経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

ブランコ・ミラノヴィッチ「ノルウェーは新しい東インド会社?」(2021年7月23日)

Is Norway the new East India Company?
Friday, July 23, 2021
Posted by Branko Milanovic

18世紀、イギリスに主導された東インド会社は、インドを段階的にほぼ全土支配した。東インド会社による支配は、インドからすれば災難であったが、会社の役員や株主の多くは巨額の富を手に入れている。役員や株主らは、この富を利用して、イギリスの政界、知識人階層、財界で重要な役割を果たした。アダム・スミスは東インド会社を徹底的に批判し、「国家による排他的な商業企業は、おそらく、あらゆる国家とって最悪の政府である」と述べた。東インド会社によるあまりに酷い略奪行為を目にしたイギリス政府は、ナポレオン戦争の最中に、ついにインド貿易の独占権を剥奪している。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「孤独のグルメ…超競争社会の中で」(2017年11月2日)

Dining alone…in a hyper-competitive world
Thursday, November 2, 2017
Posted by Branko Milanovic

ニューヨークでほぼ一人4年間暮らし、少なくとも400回は一人で夕食を食べてきたので、孤食について…そしてそれが私たちが住む世界について何を教えてくれるかに意見を述べる権利を私は有していると思う。 [Read more…]

「テッド・ノードハウスへのインタビュー:“脱成長”は気候変動への対策とならない」(2021年5月21日)

Interview: Ted Nordhaus on ecomodernism
Words by Nick Whitaker & Saloni Dattani
by Works in progress Issue 4, 20th May 2021

テクノロジーと環境は、友情関係にあるだろうか? それとも敵対してるだろうか? 本誌のニック・ウィテカーとサロニ・ダッターニが、ブレイクスルー・インスティチュートの所長であるテッド・ノードハウスと、気候政策、活動主義、環境現代主義(エコモダニスト)について幅広い議論を行った。

テッド・ノードハウスは、気候問題に対してテクノロジーによる解決を目指す環境政策シンクタンク、ブレイクスルー・インスティテュートの創設者兼エグゼクティブ・ディレクターであり、“Break Through : From the Death of Environmentalism to the Politics of Possibility(ブレークスルー:死亡した環境主義から可能性ある政治へ)”と“An Ecomodernist Manifesto(環境現代主義者によるマニフェスト)”の著書である。

――気候問題に取り組んでいる活動家達の中には、「脱経済成長」や「人口抑制」をハッキリと、あるいはそれとなく主張する人が多いように思えます。こういった活動家らは、何が正しくで、何が間違えていると思いますか? [Read more…]

ジョセフ・ヒース「100マイルストアまで78マイル運転する:地産地食、オーガニックフード等、左派の食への奇妙なこだわりについて。『啓蒙思想2.0』没原稿より」(2015年2月24日)

I drove 78 miles to the 100-mile store
Posted by Joseph Heath on February 24, 2015 | Uncategorized

〔訳注:「100マイルストア」とは、トロント郊外にあるスーパーマーケットである。店舗から100マイル以内で仕入れた食材の販売をコンセプトにしていることから、「100マイル」と名乗ってる。〕

エントリ名、カントリーソングの曲名になるかもしれない。私には、クリーモアにある100マイルストアで買い物するのが大好きな友人が沢山いる。100マイルストアは、ロウカヴァー〔訳注:地産地消を実践している人〕にとって天国のような場所だ。ご存じかと思うが、友人らは皆トロントに住んでいるので、〔都会在住で環境に悪い生活をしていると〕からかうのを私は酒の肴にしている。すると、友人らは、トロントの市街地から78マイル離れた100マイルストアまで車で出かける。まあ、78マイルは正確ではないが…。友人らは大抵、スキー等で田舎に行く時に、100マイルストアに立ち寄っている――なので、余分に10~20マイル運転しているわけだ。ここで重要なのが、100マイルストアに立ち寄れば、社会的な食料消費について本当に気にしないといけない最重要なルール――「最後の1マイル」の原理に違反していることだ。特に、二酸化炭素排出への影響を考慮した場合、「最後の1マイル」――つまり食品が、店舗から自宅までどう運ばれているかが、最重要問題となっている。食料の輸送チェーンにおいて、店舗から自宅までが非効率的な配送ルートとなっており、このルートによって大きな環境的負荷がかかっている(主な理由だが、食料が一括配送されなくなり、各家庭にバラバラに向かうことで、輸送の社会的コストが、最後の1マイルで急増するからだ)。グーロバルな規模での貿易は、輸送チェーンにおいて〔環境負荷では〕最も影響を与えていない。コンテナ船による輸送ルートを、他のルートと比較すれば、炭素排出量は輸送チェーン全体では極めてわずかである。

なんにせよ、私は友人らをからかってきたが、友人らは誰も私のことなど気にしていない。皆、100マイルストアのコンセプトや、地産地消の食べ物を気に入っている。友人らは、それっぽい感じにさせてくれるのを好いているだけなのだ。言い換えれば、友人らが本当に好きなのは、食生活にタブーを持つことにすぎないようなのだ。環境フットプリント(天然資源の消費量)を実際に計測しようとすれば、場をしらけさせるだけになってしまう。

以下は、『啓蒙思想2.0』のために執筆したが、最終版で割愛した内容だ。没にしたもののいくつかを、ブログで投稿すると約束していたので、今日はその第1回である。左派の反理性主義を扱ったチャプターからの没原稿となっている。左派は、(オーガニックに始まり、地産地食へと至る)食べ物に奇怪かつ強烈に執着して〔社会問題に〕対処しようとするが、私は常に若干の困惑を覚えてきたのを認めざるを得ない。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「『資本主義だけ残った』ギリシャ語版出版記念インタビュー」(2021年1月16日)

On “Capitalism, Alone”: On the occasion of Greek-language publication
Saturday, January 16, 2021
Posted by Branko Milanovic

〔訳注:インタビュー対象となっているミラノヴィッチの書籍“Capitalism, Alone”は、『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』〔西川美樹訳、みすず書房、2021年〕として邦訳出版されている〕

――あなたが言っているように、資本主義にオルタナティブが存在しないのなら、フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』について語ったのは正しかったのでしょうか?

完全に賛成してはいません。フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」では、世界中が「リベラル資本主義」で支配されることが想定されていました。これは、私たちの観察事実と違っているでしょう。それどころか、〔資本主義の〕政治組織には様々な形態があり、1つの形態だけが存在するわけではありません。私が「政治的資本主義」と呼んでいる資本主義(中国、ベトナム、シンガポールなどが代表です)は、非リベラルな政治形態の一例となっています。もっとも、資本主義が、地理的にも価値観の点でも現状において優位であることに、議論の余地はないでしょう。ただ、そういった議論はいかなる時でも歴史的見地における発達過程として把握すべきであり、歴史の「終着点」として捉えるべきではありません。 [Read more…]

ブランコ・ミラノヴィッチ「『資本主義だけ残った』:フランス語版出版に際して、マリアンヌ紙によるインタビュー」(2020年9月11日)

My interview for “Marianne” as “C,A” is published in French
Friday, September 11, 2020
Posted by Branko Milanovic

1.エレファント・カーブが有名ですが、あなたのこれまでの研究によって、一般の人はグローバル化に伴う不平等の進化を見ることができるようになりました。「資本主義」を扱っている新刊『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』〔西川美樹訳、みすず書房、2021年〕は、過去の研究の延長線上にあるのでしょうか?

部分的にはそうですね。今回の本でも、間違いなく不平等について扱っています。(私は人生の大半を不平等の研究に費やしてきましたから)。ただ、エレファントカーブの根底にあった、グローバルな不平等は扱っていません。代わりに、米国のようなリベラル資本主義や、中国のような政治的資本主義といった、制度の観点に立っての「国内の不平等」と「上流階級の再生産」に関心を絞っています。

むろん、こういった国内不平等は、新著でも「グローバルな不平等」(第2章)の観点から扱っています。ただ、国内不平等は〔グローバル化によるものではなく国内の〕政治的な背景によって強く左右されると思いますね。私は、所得・富の不平等は、政治・経済制度の組織化の有り様から生じるだけではないと考えています。特に子どもたちに政治・経済制度での優位性を相続させる能力や、経済的支配への影響力を通して、〔不平等は逆に〕その政治的制度を維持する働きも持つと思うのです。リベラル資本主義でこの影響力が強く明示化されているのを私たちは見ることができます。経済的権力を行使してメディア権力を獲得し、次にそれを使って政治的権力を獲得するというよく見られる現象ですね。なぜ、ジェフ・ベゾスは『ワシントン・ポスト』のオーナーで、ドナルド・トランプはアメリカ大統領なのでしょう? ということです。

以上の理由から、この本の最後で、リベラル資本主義に対して提言を行う際に、3つだけの単純な政策提言に絞り込みました。「子供への遺産相続の制限(相続税の強化)」、「私立学校の役割の制限(公立学校をもっと良く、魅力的にする)」、「メディアや政治への金銭的影響の制限」です。 [Read more…]

ピーター・ターチン「“食物連鎖の下層を食べること”の闇の側面」(2021年3月6日)

The dark side of “eating lower on the food chain”
March 06, 2021
by Peter Turchin

9年前、私は人生において最も重大な決断を下した――いわゆるパレオダイエット1 に切り替えたのだ(「パレオ」は、少し誤解を表現だと過去のエントリで説明している)。もし切り替えていなければ、アメリカの肥満統計の上昇に私は貢献していたに違いない。パレオダイエットに切り替えてから、半年も経たないうちに、体重が20ポンドも減り、平均値は今の体重に落ち着いた。もっとも、体重は実際にはさほど重要でない。よりもっと重要なのが、切り替えてからの数ヶ月後に、総体的な健康状態の劇的な改善を私が経験したことにある。今、私は10年前より気分が良い、(間違いなく)10歳老化したにも関わらずだ。

大きく変えたのが、食物連鎖の最上位のものを食べるようになったことだ。純粋な菜食ベースの食事において、タンパク質を接種する唯一の方法は、穀物や豆類、つまり小麦や豆を食べることである。しかし、これら食品の排除がまさに、私の健康の改善に繋がっている。レストランで食事を食べた時、(小麦を使用しないでくれとハッキリと懇願してるのにも関わらず)シェフがソースに製粉小麦を使用すれば、私は知らず知らずのうちに少量の小麦を食べてしまう。翌日になって、私は毒が盛られことに気付く。 [Read more…]

  1. 訳注:狩猟採集民に倣って、肉や野菜を中心に食べ、穀物をなるべく接種しない食事方法 []

ピーター・ターチン「ブルース・ブエノ・デ・メスキータは新たなるマキャヴェリである『独裁者のためのハンドブック』が駄本である理由:その1」(2018年6月4日)

The New Machiavelli
June 04, 2018 by Peter Turchin

私が長期的に関心をもっているものの1つに、指導者と追随者がどう制度化されるかの動態がある。大規模な社会や他の大きな人間集団(企業を含む)は、完全な平等主義にはなりえない。別のエントリで書いたように、人間は蟻ではない

協力を大規模に組織するには、指導者が必要だ。必然的にエリート(社会学的に中立な意味で「社会権力を掌中化する人口の極一部」)と平民(人口の残り)が出現する。大きな問題となっているのが、(程度の差はあれ)社会学の最も基礎的な法則の一つである寡頭政治の鉄則(簡単に言えば「権力の腐敗」)を、(一部)人間組織はいかにして回避、あるいは緩和するかだ。

なので、私はブルース・ブエノ・デ・メスキータとアラスター・スミスによる『独裁者のためのハンドブック:悪行がほとんどの場合に良い統治となる理由』を非常に期待して読んでみた。著者らとは大きな見解の相違があるような気はしていたが、同意できずとも、学びがあるのを楽しみにしていたのだ。

私の勘違いであった。この本は、理論的論拠でも、実証的論拠でも失敗、いや酷い失敗をしでかしている。あまりにも酷いので、私は書評しないことにした。ところが、この本は、非常に大きな成功を収めている。多くの部数が発行され、アマゾンで200以上のレビューを集めており、レビューのほとんどは熱烈に肯定的だ(5点満点で平均評価値は4.6点となっている)。また、CGP Greyでも非常に人気ある情報動画(600万以上のビュー)として影響を与えている。

なので、これが駄本である理由を説明するのが、私の公的義務ではないかと思う。 [Read more…]

ピーター・ターチン「主流派経済学によるとパンデミックでインフレになるらしい:ペストとインフレーション」(2017年4月6日)

The Black Death and Inflation
April 06, 2017
by Peter Turchin

マーク・コヤマのツイッターに誘導されて、スコット・サムナーのブログに辿り着いたが、そこで、異端派経済学が、伝統経済学の牙城American Economic Reviewを侵略しつつあることを私は知った。サムナーはノーベル賞受賞者のロバート・シラーの〔異端派的内容の〕論文を、猛烈に糾弾している。エイプリルフールの投稿なのに、サムナー、クソ真面目のようである。

以下、シラーの論文の要旨からの引用である:

人間の脳は、いかなる時も、経路依存的な行動を正当化するため、事実に基づいていようといまいと、好意的な「物語化」チューニングを行ってしまう。これは、支出や投資といった基礎的な行動ですらそうなのだ。物語化によって、〔人は〕活動を動機・関連付け、価値観や要求を深く感じ入るのである。物語が「バイラル化」すれば、経済的な影響を伴い、世界規模にまで広がっていく。

シラーの論文そのものは読んでいないのだが、シラーは、正当化経済学の関心があまりに狭くなっていて、テンプレ化してしまっているので、経済学の活動を感化できるなら感化して、〔学問〕領域の拡張を提起しているようだ。この件については、私もブログで喚起してきている(例えば、ここ〔本サイトでの翻訳版はここ〕)。興味深いのは、ノーベル賞学者であっても、〔このような喚起を行えば〕異端派の烙印から逃れられないことだろう。 [Read more…]

ピーター・ターチン「経済学は、不平等が(時に)なぜ減少するのか答えられない」(2015年11月1日)

Economics Can’t Answer Why Inequality (Sometimes) Declines
November 01, 2015 by Peter Turchin

9月、私はオーストリアのウィーンで開催された国際カンファレンス「持てる者と持たざる者:グローバル・ヒストリーにおける富と所得の不平等を探求する」に行ってきた。この会議については、前回のブログ・エントリで言及しているが、この会議で学んだことの1つが、「経済学者は、不平等が増加したり減少したりする理由を本当に分かっていないんだな。特に減少については」ということだ。

トマ・ピケティから取り掛かってみよう。『20世紀の資本』(いや“Das Kapital”と言うべきか?)は今や不平等を研究する学者の「バイブル」となっているからだ。 [Read more…]