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マリア・ヴィクトリア・アナウアティ, セバスチャン・ガリアーニ, ラミーロ・ガルベス 「経済ジャーナル階層の違いによる引用パターンの差異」(2018年10月9日)

Maria Victoria Anauati, Sebastian Galiani, Ramiro Gálvez, “Differences in citation patterns across journal tiers in economics” , (VOX,  09 October 2018)


経済学では、ごく限られた一流ジャーナルにおける発表がかなり重視されている。だが、ジャーナルの評判は必ずしも引用パフォーマンスに即応しない。本稿では、ジャーナル階層が違うと引用パターンも大幅に異なり、そこから論文の総引用数および引用ライフサイクルの双方にも影響が出ている実態を記述してゆく。とはいえ本結果が示唆するところ、トップファイブの座を占めるジャーナルは重視され過ぎているようだ。

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ゼバスチアン・ドゥー, ホセ-ルイス・ペイドロ, ハンス-ヨアヒム・フォーツ 「銀行破綻はかくしてヒトラーに権力への道を敷いた: ドイツにおける金融危機と極右勢力, 1931-33」(2019年3月15日)

Sebastian Doerr, José-Luis Peydró, Hans-Joachim Voth, “How failing banks paved Hitler’s path to power: Financial crisis and right-wing extremism in Germany, 1931-33“, (VOX, 15 March 2019)

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フィリップ・アギオン et al.「イノベーション、不平等、社会的流動性」(2015年7月28日)

●Philippe Aghion, Ufuk Akcigit, Antonin Bergeaud, Richard Blundell, David Hemous “Innovation, income inequality, and social mobility” 28 July 2015

ここ数十年、特に先進国において、トップ所得格差は加速的に拡大し続けてきた。本コラムでは、イノベーションがトップ所得格差の拡大を説明しており、社会的流動性を強化することを主張する。特に、社会的流動性に対するイノベーションのポジティブな効果は新しいイノベーターによる。 [Read more…]

バウアー他「集団意思決定の暗黒面:外部の人間への敵意」

Michal Bauer, Jana Cahlíková, Dagmara Celik Katreniak, Julie Chytilová, Lubomír Cingl, Tomáš Želinský “The dark side of decision-making in groups: Nastiness to outsiders“, VOXEU, January 5, 2019

集団は個人よりもより利己的に行動し,それがその構成員の意思決定にも影響を与えるということについて経済的な合意がある。本稿では,単にある集団の構成員になるだけで私たちは外部に対してより反社会的になってしまうという社会心理学上の別の仮説を支持する,スロバキアとウガンダにおける実験から得られた新たな証拠について述べる。ある組織において,集団内部の結束は暗黒面ももたらしうるのだ。外部の人間への敵意を強化するという形で。 [Read more…]

ポール・クルーグマン「失墜した経済思想」(2017年9月22日)

Paul Krugman, Discredited Ideas (Video VOX, 22 September 2017)

金融危機とその後の状況は私たちが思ったように理解不可能なものだったでしょうか。この動画では、ポール・クルーグマンは私たちが学ぶことのできる四つの見解をあげています。この動画は2017年9月22日に開催された「金融危機から10年」と題されたカンファレンスで録画されたものです。1  [Read more…]

  1. 訳注:本訳はクルーグマンが実際に話しているものをもとにしており、動画の英語字幕とは必ずしも一致しません。 []

チャド・ジョーンズ「新しいアイデアについての新しいアイデア: ノーベル賞受賞者、ポール・ローマー」

●Chad Jones, “New ideas about new ideas: Paul Romer, Nobel laureate”(VoxEU, October 12, 2018)

ニューヨーク大学のポール・ローマー氏は、「技術革新を長期的マクロ経済分析に統合した功績により」、ウィリアム・ノードハウス氏と共同で2018年のノーベル経済学賞を受賞した。本コラムでは、彼の主要な洞察と経済成長の過程に関するわれわれの理解に対する彼らの広範囲にわたるインプリケーションについて解説する。

ポール・ローマー氏が1980年代初期に経済成長に関する研究を始めたとき、経済学者の間での従来の見解――たとえば大学院で教えられているモデル――は、生産性の成長は経済の残りのどんなものによっても影響され得ないものであった。ソロー(Solow 1956)のように、経済成長は外生であった。

ローマーは、技術進歩は経済的なインセンティブに反応する研究者や起業家、発明家による努力の結果であるということを強調して、内生的経済成長理論を発展させた。彼らの努力に影響を与えるいかなるもの――たとえば税政策や研究基金や教育――は、潜在的に長期的な経済の見通しに影響を与えうるのだ。

ローマーの非常に重要な貢献は、アイデアの経済性といかにして新しいアイデアの発見が経済成長の中心にあることを明確に理解していることである。彼の1990年の論文は分水嶺である。それは、ソローのノーベル賞受賞業績以降の成長に関する文献の中で最も重要な論文である。

その論文の歴史は魅力的である。ローマーは約10年間成長に関して研究を続けてきた。1983年の論文と1986年の論文は、成長論のトピックに取り組んでおり、知識とアイデアは成長にとって重要であると示唆している。もちろん、あるレベルでは、誰もがこれが真実であるに違いないことを誰もが知っていた(そして、以前の文献にもこれらを含むものはある)。

しかし、ローマーが未だ理解していなかったものであり、未だに完全に評価された研究がなかったのは、知識とアイデアは成長にとって重要であるということがいかにして実現されるのかに関する詳細な本質であった。彼がついに成長を深く理解した証拠の1つは、1990年の論文の最初の2つのセクションが、かつての暗い部屋を照らす照明スイッチとしての最低限必要な数学しかない文章でほぼ全てが非常に明快に書かれていているということである。

以下に主要な洞察を示す。アイデアは、何かをしたり作ったりするためのデザインや青写真であるが、非競合的であるという点で他のほとんどどんな財とも異なっている。古典的な経済学における標準的な財は競合的である。すなわち、高速道路を走行する人や特定の手術の技術を必要とする人や灌漑のための水の利用が多ければ多いほど、それらは行き渡らなくなる。この競争は、ほとんどの経済の中心にある希少性の根底にあり、厚生経済学の基本定理を生み出す。

対照的に、アイデアは非競合的である。ピタゴラスの定理やプログラミング言語であるJavaや最新のiPhoneのデザインを利用する人が増えれば増えるほど行き渡るアイデアが減る、ということはない。アイデアは利用によって使い尽くされることはなく、一旦発明されれば、いかなる人数であっても同時にあるアイデアを利用することは技術的に可能である。

一例として、ローマーのお気に入りの例である経口補水療法を考えてみよう。近年まで、途上国では何百万もの子供が下痢によって亡くなっていた。問題の一部は、子供たちが下痢を患っているのを見ている両親が液体を摂取させないようにすることである。脱水が始まり、子供は死ぬだろう。

経口補水療法は、数種類のミネラル、塩類、少量の砂糖を水に溶かして正しい比率で溶解させることで、子どもに水分を補給し、命を救う救命策である。このアイデアが発見されてから、そのアイデアは毎年何人もの子供を救うために使われえた。アイデア(化学式)が、より多くの人々が使用するにつれて次第に希少になるということはない。

アイデアの非競合性はどのように経済成長を説明しているのだろうか。鍵となるのは、非競合性が規模に対する収穫逓増を生じることである。標準的な再現性の議論は、生産の規模に対して収穫一定であることを根本的に正当化している。工場からのコンピュータの生産を倍増したい場合、実行可能な方法の一つは、通りの向こう同等の工場を建設し、その上で同等の労働者や材料などを運び込むことである。すなわち、工場をその通りに再現すればよいのである。このことは、競合性のある財を用いた生産は、少なくとも有用なベンチマークとして、収益が一定であるプロセスであることを意味している。

ローマーが強調したことは、アイデアの非競合性は、この再現性の議論の不可欠な部分であるということである。すなわち、企業は新しいコンピュータ工場が建設されるたびにコンピュータのアイデアを再考する必要はないのである。代わりに、同じアイデア――一連のコンピュータの作り方の詳細な手順――は、新しい工場で使用することも、実際には任意の数の工場で使用することも可能である。なぜなら、それは非競合的だからである。

競合的な投入物(工場、労働者、資材)には規模に関する収穫一定があるので、競合的な投入物とアイデアを同時に考えると規模に関する収穫逓増がある。すなわち、競合的な投入物とアイデアの質または量を二倍にすると、総生産は二倍以上になる。

ひとたびリターンを増やすと、成長は自然についてくる。一人当たりの生産量は、知識の総ストックに依存する。すなわち、知識ストックは経済のすべての人々の間で分割する必要はないのである。

このことをソローモデルにおける資本と対照してみよう。一台のコンピュータを追加すると、一人の労働者がより生産的になる。新たなアイデア――最初のスプレッドシートまたはワープロ用のコンピュータコード、またはインターネット自体を考えよ――を追加すると、いかなる数の労働者であってもより生産的になる。非競合性を伴って、一人当たり所得の成長は一人当たりのアイデアの成長ではなく集計的なアイデアの総ストックの成長に結びついている。

いかなるモデルであれ、人口増加が原因で、集計で成長するのは非常に容易である。ソローモデルでさえそうである。自動車産業の労働者が増えると、より多くの車が生産される。ソローにおいては、自動車労働者1人当たりの自動車需要が伸びる必要があるため、1人当たりの成長を維持できない。

しかし、このことはローマーの場合には当てはまらない。研究者が多ければ多いほどより多くのアイデアを生み出すが、このことは、非競合性のために誰しもをより幸せにする。25年であれ100年であれ1,000年であれ、歴史を通して、世界は、アイデアの蓄積とアイデアを生み出す人々の数の両方の成長によって特徴付けられている。ローマーの洞察によれば、これは長期的に指数関数的な成長を維持するものである。

最終的に、非競合性と結びついた収穫逓増は、外部性のない完全競争均衡は存在しないということを意味し、資源の配分を分散させることができない。代わりに、いくつかの出発が必要である。

ローマーは、新しいアイデアの発見に対する不完全な競争と外部性の両方が重要である可能性があると強調した。独占的競争は起業家がイノベーションするインセンティブとして効果を発揮する利益を提供する。そして、発明者と研究者は、のちに先人の洞察から恩恵を受ける。

経済成長に関する研究は、ローマーの貢献によって非常に影響を受けており、後に続くわれわれはみな、巨人の肩の上に立っている。知識のスピルオーバーに適切に報いることは難しいかもしれないが、今年のノーベル経済学賞は報酬を受けるには十分である。

参考文献

Romer, Paul M (1986), ‘Increasing Returns and Long-Run Growth’, Journal of Political Economy 94: 1002-37.

Romer, Paul M (1990), ‘Endogenous Technological Change’, Journal of Political Economy 98(5): S71-102.

Solow, Robert M (1956), ‘A Contribution to the Theory of Economic Growth’, Quarterly Journal of Economics 70(1): 65-94.

リチャード・トル「ノーベル経済学賞受賞者の師弟ネットワーク」

Richard Tol ”The professor-student network of Nobel laureates in economics”, VOXEU, April 29, 2018
[訳者注記:登場する学者は可能な限り原文では付されていないwikipediaの説明リンクを付けています。]

ノーベル記念経済学賞は,経済学の世界で最も栄誉あるものとなっている。本稿では,新たなデータを用いて経済学賞受賞者の学問的な系譜を図式化する。その結果は,受賞者たちはそれぞれ繋がりのない4つのグラフに落としこむことができ,新たな受賞者は過去の受賞者と密接に関係していることが多いことを示している。今後受賞する可能性があるとされる候補者たちのうち,半分以上は受賞者から教えを受けている。 [Read more…]

マリアンヌ・バートランド, マチルダ・ボンバルディーニ, レイモンド・フィスマン, フランチェスコ・トレッビ 「税を免除されたロビイング活動: 政治的な働き掛けの手段としてみた企業社会貢献」(2018年9月3日)

Marianne Bertrand, Matilde Bombardini, Raymond Fisman, Francesco Trebbi, “Tax-exempt lobbying: Corporate philanthropy as a tool for political influence“, (VOX, 03 September 2018)


特殊利害関係者は寄付を使って政治過程に働き掛ける。本稿が明らかにするところ、合衆国における社会貢献活動は、少なくとも部分的には、議員への働きかけに標準を合わせている。影響力の有る政治家がいる区ほど、また非営利団体のなかでもその役員に政治家がいるものほど、多くの寄付を受け取っているのである。これは問題をはらんでいる。PACをつうじた寄付やロビイングと異なり、慈善活動をとおした働き掛けは公衆が観察しにくいからだ。

ドナルド・トランプの就任は 「沼の汚水を抜く (drain the swamp)」 という彼の公約に一部を負っていた  他人に頼らなくともよいだけの財力をもつアウトサイダー候補である彼ならば、それまでワシントン政治を腐敗させてきた特殊利害関係者の働き掛けからも遮断されているのではないか。この点では、トランプもひとつの長い伝統を踏襲している。およそ政府なるものが現われてからというもの、それに腐敗せしものとのレッテルを張りつつ、我こそこの問題を清算する者なりと売り出す改革者は絶えないのである。

だが反汚職改革を試みる者は程なく直面することになる。特殊利害関係者は数多くの働き掛け手段を持っているという現実に。そのうち或る物は非合法だが (例えば近年ドイツとブラジルで主導的な政党・政治家を苦しめた運動資金スキャンダルなど)、全面的に透明とはいえないにせよ、全面的に合法ではあるような経路からも、政治家に揺さぶりをかけることはできるのだ: 合法的なキャンペーン献金、職を辞したのちに就く旨味のある勤め口やコンサルティング職の約束、友人や家族への優遇措置などだ。

働き掛けとしての社会貢献

政治における特殊利害関係者の制約に幾らかでも希望を持てるようにするには、政策への働き掛けを望んでいる者が意のままに操れる手段の全体をまず認めておくことが重要だ。本研究で我々が実証したのは、 なんとも皮肉なことに  企業の社会貢献活動が、少なくとも部分的には、議員への働き掛けに奉仕している可能性である。そうした働き掛けは、公益ではなく株主利益に奉仕するような法律や規制の獲得をめざすものと推察される。

企業は政治目的のため自己の慈善金を戦略的に出捐しているかもしれないとの所見を述べたのは、我々が初めてではない。2008年 New York Times に掲載された記事に、「お気に入り慈善活動への贈り物に議員達はご満足 (Gifts to Pet Charities Keep Lawmakers Happy)(Hernandez and Chen 2008) と題されたものがある。そこでは例えばジェネラル・ダイナミクス社やノースロップ・グラマン社といった防衛企業からペンシルヴァニア州のジョンズタウン交響楽団に送られた太っ腹な寄付について記載されているのだが、このオーケストラは偶然にもジョイス・マーサという女性をパトロンとしている。この人の夫はジョン・マーサ下院議員という、下院軍事委員会の一員だった人物。(繰り返されるクリントン財団の資金調達めぐる紛議は、これと同じ対価関係 (quid pro quo) が国レベルでも機能しているかもしれないことを示唆する。ヒラリー・クリントンの国務長官としての任期中、同財団には外国および外国組織から数百万ドル級の小切手がいくつも振り出されたのだった)

我々のフォーカスは合衆国の事例に置かれているが、以上はアメリカ独特の現象などとは間違ってもいえない。例えば英国では、反贈収賄法 (Anti-bribery Act) が英国企業に対し慈善活動への海外での寄付行為について警告を与えているが、それはこうした活動が潜在的に帯びうる政治的な対価関係に鑑みたものだ。またイスラエルの歴史で最も大きなスキャンダルのひとつにホーリーランド事件 (Holyland Case) というのがあるが、これにはエルサレム市長だったウリ・ルポリャンスキーの設立した (合法の) 慈善団体に対し、土地用途見直しの確保をめざして或る不動産デヴェロッパーがおこなった寄付が関わっていた。

慈善財団はPACの後を追う

我々が新たなワーキングペーパー (Bertrand et al. 2018) で示すのは、ジャーナリストやアクティビストがこれまで掘り起こしてきた幾つかの逸話が、じつのところ或るより一般的なパターンを体現するものであったこと、そしてこのパターンは政治的優遇措置をせがむために企業が自らの財団 (foundations) を使っていると考えれば最もうまく説明できることである。明らかになったのは、企業の慈善財団からの寄付が辿るパターンが、よりあからさまな形での政治的働き掛け  各社の政治活動委員会 (PAC: political action committee) 支出  にみられるパターンと著しく似通っていることだ。両者は同じ議会選挙区に流れ込む傾向があり、どちらも区からの合衆国議会議員が該当企業の事業利益にとって重要な委員会に着任している時に増加する。我々は政治家を企業財団の金と結び付けるより個人的な繋がりにも注目した。結果、議員が役員に就いている非営利団体ほど多くの企業財団の金を獲得する傾向があり、とりわけ該当政治家が当該事業と関連性の有る委員会に就任している場合にそれが殊更あてはまることが判明した。ざっと計算しただけでも、政治的動機からくる企業の慈善活動は一年あたり10億ドルを優に超えているようであり、従って企業PAC資金の規模を圧倒することが示唆される。

政権への働き掛けに、例えば選挙キャンペーン資金やロビイング活動などではなく、交響楽団への寄付をもちいる理由はなにか? 第一に、PAC寄付には半世紀近くも前から幾つも制限が設けられてきたのだが、慈善寄付については何ら制限が無い。それに加え、例えばゴールドマン・サックスPACが、ニューヨークからの合衆国議会議員シーン・マロニー (民主党ニューヨーク州) に2016年の議会期以降、幾ら渡したのかを調べることなどは、割合簡単なのだ。1970年代に議会を通過したルールのもと、この種の寄付はすべて公に開示されねばならないことになっている (同議員は10,000ドルを得ている)。だがゴールドマン・サックス財団からマロニー下院議員に渡った金銭の追跡には、もっと探偵的な仕事が関わってくる。最後に、PACの悪名は  – 〔ロビイストが群居する〕 Kストリートのことは措くとしても、少なくとも 〔一般的アメリカ人の象徴たる〕 メインストリートでは 知れ渡っているが、企業の社会貢献ならば、事業がコミュニティに親善感情を醸成しながら、しかも同時に政府契約の発注や規制画定を監督するかもしれない議員を喜ばせるなどということができてしまうのである。

企業の寄付と立法上の利害関係とのあいだの潜在的な繋がりを掘り起こすべく、我々はS&P 500Fortune 500のリストに掲載されている企業の財団が提供した助成金に注目した。これらリストは合衆国株式市場に上場している企業のうち最大規模のものから構成される。こうした助成金は納税申告書で開示しなければならなくなっているので、殆どの寄付を具体的な非営利団体とリンクさせることができた。つづいて非営利団体の詳細な地理的所在地を確定できた。ここまできてようやく、非営利団体を具体的な合衆国議会選挙区と関連付けることができた。(企業のPAC寄付に関する情報の獲得は数段容易である  作業は全てOpensecrets.orgで済ませることができる)

我々が示すところ、諸般の議会期をつらぬき、企業の財団からの助成金には、PAC資金の受領が多い区にシフトしてゆく傾向がみられる。これは、一部の慈善寄付が政治的動機からきていることを、少なくとも示唆している。

我々はさらにこれら両タイプの資金の動きを駆動している政治的考慮事項のなかには、同じものが幾つかあることも明らかにしている: 政治家が該当企業の事業の利害にとって重要な委員会に加入する場合 (ジョン・マーサの軍事委員会加入とノースロップ・グラマン社の関係を想起されたい。同委員会に対するロビイングに同企業は大金をかけている)、該当合衆国議会選挙区に対する企業財団とPAC資金のフローはともに増加している。同様にして、合衆国議会議員が職を辞する際には、該当区に流れ込む企業慈善金とPAC資金の両方に短期的な落ち込みがみられる。これは影響力の有る議員が新人に取って代わられる場面にあたる。

政治家の利害関係を個別慈善活動にリンク付ける別の方法として、政治家の年次財務情報開示から得た役員身分に関する情報も活用している。結果、政治家が役員に就いている場合、非営利団体は企業財団から助成金を受領する可能性が四倍以上も高くなることが示せた。これは該当非営利団体のある州およびその規模・部門に関するきめ細かな測定値を考慮したうえでのものである。合衆国議会議員が役員に就いている非営利団体ほどより多くの企業資金を獲得できるだろう理由には様々あるが、我々は 〈金銭の流れの増加の少なくとも一部は、政治的なものである〉 旨を示すエビデンスも提示している。ここでも再び、該当企業によるロビイングの対象とされることの多い委員会に該当政治家が就任している場合、財団はその政治家と繋がりのある非営利団体に寄付する可能性がより高くなることが判明したのだ。

企業にとっての政治家の重要性が、PAC寄付のほうとより強く繋がっている可能性はたしかにある。しかし企業慈善活動をとおして流れ込む金銭の総額と比べれば、PAC支出はまるで大人と子供である。例えば2014年合衆国議会選挙からの議会期では、年間PAC支出は46400万ドルだったが、対する年間企業寄付のほうはほぼ180億ドルにもなる。我々の計算が示すところ、多くの企業慈善活動の非政治的性格を考慮したあとでさえ、依然として政治的要素はPAC寄付を圧倒する可能性が非常に高い。

なぜ関心をもつべきなのか

では我々は、企業慈善活動と政治について何に関心をもつべきなのか? 或いはあなたはこんな風に考えてはいないだろうか。「どうでもよくない? 奴らは利益誘導をしているわけだけど、少なくともコミュニティの利益になるような仕方でやってるんだから」。

もしそうなら、我々は強く反対する。最も重要な点だが、PAC寄付やロビイングと異なり、慈善活動による働き掛けは公衆にとって (メディアと投票権者の両方をふくむ) 観察しにくい。個別の逸話群にもとづきつつ一つの筋に纏め上げるのにさえ多大な労力が必要だが、ロビイングやPACの記録ならばウェブブラウザを開くだけで見つかる。我々の見解では、これは合衆国法の精神にも反する。合衆国法は、合衆国税法に対する1954年のジョンソン修正条項のもとで、501(c)(3) 慈善団体 (企業財団など) は次のことができないと規定している:

[い]かなる公職候補者についてであれ、その人の為に (またはその人に反対して) なんらかの政治キャンペーンに参加または介入 (声明の公表または配布をふくむ) すること(USGPO 2012, sec 2522)

この種の規定を設けることには良い理由がある。501(c)(3) 団体は租税免除ステータスを持っているので、これら団体による政治活動への参加を野放しにすることは、政治的発言力を露わにする企業に対する納税者からの補助金に等しいのである。

ここで明確にしておきたいのだが、我々は世界の為に善行をなすべく利潤を支出する企業に反対している訳では勿論ない。また企業が善行をなすことで良い成果をだせるような局面の存在は、多くの場合、慶賀すべきでこそあれ、非難すべきものではない。企業が環境を保護し、貧者を援助し、自らの顧客を喜ばせ従業員をより幸福かつ生産的にするために生活賃金を支払うならば、それは事業と社会にとって究極のウィンウィンとなろう。

同様に我々は企業の社会貢献に対する制限などは決して提案しまい  それは非政治的な企業寄付を削減させてしまうばかりか、既に我々が強調したように、企業は別の経路をつうじた働き掛けへと金銭と活動をシフトさせるだけだろうから。働き掛けとしての慈善活動の実証をつうじて我々が望んでいるのは、一般的な言い方になるが政治における金銭の流れを追跡する必要を浮き彫りにすることである。利益誘導の規制を試みるにしても、企業が影響力を購う際に用い得る数多くの経路を考慮に入れたほうが良いだろう。

我々が、全員一致で、支持することがあるとすれば、それは企業を資金源とする活動にかかる開示の拡大である。これは投票権者が、政治家と民間企業の関係が容認可能なものか判断し、理想的にはさらに、公益に反するようなあらゆる便宜交換を避けるよう政治家に圧力をかけるうえで、参考になる更なる情報を提供するものである。

編集者注本稿は企業統治と金融規制に関するハーバードロースクールフォーラムにおける先頃の投稿から取ったものです。

参考文献

Avis, E, C Ferraz, F Finan, and C Varjão. (2017), “Money and politics: The effects of campaign spending limits on political competition and incumbency advantage”, NBER working paper 23508.

Bertrand, M, M Bombardini, R Fisman, and F Trebbi (2018), “Tax-Exempt Lobbying: Corporate Philanthropy as a Tool for Political Influence”, NBER working paper 24451.

Eggers, A C, and J Hainmueller (2009), “MPs for sale? Returns to office in postwar British politics”, American Political Science Review 103(4): 513-533.

Hernandez R, and D W Chen (2008), “Gifts to Pet Charities Keep Lawmakers Happy”, New York Times, 18 October.

USGPO (2012), Internal Revenue Code, US Government Publishing Office.

エリック・ヒルト, ウェンディ・ラーン 「所有者社会と投票行動」(2018年9月2日)

Eric Hilt, Wendy Rahn, “The ownership society and voting behavior“, (VOX, 02 September 2018)


政治評論家が論じてきたところ、金融資産の所有は家計によるビジネスフレンドリーな政党の支持を誘発するという。本稿では、自由国債 – 第一次世界大戦中に合衆国家計向けに大量販売された – の所有が、 1920年代の投票行動にどのような影響を及ぼしたかを分析してゆく。投票権者はこの国債価格の変動に対し、それが下落した際は現職者を咎め、国債価格が持ち返すとこれに報いるという対応をみせた。自由国債は、 1920年代に共和党の得票差に有意な貢献をしたものの、これが決め手となったわけではなかったようである。

過去半世紀は、アメリカ世帯によるファイナンスの在り方の変容が目撃された時代だった。 1962年にはアメリカ家計のたった 19%しか企業株式を所有していなかったのだが、 1992年までにこの率は37.4%にまで増加、そして 2007年までにはアメリカ家計の優に 65%もが株式所有者となっていた (Poterba and Samwick 1995, McCarthy 2015)。研究者も政治評論家もともに、アメリカ家計の財産的関心にみられる根本的変容は、アメリカ家計をして自らを投資階級と自己規定させるとともに、共和党の支持増化に貢献したと論じてきた (Duca and Saving 2008)。この理論はかなり影響力を持ってきたもので、社会保障の民営化 (privatise) を呼び掛ける、ブッシュ政権の2005年提案も部分的にはこれに触発されたのだった。また株式所有のさらなる拡張をつうじて、民間社会保障勘定が恒常的な共和党マジョリティの創出を後押ししてくれるのではないかとも期待されている (Conlan 2008)。

だが、金融資産の所有を拡大するような公共政策改革の政治効果は、そう単純ではないかもしれない。金融資産の所有は、それが本当に投票権者をして投資階級との自己規定をなさしめるとしても、同時にかれらを金融市場の変動に曝すものでもあるのだ。その様な変動に対応して、金融資産を所有する投票権者は、金融市場が不調の場合には現職者を咎め、高い収益に対してはかれらに報いるといった、回顧的投票行動 (retrospective voting behaviour) モデルと整合的なパターンを示すかもしれない。その様なモデルは、投票権者の選択は政権が現職者の任期中にどれほど良い業績を残したかに関する、バックワード-ルッキングな評価に駆動されると主張する (例: Achen and Bartels 2016, Healy et al. 2017)。ビジネスフレンドリーな政党への支持という単純なことではなく、金融資産の所有は、投票権者に現職者の就任期間中における金融市場パフォーマンスに注目させる誘因となるかもしれないのだ。

我々の最近の論文では、何千万ものアメリカ家計に国債を購入させる誘因となった、第一次世界大戦の自由国債キャンペーンについて、それがもたらした選挙面での帰結を研究している (Hilt and Rahn 2018)。これら自由国債キャンペーンにさきだつ時期、銀行口座以外になんらかの金融資産を保有するアメリカ人は比較的僅かだった。それにもかかわらず自由借款キャンペーンは、大規模に展開されるとともに、可能なかぎり広範囲な参加の誘引がめざされた。それは戦争遂行に対する世論的支持を強化する努力の一環として行われたのである。一般市民はこのキャンペーンに対し異常に高率の引受を以て応えた。そして 1919年までに、自由国債を所有するアメリカ家計の割合は、現代のアメリカ家計のうち株式を所有するものの割合よりも大きくなっていたと見込まれる。

「世界で最も安全な投資 (safest investment in the world)」 として販売された自由国債だったが、その価値はかなり移り気であることが明らかになった。 1919年後半、戦中戦後にみられた信用と物価の成長を制限しようとする努力を皮切りに、連邦準備制度は相当な金利引き上げを繰り返し敢行した。これが自由国債の価格の下落を惹起し、何百万ものアメリカ家計がキャピタルロスを被った。その後 1921年になって連邦準備制度が金利の引き下げを始めると、こちらは自由国債の増加を惹起した。こうした変動は、政府政策により金融資産の保有を誘発された投票権者が、そうした資産の価格の変動にどう対応するかについて検証する機会を与えてくれるものだ。

金融政策の変化に誘発されたヴォラティリティ

下に図示したのは、連邦準備制度の政策変化、そしてそれが自由国債所有者にもたらした帰結である。図 1は連邦準備の割引率を示す。同割引率は 1919年前半をとおして4%に維持されていたが、それは自由国債がその発行時に提示せざるをえなくなるだろう金利を低く抑えるためでもあった。その後、1919年後半から1920年前半になると、連邦準備制度は金利を劇的に引き上げ、割引率は 7%に上昇するが、1970年代になるまで、これほどの水準に至ることは二度となかった。

 割引率 (ニューヨーク連邦準備銀行)

第四自由国債は最も広く保有された自由国債だが、図2はその価格に何が起きたかを示している。これら自由国債の利回りが実勢利率に見合った水準にまで上昇するため、自由国債の価格は引受価格の約 85%にまで下落したうえ、1921年後半をとおしてそれに近い水準に留まった。

 価格 (第四自由借款)

自由国債保有者が獲得した累積リターンを図3に示す。価格低下に由来するキャピタルロスは、自由国債保有者が受領した4.25%の年間利息支払いを遥かに上回っていた。これは、1920年代中頃には自由国債所有者の受領した累積リターンが、名目でみても実質でみても、急激にマイナスになっていたことを意味する。

 累積リターン (第四自由借款)

1921年中頃、産出量の急激な縮減と物価水準の下落を受けた連邦準備制度は、金利緩和に着手した。実勢金利の下落は自由国債価格の回復、そしてその累積リターンの増加につながった。1924年までは、1919-21年に経験された損失の影響も強力なキャピタルゲインにより払拭されていた。

選挙での反動

我々は自由国債引受率に関する郡レベルのデータを活用し、以上の変動が大統領選挙の結果に及ぼした効果を調べた。なお、1920年代は共和党が大統領政治を支配していた時期で、ハーディング、クーリッジ、フーヴァーは、1920年・1924 年・1928年の一般投票・選挙人投票ともに相当の多数派票を勝ち取っている。さて結果だが、1908-1916年期の選挙における投票パターンと比較すると、自由借款の引受率が高い郡ほど1920年と1924年の選挙で反民主党に急速に転じていたことが明らかになった。そしてこれは1920年選挙にさきだつ時期の自由国債の減価 (民主党が大統領職を握っていた時期)、および1920 年代前半における自由国債の増価 (共和党大統領の政権下) に対する反応だったのである。これら結果が示唆するところ、自由国債キャンペーンは幾つかの意図せざる政治的帰結をもたらしたようだ – つまり戦争への支持を高めようとする努力が、その生みの親たる政党に対する選挙での反動に力添えすることになったのである。

無論、自由国債の引受は、歴史的な投票パターンに反映されていない未観測の郡-属性から影響を受けていたかもしれず、それが翻っては1920年代の投票行動に影響を与えていたこともありうる。この可能性に対処するため、我々は1918年インフルエンザ流行に関する地域毎の予測深刻度の測定値を、自由国債引受の操作変数として用いた。この流行の波で最も致命的だったのは 1918年10月に発生したものだったが、これは偶然にも自由借款キャンペーン第四弾と同時期に起きている。インフルエンザ流行の予測深刻度について我々が用いた尺度は、大規模軍事訓練キャンプからの郡の距離にもとづく。これら軍事訓練キャンプは合衆国の民間人口 (civilian population) 内部における流行の発生源である可能性が最も高いのだ。軍事訓練キャンプからの距離の大きさは、第四借款の引受と強く相関しているが、これはインフルエンザの流行自体と、流行拡大を抑制する活動の双方から、自由国債キャンペーンが阻害されたためだ。自由国債所有が民主党の得票率に及ぼした効果に関する我々の操作変数推定値は、郡の自由国債引受率が 1標準偏差上昇すると、大統領選挙における民主党の得票率が1920-32年期の平均で3.3%ポイントの減少につながっていたことを示す。

自由国債が選挙面でもたらした効果が決定的なものかを評価すべく、我々は同じ実証モデルを州レベルのデータを用いて推定した。我々は1920年大統領選挙にフォーカスしている。同選挙で民主党のジェームズ・コックスが勝ち取ったのはたった12州のみだったのに対し、ハーディングは 37州で、選挙人票の総数でみると127対404となっている。1920年大統領選挙での民主党得票率に関して州毎にみた反実仮想推定値が示すところ、自由国債が不在であったならば、民主党はさらに12州を勝ち取っていただろうが、それでもやはり選挙人投票で敗北することになっていたようだ。ここから、本分析において自由国債に帰属させた効果は、共和党の得票差に相当な寄与をしたものの、これが決め手となったとまではいえなさそうであることが覗われる。

結論

家計の所有する資産の構成はその政治行動に影響を与えうること、とはいえそれは必ずしも所有者社会の理論と整合的な形での影響ではないこと。本結果は以上を明朗に示すエビデンスである。我々の文脈に引き付けていえば、国債の所有によって、一般アメリカ家計のファイナンスは、金融市場の変化に対しより敏感になった。それは家計をして、資産価格低下期に就任していた現職者を拒絶し、また財政の安定性と国際価格の上昇をもたらしたと称する政治候補者を支持する方向に導いた。これは回顧的投票行動の 「個人指向的 (pocketbook)」 な見方と整合的である。

さらに本結果は、社会保障を民間勘定群からなる制度に転換しようとするブッシュ政権の 2005年提案が実行されていたとしても、その意図通りの政治的効果がえられなかったかもしれないことを示唆する。自分の社会保障給付を、諸般の金融資産に投資した勘定への貯蓄をつうじてファイナンスするよう誘導されていたのなら、投票権者は金融市場の変動にかなり敏感になったはずである。そうした場合、金融危機と結び付けられる2008年の急激な資産価格下落は、同年の大統領選挙において、共和党に対するこのうえなお強烈な反動に結実していただろうと考えても、不合理ではない。

参考文献

Achen, C H and L Bartels (2016),  Democracy for Realists: Why Elections Do Not Produce Responsive Government, Princeton University Press.

Conlan, T J (2008), “Federalism, the Bush Administration, and the evolution of American politics,” in Morgan and Davies (eds), The Federal Nation: Perspectives on American Federalism , Palgrave MacMillan, 11–25.

Duca, J V and J L Saving (2008), “Stock ownership and congressional elections: The political economy of the mutual fund revolution,” Economic Inquiry 46(3): 454–79.

Healy, A J, M Persson and E Snowberg (2017), “Digging into the pocketbook: Evidence on economic voting from income registry data matched to a voter survey,” American Political Science Review 111(4): 771–785.

Hilt, E and W Rahn (2018), “Financial asset ownership and political partisanship: Liberty Bonds and republican electoral success in the 1920s,” NBER Working paper 24719.

McCarthy, J (2015), “ Little change in the percentage of Americans who own stocks,” Gallup, 22 April.

Poterba, J and A Samwick (1995), “Stock ownership patterns, stock market fluctuations, and consumption,” Brookings Papers on Economic Activity 2: 295–3.

 

「OECD18ヶ国における中国からの輸入と国内雇用」(VOXEU, 2018年9月)

[Stefan Thewissen & Olaf van Vliet, “Chinese imports and domestic employment across 18 OECD countries,” VoxEU, September 6, 2018]

近年,保護主義が息を吹き返している.この背景にあるのは,輸入(とくに中国からの輸入)が国内雇用におよぼす影響への関心の高まりだ.本コラムでは,OECD18ヶ国の17部門で中国からの輸入と国内雇用への効果の関係を,多様な労働市場制度とともに考察する.これまでの研究結果から,中国からの輸入にさらされている部門ほど雇用が減少していることが示されている.とくに顕著なのが,低技能労働者の雇用減少だ.
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