにわたり、自由貿易の利点を説いて回っている。しかしながら、世間一般の大多数の人々は、今もなお、強硬な保護主義者のままである。1995年~1997年の期間に47カ国6万人以上の人々を対象にして、「自由貿易と、輸入規制の強化とのどちらを望みますか?」とのアンケートが実施されたが、回答者のうち約60%の人々が輸入規制の強化を選んだ1。中国やインドが将来的に経済大国の地位にまで上り詰めるようなことにでもなれば、ヨーロッパやアメリカで保護主義を支持する声は今以上にさらに広がることだろう。政府は、自由貿易に対する世間一般の恐れを和らげ得るような術を持ち合わせているだろうか? 保護主義を求める声をはねつけるか、それとも、保護主義を求める声に屈するか。政府は、そのうちのどちらかを選ぶしかないのだろうか?

グローバリゼーションに対して世間一般の人々が抱く主たる不満の一つは、貿易の自由化が進むのに伴って、経済的なリスク(economic insecurity)が高まる、という点にある。海外の生産者(あるいは、海外の労働者)との競争にさらされることにより、国内の労働者は、これまで以上にリスクが高くて(職を失うリスクが高くて)、予測が困難な(将来的な職の安定に対する予測が困難な)環境に置かれるようになるわけである。仮にグローバリゼーションが経済的なリスクを高めることになるとすれば、そのようなリスクに対する政府の対応の一つとして考え得るのは、予測されざる経済的なリスクに備えて、適当なセーフティーネットを整えること、つまりは、国内の労働者に対して、経済的なリスクに備えた一種の保険を提供する、ということになろう。ダニ・ロドリック(Dani Rodrik)の有名な論文2でも述べられているように、他国に対して開放的な国ほど(貿易の自由度が高い国ほど)、政府の規模が大きい傾向にある理由は、まさにこの点3に求められるのである。政府と市場は、互いに代替的な関係にあるのではない。その実、政府と市場は、補完的な関係にあるのである。自由貿易に対する政治的な支持を醸成する上で、政府のプログラムはきわめて重要な役割を果たすのだ。 [Read more…]

  1. 原注1;World Values Survey, 1995-1997. 以下のリンクを参照のこと。http://www.worldvaluessurvey.org/ []
  2. 原注2; Rodrik, D., 1998. “Why Do More Open Economies Have Bigger Governments?“, Journal of Political Economy 106, pp. 997-1032.(ワーキングペーパー版はこちら(pdf)) []
  3. 訳注;市場の開放が進むにつれて、国内の労働者が直面する経済的なリスクが高まることになり、このリスクの高まりに備える手段として、政府が提供する公的な保険への需要が増大する、ということ。 []

パオラ・ジュリアーノ&アントニオ・スピリンベルゴ 「経済危機の長期持続的な諸効果」(2009年9月25日)

●Paola Giuliano and Antonio Spilimbergo, “The long-lasting effects of the economic crisis”(VOX, September 25, 2009)


経済上の出来事(Economic events)は、長期にわたって持続する非経済的な諸効果を伴う可能性がある。本稿では、経済上の出来事だったり、その時々の経済状況だったりが、個々人の終生にわたる信念にいかなる影響を及ぼすかを調査した研究の成果を紹介する。人生で成功できるかどうかは、努力よりも運にかかっている。不況の最中に成育した若者は、そのように考える傾向にある。それだけではない。不況の最中に成育した若者は、政府による再分配政策を強く支持する傾向にある一方で、公的な制度に対してそれほど信頼を寄せない傾向にもあることが見出されている。現下の厳しい不況は、リスクを嫌うと同時に、政府による再分配を強く支持する新世代を育みつつあるのかもしれない。 

「経済学の世界に足を踏み入れるきっかけとなった理由は、2つあります。まず1つ目の理由は、『大恐慌の子』(child of the Great Depression)ということもあって、世界のあり方に並々ならぬ関心を持つようになったのです。当時の世の中で起きていた多くの問題の根本的な原因を探ると、そこには経済問題が横たわっていたのです。…
― ジェームズ・トービン(James Tobin), Conversations with Economists

 

大恐慌以来、最も深刻な経済危機から脱して、回復へと向かいつつある兆しが見え始めている。それに伴って、世間の関心もこれまでとは違った先へと移り行こうとしている。危機への即時的な対応策から、危機に備わる長期的な効果へと、世間の関心がシフトし始めているのだ。

過去の経済危機は、経済の構造だけではなく、政治のあり方だったり、現実経済に対する経済学者の「ものの見方」だったりに対しても、さらには、世間一般の人々の心理や信念に対しても、しぶとい痕跡を残すに至っている。例えば、1930年代の大恐慌は、政府に対して「マクロ経済の安定化」という新たな役割を付与する契機となったばかりではなく、アメリカの政治の世界を数十年にわたって支配することになる新たな政治連合(political alliance)の形成を促すきっかけともなった。さらには、ケインズ革命とマクロ経済学の誕生を誘発することにもなったのである。

現下の経済危機が経済の構造に対して及ぼす長期持続的な効果の詳細を把握するには、まだしばらく時間がかかるだろうが、IMFのチーフエコノミストであるブランシャール(Olivier Blanchard)も語っているように、「今回の経済危機は、我々の経済システムに対して、深い傷を刻み付けることになった。供給と需要のどちらの側面に対しても、今後何年にもわたって影響を及ぼし続けるだろう傷を刻み付けたのだ」(Blanchard 2009)。現下の経済危機は、その置き土産として、「経済システムに対する深い傷」ばかりではなく、いくつかの新たな問いも提起している。これから先、経済学者が必死になって取り組まねばならないだろう問いだ。すなわち、過去2年の間に金融システムで急速な勢いで進んだディスインターメディエーション(financial disintermediation)は、一時的な現象に終わらずに、経済システムの永続的な特徴となるだろうか? 「信用なき」(“creditless” )景気回復(銀行融資を含む「信用」の拡大を伴わない景気回復)は可能だろうか? 政府は、規制に対するアプローチを見直すべきだろうか? [Read more…]

ボールドウィン & ディ=マウロ「コロナウイルス感染拡大時の経済学:序文」(2020年3月6日)

[Richard Baldwin & Beatrice Weder di Mauro,”Economics in the time of COVID-19: A new eBook,” VoxEU, March 6, 2020]

新しいコロナウイルスは,古くもあり新しくもある.このパンデミックも通例どおり総需要と総供給の両方に対するショックとなっている.だが,今回は中国が発生地となりしかも最大の打撃を受けたこと,そして,それにともないサプライチェーンにさまざまな影響が生じたことは,新しい.このコラムでは,COVIC-19 の経済問題に関連する多様な話題について,指導的な経済学者たちが執筆した14編の論考を集めた Vox eBook の新著を紹介する.
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デュラント&ジュレロヴァ「政府に都合の悪いニュースは別のニュースでまぎらわそう:注意逸らしの政治学」

Ruben Durante, Milena Djourelova “The politics of distraction: Evidence from presidential executive ordersVoxEU, 17 November 2019  

政治家は,世論から厳しく見られるのを避けるため,異論の多い政策は戦略的にタイミングを見計らって発表していると疑われることがある。本稿では,アメリカの大統領令のタイミングの系統的な分析によって,そうした疑いは,少なくともアメリカ大統領令に限っては,正しいことを示す。大統領は大統領令,とくに世論の反発を生み出すとみらあれるものについてはメディアや世論の注意がそれるような重要なイベントとぶつかるように発出する傾向にある。

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