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ダイアン・コイル 「経済学者よ、謙虚たれ」(2013年5月24日)/「体系の人」(2015年3月29日)

●Diane Coyle, “The humility of economists”(The Enlightened Economist, May 24, 2013)


間近に迫った講義の準備を進めている最中にふと手に取ったのはジェームズ・スコットの『Seeing Like A State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed』。1998年に出版された出色の一冊だ。

20世紀には数々の理想主義的な大規模実験が試みられた。旧ソ連における農業集団化やタンザニアにおけるウジャマー村構想(共同農場化)などがその例だが、本書ではかような実験が辿った破滅的な結末について詳しく取り上げられている。本書の結論部では数々の失敗(に終わった大規模実験の)例に共通するテーマが抉り出されている。いずれのケースでも未来(行く末)を取り巻く根本的な不確実性を看過するという過ちが犯されているというのだ。 [Read more…]

ダイアン・コイル 「ジェームズ・スコット(著)『Seeing Like A State』を再読して」(2015年9月6日)

●Diane Coyle, “On Seeing Like A State”(The Enlightened Economist, September 6, 2015)


ステファノ・ベルトロ(Stefano Bertolo;@sclopit)がツイッターで慨嘆している。

sclopit:別のニュース。政策の立案を担当する若手官僚の面々と数日ほど一緒に過ごす機会があったのだが、誰一人としてジェームズ・スコット(James Scott)のあの本(http://t.co/vX6k4IxxNE)のことを聞いたこともない様子。

早速本棚に手を伸ばして(「あの本」こと)『Seeing Like A State』にざっと目を通す。何がテーマとなっているかは副題からある程度窺い知れる。「人々の暮らしを良くしようとして企てられたある種のスキーム(計画)が失敗するに至ったのはいかにしてか?」。本書では理想主義的な(トップダウン型の)国家主導のスキーム(計画)の数々が詳細に取り上げられている。ニエレレ大統領による(タンザニアの)ウジャマー村構想、ル・コルビュジエの唱える理想都市を範としたブラジリアの都市計画――ジェイン・ジェイコブズが讃える(自生的な成長を遂げる)有機的な都市とは正反対の例――、そして旧ソ連における農業集団化などなど。


『Seeing Like a State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed』 (The Institution for Social and Policy Studies)

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ダイアン・コイル 「公共政策について学ぶ:推薦図書リスト」(2016年9月16日)

●Diane Coyle, “Public policy reading”(The Enlightened Economist, September 16, 2016)


ツイッター上でフレデリコ・モレ(Frederico Mollet)から次のようなやりがいのある挑戦状が届いた。「公共政策について学ぶために大学院の修士課程に進学したばかりの学生が大局を掴む上で役に立つお薦めの書籍を挙げよ」。以下に私なりのお薦めを掲げるとしよう。合計で10冊1。読みやすさ重視。経済学の観点から公共政策に切り込んでいる書籍、経済政策の(理論的な)根拠に探りを入れている書籍を中心に選んでいる。毎度のことだが、何か意見があるようならお知らせ願いたい。歓迎する。特に、著者が女性の書籍で何かお薦めがあればお教え願いたいところだ。以下に掲げた書籍の著者は男性ばかりなものでね。

上から三冊は「私のお気に入り」の座に長年君臨し続けている代物。誰もが是非とも一読すべきだと思う。

*『Seeing Like A State』(「国家による一元化」) by ジェームズ・スコット(James Scott)

*『Reinventing the Bazaar』(邦訳『市場を創る-バザールからネット取引まで』) by ジョン・マクミラン(John McMillan)

*『Micromotives and Macrobehavior』(邦訳『ミクロ動機とマクロ行動』) by トーマス・シェリング(Thomas Schelling)

*『Who Gets What and Why』(邦訳『Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット)-マッチメイキングとマーケットデザインの経済学』) by アルビン・ロス(Alvin Roth)

*『What Money Can’t Buy: The Moral Limits of Markets』(邦訳『それをお金で買いますか』) by マイケル・サンデル(Michael Sandel)

*『Economics Rules』(邦訳『エコノミクス・ルール-憂鬱な科学の功罪』) by ダニ・ロドリック(Dani Rodrik)

*『Madmen, Intellectuals, and Academic Scribblers: The Economic Engine of Political Change』(「狂人、知識人、三文文士:政治変化の背後に潜む経済的な原動力」) by エドワード・ロペス(Edward Lopez)&ウェイン・レイトン(Wayne Leighton)

*『Poor Economics』(邦訳『貧乏人の経済学-もういちど貧困問題を根っこから考える』) by エステル・デュフロ(Esther Duflo)&アビジット・バナジー(Abhijit Banerjee)

*『The Idea of Justice』(邦訳『正義のアイデア』) by アマルティア・セン(Amartya Sen)

*『Other People’s Money』(邦訳『金融に未来はあるか-ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実』) by ジョン・ケイ(John Kay)

*『Economic fables』(邦訳『ルービンシュタイン ゲーム理論の力』) by アリエル・ルービンシュタイン(Ariel Rubinstein)

*『The Blunders of Our Governments』(「われらが政府によるヘマの数々」) by アンソニー・キング(Anthony King)&アイバー・クルー(Ivor Crewe)(イギリスの例しか取り上げられていないが、非常に愉快な一冊であることは間違いない)



  1. 原注;・・・のつもりだったが、あれもこれもと考えているうちに少々オーバーしてしまった。 []

ダイアン・コイル 「『公共政策の経済学』を教えるとしたら」(2013年12月9日)

●Diane Coyle, “What can economics contribute to public policy?”(The Enlightened Economist, December 9, 2013)


大学で「公共政策の経済学」をテーマとする講義を受け持っているのだが、どんな内容をカバーするのがベストだろうかとずっと頭を悩ましている。世間を賑わす「ビッグ・イシュー」(大きな争点)に対する学生たちのごく自然な興味・関心を満足させつつ、経済学徒たる彼らを公共政策(ないしは政府の決定)に明るい「事情通の市民」(well-informed citizen)へと涵養するには、あるいは、公共政策の世界に飛び込んでも活躍できる職業人に育てるにはどんな内容を教えたらよいだろうか? それに加えて、これまでに色んな講演の機会(例えば、こちらこちら)を通じてあれこれ論じてきたところでもあるが、「経済分析(経済学)は公共政策に対していかなる寄与をなし得るか?」というさらにどでかい問題も背後には控えている。

公共政策をテーマとする経済学の講義でどんな内容が教えられているのかネットで講義のシラバスなり課題図書リストなりを調べてみると、公共財の理論だったり公共選択論だったり取引費用経済学/新制度派経済学だったりといった理論的な思考枠組みの説明に重点を置いている向き(第一のアプローチ)があるかと思うと、具体的なトピック――教育問題絡み(授業料、バウチャー制度など)、環境問題絡み(環境の経済評価など)、独禁法をはじめとした競争政策などなど――の解説に重点を置いている向き(第二のアプローチ)もあるようだ。具体的なトピックを論じる場合には個別の事情(文脈)を踏まえざるを得ず、それゆえ課題図書リストには各国の事情を取り上げた文献が名を連ねている。その他には、伝統的な財政学の流儀に則って租税や財政支出、福祉国家などなどについて論じるという向きもある(第三のアプローチ)。私が学部時代(はるか昔)に受けた講義がまさにこのやり方(伝統的な財政学の流儀)に則って教えられた。マスグレイブ夫妻の『Public Finance in Theory and Practice』(邦訳『マスグレイブ財政学-理論・制度・政治-』)が教科書として指定されていたものだ。公共政策について教えるといっても色合いの異なる様々なアプローチがあるようで実に興味深いところだ。 [Read more…]

ダイアン・コイル 「経済学のお薦めの教科書」(2015年3月5日)

●Diane Coyle, “Preparation for a public policy degree”(The Enlightened Economist, March 5, 2015)


昨日のことだが、次のようなメールを受け取った。「私は××大学の学部生です。・・・(略)・・・公共政策について学ぶために大学院の修士課程に進む予定なのですが、その準備としてミクロ経済学およびマクロ経済学のお薦めの入門教科書をお教えいただけないでしょうか?」

学部で経済学を学んだ経験があるかどうかで答えは変わってくるのだが、件のメールではそこのあたりについて詳らかにされていない。そこでとりあえず経済学についてはまったくの初心者だと想定した上でアドバイスすると、まずは一般向けの啓蒙書を手に取ってみることをお薦めする。個人的な好みでいうと、ミクロ経済学についてはティム・ハーフォードの『The Undercover Economist』(邦訳『まっとうな経済学』)、マクロ経済学については同じくハーフォードの『The Undercover Economist Strikes Back』。それが済んだらその次はCOREプロジェクト監修の(無料の)オンライン教科書である『The Economy』に進めばいいだろう。


『The Undercover Economist』

 


『The Undercover Economist Strikes Back: How to Run or Ruin an Economy』

その次の段階だが、学部レベルのマクロ経済学の教科書だと『Macroeconomics: Institutions, Instability and the Financial System』(by ウェンディ・カーリン&デヴィッド・ソスキス)がお薦め。つい最近になって出版されたばかりの一冊だが、今般の金融危機がマクロ経済学に突き付けた課題についてもカバーされている。(学部レベルの)ミクロ経済学の教科書についてはマクロ経済学の場合ほどパッとは選べないのだが、個人的なお気に入りはハル・ヴァリアンの『Intermediate Microeconomics』(邦訳『入門ミクロ経済学 [原著第9版]』)。新版(第9版)も出たばかりだ。対抗馬として最近出たばかりのピーター・ドーマン(Peter Dorman)の手になる二冊(ミクロ&マクロ)の教科書(『Microeconomics』/『Macroeconomics』)を挙げておこう。


『Macroeconomics: Institutions, Instability, and the Financial System』

 


『Intermediate Microeconomics: A Modern Approach』

「これは激しくお薦め」という一冊がある。アングリスト(Joshua Angrist)&ピシュケ(Jorn-steffen Pischke)のコンビの手になる『Mastering Metrics』がそれだ。説明も非常に明快。テクニカルな細かい話は極力差し控えられているし、不必要だと感じたら読み飛ばすことも可能だ。計量経済学をはじめとした実証分析にまつわる知識は公共政策の研究を進める上で重大な土台となるものなのだ。ちなみに、本書ではミクロ計量の話題に焦点が合わせられており、時系列分析だとかマクロ計量の方面はまったくカバーされていないのでその点は注意。


『Mastering ‘Metrics: The Path from Cause to Effect』

最後に私事になるが、学部で「公共政策の経済学」をテーマとする講義を受け持っている。講義で使うのに何かいい教科書はないかとずっと探しているのだが、こちらの思惑にばっちりはまるような候補は未だ見つけられないでいる。ルグラン&スミス&プロパーの『The Economics of Social Problems』の中には講義で使うのにかなり重宝する章もいくつかあるが、社会政策に重点が置かれ過ぎているきらいがある。ジョセフ・スティグリッツの『Economics of the Public Sector』(邦訳『スティグリッツ 公共経済学』)だとかチャールズ・ウィーランの『Introduction to Public Policy』だとかも非常に役に立つ。どちらも私の意には沿わないところもあるが、公共政策について学ぶ上で全貌を俯瞰するには格好の書とは言えるだろう。

私なりのお薦めはこんなところだ。何か他にお薦めがあればコメント欄でお知らせいただきたいと思う。

ダイアン・コイル 「『どこからはじめたらいい?』と悩む経済学初心者へのお薦め」(2013年8月22日)

●Diane Coyle, “Where to start learning about economics?”(The Enlightened Economist, August 22, 2013)


ツイッター経由(@alaninbelfastに感謝!)で知ったのだが、シテ科学産業博物館(@citedessciences)が経済学をテーマにした特別展(期間は1年間)を企画しているらしい。その絡みで「経済学について何も知らない初心者にもってこいの入門書はどれでしょう?」との質問が発せられている。

入門書の数は多い。あまりに多い。そのことを踏まえると、「一体どこからはじめたらいい?」というのは実にいい質問だと言えよう。個人的にはティム・ハーフォードの『The Undercover Economist』(邦訳『まっとうな経済学』)を強くお薦めする。この本ではミクロ経済学(個々人の選択や個々の企業の行動、個別の市場を対象とする分野)の分析道具を使ってごく日常の問題の解剖が試みられている。経済学嫌いだった我が(10代の)息子が読後に経済学者を志すきっかけとなった一冊ということも本書を推す大きな理由の一つ。ハーフォードの新作である『The Undercover Economist Strikes Back』ではマクロ経済学(一国全体の経済の動きを対象とする分野。GDPとかインフレーションとかいう話題が相手)がテーマとなっているが、私は未読。きっと素晴らしい出来に違いないとは思うが、マクロ経済学という分野はミクロ経済学に比べるといくらか発展途上なところがあるのよね。


『The Undercover Economist Strikes Back: How to Run or Ruin an Economy』

デイビッド・スミスの本はどれも説明が明快で読みやすい。彼の代表作の一つである『Free Lunch』の新版も出たみたいね。ジョン・ケイの本もお薦め。彼の本では市場やビジネスに深く切り込まれているが、まずは『The Truth About Markets』(邦訳『市場の真実-「見えざる手」の謎を解く』)とか『Everlasting Lightbulbs』あたりから手を付けるといいだろう。ジョージ・バックリー&スミート・デサイの二人の手になる『What You Need to Know About Economics』も個人的に大好きな一冊だ。拙著で恐縮だが、『The Soulful Science』(邦訳『ソウルフルな経済学』)もお薦めせねばなるまい。本書では経済学の最先端の動向――行動経済学をはじめとしたエキサイティングな新展開――について詳しく扱われている。経済思想史の分野の古典と言えばハイルブローナーの『The Worldly Philosophers』(邦訳『入門経済思想史:世俗の思想家たち』)だが、一般読者や初心者が経済思想史を学ぶのであれば今でもやはり本書から入るのがベストなようだ。


『The Soulful Science: What Economists Really Do and Why It Matters (Revised Edition)』

tutor2u社のジェフ・ライリーが作成している経済学方面の推薦図書リストはこちら。入門レベルの本だったり最近出たばかりだったり読みやすい本だったりが多数列挙されている。学生や初心者は得るところがあるだろう。

経済学初心者にどんな本がお薦めされているかネットで調べてみた範囲では、私のこれまでの紹介とかなり被るようだ。例えば、キングスミード・スクールがA/ASレベル課程で学ぶ学生向けに用意しているこちらの推薦図書リスト(pdf)なんかがそう。ただし、このリストでは経済学への関心が相当強い(大学への進学を目指す)学生向けに代表的な教科書もあわせて紹介されている1。最後になるが、経済学を学ぶ上で大いに役立つネット教材(本じゃないけれど)も紹介しておこう。MRUniversityがそれだ。素晴らしい教材がたくさん揃っている。

  1. 訳注;どうやら内容が見直されたようでリストの最新版では教科書の紹介はなされていない。 []

ダイアン・コイル 「若き経済学徒へのアドバイス」(2013年3月8日)

●Diane Coyle, “Advice to young economists”(The Enlightened Economist, March 8, 2013)


本日は(オックスフォード近辺に位置する)ゴスフォード・ヒル・スクールのシックスフォーム課程で(大学への進学を目指して)勉学に励む学生を相手に講演を行ってきた。講演のタイトルは「経済学者になろうとは思いもよらなかった」(ロバート・ペストン氏が企画した見上げたプロジェクト(Speakers for Schools)の一環としてお呼ばれしたのである)。

将来の職業選択に思いを馳せる若者が相手ということで私のこれまでのキャリアを振り返ることに主眼を置かせてもらい、私の家族が歩んだ歴史と1935年――私の父親が働き出した年。当時の父親の年齢は14歳――から現在までの間にイギリス経済に生じた構造変化とを絡めるかたちで経済学者という職業の内実について語らせてもらった。以下の写真は私の父親が一番初めに就職した工場で撮影されたもの。前列の一番右端に映っているのが私の父親だ。兵役で一時職場を離れることはあったものの、職業人生の大半をこの工場で過ごした。1970年代後半に工場が閉鎖された関係で職を失うことになったが、その後は運良く検針員の職にありつけたのだった。

学生諸君は非常に礼儀正しくていい質問をたくさんしてくれた。その中の質問の一つが「大学で経済学を学びたいと考えているのですが、何かお薦めの本はありますか?」というもの。即興で以下の本(と動画)を薦めておいた。ティム・ハーフォードの『The Undercover Economist』(邦訳『まっとうな経済学』)(我が長男が経済学者を志すきっかけとなった一冊)。『まっとうな経済学』に限らずハーフォードの本なら何でもいい。「ケインズ vs ハイエク」のラップ対決動画。トーマス・シェリングの『Micromotives and Macrobehavior』(邦訳『ミクロ動機とマクロ行動』)。ハジュン・チャンの『23 Things They Don’t Tell You About Capitalism』(邦訳『世界経済を破綻させる23の嘘』)。デイビッド・スミスの本なら何でも(例えば、最新著の『Free Lunch』)。あの場では言い忘れてしまったのだが、アリエル・ルービンシュタインの『Economic Fables』(邦訳『ルービンシュタイン ゲーム理論の力』)も遅ればせながら付け加えさせてもらうとしよう。その他にも薦めておいたらよかったという本はたくさんあることだろう。ただし、私なら『Freakonomics』(邦訳『ヤバい経済学』)はその中には入れないだろう。個人的に受け狙いが過ぎるように感じるものでね。

ダイアン・コイル 「私がまだ経済学者の卵だったあの頃」(2010年12月5日)

●Diane Coyle, “When We Were Very Young”(The Enlightened Economist, December 5, 2010)


「我が息子――大学で哲学、政治、経済学を学ぶ20歳の学生――にお薦めの本はないだろうか?」と問いかけたのは数日前のこと〔拙訳はこちら〕だが(コメント欄に寄せられた回答はこちら)、そのように問いかけるのに伴って私が息子と同じ年頃の時はどんな本を読んでいたろうかとふと昔を振り返ってみたりもしたものだ。息子と同じく(オックスフォード大学の)PPE(哲学&政治&経済学)コースで学んでいた私が(息子と同じ)大学2年次に読んだ本の一部を抜粋すると以下のようになる。西暦でいうと1979~80年のことだ。

上に掲げた本の大半は大学の講義で渡されたリーディングリストに載っていたものだ。そのリストには本の一部の章であったり学術誌に掲載されている論文なんかも名を連ねている。こうして振り返ってみると、色んなジャンルがごちゃごちゃと入り混じっている感は否めないね。当時は推理小説(探偵小説)を大量に読み漁ったことも付け加えておこう。

リーディングリストつながりで毎年恒例の「今年のベスト本」もついでに紹介しておくとしよう。エコノミスト誌が選出した「今年(2010年度)のベスト本」の一覧はこちら、私が選んだ「今年(2010年度)のベスト本」の一覧はこちら

ダイアン・コイル 「物知りな経済学者の卵にお薦めの本」(2010年12月3日)

●Diane Coyle, “The Well-Read Young Economist”(The Enlightened Economist, December 3, 2010)


我が長男が(イギリスで大学進学希望者が学ぶ教育課程である)シックスフォーム課程で勉学に励んでいた時のことだ。ディナーパーティーや退屈な会議の合間に友人や知り合いと一緒に戯れようと(息子の役にも立つ)ちょっとしたゲームを考案したことがある。物知りな若者にお薦めの本を銘々挙げていくというのがそれだ。ジャンルは問わない。フィクションでも古典でもノンフィクションでも何でもいい。読んで楽しい本。一読の価値ありと思うのであれば冗長な内容であっても構わない。制約は一切なし。ゲームの評判はというと上々だったようだ。会議に出席していた数名の知り合いから理想的なリーディングリストを拵えるのがあまりにも楽しくて会議に集中できなかったと伝えられたほどだったのだ。

我が長男だが、今現在は大学2年生。大学では政治と哲学と経済学を学んでいる最中。中でも経済学に惹かれている模様。というわけで、先のゲームの内容をほんの少しだけ変えて今回はネット民の力を借りることにしようと思う。ちなみに、我が長男は一般向けの経済学書の類が大好き。とりわけ、ティム・ハーフォードの『The Undercover Economist』(邦訳『まっとうな経済学』)のファンだ。そんなわけで(長男が既に読了済みの可能性が高い)一般向けの経済学書は除外することにして、経済学者を志す若者にお薦めの本を挙げよと問われたらどう答えるだろうか?

なかなかの難問だ。というのも、現代経済学のコア(核心)の多くを知るには学術誌に掲載されている論文を紐解く必要があるし、経済学者というのは文才のある学究とは言えないからだ。だがしかし、「読みやすさ」と「経済学のコアとはいかなるものかを窺い知れる」という条件はどうしても外せない。かような条件を満たす本の中から私なりに思い付くお薦めを挙げると以下のようになるだろうか。

上のリストは今朝方ふと頭をよぎった思い付きをまとめたに過ぎない。他にも候補はたくさんあるに違いない・・・でしょ?

ダイアン・コイル 「大学入学を控えた我が子にお薦めの経済学本 ~経済学素人から経済学狂へ~」(2009年8月20日)

●Diane Coyle, “Pre-university reading lists”(The Enlightened Economist, August 20, 2009)


本日はイギリスのAレベル課程で学ぶ高校生諸君(我が息子もそのうちの一人)が希望する大学に入学できるかどうか(入学資格を得られるかどうか)の判定が下された一日だった。我が息子(天才坊や)はというと、まんまとやりおおせたようだ。希望する進学先であるジーザス・カレッジ(オックスフォード大学)のチューターの先生から少し前にリーディングリストを渡されていたのだが、早速そのリストの点検を始める興奮ぶりときている。

息子が渡されたリストの経済学の項目に目をやると、ベッグ&フィッシャー&ドーンブッシュの教科書が一番先頭を飾っている。他には数学(経済数学)の教科書が二冊。アンソーニ&ビッグスの『Mathematics for Economics and Finance』にイアン・ジャックスの『Mathematics for Economics and Business』。経済学を幅広い視野から学ぶための読み物としてウィリアム・バーバーの『History of Economic Thought』(邦訳『経済思想史入門』)とクリス・ヒューンの『Real World Economics』も名を連ねている。

大学で経済学を学ぶ前準備にもってこいの本。そんな本が私の蔵書の中なり我が家の外なりに見つかるだろうか? そんな疑問が頭をよぎる。ちなみに、我が息子はティム・ハーフォードの『Undercover Economist』(邦訳『まっとうな経済学』)は読み終えている。もちろん『Freakonomics』(邦訳『ヤバい経済学』)もだ(拙著の『Sex, Drugs and Economics』や『The Soulful Science』(邦訳『ソウルフルな経済学』)はどうかというと、鼻であしらわれる始末)。バーバー本の代わりに(ハイルブローナーの)『The Worldy Philosophers』(邦訳『入門経済思想史:世俗の思想家たち』)という手も悪くなかろうね。

私が30ウン年前にオックスフォード大学に入学する前に渡されたリーディングリストにはロイ・ハロッドの手になるケインズの伝記(邦訳『ケインズ伝』)が名を連ねていたと記憶している。今やスキデルスキーのケインズ伝に取って代わられた感があるが、残念ながら我が家にあるスキデルスキーのケインズ伝は3巻本のバージョンときている。18歳児には近寄りがたい代物間違い無しだ。しかしながら、スキデルスキーのケインズ伝は1冊にまとめられたバージョンもある。そっちなら悪くないだろう。多くの学者の間で味気ない文章が幅を利かせている昨今だが、そんな風潮に流されないための予防接種的な意味でケインズの手になるエッセイもいくつかリストに加えたいところ。例えば『Essays in Persuasion』(邦訳『説得論集』)とか。

やり過ぎは禁物。・・・ではあるが、高校で経済学を学んでこなかった経済学素人(である我が息子)を経済学狂に変えるにはどんな本を薦めたらいいだろうか? 何かいい本ある?