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ジョセフ・ヒース「私に対するキャンセル・カルチャーについて:BIPOCとFIVMの詳細」(2021年6月10日)

More on BIPOC and FIVM
Posted by Joseph Heath on June 10, 2021 | Uncategorized

5月28日、グローブ&メイル紙に論説〔訳注:日本語の意訳・要約をここで読むことが可能〕を寄稿したが、それに対して生産的な議論もあれば、非生産的な議論や罵倒もいくつか寄せられた。(私は論説で、BIPOC1 という頭字語をカナダで使うことに疑問を呈した。簡単にまとめれば、BIPOCという頭字語は、アメリカでは多様性の重要な側面を捉えるのに十分な役割を果たしているかもしれないが、カナダではその役割を果たしていないと主張したのである) [Read more…]

  1. 訳注:Black(黒人)、Indigenous(先住民)、People of Color(有色人種)の頭文字を取って作られた頭字語。主にアメリカでマイノリティ集団がアイデンティティ・ポリティクスを行う際の手段として使われている用語である []

ラジブ・カーン「日本人の主なルーツは縄文人や弥生人ではないかもしれない:日本人は西暦以降に登場した」(2021年9月18日)

The Japanese As A Creation Of The Christian Era
POSTED ON SEPTEMBER 18, 2021 BY RAZIB KHAN

日本は、弥生人と縄文人の統合体であり、弥生人が優位になって列島に稲作をもたらした、というのがこのブログでも以前に言及した伝統的な解釈である。しかしサイエンス誌に掲載された新しい論文によるなら、もっと複雑かもしれない。

古代のゲノム解析は、日本人個体群に3つの起源があることを明らかにする。

先史時代の日本は、3000年かけて、狩猟採集から始まり、水田での稲作、そして国家の形成へと急速な変化を遂げた。列島の日本人個体群は、狩猟採集を行っていた縄文人と、農耕民の弥生人の二重の先祖を持つ、との仮説が長年受け入れられてきている。しかし、農耕民族の移動とそれに伴う、社会文化の変化がどのようにゲノム的影響を与えたのかは依然不明となっている。本研究は、農耕前と農耕後の12人の日本人をゲノム解析した報告である。我々の分析によると、縄文人は数千年にわたって約1000人の小さな有効個体群を維持していたが、海面上昇によって2万年~1万5千年前に日本は島国化し、大陸の個体群と深い途絶に至ったことが分かった。稲作は、北東アジアを祖先とする個体群の流入によって導入されている。意外なことに、古墳時代になってから東アジアにルーツを持つ祖先の流入を我々は明らかにした。ゲノム的な起源によると、日本人はこの3つのルーツを持つと裏付けることが可能であり、これは現代日本人の個体群の特徴付けに引き継がれている。

古墳時代は、西暦300年頃に始まっているが、この論文によるなら、西暦以降にアジア大陸から日本列島への大規模な移住があったことが示唆されている。これは朝鮮半島からの移住だっただろう。最初の農耕民である弥生人は、土着の縄文人と中国北東部からの個体群との強い類縁を持つ混血体であったと考えられる。

以下のグラフは、各年代の構成要素を表したものだ。縄文人を興味深くしているのが、上記での諸研究結果において、有効個体群の少なさと、古代北部ユーラシア人との深い繋がりを示していることにある。また、縄文人は、更新世まで遡ることができる北東アジア人からの分岐群であるとも推察できる。

いずれにせよ、論文の著者達は、弥生人の標本採集が脆弱であることを認めているので、追加研究が必要となっている。もし現在日本人のほとんどが、古墳時代にルーツを持つことが明らかになれば、我々の歴史認識は大きく見直されることになるだろう。日本は7世紀になって歴史に登場するが、非常に若い国家だったことになる。

関連のエントリ

毛深いアイヌ人は、アマテラスの子孫ではない
日本の起源…
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弥生人の2000年――日本人はガイコクジン!

ラジブ・カーン「ダン・アリエリーの終わり」(2021年8月17日)

The End For Dan Ariely
POSTED ON AUGUST 17, 2021 BY RAZIB KHAN

2000年代後半、ダン・アリエリーは巨大な存在だった。2008年の金融危機を受けて、異端派経済学と行動経済学が流行りだした時期だ。『予想通りの不合理:増補改定版』は非常に楽しく読ませてもらった。アリエリーは何年もメディアに引っ張りだこになっていたが、結局のところ行動経済学(“ナッジ”)の一時的流行は収まり、アリエリーもあまり耳にしなくなってしまった。

残念なことに、アリエリーが科学不正の中心にいるかもしれないことが判明した。私は、セクシー化した行動経済学に関心を払うのを止めてしまっている。再現性の危機がさらなる懐疑を招いていると思っているからだ。もっとも、他にも理由はあるだろうが。

関連エントリ:
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経済学がしでかしている愚行

スウ・マルケス「鉛を根絶する」(2021年5月20日)

Burying the lead
Words by Sue Márquez
20th May 2021
Issue 4

鉛中毒が、脳に損傷を与え犯罪の悪化をもたらすことは、何十年も前から研究者達には知られていたが、何百万人ものアメリカ人はいまだに鉛汚染された水を毎日飲んでいる。この問題を解決する方法を紹介する。

バイデン政権による新しいインフラ投資法案に関心が集まっている。関心のほとんどは、全米を高速鉄道で横断する計画や、高速ブロードバンドを全世帯に普及させる計画などだ。しかし、ほぼアメリカ全土で、水道管の交換に450億ドルを投じることは、あまり注目されていない。これは他の多くの法案に比べて派手さはない。しかし、アメリカ人の長期的な幸福、国の繁栄に最大の利益をもたらすのはこの法案だろう。

鉛汚染が健康に悪影響をもたらすことは、何十年も前から知られてきている。鉛汚染は人々のIQを低下させ、犯罪傾向を強めるとさえ指摘されている。しかし、鉛は、DDTやフロンガスのように、法律で禁止して日常生活から排除することはできない。鉛を取り除くのは何よりの差し迫った問題だ。そして、私たちは、ようやく解決できるかもしれない。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「ノルウェーは新しい東インド会社?」(2021年7月23日)

Is Norway the new East India Company?
Friday, July 23, 2021
Posted by Branko Milanovic

18世紀、イギリスに主導された東インド会社は、インドを段階的にほぼ全土支配した。東インド会社による支配は、インドからすれば災難であったが、会社の役員や株主の多くは巨額の富を手に入れている。役員や株主らは、この富を利用して、イギリスの政界、知識人階層、財界で重要な役割を果たした。アダム・スミスは東インド会社を徹底的に批判し、「国家による排他的な商業企業は、おそらく、あらゆる国家とって最悪の政府である」と述べた。東インド会社によるあまりに酷い略奪行為を目にしたイギリス政府は、ナポレオン戦争の最中に、ついにインド貿易の独占権を剥奪している。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「孤独のグルメ…超競争社会の中で」(2017年11月2日)

Dining alone…in a hyper-competitive world
Thursday, November 2, 2017
Posted by Branko Milanovic

ニューヨークでほぼ一人4年間暮らし、少なくとも400回は一人で夕食を食べてきたので、孤食について…そしてそれが私たちが住む世界について何を教えてくれるかに意見を述べる権利を私は有していると思う。 [Read more…]

「テッド・ノードハウスへのインタビュー:“脱成長”は気候変動への対策とならない」(2021年5月21日)

Interview: Ted Nordhaus on ecomodernism
Words by Nick Whitaker & Saloni Dattani
by Works in progress Issue 4, 20th May 2021

テクノロジーと環境は、友情関係にあるだろうか? それとも敵対してるだろうか? 本誌のニック・ウィテカーとサロニ・ダッターニが、ブレイクスルー・インスティチュートの所長であるテッド・ノードハウスと、気候政策、活動主義、環境現代主義(エコモダニスト)について幅広い議論を行った。

テッド・ノードハウスは、気候問題に対してテクノロジーによる解決を目指す環境政策シンクタンク、ブレイクスルー・インスティテュートの創設者兼エグゼクティブ・ディレクターであり、“Break Through : From the Death of Environmentalism to the Politics of Possibility(ブレークスルー:死亡した環境主義から可能性ある政治へ)”と“An Ecomodernist Manifesto(環境現代主義者によるマニフェスト)”の著書である。

――気候問題に取り組んでいる活動家達の中には、「脱経済成長」や「人口抑制」をハッキリと、あるいはそれとなく主張する人が多いように思えます。こういった活動家らは、何が正しくで、何が間違えていると思いますか? [Read more…]

ジョセフ・ヒース「100マイルストアまで78マイル運転する:地産地食、オーガニックフード等、左派の食への奇妙なこだわりについて。『啓蒙思想2.0』没原稿より」(2015年2月24日)

I drove 78 miles to the 100-mile store
Posted by Joseph Heath on February 24, 2015 | Uncategorized

〔訳注:「100マイルストア」とは、トロント郊外にあるスーパーマーケットである。店舗から100マイル以内で仕入れた食材の販売をコンセプトにしていることから、「100マイル」と名乗ってる。〕

エントリ名、カントリーソングの曲名になるかもしれない。私には、クリーモアにある100マイルストアで買い物するのが大好きな友人が沢山いる。100マイルストアは、ロウカヴァー〔訳注:地産地消を実践している人〕にとって天国のような場所だ。ご存じかと思うが、友人らは皆トロントに住んでいるので、〔都会在住で環境に悪い生活をしていると〕からかうのを私は酒の肴にしている。すると、友人らは、トロントの市街地から78マイル離れた100マイルストアまで車で出かける。まあ、78マイルは正確ではないが…。友人らは大抵、スキー等で田舎に行く時に、100マイルストアに立ち寄っている――なので、余分に10~20マイル運転しているわけだ。ここで重要なのが、100マイルストアに立ち寄れば、社会的な食料消費について本当に気にしないといけない最重要なルール――「最後の1マイル」の原理に違反していることだ。特に、二酸化炭素排出への影響を考慮した場合、「最後の1マイル」――つまり食品が、店舗から自宅までどう運ばれているかが、最重要問題となっている。食料の輸送チェーンにおいて、店舗から自宅までが非効率的な配送ルートとなっており、このルートによって大きな環境的負荷がかかっている(主な理由だが、食料が一括配送されなくなり、各家庭にバラバラに向かうことで、輸送の社会的コストが、最後の1マイルで急増するからだ)。グーロバルな規模での貿易は、輸送チェーンにおいて〔環境負荷では〕最も影響を与えていない。コンテナ船による輸送ルートを、他のルートと比較すれば、炭素排出量は輸送チェーン全体では極めてわずかである。

なんにせよ、私は友人らをからかってきたが、友人らは誰も私のことなど気にしていない。皆、100マイルストアのコンセプトや、地産地消の食べ物を気に入っている。友人らは、それっぽい感じにさせてくれるのを好いているだけなのだ。言い換えれば、友人らが本当に好きなのは、食生活にタブーを持つことにすぎないようなのだ。環境フットプリント(天然資源の消費量)を実際に計測しようとすれば、場をしらけさせるだけになってしまう。

以下は、『啓蒙思想2.0』のために執筆したが、最終版で割愛した内容だ。没にしたもののいくつかを、ブログで投稿すると約束していたので、今日はその第1回である。左派の反理性主義を扱ったチャプターからの没原稿となっている。左派は、(オーガニックに始まり、地産地食へと至る)食べ物に奇怪かつ強烈に執着して〔社会問題に〕対処しようとするが、私は常に若干の困惑を覚えてきたのを認めざるを得ない。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「『資本主義だけ残った』ギリシャ語版出版記念インタビュー」(2021年1月16日)

On “Capitalism, Alone”: On the occasion of Greek-language publication
Saturday, January 16, 2021
Posted by Branko Milanovic

〔訳注:インタビュー対象となっているミラノヴィッチの書籍“Capitalism, Alone”は、『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』〔西川美樹訳、みすず書房、2021年〕として邦訳出版されている〕

――あなたが言っているように、資本主義にオルタナティブが存在しないのなら、フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』について語ったのは正しかったのでしょうか?

完全に賛成してはいません。フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」では、世界中が「リベラル資本主義」で支配されることが想定されていました。これは、私たちの観察事実と違っているでしょう。それどころか、〔資本主義の〕政治組織には様々な形態があり、1つの形態だけが存在するわけではありません。私が「政治的資本主義」と呼んでいる資本主義(中国、ベトナム、シンガポールなどが代表です)は、非リベラルな政治形態の一例となっています。もっとも、資本主義が、地理的にも価値観の点でも現状において優位であることに、議論の余地はないでしょう。ただ、そういった議論はいかなる時でも歴史的見地における発達過程として把握すべきであり、歴史の「終着点」として捉えるべきではありません。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「『資本主義だけ残った』:フランス語版出版に際して、マリアンヌ紙によるインタビュー」(2020年9月11日)

My interview for “Marianne” as “C,A” is published in French
Friday, September 11, 2020
Posted by Branko Milanovic

1.エレファント・カーブが有名ですが、あなたのこれまでの研究によって、一般の人はグローバル化に伴う不平等の進化を見ることができるようになりました。「資本主義」を扱っている新刊『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』〔西川美樹訳、みすず書房、2021年〕は、過去の研究の延長線上にあるのでしょうか?

部分的にはそうですね。今回の本でも、間違いなく不平等について扱っています。(私は人生の大半を不平等の研究に費やしてきましたから)。ただ、エレファントカーブの根底にあった、グローバルな不平等は扱っていません。代わりに、米国のようなリベラル資本主義や、中国のような政治的資本主義といった、制度の観点に立っての「国内の不平等」と「上流階級の再生産」に関心を絞っています。

むろん、こういった国内不平等は、新著でも「グローバルな不平等」(第2章)の観点から扱っています。ただ、国内不平等は〔グローバル化によるものではなく国内の〕政治的な背景によって強く左右されると思いますね。私は、所得・富の不平等は、政治・経済制度の組織化の有り様から生じるだけではないと考えています。特に子どもたちに政治・経済制度での優位性を相続させる能力や、経済的支配への影響力を通して、〔不平等は逆に〕その政治的制度を維持する働きも持つと思うのです。リベラル資本主義でこの影響力が強く明示化されているのを私たちは見ることができます。経済的権力を行使してメディア権力を獲得し、次にそれを使って政治的権力を獲得するというよく見られる現象ですね。なぜ、ジェフ・ベゾスは『ワシントン・ポスト』のオーナーで、ドナルド・トランプはアメリカ大統領なのでしょう? ということです。

以上の理由から、この本の最後で、リベラル資本主義に対して提言を行う際に、3つだけの単純な政策提言に絞り込みました。「子供への遺産相続の制限(相続税の強化)」、「私立学校の役割の制限(公立学校をもっと良く、魅力的にする)」、「メディアや政治への金銭的影響の制限」です。 [Read more…]