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タイラー・コーエン「キミの政治思想はキミひとりのものじゃないよ」(2021年11月28日)

[Tyler Cowen, “Your political views are not your own,” Marginal Revolution, November 28, 2021]

30歳以上の養子・実子をもつ394組の家族という類例のない標本において, 生体測定モデリングにより,次の点を支持する有意な証拠が明らかとなった.すなわち,7項目の政治的態度の表現型の大多数で両親からの遺伝的・非遺伝的な継承がなされている.宗教心と社会自由主義でもっとも大きな遺伝的影響が見られる一方で,養育環境の影響がもっとも大きかったのは政治的な指向と平等主義だった.こうした発見からは,遺伝子・環境・遺伝子-環境の相関すべてが成人期の社会政治的態度に有意に寄与することが示される.こうした態度の原因や発達に関する知見は,急速に変化する今日の社会政治的な様相において,いっそう重要かもしれない.

Emily A. Willoughby et al. による論文の全文はこちら.Via Kevin Lewis 殿.

アレックス・タバロック「炭素税に関するティム・ハーフォードのコラム」(2021年11月26日)

[Alex Tabarrok, “Harford on a Carbon Tax,” Marginal Revolution, November 26, 2021]

炭素税の長所について,ティム・ハーフォードがいい文章を書いてる
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ジョセフ・ヒース「ウォーク(正義に目覚めた一部の左派)は戦術・信条において裸の王様・女王様である:リベラリズムの皮を被った反自由主義」(2021年6月23日)

Joseph Heath: Woke tactics are as important as woke beliefs
Woke language hides illiberal tactics in liberal aims
Posted by Joseph Heath on June 23, 2021

 ここ数年、進歩主義を装った反自由主義が世を覆いつつあったが、ついにアメリカのリベラルたちは団結して行動を起こし始めた。リベラルたちは、「ウォーク」〔woke、社会問題に対して目覚めた(=wake)人々を指す〕の政治活動やイデオロギー的影響力の拡散を阻むために、いくつかの組織を創設したのである。〔ウォークと戦う〕リベラル派が優勢なのは、一つには、ウォーク派の「警察予算を打ち切れ(defund the police)」1 といった呪文の多くが不人気であることが誰の目にも明らかになったからだ。そして、ウォーク左派が不寛容で権威主義的な政治と結びついていることに対して、警戒心が高まっているからでもある。

 不幸なことに、ウォーク派の多くは、自分たちの政治的手段や政治的戦術を、脅迫と感じる人がいることをまったく理解できていない。特に、「お前たちは権威主義的になってしまっている」とか、「『キャセル・カルチャー』は表現の自由を脅かしている」といった非難が寄せられても、ウォークたちには馬耳東風である。

 これには理由があり、そしてそれを理解しておくことは有益だ。ウォークの政治活動には大変重要な役回りを担ういくつかのキーフレーズ(「安全性(safety)」、「メンタルヘルス(mental health)」、「マイクロアグレッション(microagression)」、「いじめ(bullying)」、更には「人権(human rights)」まで)が存在するが、活動家らはこうしたフレーズを利用して「ウォークは権威主義だ」との批判を逸らしている。活動家らは「正しい言葉」を使えば、たとえ悪人のように振る舞っても、自分は善人である安易に思い込めるのである。

 このメカニズムがどのように働いているのかを説明していきたい。 [Read more…]

  1. 人種差別的な取り扱いを行っているなどの理由から、警察の解体・縮小を求める主張。2020年の警察官によるジョージ・フロイド氏殺害事件に対する抗議運動によって一般に普及した []

ノア・スミス「インフレは本物だ,次は FRB が打つ手しだい」(2021年11月11日)

[Noah Smith, “Inflation is real; now it’s up to the Fed,” Noahpinion, November 11, 2021]

バイデンの政府支出政策は,インフレに大して影響しないだろう.

〔主にアメリカのインフレ率上昇について〕「一過性チーム」と呼ばれてる人たちにも,2種類ある.ひとつは,こう分析する人たちだ――「サプライチェーンの混乱やパンデミック後の需要変化といった一過性の供給側要因だけがインフレを引き起こしているので,そのうち勝手に収まるよ.だから,政策担当者は心配しなくていい.」 こちらが目立つ方のグループだ.いま,このバージョンの「一過性チーム」はコテンパンになってる.〔アメリカで言う〕コアインフレ率は広範なインフレをはかる数字として広くいちばん広く使われている.今月のコアインフレ率は, 0.6% になってる.年率換算で 7.4% だ.ちょっと前の9月には,このコアインフレ率がいっときだけ下がったのを見て,一部の人たちが「一過性チームの勝利だ」と主張しはじめていた.で,いまはまた上がってる.外れ値を除外しようと試みた他の数字にも,同じ加速が見てとれる(〔需要増加で価格が上がった〕中古車やコンピュータチップといった2~3コの品目の価格が全体に影響しないように,そうした外れ値を除外した数字がよく参照される):
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ジョセフ・ヒース「私に対するキャンセル・カルチャーについて:BIPOCとFIVMの詳細」(2021年6月10日)

More on BIPOC and FIVM
Posted by Joseph Heath on June 10, 2021 | Uncategorized

5月28日、グローブ&メイル紙に論説〔訳注:日本語の意訳・要約をここで読むことが可能〕を寄稿したが、それに対して生産的な議論もあれば、非生産的な議論や罵倒もいくつか寄せられた。(私は論説で、BIPOC1 という頭字語をカナダで使うことに疑問を呈した。簡単にまとめれば、BIPOCという頭字語は、アメリカでは多様性の重要な側面を捉えるのに十分な役割を果たしているかもしれないが、カナダではその役割を果たしていないと主張したのである) [Read more…]

  1. 訳注:Black(黒人)、Indigenous(先住民)、People of Color(有色人種)の頭文字を取って作られた頭字語。主にアメリカでマイノリティ集団がアイデンティティ・ポリティクスを行う際の手段として使われている用語である []

アレックス・タバロック「大離職: 医療従事者の場合」(2021年11月20日)

[Alex Tabarrok, “The Great Resignation: Health Care Workers,” Marginal Revolution, November 20, 2021]

いまアメリカでは,医療従事者が 100万人不足してる.医療制度への負荷が極度に強まっている今日の状況で,医療従事者の人数は1600万人となっている.この数字は,2020年1月にパンデミックがはじまった時点の人数よりも約50万人少なくて,過去数十年の伸びから予測される人数よりも約100万人少ない.これほど大勢の従事者の減少は,前例がない.

Atlantic 誌の Ed Yong が「医療従事者がどうして大挙して離職しているのか」を論じている:
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ノア・スミス「メタバースと(ほぼ)無限の経済成長」(2021年11月9日)

[Noah Smith, “The Metaverse and (near-)infinite economic growth,” Noahpinion, November 9, 2021]

ビットの世界で鍛冶仕事に精を出す必要なんてある?

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タイラー・コーエン「経済学業界の雇用市場を眺めた感想」(2021年11月14日)

[Tyler Cowen, “Economics job market observations,” Marginal Revolution, November 14, 2021 ]

覚えてる人もいるかもしれないけれど,〔博士課程を終えたりして〕新しく求職をはじめた人たちがどんなテーマに取り組んでいて,なにを提示してるのかを知るために,各種の雇用市場ウェブサイトを調べて回るのを,ぼくは毎年の習わしにしてる.多くの年とちがって,今年いちばん面白い論文や最良の論文を出したのはハーバードや MIT じゃなかった.ノースウェスタンUC デイヴィスがすぐれた学生を輩出してるように見える.もっと広い話をすると,経済学史への関心が引き続き増えてきてる.都市経済学・地域経済学・医療経済学も同様だ.5年~10年前にくらべて,マクロの論文は減ってきてる.金融〔貨幣〕経済学や暗号通貨の論文はほんのわずかしかない.理論論文はめったにない.全体として,男性よりも女性の方がより面白い研究に取り組んでるように思える.多くの大学は,例年よりも輩出してる学生が減ってるように見える.マディソンのウィスコンシン大学のウェブサイトは(いまのところ)どこよりも「代名詞」をたくさん並べてる〔※本人が he/she のどちらで呼ばれたいかを示しているらしい〕.今年の〔経済学雇用市場の〕調べ物は,例年よりもつまらないんじゃないかな.少なくとも,ぼくの好みにとってはつまらなかった.求職者たちとその研究主題が過剰に専門分化してしまっているせいだ.ぼくから見て最悪なのは,細分化されすぎて一般化の余地がないデータソースにもとづく論文かも.

ノア・スミス「今年の経済学批判セレクション」(2021年10月25日)

[Noah Smith, “This year’s econ critics make a few good points,” Noahpinion, October 25, 2021]

ついでにダメな批判も少々.


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タイラー・コーエン「結婚は通常財なのか? NBA ドラフトからの証拠」(2021年11月13日)

[Tyler Cowen, “Is Marriage A Normal Good? Evidence from NBA drafts,” Marginal Revolution, November 13, 2021]

〔※「結婚は通常財なのか?」とは,「所得が増えるほど結婚したいと思う人が増えるのか?」ということ.〕

男性の経済的地位と結婚するかしないかの結果との因果関係についてはほとんどわかっていない.これは,男性に生じる予期せざる永続的な所得ショックに関するデータが欠如しているためだ.本稿では,NBA ドラフトをめぐる自然実験を利用してこの問いに挑む.NBA では,大学バスケットボール選手や世界各国のバスケットボール選手を NBA チームが1位から60位まで指名して契約交渉権を獲得するドラフトを毎年実施している.選手のドラフト順位に関する専門家たちの予測は高品質であり,さらに,選手たちの初年度の給与はドラフト順位に応じて単調に上から下へと下がっていく.これをふまえて,本稿では,実際のドラフト順位と予測されていたドラフト順位の落差によって,外生的な所得ショックが生じることを示す.この状況のおかげで,新規な所得「処置」がもたらされる〔※対照実験での「処置群」に相当するものができあがる〕.この処置ではたんに多数で個々人が特定されているばかりでなく,〔所得ショックという処置が〕キャリア初期・成人期の初期に起こる.この年代の人々にとって,結婚に関する意思決定はとりわけ顕著だ.さらに,本研究では,選手たちの家族に関する主な意思決定を追跡した新規データセットを構築し,結婚が現に男性にとって通常財であることを初めて示す.他の条件が等しければ,2004~2013年の世代集団で初年度の5カ年給与が 10% 上昇すると,結婚の確率が 7.9% 上昇している.本研究結果は,男性人口全体の下限の推定を構成する.より低い方の推定給与ほど,効果量はより大きく有意になるためだ.

上記の抜粋は,トロント大学出身の Jiaqi Zou の論文から.彼女はいま求職中だ.彼女が研究目的に書いているこの一節がいい: 「人々が自分の人生でなにかを追究するのをはばむ障壁や信念を同定することにとりわけ関心がある」