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ピーター・ターチン「イタリアは峠を超えた:公衆衛生政策はCOVID-19を止めるのにどのくらい効果的か? その2」(2020年4月1日)

Italy Turns the Corner
Posted by Peter Turchin on April 01, 2020

〔訳注:本エントリはコロナ危機を分析しているピーター・ターチンによる一連のエントリの第2回目のエントリである。分析の基礎なっているモデルは第1回目のエントリ「公衆衛生政策はCOVID-19を止めるのにどのくらい効果的か」で説明されている。最初のエントリを読んでない読者は、このエントリを読む前に第1回から順番で読むことを推奨する。〕

先週、私はイタリアにおけるCOVID-19の流行を分析したが、非常に気が滅入るような結果が出た。政府があらゆる政策を行ったにもかかわらず、その政策が変化をもたらしている兆候が見られなかったからだ。感染症の流行はまだ指数関数的に拡大しており、感染症がもたらした総死亡者数に悲惨な影響を及ぼしていた。

様々な国におけるCOVID-19の動態を追跡している私のアプローチは、専門的な公表文献で解説しており、専門的でないものとしてはブログの前回のエントリ「公衆衛生政策はCOVID-19を止めるのにどのくらい効果的か」で解説を行っている。

イタリアは、より最近のデータ(3月31日まで)で分析を再度行うことで、非常に楽観的な結果が得られる。今やイタリアは峠を超えたハッキリとした兆候が見られる。結果は以下のとおりである。

変化の最も目立つ兆候は、新規感染者の減少だ。あまり目立たないが、他のグラフの曲線も下降を開始している。この動態の変化は、主に病気の伝染率の低下によってもたらされている。

流行の開始時(2月初旬)では、感染率(beta)はほぼ0.4であり、これは感染者数が日々ほぼ40%増えていたことを意味している(しかしながら、この爆発的な上昇率は一般の人々や政策当事者には見えていなった。下記参照)。感染率(beta)の低下は非常に緩慢でゆっくりしたものだった(グラフの変曲点は3月13日だ)。これは、国民の行動を変えるたために、イタリア政府は勧告を行ったが、行動が変わるまで時間がかかったことが示唆されている。このことは、逸話的にも知られている。3月21日になっても、中国紅十字会の孫碩鵬副会長は「ここミラノでは(中略)、公共交通機関は運行を続け、人々は動き回り、ホテルではディナーやパーティーが続き、マスクもしていない。皆、なにを考えているのか理解できない」と話したと報じられている。さらに面白いのが(このような困難な時期にはユーモアが必要だ)、イタリアでは小さな都市の市長たちが、ロックダウンに逆らう市民に怒り狂っている動画が、最新のYoutubeでバズっている。疑いようもなく状況が深刻になったことは(今日の時点で13,000人の死者が出ている)やっとのことでイタリア人を自覚に至らせている。感染率は低下してきているーーゆっくりとだ、それでもイタリアは正しい方向に向かっている。

2番目のグラフ(右側)に注目してほしい。我々皆が知っていることが、定量的に示されている:初期検出率(認知された感染者の確率)は低位から始まり、その後上昇している。これが意味しているのは、報告された数値を単に使用するだけでは、流行の動態を正確に追跡できない、ということだ。検出率の上昇(最初に、流行の渦中にあると人々が幅広く認識したことが原因となり、引き続いて無症状の人を対象にした大規模な検査が行われた結果)で、新規患者数が増加することになり、感染率が人為的に上昇する。実際に何が起こっているのかを観察するためには、この検出率の変化を除去する必要がある。私のモデルはこの除去作業を行っている。

追加のデータが入り次第、分析結果の報告を続ける予定だ。実は、ニューヨークのデータを扱いたかったのだが、ジョンズ・ホプキンス大のチーム(データを纏めて更新してくれている彼らには大いに感謝している)がアメリカのデータの報告方法を変更したので、昨日は扱うことができなかった。

ピーター・ターチン「公衆衛生政策はCOVID-19を止めるのにどのくらい効果的か」(2020年3月23日)

[Peter Turchin, “How Effective Are Public Health Measures in Stopping Covid-19?“, Cliodynamica, March 23, 2020]

読者の多くが知っているように、私はウィーンにあるComplexity Science Hub (CSH)で研究グループのリーダーの地位を引き受けることになった(同時に引き続きコネチカット大学の教授でもあるので、今私はコネチカットにいる)。

1週間前、オーストリア政府はCSHにCOVID-19の流行に対応するより良い政策を策定する助けになるような研究を行うように依頼した。それに、私は政府が実際に科学者に手助けを求める(そして、そのような手助けをすぐに行うことができる研究機関をもっている)ことはとても素晴らしいことに思える。いずれにせよ、CSHは一旦他の研究をやめて、全ての研究能力を我々の社会が直面するコロナ危機に対処することに用いることにした。

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ピーター・ターチン「実質賃金の上昇が止まった理由Ⅱ:経済的影響要因の絡み合いを切り開く」(2013年8月7日)

Cutting through the Thicket of Economic Forces (Why Real Wages Stopped Growing II)

前回のブログのエントリ〔訳注:本サイトでの翻訳はここ〕で、私は、1970年代に実質賃金の上昇が止まった原因について問題提起を行った。経済学者や政治評論家によって、多くの解き明かしが論じられている(ただ、彼らは所得と所得不平等の関係性について焦点を絞る傾向がある)。例えばデビッド・レオンハルトはここ10年間の所得低迷の原因に、14の可能性をリストアップしている。ティモシー・モアも以前に一連の記事で1970年代以降の所得不平等の上昇の理由として似たたようなリストを挙げて論じている。

上記画像引用元

前回のブログのエントリで言ったように、よくあるアプローチは可能性がある要因をそれぞれ個別に検討するものだ。しかしながら、このアプローチでは、要因の相対的重要性を計量することができない。その上、社会は複雑な動態システムとなっており、様々な要因が非線形フィードバックの網を経由して相互に関連している。これを平易な言葉に翻訳するなら、あらゆる事象は他の全ての事象に影響を与える可能性がある、との意味だ。これは考慮せなばならない。賃金と所得の動態を理解するには、我々は最終的に経済学の領域を超える必要がある。

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ピーター・ターチン「繁栄の終焉:実質賃金は1970年代になぜ上昇が止まったのだろう?」(2013年4月4日)

The End of Prosperity: Why Did Real Wages Stop Growing in the 1970s?
Posted by Peter Turchin on April 04, 2013

1970年代に何かが起こっている。以下のグラフを見てみよう。

20世紀のほとんどの間――1970年代まで――アメリカにおいて労働者の賃金は、インフレよりも非常に速く成長した。1927年以降半世紀の間に、未熟練労働者の実質賃金は3.5倍、製造業労働者の賃金はインフレ調整したドル換算で4倍に上昇している。その後、折れたような低下が到来している。去年2012年だと、未熟練労働者と製造業労働者の実質賃金は1978年よりむしろ低下しているのだ。 [Read more…]