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メンジー・チン「ジャネット・イエレン:真の公の奉仕者」

Menzie Chinn “Janet Yellen: A True Public Servant” Econbrowser, February 2, 2018

本日(2月2日),ジャネット・イエレンがFed議長としての任期を終えた。

画像元: Federal Reserve

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メンジー・チン「選挙と資産価格」

●Menzie Chinn, “Elections and Asset Prices” (Econbrowser, October 8, 2016)


米ドルに対するメキシコペソの価格と、市場評価によるドナルド・トランプが大統領選で勝利する確率の間の興味深い相関について、ニューヨーク・タイムズ紙上でクラインズが指摘している。 [Read more…]

メンジー・チン「教科書へ立ち戻って金融政策の有効性を考える」

Menzie Chinn “Thinking about Monetary Policy Efficacy: Back to the Textbooks“(Econbrowser, January 31, 2008)

(訳者注;本記事の原文は2008年1月31日に投稿されたものです。足元の情勢に関する記述は原文執筆時点における原著者の意見であることをあらかじめご承知おき下さい。)


FEDが金利を下げたこともあり、金融政策が産出に影響を与えるあらゆる経路を洗い出し、今の状況ですぐに効きそうなのはそのうちどれなのかを整理しているところだ。

ポール・クルーグマンは、住宅のストックがファンダメンタルから乖離している際には金利の変更は効果がない可能性があると見ている。ロバート・ライシュは、マネーベースの上昇に対応して貸出を拡大するには銀行の資産ポートフォリオはリスクを抱え過ぎていると述べている。トーマス・パレーは、契約の硬直性(変動金利型住宅ローンの金利見直し期間)が金利変更の効果を減少させるとしている。もう一つ別の線の主張は次の問いに要約できる。すなわち、ドットコム・ブームと住宅ブームの後、金融政策が影響を及ぼすことの出来る分野は何だろうかというものだ。

全てそれなりに妥当なところのある数々の異なる主張に出くわす際、私は典型的な教師が行うことを行う。教科書を手に取るのだ。具体的には、ミシュキンの教科書の第23章の図31 の助けを求める。 [Read more…]

  1. 訳注:原文に挿入されている図よりも解像度の良いもの(hicksianさん提供)に差し替えた。 []

メンジー・チン「最低賃金引き上げのマクロ経済的な意味/信念と計量経済学:最低賃金の巻」

最低賃金引き上げのマクロ経済的な意味

Menzie Chinn “Some Macro Implications of a Minimum Wage Hike“(Econbrowser, March 27, 2014)

(訳者補足:この議論に馴染みがない方(最賃を上げると何故雇用が減ったり、それを相殺する効果が出たりするのかなど)は、過去のこのエントリなどを参照されると今回のエントリを理解しやすいかと思います。)

ほんの僅かな雇用数も影響を及ぼすし、ほんの僅かなインフレも影響を及ぼす。しかし、労働者への所得分配の比率を高めることに対する抵抗は今後も続くだろうと私は確信している。

次の表は、雇用効果の議論に関する研究の概説であるゴールドマン・サックスの「最低賃金引き上げで何が起こるか?(What to Expect from a Minimum Wage Hike)」(3月25日付、ネット上では未公開)からの引用だ。

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出典:マイケル・カヒル&デヴィッド・メリクル「最低賃金引き上げで何が起こるか?(What to Expect from a Minimum Wage Hike)」,GS Daily (3/25/2014)

ここのエントリで議論した)議会予算局(CBO)や経済諮問委員会(CEA)による文献の要旨をなぞりつつ、ほとんどの推計はそれが統計的に有意である場合においても雇用に対する影響は小さいとしている。また、CBOによる評価においては推計値の分布は雇用に対するプラスの効果内でちらばっていたことを再度思い起こしておくのも重要だ(なぜ短期においてこうしたことが起こり得る理由についての簡単な分析はこのエントリを参照。ただし分析が苦手な人には非推奨。)。CBOの中間推計に関して、このゴールドマン・サックスの報告書の著者らは次のように述べている。 [Read more…]

メンジー・チン 「価格メカニズムがうまく働かないとき ~アカロフの洞察を振り返る~」(2011年6月16日)

●Menzie Chinn, “When Price Does Not Clear the Market”(Econbrowser, June 16, 2011)


価格メカニズムがうまく働かず、需要と供給の不一致がなかなか解消されないのは、どのような時だろうか? 新古典派の世界観に異を唱えた、一人の経済理論家がいる。彼が語る魅力的なお話に耳を傾けてみるとしよう。

IMF(国際通貨基金)の季刊誌であるFinance&Developmentで、私の恩師の一人であり、ノーベル経済学賞受賞者でもある、ジョージ・アカロフ(George Akerlof)の経歴が紹介されている(“The Human Face of Economics”)。どんな政策問題であっても、「需要」と「供給」の2つさえおさえておけば、答えを出すに十分。そう豪語する声がちらほらと聞こえてくる昨今だが、そんな風潮が垣間見られる今だからこそ、アカロフの洞察を思い起こしてみる必要があろう。アカロフの洞察とは何か? 「情報の非対称性」が存在する状況では、価格メカニズムがうまく働かない――価格調整を通じては、需給(需要と供給)の不一致が解消されない――可能性がある。簡潔にまとめると、そういうことになろう。記事の内容の一部を以下に引用するとしよう。

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メンジー・チン「大不況を古典派の枠組で解釈すると・・・」

Menzie Chinn “Interpreting the Great Recession in a Classical Framework“(Econbrowser, March 3, 2014)

総需要の落ち込みが原因ではないのであれば、総供給のシフトのせいだったのだろうか。以下では、チラシの裏にでも書くような計算でざっくりとした評価をしてみたい。

2008年の第4四半期、GDPは年率換算で8.9%下落し、2009年第1四半期にはさらに年率5.8%下落した。一つの解釈としては、総需要が下落したというものだ。そしてもう一つの解釈は供給が落ち込んだというもので、この見方においては総需要管理政策には何の効果もないどころか、生産の妨げとすらなる。こうした観点について、供給側からの見方が正しいとなるための条件を検討してみるのも面白いと思う。 [Read more…]

メンジー・チン「財政政策の再検証」

Menzie Chinn “Fiscal Policy Re-Assessed”(Econbrowser, March 12, 2014)


下はラフォレット・ポリシー・レビューに掲載した文章からの引用

2010年に大不況の魔の手が世界経済から離れつつあったとき、新たに政権の座に就いたイギリスの保守・リベラル政府は、国内総生産(GDP)に対する政府債務の比率を安定化させること目的として財政再建策、すなわち増税及び政府支出の大幅な削減に乗り出したが、その一方で経済成長を急かしていた(中略)

(前略)政府のサイズを小さくし、政府借入を減らすことは、民間部門による力強い回復を引き起こすためのリソースを解き放つことだと思われていた。アメリカでは、総需要を刺激するため、オバマ政権は増大していた支出を2011年を通じてそのままに保った。キャメロン政権の予測とは対照的に、またオバマ大統領の経済政策の反対者の見方とも対照的に、アメリカの一人当たり所得はゆっくりとではあるが堅調に回復を続けたのに対し、イギリスの一人当たり所得はしぼんでしまった。まさにイギリスは新たな不況へと突入してしまったのだ。

この二つの経済、そして二つの財政政策の二都物語は、引用した文章の図1を見るとその違いがよく分かる。 [Read more…]

メンジー・チン「所得格差是正のために出来ること」

Menzie Chin “A Feasible Measure for Mitigating Income Inequality“(Econbrowser November 6, 2013)


最低賃金を上げるんだ!

ニュージャージーでの最低賃金引き上げもあったことなので[0]、全国規模での引き上げの是非について再評価するのには良い機会だろう。遡ること2月の教書演説において、オバマ大統領は2015年末までに最低賃金を9.00ドルに引き上げることを提案した。図1はこの提案の歴史的背景について示している。 [Read more…]

Menzie Chinn: 円の変化と日本の輸出

Menzie Chinn, “The Yen’s Progress and Japanese Exports”, Econbrowser August 13, 2013.


ちょうど日本から戻ってきたところだが、タイミングを同じくして出たGDP統計は、経済はまだまだ完全な回復から遠いという事実を補強するものであった。

しかしながらアメリカのものと同様にGDP統計の第一次速報は不正確であることが多いので、あまり入れ込まないほうが良いだろう(修正値はアメリカと同様に2008年以降は下方修正される傾向があるものの、方向性の正確な予想と成長の加速は2008年以降は増加している。[0])。成長 [1] [2] の大きな構成要素となっている輸出について考えると、数カ月前に起きた為替レートの下落効果がどれくらい残っているのか判断に迷う。また、他国から見た日本の輸出価格(訳注:他国にとっては輸入価格)はどれくらい下落したのだろうか。今日のWSJ RTE, “Prices for Imports From Japan Decline Sharply” (by E. Morath)から:

火曜日に発表された労働省からの統計によれば、7月の日本からの(アメリカへの)輸入価格は前年同月比で2.4%下落した。2002年12月以来、12ヶ月間におけるもっと急激な下落である。アメリカの第4番目に大きい貿易相手国からの輸入のコストは6ヶ月連続で低下している。

アメリカ国民が輸入されたコンピュータやクルマ、その他の消費耐久財—すべて日本製である—に支払う価格は過去一年で下落した。

為替レートパススルー1 についてはここに譲る。

Figure1はドルに対する為替レートを表している(下落は円の減価を意味する)。この下落は単にアメリカ–日本における現象ではない。円はBISの名目貿易加重指標で計測したもっと広範囲な指標でも下落している。

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Figure 1: ドル/円 為替レートの対数(赤、右軸)、8月13日の値(赤三角、右軸)、日本円の貿易加重指標の対数(青、左軸)Source: Fed via FRED および BIS

さて、為替相場の下落をもってしても輸出価格へのパススルーはゼロになりうる(実際にはならないだろうが)。利益のマージン、あるいは単位コストは為替下落の効果を打ち消してしまうほど上昇するかもしれない。エネルギーなどの輸入財価格は生産コストの重要な構成要素であるため(そしてエネルギー関連の輸入材の価格は通常ドルで取引されているため、円の下落は単位コストの上昇につながる)、福島の原発事故以降、特に輸入物価の上昇という第二の影響が懸念されている。もちろん、アメリカへの輸出に関しては標準的な効果(日本から見た輸出価格の下落=アメリカから見た輸入価格の下落)が支配している。

為替相場の下落はどれくらい持続しているだろうか。今日の輸入コストは過去数ヶ月の為替レートの関数と考えられる。Figure 2 は1990年からの円の実質価値(の変化)の推移である。

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Figure 2:  CPIでデフレートした円の価値の対数(青線、IMFより)、BISの計測方法を使った2013年第二四半期の推計値(青四角)、デフレートされた円建てのユニットレーバーコスト(赤線、IMFより)。すべて2005年=0としている。Source: IMF, International Financial StatisticsBIS, and author’s calculations.

少なくともCPIでデフレートした基準で測ったデータからは安倍政権発足以来、実質実効為替レートは(対数で見て)25%下落していることが読み取れる(おそらくユニットレーバーコストを使っても同様であろう[3])。5月のこのポストで議論したChinn and Kamata (2013)では、フォードバック効果を一定と仮定して、長期的な20%の通貨の下落によって輸出がGDPを1.3%押し上げることを推計した。ここから所得の上昇による輸入の増加を差し引かなければならない。結果として、純輸出の増加はより小さくなる。逆向きに考えてみよう。もし純輸出の乗数が1より大きいなら、GDPはベースラインよりもさらに大きなものになるはずである。

最後に、15年前 (!) に日本に行った時に比べて、日本のものは随分と安くなったように感じる。そして、実際統計(あるいは少なくともビッグマック指数)はこの印象を深めてくれる。

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Figure 3:  アメリカのビッグマック指数(tm)(青)、日本(赤)、いずれも米ドル。注意:調査の頻度は不定期で、通常は4月、5月、6月に行われる。Source: Economist.

6月の時点でアメリカのビッグマックに比べて日本のビッグマックはおおよそ35%安い(対数で)が、これは必ずしも円が35%過小評価(「過小評価」が一体なんであれ)されていることを意味するわけではない。以前書いたように[4]、Penn効果2 は非貿易財の存在を前提とすると、まったく同一の財であってもより低い相対所得の国ではより価格が低いことを示唆する。私が持っているサンプル(1987-2013年の24の中・高所得国のデータ。バランスは取れていない)からは、PPPでみた一人当たりの相対所得の回帰係数は約0.25であった。日本の一人あたりの所得はアメリに比べて31%低いので、円は約27%「過小評価」されていると言える。

  1. 訳注:為替レートパススルーとは、為替レートが1%変化した時に輸入国の通貨で測った輸入物価の変化率を指す。 []
  2. バラッサ=サミュエルソン効果と同等。 []

メンジー・チン 「近隣富裕化政策としての世界同時リフレ ~回復スピードが二極化する世界におけるリフレーションと支出転換~」(2013年3月25日)

●Menzie Chinn, “Reflation and Expenditure Switching in a Two Speed World”(Econbrowser, March 25, 2013)


バーナンキがすべてを語ってくれている。

FRB議長であるベン・バーナンキ(Ben Bernanke)が本日(3月25日)LSEで講演を行い、そこで次のように語っている

・・・(略)・・・大恐慌(Great Depression)に関する現代の研究――その流れを生むきっかけとなったのは、バリー・アイケングリーン(Barry Eichengreen)とジェフリー・サックス(Jeffrey Sachs)が共同で執筆した1985年の記念碑的な論文です(注6)――は、金本位制からの離脱に伴う効果に関して、従来の考え方に変更を迫る格好となりました。金本位制から離脱するのに伴って為替が減価し、そのおかげで一時的に貿易上有利な立場を手にすることになったケースもあることは確かですが、大恐慌に関する現代の研究によると、金本位制からの離脱に伴う主要な便益は、各国が自ら適切だと思うやり方で、自由に金融緩和を実施できるようになったことに求められています。実質的にすべての主要各国が1935年ないしは1936年までに金本位制から離脱することになりましたが、それに伴って、為替レートの水準が市場で自由に決定されるようになると、為替レートの変化を通じて貿易が刺激される効果は、ごく些細なものに過ぎなくなりました。しかしながら、主要各国が金本位制から離脱して以降の世界経済は、1931年時点よりもずっと底堅い成長を遂げました。その理由は、金本位制の拘束衣を脱ぎ去ったことにより、それぞれの国が国内における完全雇用を達成するためにふさわしいやり方で、自由に金融政策を実施することができるようになったからでした。さらには、貿易相手国の景気が上向くことによって、輸出の増加というかたちで恩恵が生じた点も重要です。要するに、関税引き上げ競争とは対照的に、1930年代に断行された金融政策を通じたリフレーションは、為替レートの変更に伴う貿易転換(純輸出の増加)を通じてではなく、主要各国における内需(国内需要)を喚起することを増加を通じて、ポジティブ・サムの結果をもたらすことになったのです。

このことが現在の状況に対して持つ教訓は明らかです。目下のところ、先進国経済の大半は、この度の大不況(Great Recession)から回復しつつあるとは言え――その程度は国ごとに違いがありますが――、そのペースは遅々としたものにとどまっています。概してインフレが安定していることを受けて、各国の中央銀行は、景気回復を下支えするために金融緩和を推し進めている最中ですが、かような状況を指して「通貨切り下げ競争」(competitive devaluations)と呼ぶことは適当でしょうか? 答えは「ノー」です。それはなぜかというと、先進国経済の大多数で同時に金融緩和が推し進められているので、先進国間での為替レートはそこまで劇的に変化することもなければ、変化するにしてもそう長続きしないと予想されるからです。主要な先進国で同時進行中の金融緩和がもたらす便益は、為替レートの変化を通じてではなく、それぞれの国内の総需要が下支えされることを通じて生み出されると考えられるのです。さらには、各国の景気が上向くことになれば、それに伴って、貿易相手国に(輸出の増加というかたちで;訳者挿入)好ましいスピルオーバーが及ぶことにもなるでしょう。つまりは、先進各国で同時進行中の金融緩和策は、「近隣窮乏化」(”beggar-thy-neighbor”)ではなく、ポジティブ・サムな「近隣富裕化」(”enrich-thy-neighbor”)という特徴を備えていると考えられるのです。

(注6)Barry Eichengreen and Jeffrey Sachs (1985), “Exchange Rates and Economic Recovery in the 1930s,” (Journal of Economic History, vol. 45 (December), pp. 925-46)を参照のこと。

大恐慌時に固定為替レート(金本位制)が世界経済に対していかに好ましからぬ影響をもたらしたかを思い出してもらうためにも、かの有名なアイケングリーンの図――当時の各国経済のパフォーマンスの違いが一目でわかる図――を改めて掲げておくとしよう。

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(出典)Eichengreen(1992)(pdf)の図5

バーナンキが言うように、先進各国で同時進行中の非伝統的な金融政策は、ポジティブ・サムの結果をもたらす可能性が高い。その点については私も同意だが、個人的には、支出転換効果1をもう少し強調したいところではある。私の個人的な見解では、各国の中央銀行が為替の減価を歓迎したとしても2 、最終的には好ましい結果がもたらされることになると思われる。たとえ(少なくとも先進各国間での)名目為替レートにはほとんど変化が生じないとしても、そうなることだろう。リフレーションは物価水準を引き上げることになるが、(ジェフリー・フリーデン(Jeffry Frieden)ジョシュア・アイゼンマン(Joshua Aizenman)との共同研究を踏まえて)これまでにも何度か指摘してきたように、リフレを通じた物価水準の上昇は、大規模な産出ギャップを長らく抱え続けている経済に対して(例えば、債務の実質的な負担を軽くしたり、信用制約を和らげるなどの経路を通じて)好ましい効果を及ぼすことだろう。ところで、どうやら実際にも、インフレ期待は(ポール・ライアンが恐れるような水準にまでは達していないとしても)若干ながら上昇しているようだ。以下に、ドイツ銀行の調査結果を掲げておこう。

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(出典)Hooper, Mayer, and Spencer, “Staying the Course on a Sea of Central Bank Liquidity,” World Outlook (Deutsche Bank, 22 March 2013) [not online].

以前にも指摘したことだが、あらゆる国でインフレが加速する必要はないだろう。というのも、あらゆる国が足並みを揃えて同じスピードで景気回復を遂げているわけではなく、回復スピードの面で二極化が生じているからである。新興国では、急速なスピードで景気回復が進行している一方で、先進国では、景気回復のスピードが鈍かったり、あるいは、景気回復がまったく生じていないケースもある。つまりは、インフレに伴う便益は、地域ごとに違いがあるのだ。アメリカに、ユーロ圏、そして特に日本では、インフレの上昇がどこよりも必要とされているのだ。さらには、為替レートに関する先ほどの私の指摘もあらゆる国にあてはまるわけではない。景気回復のスピードの面で二極化が生じていることを踏まえると、新興国の通貨は増価の方向に、先進国の通貨は減価の方向に、それぞれ向かうのが望ましいと言えるだろう。以下の図にあるように、実際にも、ある程度そのような方向に向かいつつあるようだ(ただし、ユーロに関しては、間違った方向に向かいつつあるようだ)。

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Figure 1: BISのデータ(Broadベース)をもとに算出した実質実効為替レート(対数値、2010年の実質実効為替レートを0とする);アメリカ(青)、イギリス(赤)、ユーロ(緑)、日本(紫)、中国(オレンジ)

こちらのエントリーでも論じたように、日本の為替レート(円)はこのところ大きく下落している。また、イギリスの為替レート(ポンド)も最近は下落気味だが、「拡張的な財政緊縮」とやらの効果がまったく生じていないことを考えると、好ましい傾向だと言えるだろう。対照的に、中国の為替レート(元)は大幅に増価しているが、特に新興国の通貨に対してさらなる調整(増価)がまだ必要だと考えられる。

<まとめ>

エントリーの冒頭でも述べておいたように、バーナンキが講演の結論で語っていることに付け加えることは何もない。

本日の話をまとめると、こういうことになります。目下のところ、先進各国では金融緩和策が推し進められている最中ですが、それぞれの国内の景気回復を促すためにも、物価の安定を保つためにも、適切な措置だと言えます。大恐慌に関する現代の研究が明らかにしているように、先進各国で同時進行中の金融緩和策は、世界経済全体に対して、差し引きしてプラスの便益をもたらすことでしょう。先進各国で同時進行中の金融緩和策をゼロ・サムないしはネガティブ・サムな貿易転換政策と同一視すべきではありません。その実、先進各国で同時進行中の金融緩和策は、互いに補強し合うことで、関係するすべての国に便益をもたらす可能性があるのです。

あえて何か付け加えるとすれば、先進国経済(中でも、ユーロ圏)はもっと強気で金融緩和に邁進すべし、ということくらいだろうか。

  1. 訳注;貿易収支を改善させる効果=純輸出を増加させる効果 []
  2. 訳注;為替レートを意図的に減価させようと試みたとしても、という意味だと思われる。 []