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Funke et al.「ポピュリズムのコスト:歴史からの証拠」(2021年2月16日)

[Manuel Funke, Moritz Schularick, Christoph Trebesch, “The cost of populism: Evidence from history,” VoxEU, February 16, 2021]

【概要】過去20年間でのポピュリズムの台頭を受けて,その原動力に関する研究が大いに行われてきた.だが,ポピュリズムの経済的・政治的な帰結については,それほどよく知られていない.本コラムでは,1900年までさかのぼるポピュリズムに関する包括的・国家横断的なデータベースを用いて,歴史的・長期的な視座を提示する.本稿では次の点を示す:(1) ポピュリズムには長い歴史があり,〔同じ国で〕連続して存続し続ける性質をもつ――ひとたびポピュリストに統治されると,その国では将来に別のポピュリストが権力を握る見込みがずっと大きくなる; (2) ポピュリスト体制は消費と産出が長期的に顕著に低下して経済的に高くつく; (2) ポピュリズムは政治に混乱をもたらし,不安定と制度の腐敗を促進する.本稿の分析からは,ポピュリズムが今後も存続することが示唆される.
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Margalit & Shayo 「金融市場は社会的価値観と政治的見解をどう変化させるのか」2021年1月31日

[追記:opitical_frogさんのからのアドバイスを受けて一部訳を変更しました。あと、タイトルもすこし変更。]

Yotam Margalit, Moses Shayo

2021年1月31日 原文

概要:

市場が参加者の価値観や政治的選好に与える影響は長い間論争の的となってきた。このコラムでは、金融市場への参加の効果を評価するために大規模なフィールド実験を用いた。英国全土のサンプルからなる参加者へ、6週間の間に株式や非金融資産に投資できるある程度の金額が無作為に与えられた。その結果は株式への投資が、個人の責任や成果、経済的成功における運の役割などの問題を含めた社会や経済に対する右傾化した見方につながることを示している。また市場へ友好的な政策や規制緩和への支持も高まっていた。

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Cagé et al.「英雄と悪漢:影響力ある有名人ネットワークがいかにして世界屈指の民主主義体制の崩壊と人種差別的かつ権威主義的国家の正当化に寄与したか」(2021年1月17日)

[Julia Cagé, Anna Dagorret, Pauline Grosjean, Saumitra Jha, “Heroes and villains: How networks of influential individuals helped destroy one of the world’s most durable democracies and legitimise a racist, authoritarian state,” VoxEU, January 17, 2021]

要旨

合衆国のキャピトルヒルで今月おきた出来事を彷彿とさせる重大局面が歴史上にはいくたびか起きている.そうした局面では,退役軍人や政治的英雄までもが国家に反抗する暴徒たちに加わっていた.このコラムでは,フランスにおける極右支持者やナチ協力者たちに関する新しい証拠を利用して,軍事的英雄などの影響力ある人々の外生的ネットワークによって民主的価値観がいかに損なわれうるかを示す.「オーバートンの窓」を広げてそれまで極めて不快だと思われていた考え方をまともなものに思わせるうえで,英雄たちは特別な立場にある.そうしたアイデンティティを共有する人々の社交ネットワークは,この影響を伝播し強化して,思想信条への傾倒を深め政治的立場を固くしバイアスの修正をいっそう難しくすることにつながりうる.

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エグザビア・ヴァイヴス 「スーパースター企業の登場:マクロ経済学において寡占を真剣に考える」(2021年1月20日)

(訳者注:コメントでの指摘を受けて、タイポを修正しました。)

Xavier Vives 2021年1月20日

Rise of the Superstar firms: Taking oligopoly seriously in macroeconomics

ビッグテック、そしてその他の「スーパースター企業」の支配によって、市場支配力が研究の分野においてもだけでなく、政治家達の問題としても戻ってきた。しかし、寡占市場はマクロ経済学や貿易モデルに導入されてはいるものの、それは主に産業分野の大きな「連続体」の中において、一企業が自身の分野においては市場支配力を持つが経済全体には影響を及ぼさないという設定によってである。このコラムは寡占がマクロ経済学のツールボックスに完全に組み込まれて然るべき時が来ていることを主張する。

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VoxEUアブストラクト「経済研究に最良のプログラミング言語はどれか:Juliaか,Matlabか,Pythonか,Rか」(2020年8月20日)

[Alvaro Aguirre & Jon Danielsson, “Which programming language is best for economic research: Julia, Matlab, Python or R?” VoxEU, August 20, 2020]

経済研究でとりわけ広く使われているプログラミング言語は,Julia, Matlab, Python, R だ.本コラムでは,3つの規準でこれらの言語を比較する:すなわち,利用できるライブラリの力,大規模データセットを取り扱う際にできることと速度,計算の負荷が大きいタスクでの速度と使いやすさ,この3点で比較する.R はよい選択肢ではあるものの,著者が一般的に推奨するのは Julia であり,著者が新規プロジェクトによく選ぶのもこの言語だ.

VoxEUアブストラクト 「連銀と量的緩和:投資を促進するもインフレは抑える」(2020年8月30日)

[Gregor Boehl, Gavin Goy, Felix Strobel, “The Federal Reserve and quantitative easing: A boost for investment, a burden on inflation,” VoxEU, August 30, 2020]

重要な役割をもちながらも,量的緩和として知られる資産大規模購入がマクロ経済に及ぼす効果については,いまなお議論が決着していない.本コラムでは,グローバル金融危機のさなかに連銀が実施した量的緩和プログラムがマクロ経済にもたらした効果を構造的に検討してえられた知見を述べる.一般的な共通見解どおり,研究結果からは,資産購入が借り入れ条件を大幅に容易にし新規投資を促したことがうかがえる.投資の増加は生産能力の拡大につながり,それがさらに企業の限界コストを低下させた.しかしながら,インフレ〔を年率 0.25% 抑制する〕効果もあった.

VoxEUアブストラクト「ドイツにおける非伝統的財政政策としての付加価値税減税」(2020年8月25日)

[Felix Montag, Alina Sagimuldina, Monika Schnitzer, “VAT reduction as unconventional fiscal policy in Germany: Fast but heterogeneous pass-through in the fuel market,” VoxEU, August 25, 2020]

アブストラクト
COVID-19パンデミックがもたらす各種の影響に対応すべく,6月3日にドイツ政府は前例のない経済刺激パッケージを公表した.その政策の1つは,2020年6月から12月のあいだ一時的に付加価値税率を引き下げるというものだった.この政策の狙いは,一時的に価格を引き下げてインフレ予想を引き上げることにより消費を刺激することにあった.本コラムでは,経済の主要部門1つをとりあげ,その転嫁率の推定値を提示する〔付加価値税の減税分のうちどれだけが実際の小売価格に反映されたかを推定したということ〕.我々の推定値では,小売り販売の燃料では転嫁が急速かつ相当なものではあったが不完全で,転嫁率は当該市場の競争の度合いによって異なっていることが示されている.

ヴィラ et al.「財政緊縮とナチ台頭」(VoxEU, 2020年8月16日)

[Gregori Galofré Vilà, Christopher Meissner, Martin McKee, David Stuckler, “Fiscal austerity and the rise of the Nazis,” VoxEU, August 16, 2020]

2007-2008年の金融危機で発生した債務への対策として,多くの西洋諸国は強い緊縮策を追求した.COVID-19 の経済刺激策パッケージののちにも,またこれを繰り返すかも知れない.このコラムでは,1930年代前半に,いかにして緊縮策が社会の苦境を悪化させ,政治的不安定を増す一因となり,やがてドイツにおけるナチ党の台頭の布石となったかをまとめる.本稿の主張は次のとおり――ワイマール政府で生じた社会の苦境に対して一貫した対策がなされなかったことで,不況は悪化し,これがドイツ有権者の急進化と二極化を進める一因となった.
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VoxEUアブストラクト「COVID-19 によって高等教育での格差が広がっている」(2020年8月9日)

[Esteban Aucejo, Jacob French, Paola Ugalde Araya, Basit Zafar, “COVID-19 is widening inequality in higher education,” VoxEU, August 9, 2020]

すでに1世代の学生たちが COVID-19 にどう影響を受けているのかを評価する新研究が登場してきている.本コラムでは,合衆国でも有数の規模の公立大学の学生たちを対象にした調査を用いて,新たな知見を示す.パンデミックは学生たちに幅広く混乱をもたらしているが,その混乱は低所得の学生たちほど大きくなっている.その主な要因は次の点にあるように思われる.すなわち,所得が低いほど,COVID-19 に金銭面で影響を受けやすく,しかも,ウイルスによる直接的な健康リスクをより懸念しがちとなっているのだ.

VoxEUアブストラクト:「マスクの義務的着用とその他の都市封鎖政策による合衆国における COVID-19 の感染拡大は減少した」(2020年7月15日)

[Victor Chernozhukov, Hiro Kasahara, Paul Schrimpf, “Mask mandates and other lockdown policies reduced the spread of COVID-19 in the US,” VoxEU, July 15, 2020]

COVID-19 に直面して,人々は合理的かつ自発的にリスク情報に対応して行動をとった.このため,封じ込め政策の効果を自発的対処の効果から区別しにくくなっている.このコラムでは,合衆国において義務的なマスク着用政策が COVID-19 の感染者数と死者数にどう影響したか検討する.もしも,合衆国において,2020年4月1日時点で,不特定多数と接触する事業者にマスクの着用をするようが全面的に義務づけられていたなら,6月初めの時点で死者数は 40% 近く少なくなっていただろう.封じ込め政策は,直接には感染率を減少させることによって,そして間接には人々の行動を制約することによって,COVID-19 の感染者数と死者数に多大な影響を及ぼした.その影響は,感染者数と死者数の増加率で実際に観察された変化のおよそ半分を占める.

(コラム全文(英語)はこちら.)