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ピーター・ターチン「フェミニストから見た人類の社会進化:デヴィッド・グレーバーさんかなり変ですよ その2」(2019年2月16日)

A Feminist Perspective on Human Social Evolution
February 16, 2019 by Peter Turchin

人類が進化する過程で、不平等の水準は劇的に変化してきている:祖先である類人猿の社会階層から、狩猟採集民の平等主義の小規模社会に、そして権力・地位・富の分配で大きな格差がある大規模な階層的社会へと。枢軸時代(紀元前800~200年)は、不平等の進化において、別の注目に値すべき変容――より大きな平等主義への移行の始まりがもたらされており、現在まで続いている。結果、不平等の軌跡はZのように見えるため、私はZ曲線と呼ぶことを以前から提唱している。

最近、デヴィッド・グレーバーとデヴィッド・ウェングローは、この人類史の物語の重要な部分に意義を申し立てた。

何世紀にもわたって、私達は社会的不平等の起源について単純なお話を自身に言い聞かせてきました。人類史において、ほとんどの期間、人は狩猟採集民として小さな平等主義の部族で暮らしていました。その後、農業が始まり、それに伴い私有財産権がもたらされました。続いて、都市が出現し、これは文明の出現に他なりません。

この物語には根本的な問題があります。真実ではないのです。

グレーバー&ウェングロー(G&W)への全般的な批判については、前回の私のエントリ〔本サイトでの翻訳版はここ〕を参照して欲しい。私は、G&Wの言うこと全てに反対しているわけではない(例えば、農耕の採用と大規模で複雑な社会の台頭との関係は、通常描かれている以上に複雑である。)しかし、彼らのエッセイの中心的な考え、「狩猟採集による平等主義的な更新世から、不平等な初期国家への移行はなかった」は間違えている。 [Read more…]

ピーター・ターチン「米国会議事堂襲撃」(2021年1月7日)

The Storming of the U.S. Capitol
January 07, 2021 by Peter Turchin

 マクロな社会ダイナミクスのレベルで見ると、昨日、2021年1月6日に起きたことは驚きではなかった。結局のところ、米国における不安定性の構造的圧力が高まり続けていることを、私自身のモデルが示していた。だがより目先のミクロレベルで見ると、数百人のデモ参加者が議事堂に突入し、神聖なホールで暴れ回るのを見るのは衝撃的だった。私はABCの放送を見ていたが、途中でジョージ・ステファノプロス1 が「ここはウクライナじゃない!」と叫んでいた。その通り、過去数年の間に我々は、ウクライナやアルメニア、タジキスタンなどの国々で、革命の群衆が政府の建物に突入する光景を見慣れてしまっていた……。だが似たようなことがワシントン特別区で、民主主義と法の支配の砦であるこの地で起きるとは? ヤバいよ、マジで。

 では次は? ミクロレベルと短期的な政治的暴力のダイナミクスは予測が困難だ。でももっと重要なのは、深い、構造的人口動態トレンドのレベルで起きるであろうこと。大衆の困窮化は数十年にわたって拡大している。新型コロナ以前から下り坂に入っていた平均余命の低下ような、大衆への圧力を示すマルサス的指標を見るのがいかに衝撃的であったかについて、私はこれまでも書いてきた。今や疫病はアメリカ人の大半の平均余命や雇用、所得といったウェルビーイングに対してボディブローを与えており、同様に主観的なウェルビーイングの評価もすべて下降線をたどっている。

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  1. クリントン政権の広報担当大統領補佐官 []

ピーター・ターチン「トランプと潜在大衆動員力――エリート過剰生産の果て」(2016年4月21日)

Donald Trump and Mass Mobilization Potential
April 21, 2016 by Peter Turchin

 前回の記事では、エリートの過剰生産がいかに政治的不安定性をもたらすかについて話をした。数が固定されている政治的地位を巡って多すぎるエリート志望者が競争することは、つまり地位と権力の追求に挫折する人数が大きく増えることを意味する。そのうちの何%かは過激化し、既存エリートを引きずり下ろして社会的秩序を転覆させるべく積極的に働く「対抗エリート」へと変貌する。

 とはいえ対抗エリートの数は少ない。彼らは優れた組織者であるがゆえに危険だが、彼らが社会秩序を覆そうと努力するためには、構造的人口動態(SD)理論の第2の構成要素――高い潜在大衆動員力、つまりMMP――が必要になる。MMPは非エリート、つまり所謂99%[訳注:最も裕福な1%以外の人々]が享受している(もしくはしていない)ウェルビーイングの動向にかかってくる。米国の経済学者リチャード・イースターリンと彼の生徒たちの研究が示しているように、重要なのはウェルビーイングの絶対水準ではなく、ある世代から次の世代にかけてそれがどのように変わったかだ。人々の中で(政治的暴力の源として)最も危険な年齢グループである20代の面々について考えよう。彼らは自分たちが達成した、あるいは達成できるであろう標準的な生活の質を、両親のそれと比較する。もし彼らの生活の質が低ければMMPは上昇し、逆なら低下する。

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ピーター・ターチン「エリート志望者ドナルド・トランプ――エリート過剰生産の落とし子」(2016年4月19日)

Donald Trump as an Elite Aspirant
April 19, 2016 by Peter Turchin

 昨日、ネッド・レスニコフが、先週の私へのインタビューに基づいた「近い将来の破滅について古代史が語ること」という記事を公開した。とてもいい記事だが、私が話したいくつかのことについて彼の文章には載っておらず、その点についてブログで膨らませようと思った。

 これらは全て構造的人口動態(structural-demographic, SD)理論に基づいている。我々自身のものも含む複雑な社会が、なぜ定期的に社会的政治的な不安定性の波を経験するのかを理解するうえで、これこそが現在使える最良の理論だ。この理論に最初に触れる読者は、SD理論を説明したいくつかのブログシリーズを集めた人気記事とシリーズのページをチェックしてほしい。

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ピーター・ターチン「エリート過剰生産とは――弁護士たちの二極化」(2013年11月10日)

 「エリートの過剰生産」、それが米社会で拡大する格差の行く末に関する議論に対して、私が吹き込もうとしている最も重要なアイデアだ。社会学的な定義を使うなら、エリートとは自らの手の内に権力を集めている人口の小さな一部分(典型的には1~2%)である。つまり彼らは権力者たちだ。また財産も権力の一形態であり、エリートは通常、トップレベルの資産保有者を含む。より一般化するなら、社会的権力には4つの源がある。経済的/金銭的、強制的/軍事的、行政的/政治的、そしてイデオロギー的/宗教的な権力だ(これについてはマイケル・マンの著作を参照)。

 エリートの過剰生産とは、権力の座を巡る競争相手の供給過剰と定義される。単に「既存」のエリート(実際の権力保有者)が多すぎることを意味するのではない点に注意を。権力は持っていないが、それを熱望している(構造的人口動態理論の業界用語では『エリート志望者』という)数多の挑戦者たちもそこには含まれる。

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ピーター・ターチン「“コネチカットの狂った預言者”」(2020年11月12日)

“The Mad Prophet of Connecticut”
November 12, 2020 by Peter Turchin

グレーム・ウッドが、「クリオダイナミクス(歴史動力学)」と「私」と「今、我々が直面している不和の時代」についての“長い記事”〔訳注:日本での要約はここで読める〕を書いてくれた。グレームは、非常に知性あるジャーナリストであり、クリオダイナミクスと構造人口動態のメカニズムが、どのように国家を崩壊に至らせるのかについての彼の説明は、非常に優れたものだ。アトランティック誌は、徹底したファクトチェックを行っており(今日のオンラインメディアは、ファクトチェックに限られたリソースしか割いていないので、これは珍しい対応である)、グレームの記事内の、事実に基づいた論拠については、何の異論もない。

しかし、グレームは、ジャーナリストなので、雑誌の発行部数(ないし購読料)を上げるようなやり方での事実の提示が彼の仕事となっている。グレームの見解は、私の研究をいくつもの別のアングルから観たものとなっているが、そこで彼が記事に付け加えた「ひねり(偏った解釈)」に関しては、私は科学者なので同意できない。特に、私を「預言者」(もっと酷く「狂った預言者」)と描いたことは、ハッキリ否定したい。彼は(ありがたいことに)記事内では、この極端なキャラ付けは行っていないが、ツイッターではやらかしてくれた。 [Read more…]

ピーター・ターチン「ロシア革命の意義」(2017年11月7日)

The Significance of the Russian Revolution
November 07, 2017 by Peter Turchin

今日は、ロシア十月革命の百周年記念日だ。ボリシェヴィキによって率いられた、暫定政府への武装蜂起は、1917年11月6・7日(ユリウス暦では10月24・25日)に始まり、翌日夜の、冬宮1 への襲撃でクライマックスに達している。

十月革命は、まさに地球規模の意味を持つ出来事、『世界を揺るがした10日間』であった。まず、壊滅的な影響をロシアにもたらしている。1917年の2つの革命(二月革命と十月革命)は、血塗られた内戦であり、スターリンの独裁体制を確立させ、ロシア社会に甚大な犠牲を課した。犠牲は、人口動態的なものであり(何千万人もの人々が、殺害され、飢餓と病気で死亡し、労働収容所への収監と移住を強要されている)、文化的なものでもあった(例えば、ロシア正教への弾圧による帰結)。 [Read more…]

  1. 訳注:ウィンター・パレス、冬宮殿とも呼ばれる、ロシア皇帝が冬季に滞在していたネバ川沿いにあった宮殿。 []

ピーター・ターチン「2020年11月のアメリカ:アルファ・ケンタウリからの構造人口動態による観察」(2020年11月1日)

America in November 2020: a Structural-Demographic View from Alpha Centauri
November 01, 2020
by Peter Turchin

このブログの読者ならご存知のように、構造人口動態の理論家達は、革命や内戦の原因を2つに区分している。構造的な動向は、ゆっくりと形成され、かなり予測可能なものとなっている。そして、トリガーとなるイベントは、はるかに予測困難、あるいはほとんど予測不可能である。この見解に従えば、革命は地震や山火事のようなものだ。毛沢東がかつて書いている。
「1つの火花が大草原の火事を引き起こすことがある。火事に必要なのは燃料だ――つまりは枯れ草であり、枯れた植物が倒れて徐々に燃料として蓄積されていく」。
ただ、火事を起こすのに最初に必要なのは火花である――誰かが不注意に捨てるマッチや、空からの落雷などだ。

アメリカにおいて、社会のレジリエンス(回復力)を蝕む構造的な動向は、何十年にもかけて蓄積されてきている。これは10年前に明らかになっており(2010年の私の予測を参照)、ここ数年で誰の目にも明らかになっている。こういった構造的な力は、「大衆の窮乏化(収入の減少、平均寿命の低下、社会的悲観論と絶望の増大)」、「エリートの過剰生産と内輪での諍い」、「国家の破綻(国家債務の増大と国家機関への信頼の崩壊)」である。COVID-19のパンデミックは、このアメリカのシステムにさらなる大きな負荷を掛け、特に窮乏化を悪化させている。

〔トリガーとなるイベントは普通は予測できないのだが〕今回少し特異になっている。2020年にトリガーイベントが起こるのが、かなり予測可能となっているのだ。アメリカでは、4年ごとに大統領を選んでいる。「正常な」状況下においてさえ、支配者の交代は制度にストレスを与えるが、社会の脆弱性が高い状況下で支配者の交代が起こると、システムに致死的な打撃を与える可能性がある。前回、これが起こったのは1860年だ。結果、アメリカ南北戦争が起こり、多くの歴史家が「第二次アメリカ革命」と呼ぶイベントとなった。なぜ「革命」なのか? それは、古い社会秩序が転覆したからである。奴隷を所有していた南部の農園主が支配していた古い社会秩序は覆り、新たな支配階級は、北部の製造業・鉄鋼業・鉄道業・農業ビジネスに従事するエリートに取って代わることになった。当時、最大の断層は、奴隷を所有する南部と、自由労働の北部の間に線引かれていた。

今日だと、断層は、「赤のアメリカ」と「青のアメリカ」と呼ばれるものの間に引かれている。青いアメリカ人は、トランプとトランプが象徴するもの全てを憎み、恐れている。赤いアメリカ人は、バイデンが象徴するものを憎み、恐れている。どちらの側も、自分たちの側の候補を特に気に入っているわけではない、対立政党が自候補を嫌っていることを主たる理由に団結しているのである。この対立には地理的な要素(沿岸部と内陸部の対立)もあるが、1860年のように明確にはなっていない。また、2016年だと、オバマを支持した有権者の多くがトランプに転向しているが、今回だと共和党の政治家の多くがバイデンを支持しており、「赤」と「青」は、共和党と民主党に完全に一致していない。分裂は見解の相違に由来している。

念の為に言っておくが、このブログ(他の場所でも)での、私の分析はいついかなる時も、党派的なものではない。私はできる限り公平な立場に立つようにしている。なので、アルファ・ケンタウリからの観察者となって、「赤」と「青」、それぞれが、どのように感じているかまとめてみよう。 [Read more…]

ピーター・ターチン「社会科学者が戦争を研究しなければならない理由」(2012年3月18日)

Why Social Scientists Need to Study War
March 18, 2012
by Peter Turchin

一月ほど前、私はノックスビルでの社会進化論のワークショップに続けて行われた公開討論会に参加した。討論会で私は、ジェリー・サブロフと一緒に、「戦争は社会進化における創造的原動力である――戦争は、人類を村落の生活から巨大な国家での生活へと変貌させ、人類に都市や文明を築かせ、究極的には我々の生活に平和をもたらした」と主張した。尊敬すべき学僚である、ザンダー・ヴァン・デア・レーウとティム・ケーラーは、我々のこの命題に反論した。討論会の最後に、聴衆の投票があり、我々側は完全に敗北を喫した(我々の命題に賛成の投票は5%くらいだったと思う)。まあ、私は特に気にしていない。我々への反論が素晴らしいから聴衆は揺り動かされたわけでではなく、単に多くは「戦争に反対してます」との理由で投票したとハッキリと感じられたからだ。

私は最近、イーサン・コクランとアンドリュー・ガードナーが編集した “Evolutionary and Interpretive Archaeologies: A Dialogue(進化論と解釈考古学による対話)”を読んでいる。いろいろな意味で興味が尽きない本だが、私的に最も興味深かったのが、サイモン・ジェームズによる「暴力行為と戦争状態」についての論説だった。「子供や配偶者への殴打を禁ずること、死刑を廃止すること、軍国主義を忌避すること、これらは人間価値の普遍的な進歩の表れであると、ほとんどの人は同意するだろう」とジェームズは書いている。過去数十年においても、ほとんどの欧米人が経験する暴力の水準は著しく低下し、暴力は常軌を逸したものであると見なすのが当たり前になっている。暴力について論じること自体が不快なものとなっており、ジェームズが挑発的に指摘しているように、暴力についての論題は、ヴィクトリア朝英国におけるセックスと全く同じくらい文化的タブーになっている。 [Read more…]

ピーター・ターチン「人類の社会進化についてのアナーキスト的見解:デヴィッド・グレーバーさん、かなりヘンですよ」(2019年2月10日)

An Anarchist View of Human Social Evolution
February 10, 2019
by Peter Turchin

デヴィッド・グレーバーとデヴィッド・ウェングローは、最近New Humanist誌に「我々は都市居住者なのか? それとも狩猟採集民なのか? 最新の研究は、原始人間社会に関するお馴染みのお話は間違えていることを明らかにした――研究の帰結は深遠である」との長い論説を発表した。以下は、私の彼らの論文への批判的レビューだ。彼らのエッセイから、「大きな塊の文章」を引用してから、それに私がツッコミを加えるスタイルを採用している(通常私は、長々と引用しない。しかし私の見解がかなり批判的なので、パラフレーズではなくて、著者達自身の声をもって語らせることを選択した。)

グレーバーはアメリカ人の人類学者であり、アナーキストの活動家だ。私は『負債論』を含め、彼の著作を3冊読んでいる。ウェングローは、草創記エジプト史を専門にしている考古学者だ。ウェングローの著作では、“What Makes Civilization?(何が文明を作るのか?)”を含め、2冊を読んでいる。2人は、デヴィッド&デヴィッドとして「大衆インテリ」の地位を狙っている。もっとも、有名になるまでの道のりは遥か遠いのは疑いようもない。彼らの最新の論考がどんなものか見てみよう。 [Read more…]