経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

ブランコ・ミラノヴィッチ「戦前日本における結婚と社会:谷崎潤一郎『細雪』を読む」(2020年11月23日)

Marriage and society in the ante-bellum Japan
Posted by Branko Milanovic, Monday, November 23, 2020

谷崎潤一郎が、第二次大戦中に執筆した『細雪』三部作、私はこの小説を2度読んでいる。最初は10年以上前になるだろうか、2度目はパンデミック渦中の今。世界的な傑作小説の1つである。大阪・神戸の裕福な商家の一家が、少しづつ貧しくなっていく物語だ。4人姉妹の内、三女と四女の結婚を中心に描かれているが、さして何かが起こるわけではない。実際、ほとんど何も起こらない。姉妹が最終的に結婚するかどうかすら、さして重要ではない。ジェイン・オーステンの小説ではない。

卓越した技術で執筆されている小説であり、中盤まで、読者は登場人物達を、己の人生の渦中において面識があるように感じられるほど、見事なまでに描かれている。ヒロイン達の些細な行動でさえも、何が動機となっているか心中で十全に吟味できるるので、ゆったりしたペースの文体は、まったくもって退屈とならない。1930年代後半の日本の社会環境について学びながら、心理学についても学ぶことができる。二度と戻ってこない世界、そして谷崎がそれを知りつつ執筆していたのを考えれば、この本は、哀愁を帯びつつも、どこかノスタルジックだ。私達は、永遠に失われてしまった世界、その最後の蠢動を目の当たりにする。

しかし私は経済学者なので、文学的要素以外で、この本が明らかにしている、最も印象深い3つの要素について考察してみたい。「ジェンダー関係」「階級間のソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」「日本の“西欧化”」である。 [Read more…]

アントン・ハウズ「国家の作り方:中世イギリスに王として転生したあなたは、近代国家を作ることができるだろうか?」(2020年8月28日)

How to build a state
Words by Anton Howes, Works in progress, 28th August 2020

歴史を通じて、国家は、権力の維持に苦闘している。資金を調達したり、市民を統治するためには、民間の護衛管1 や〔民間人の〕用心棒に頼らざるをえなかったのだ。国家は、どのようにして今日の形態に移行したのだろう?

人は、政府が今日のような官僚制度をずっと昔から備えていたと簡単に想定してしまう。17世紀における〔特定利権者への〕独占権の広範な付与や、強大な権力を備えた領土保有貴族のような政治制度は、今より腐敗していた単なる時代遅れの異物のように見えているだろう。19世紀半ばになるまで、政府が医療や教育にほとんど関与していなかった事実は、人々の脳裏からは欠落してるか、我々の先祖達が(戦争に飢えた騎士階級や責任を負うべき貴族に)搾取されていた帰結に過ぎないと思われているだろう。

しかしながら、現代生活のあらゆる側面に公務員が関与している、今日の官僚国家は、比較的最近の発明である。官僚制度がなかった世界では、今と比較すれば国家は行使能力(state capacity)を欠いていたので、当時の君主が持っていた、今とは異なる政策手段を知るのが難しくなっている。

もしあなたが、西暦1500年のイギリスに国王として転生し、王座に就いたとしよう。 [Read more…]

  1. 訳注:主に近代国家以前に、国家によって限定的に権力を与えられた準官吏や民間人のこと []

ピーター・ターチン「ロシア革命の意義」(2017年11月7日)

The Significance of the Russian Revolution
November 07, 2017 by Peter Turchin

今日は、ロシア十月革命の百周年記念日だ。ボリシェヴィキによって率いられた、暫定政府への武装蜂起は、1917年11月6・7日(ユリウス暦では10月24・25日)に始まり、翌日夜の、冬宮1 への襲撃でクライマックスに達している。

十月革命は、まさに地球規模の意味を持つ出来事、『世界を揺るがした10日間』であった。まず、壊滅的な影響をロシアにもたらしている。1917年の2つの革命(二月革命と十月革命)は、血塗られた内戦であり、スターリンの独裁体制を確立させ、ロシア社会に甚大な犠牲を課した。犠牲は、人口動態的なものであり(何千万人もの人々が、殺害され、飢餓と病気で死亡し、労働収容所への収監と移住を強要されている)、文化的なものでもあった(例えば、ロシア正教への弾圧による帰結)。 [Read more…]

  1. 訳注:ウィンター・パレス、冬宮殿とも呼ばれる、ロシア皇帝が冬季に滞在していたネバ川沿いにあった宮殿。 []

ブランコ・ミラノヴィッチ「我々がドナルド・トランプから受けた恩恵」(2020年11月7日)

What we owe to Donald J Trump
Posted by Branko Milanovic Saturday, November 7, 2020

トランプが歴史と化そうとしている今、公表文献の多くで、彼の過去4年間の実績を元に、大統領職の評価が行われている。評価のほとんどは、アラ探しであり、仰々しいだけであり、飽き飽きするような内容だ。トランプは、「無神経」「人種差別」「外国人排斥」「傲慢」「非効率的」「無効率的」「無知」であるとの理由から罵倒されている。トランプを擁護する人のほとんども、同じ理由をもって擁護することになるだろう(擁護者の見解では、「外国人排斥」「人種差別」「傲慢」は、深刻な道徳的欠陥ではなく、美徳と見なされるかもしれない)。

私のトランプへの評価は、まったく異なる。まず最初に、私が思う、トランプが正しかったところを示そう。次に、トランプが与えてくれた教訓について示そう。 [Read more…]

ピーター・ターチン「2020年11月のアメリカ:アルファ・ケンタウリからの構造人口動態による観察」(2020年11月1日)

America in November 2020: a Structural-Demographic View from Alpha Centauri
November 01, 2020
by Peter Turchin

このブログの読者ならご存知のように、構造人口動態の理論家達は、革命や内戦の原因を2つに区分している。構造的な動向は、ゆっくりと形成され、かなり予測可能なものとなっている。そして、トリガーとなるイベントは、はるかに予測困難、あるいはほとんど予測不可能である。この見解に従えば、革命は地震や山火事のようなものだ。毛沢東がかつて書いている。
「1つの火花が大草原の火事を引き起こすことがある。火事に必要なのは燃料だ――つまりは枯れ草であり、枯れた植物が倒れて徐々に燃料として蓄積されていく」。
ただ、火事を起こすのに最初に必要なのは火花である――誰かが不注意に捨てるマッチや、空からの落雷などだ。

アメリカにおいて、社会のレジリエンス(回復力)を蝕む構造的な動向は、何十年にもかけて蓄積されてきている。これは10年前に明らかになっており(2010年の私の予測を参照)、ここ数年で誰の目にも明らかになっている。こういった構造的な力は、「大衆の窮乏化(収入の減少、平均寿命の低下、社会的悲観論と絶望の増大)」、「エリートの過剰生産と内輪での諍い」、「国家の破綻(国家債務の増大と国家機関への信頼の崩壊)」である。COVID-19のパンデミックは、このアメリカのシステムにさらなる大きな負荷を掛け、特に窮乏化を悪化させている。

〔トリガーとなるイベントは普通は予測できないのだが〕今回少し特異になっている。2020年にトリガーイベントが起こるのが、かなり予測可能となっているのだ。アメリカでは、4年ごとに大統領を選んでいる。「正常な」状況下においてさえ、支配者の交代は制度にストレスを与えるが、社会の脆弱性が高い状況下で支配者の交代が起こると、システムに致死的な打撃を与える可能性がある。前回、これが起こったのは1860年だ。結果、アメリカ南北戦争が起こり、多くの歴史家が「第二次アメリカ革命」と呼ぶイベントとなった。なぜ「革命」なのか? それは、古い社会秩序が転覆したからである。奴隷を所有していた南部の農園主が支配していた古い社会秩序は覆り、新たな支配階級は、北部の製造業・鉄鋼業・鉄道業・農業ビジネスに従事するエリートに取って代わることになった。当時、最大の断層は、奴隷を所有する南部と、自由労働の北部の間に線引かれていた。

今日だと、断層は、「赤のアメリカ」と「青のアメリカ」と呼ばれるものの間に引かれている。青いアメリカ人は、トランプとトランプが象徴するもの全てを憎み、恐れている。赤いアメリカ人は、バイデンが象徴するものを憎み、恐れている。どちらの側も、自分たちの側の候補を特に気に入っているわけではない、対立政党が自候補を嫌っていることを主たる理由に団結しているのである。この対立には地理的な要素(沿岸部と内陸部の対立)もあるが、1860年のように明確にはなっていない。また、2016年だと、オバマを支持した有権者の多くがトランプに転向しているが、今回だと共和党の政治家の多くがバイデンを支持しており、「赤」と「青」は、共和党と民主党に完全に一致していない。分裂は見解の相違に由来している。

念の為に言っておくが、このブログ(他の場所でも)での、私の分析はいついかなる時も、党派的なものではない。私はできる限り公平な立場に立つようにしている。なので、アルファ・ケンタウリからの観察者となって、「赤」と「青」、それぞれが、どのように感じているかまとめてみよう。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「何が懸かっているのだろう? アメリカの選挙を控えての短い記事」(2020年10月19日)

What’s at stake? A short text on US elections
Posted by Branko Milanovic Monday, October 19, 2020

[これは、『グローブ&メール』紙の依頼で書かれた、差し迫っているアメリカの選挙についての短い記事である。記事は、新聞社的にお気に召さなかったようで、文章の大幅な訂正を要請された。事実間違い、英語の訂正、言い回しの変更などの要請には私はいつも喜んで応じている。場合によっては、テキストの一部を削る要請すらも受け入れている(中国で翻訳出版された場合などだ)。しかしながら、内容の変更を受け入れることはありえない。よって、ここにオリジナルの文章を投稿する。]

来たるべきアメリカの大統領選には、いったい何が懸かっているのだろう? 一言に集約するなら“normalcy(正常化・常態化)”のように私には思える。しかしながら、この言葉を聞くと、私は非常に不安になる。私の世代の東欧人にとっては、「正常化」と聞けば、1968年のチェコスロバキアの“normalization(正常化)”の悪夢が蘇るのだ。当時、ソ連と(今日の呼称では)『連立パートナー』が、チェコスロバキアに侵攻し、プラハの春を鎮圧し悪政を復活させている。

不安になるには別の理由もある。トランプ以前のアメリカ合衆国は、望ましい状態にあったとは到底思えないのだ。いや、そもそもトランプを最高権力の座に押し上げたのは、まさにその「正常性」に他ならない。記憶を辿ってみるのは有益だ。ジョージ・W・ブッシュの下で、米国は中東を不安定化させる絶え間ない戦争を起こし、いくつかの推定に従うなら50万もの人々を殺害している。この大統領の下では、米国は大恐慌以来、最悪の経済危機を引き起こしている。次の大統領下では、米国は、経済危機の責任者達を救済し、リビアに混乱の種をまき、中産階級の衰退を座視している。

すると当時の「普通」とはいったい何だったのだろう? トランプ政権が、COVID-19の伝染に対してほとんど何もしなかったことで(座視しなければ〔助けられた〕)25万人近くのアメリカ人の死の一因になったという、並外れて無責任で無慈悲な対応をひとまず脇におけば、当時の「普通」と今とに、はたして違いがあるかどうか、議論の余地があるだろう。違いがあるとすれば、1つ目は、トランプが退陣すれば、政権と対峙した、ジャーナリスト、政治家、俳優、一個人、テレビプロデューサー、要はほぼ全国民との、絶え間なかった諍いに終止符が打たれるだろう。新政権は、権力を維持するために、アメリカ人を異なる集団で敵対させるような不毛な試みは止めるだろう。これは、権力の頂点からの公然とした人種差別的な振る舞いを終わらせもするだろう。不法移民がアメリカ国境を超えるのを阻止するために、壁を作るとのアイデアも新鮮味を失うことになるだろう。

外交問題では、中国との緊張は緩和されるだろう。トランプが悪化させた米中関係が尾を引くのは疑うまでもない。それでも、トランプは、COVID-19を、自身の権力から放逐させる中国の陰謀と見做しているような言動を示しており、これは桁外れに危険な行為だ。アメリカと中国の関係が、トランプ以前に戻ることはないだろうが、少なくとも2つの核保有国が戦争を始める危険性は軽減されるだろう。

しかしながら、「正常化」は、バイデン政権の無為無策によってもたらされるだけでない。「ポジティブ」な観点からは何がもたらされるのだろう? あまり楽観的にはなれない。これは、バイデンの精彩を欠いた半世紀のキャリアだけに原因があるわけではない。リベラルなエスタブリッシュメント(現状の中道派の民主党支持者と多数の共和支持者を共に含む)が、心地よく受け入れている物語にも原因がある。「トランプ以前は全てが素晴らしかった。トランプが登場して何もかもバラバラになってしまった」との物語だ。この物語は、(上記で述べたように)単に間違えているだけでは済まない。この物語は、〔政治的〕不作為を導くだろう。合衆国は、「富の分配」「エリート主義的な教育制度」「機能不全化した医療」「金権政治に支配された政治制度」「崩壊するインフラ」「中産階級の衰退」「制御が効いていない独占企業」に対して、大いなる変革を必要している。いったい誰が、これら一連の変革を行うのだろう? 新しいルーズベルトがよく引き合いに出されている。バイデンはその役割を担えるのだろうか? ルーズベルトの功績の多くが、戦争への精力的な取り組みと共に発達した「階級を跨いだ協力」、ほぼこれだけを要因にして確立されたことも無視できない。今は、戦時と同じような出来事は一切存在していない――そして、それをもたらすような戦争が起こらないことを願う。

よって、省察してみれば、次期政権に求められているのは「正常化」などではない。1980年のレーガンの当選以来の(逆の方向への)最大規模の政策変更である。アメリカはしばしば行幸に恵まれ、不可能に見える状況から抜け出す並々ならぬ能力で世界を驚かせてきた。トルーマンは軽薄だと思われていなかっただろうか? ケネディは経験不足だったのでは? ルーズベルトは上流階級の御曹司だったのでは? 問題の核心は、バイデンが世界を、そして自分自身をも驚かせられるかどうかにある。

マット・クランシー「都市はもはやイノベーションのインキュベーター(孵卵器)ではない」(2020年10月7日)

Cities aren’t the innovation incubators they used to be
Words by Matt Clancy, Works in progress, 7th October 2020

リモートワークは、長い間懐疑的に考えられてきており、パンデミックが終わってからもリモートワークが続くであろうことに、多くの人が疑問視している。しかしながら、ローカルワーク〔人と日常的に触れ合う労働形態〕の諸便益が既に減少していっているとしたらどうだろう?

今年に入って、多数主要テック企業、自社の業務の一部を永続的にリモートワークに移行すると発表した。COVID-19が業務に深刻な支障を与えたことの結果である。これに対して、コメンテーター評論家らは、技術労働者を全米に分散させてしまえば、アメリカの技術産業の支柱の一つを弱体化させる恐れがあると警告した。こういった議論は「知識労働者は互いに近くにいると、アイデアや知識の循環が近接促進されるため、イノベーションが加速される」との論拠に基づいている [Read more…]

ラジブ・カーン「アルメニア、アゼルバイジャン、トルコ、遺伝的差異」(2020年10月7日)

Armenia, Azerbaijan, Turkey, And Genetics
POSTED ON OCTOBER 7, 2020 BY RAZIB KHAN

最近、何人かに、アルメニア人とトルコ人の遺伝的差異について尋ねられた。以前この話題について書いたことがあるからだ。世相に無関心でないなら、読者はコーカサスで戦争が起こっているのを知っているはずだ。アルメニアとアゼルバイジャンは、数十年に渡って行ってきた紛争を再燃させており、付近の大国に自陣営に付くように選択を迫ることで他国を巻き込んでいる。周辺全てに至って不穏な状況だ。

 

アルメニア人は何者なのだろうか? そして、トルコ人とは? そして、アゼルバイジャン人とは?

アゼルバイジャン人は、西洋ではあまり知られていないが、〔現地では〕大きな揉め事を抱え込んでいる。イランのアゼルバイジャン州には、アゼルバイジャン共和国とほぼ同数のアゼルバイジャン人が住んでいる。そしてイラン国内のアゼルバイジャン人の総数は、独立を果たしているアゼルバイジャン本国の総数より多い。現イランの指導者の父親は、民族的にはアゼルバイジャン人である。アゼルバイジャン人はチュルク語族1 に分類されており、〔イラン国内のアゼルバイジャン人は〕伝統的にイランの軍部を支配してきた。この地域が〔アゼルバイジャン州がオスマン帝国によって統一され〕チュルク語族化される前は、アゼルバイジャン州は500年以上アルバニアと呼ばれていた。〔イラン国内のアゼルバイジャン人〕は母語はイラン語を使用しており、このイラン語はペルシャ語から派生している。

この地方に住んでいる民族は、皆近接しているので、遺伝的にかなり近似しているのは当たり前だ。とはいえ、遺伝的に大きな違いもある。

私のデータセットでは、アルメニア人の数人は、ロシア系遺伝子が混じっている(この数人は、アルメニア人と識別されたF1個体群の可能性が高い)。一方、アゼルバイジャン人で着目すべきは、トルコ人と同じように、東アジアへのシフトが少ないながらも顕著であることだ。これはほぼ間違いなくアゼルバイジャン人が、チュルク語族にルーツを持つ結果である。アゼルバイジャン人のルーツの大部分は、チュルク語族が形成される前にあるが、このルーツ内の少数のチュルク語族のルーツ要素は、東アジアにルーツを持つ遊牧民との同化と通して起こっている。

このチュルク語族のルーツ要素は、アルメニアの西部においても、同様に適用できる。以前の投稿で、私はトルコ民族の祖先の性質について論じているが、一般的に、非チェルク語族要素(東アジア系やトゥラン語族を含む)は、西のギリシャ系、東のアルメニアとクルド系といった初期のバリエーションパターンの反映であるとの説に私は強く同意している。

〔この地域に諸民族的は遺伝子的には強く近似していることは〕今日見られるような紛争が、同系性〔遺伝的ルーツ〕に関するものより、イデオロギーの影響が強いのを示している。アルメニア人は、彼らしか信仰していない東方異端派キリスト教徒だが、キリスト教徒ではある。また、アルメニア人は、古代のインド・ヨーロッパ語を使用し続けている。このことで、アルメニアは、西・東側双方のチェルク語族のイスラム教徒に挟まれており、対立することになっている。しかしながら、どの集団も、共通の祖先を深く共有している。

関連エントリ

アゼルバイジャン人がイランを作った!!!!!
レバノン、イスラエル、シリア、イラン…
デタラメを言うことを称賛して
イランにおける民族的差異
イラン人はアラブ人ではない…
イランとイラクの違いは文字だけではなない

  1. 訳注:トルコ共和国、ウズベキスタン、アフガニスタン、新疆ウイグル自治区等で使用されている、ウラルアルタイ語族の下位言語群。 []

ピーター・ターチン「社会科学者が戦争を研究しなければならない理由」(2012年3月18日)

Why Social Scientists Need to Study War
March 18, 2012
by Peter Turchin

一月ほど前、私はノックスビルでの社会進化論のワークショップに続けて行われた公開討論会に参加した。討論会で私は、ジェリー・サブロフと一緒に、「戦争は社会進化における創造的原動力である――戦争は、人類を村落の生活から巨大な国家での生活へと変貌させ、人類に都市や文明を築かせ、究極的には我々の生活に平和をもたらした」と主張した。尊敬すべき学僚である、ザンダー・ヴァン・デア・レーウとティム・ケーラーは、我々のこの命題に反論した。討論会の最後に、聴衆の投票があり、我々側は完全に敗北を喫した(我々の命題に賛成の投票は5%くらいだったと思う)。まあ、私は特に気にしていない。我々への反論が素晴らしいから聴衆は揺り動かされたわけでではなく、単に多くは「戦争に反対してます」との理由で投票したとハッキリと感じられたからだ。

私は最近、イーサン・コクランとアンドリュー・ガードナーが編集した “Evolutionary and Interpretive Archaeologies: A Dialogue(進化論と解釈考古学による対話)”を読んでいる。いろいろな意味で興味が尽きない本だが、私的に最も興味深かったのが、サイモン・ジェームズによる「暴力行為と戦争状態」についての論説だった。「子供や配偶者への殴打を禁ずること、死刑を廃止すること、軍国主義を忌避すること、これらは人間価値の普遍的な進歩の表れであると、ほとんどの人は同意するだろう」とジェームズは書いている。過去数十年においても、ほとんどの欧米人が経験する暴力の水準は著しく低下し、暴力は常軌を逸したものであると見なすのが当たり前になっている。暴力について論じること自体が不快なものとなっており、ジェームズが挑発的に指摘しているように、暴力についての論題は、ヴィクトリア朝英国におけるセックスと全く同じくらい文化的タブーになっている。 [Read more…]

リチャード・ヴァーグ「マネーサプライの急激な増加はインフレを引き起こさない」(2017年1月16日)

Rapid Money Supply Growth Does Not Cause Inflation
By Richard Vague

マネーサプライの急激な増加はインフレを引き起こさない
政府債務の急激な上昇、金利の低下、中央銀行バランスシートの急激な増加も同様である

マネタリストの理論は、1980年代からその後数十年間にかけて支配的な経済思想となった。マネタリストの理論では、マネーサプライの急上昇はインフレの原因になるとされている。しかしながら、この理論は、入手可能な証拠で実際に検証すると棄却される。1960年代以降の47カ国を対象に広範な調査を行った我々の調査によると、マネーサプライの急増加に引き続いての高インフレはほとんど観測されない。逆に、高インフレが勃発しても、先触れとしてのマネーサプライの急増加は高い頻度で観測されなかった。

本論文の目的は、これら最新の研究結果を提示することで、我々のデータ、手法、結論についてのフィードバックを求めるものである。 [Read more…]