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ジョセフ・ヒース「大学教授のうっかりはマウント行動」(2017年9月5日)

Absent-mindedness as dominance behaviour
Posted by Joseph Heath on September 5, 2017 | academia

父はむかし、私にある話をした。その何年も前に、父は大学教授としてサスカチュワン大学1 のセントトーマス・モア・カレッジで歴史学を教えていた。父は車を運転して仕事に行き、駐車して、授業を教えに教室へ向かったものだった。しかし家に帰る時に、自分がどこに駐車したのか思い出せない事がしょっちゅうあった。サスカチュワン大学は縦横無尽に拡がっている広大な駐車スペースを有する大学の一つだったので、父は何度も自分の車を探してさまよう事を余儀なくされたものだった。

父の教授としての生活は、かつて望んでいたものと比べるとはるかに失望するものへと変わった。それに加えて、同僚とのあらゆる種類の軋轢に巻き込まれていることに父は気が付いた。軋轢があまりにひどくなったので、ある日父はやっとのことで大学を辞職した。辞表を出して駐車場に向かい、辺りを探し回って車を発見し、家まで運転し、二度と大学には戻らなかった。父の話で愉快なのがここからだ。その後の人生の中で、自分の車をどこに停めたのかを忘れたのはその時が最後だった、と父は断言したのである。 [Read more…]

  1. 訳者注:カナダ・サスカチュワン州にある州立大学。 []

スコット・サムナー「安倍政権の雇用面での奇跡と無意味な「景気後退」」(2020年2月19日)

[Scott Sumner, “Abe’s employment miracle and Japan’s meaningless ‘recessions’“, TheMoneyIllusion, February 19, 2020]

2013年のはじめに安倍が政権についたとき,驚愕するほど雇用がよくなるとは,ほぼ誰も予想していなかった(ぼくも含めて).それまでの20年間,就労年齢の雇用はだいたい 70% あたりをうろうろしていた.当時,専門家をつかまえて「これから2010年代の大半を日本は「景気後退」のなかで過ごすことになるよ」と言ったら冷たくあしらわれただろうけど,それに比べても,「これから雇用の奇跡が起こるよ」と言った場合の方がよほど冷たくあしらわれたことだろう:
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アレックス・タバロック「英語のポップソングは悲しみと怒りが色濃くなってきてる」(2020年2月17日)

[Alex Tabarrok, “Pop Songs are Getting Sadder and Angrier,” Marginal Revolution, February 17, 2020]

AEON: 英語圏のポップソングは,だんだんネガティブになっている.ネガティブな情動に関連する単語の使用頻度が,1/3 以上も増えている.一例として,ビルボードのデータセットをとりあげよう.歌一曲あたり平均 300語が使われていると仮定すると,ヒット曲の上位 100曲の歌詞は毎年 30,000語使うことになる.1965年に,否定的な情動に関連した単語はおよそ 450ほどだった.2015年に,その数字は700以上になっている.その一方で,同じ期間に,ポジティブな情動に関連した単語は減少している.1965年の歌には,ポジティブな情動の単語がおよそ1,750語あったのに対して,2015年にその数はたった 1,150ほどにまで減っている.ここで気にとめておきたい点がある.絶対数でみると,ネガティブな情動に関連した単語よりもポジティブな情動に関連した単語の方がいつでもより多く現れているのだ.これは人間の言語に普遍的に見られる特徴で,「ポリアンナ原則」と呼ばれている(ポリアンナはその名前を冠した小説の主人公で,いつでも完璧に楽観的な女の子だ).これが逆転するとは,まず予想しがたい:その上で言うと,問題なのは変化の方向だ.

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デイビッド・アンドルファット「米国経済学博士号における人種多様性」(2018年12月5日)

David Andolfatto, “Racial Diversity in the Supply of U.S. Econ PhDs“, Macro Mania, December 25, 2018

このエントリを書く動機になったのは「経済学の人種多様性の欠如の悲惨な損失(The Dismal Cost of Economics’ Lack of Racial Diversity)」というエシェ・ネルソンのコラムだ。私は特に下のデータに衝撃を受けた。米国機関からの経済学博士号取得者で、米国籍および米国永住権者は539人、そのうちアフリカ系アメリカ人はたったの18人だった。 [Read more…]

タイラー・コーエン「著作家が賞味期限を長く延ばす方法」(2020年2月6日)

[Tyler Cowen, “How public intellectuals can extend their shelf lives,” Marginal Revolution,February 6, 2020]

知識人が質のいい著作活動を続ける期間がああも短い理由について, Scholar’s Stage が長文記事を書いている.著作家が賞味期限を延ばすコツについて,ぼくなりにいくらか書いてみよう.べつに,ぼく自身がそういうコツを全部きっちりやってってわけじゃない.ぼくのやってることじゃなくて言ってることを参考にしてもらいたい.
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タイラー・コーエン「就任時のCEOたちの年齢をプロットしてみると」(2020年1月31日)

[Tyler Cowen, “CEO ages at hire,” Marginal Revolution, January 31, 2020]

こんな意味深な傾向がある.S&P 500 企業で CEO たちが就任したときの平均年齢は,過去14年間で 14歳上がってきてる.

1980年から2001年までのあいだに CEO の平均年齢は 4歳下がり,2005年から2019年のあいだに新 CEO 就任時の平均年齢は 14歳上がってる!

つまり,CEO の平均的な生まれ年は 2005年から変わってないってことだ.すごく成功してる現代企業の CEO になるかどうかをいちばんうまく予測する要因ってなんだと思う?

ベビーブーマーかどうかだよ.

続きは Paul Millerd のこれを参照.

サイモン・レン=ルイス「金融政策と財政政策の協調:経済状態に応じて政策割り当てを切り替えるべき理由」(2020年1月14日)

[Sinon Wren-Lewis, “Monetary and fiscal cooperation: the case for a state dependent assignment,” Mainly Macro, January 14, 2020]

去年の12月にマーク・カーニー〔イングランド銀行総裁〕はこう発言した

世界的な流動性の罠において,中央銀行のみが「なすべきことはなんでもやる」政策担当者となることはありえません.他の政策,とくに財政政策との協調から明確に得られるものはあります.

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アレックス・タバロック 「迂回賄賂」(2014年2月17日)

●Alex Tabarrok, “Indirect Bribing with Plausible Deniability”(Marginal Revolution, February 17, 2014)


ステファノ・デッラヴィーニャ(Stefano DellaVigna)&ルーベン・デュランテ(Ruben Durante)&ブライアン・ナイト(Brian Knight)&エリアナ・ラ・フェラーラ(Eliana La Ferrara)の四人の共同研究の成果をまとめたワーキングペーパーより。

・・・(略)・・・本稿では、1994年から2009年までの期間を対象に、イタリア国内の民間企業が支払った広告費の変遷を検証する。1994年から2009年までというのは、シルヴィオ・ベルルスコーニが断続的に計3度にわたってイタリアの首相を務めていた時期にあたるが、ベルルスコーニは首相の地位にある間も、イタリアを代表する民間放送局グループであるメディアセット(Mediaset)のオーナーの座から退かずにいた。政府のご機嫌をとろうとする企業は、ベルルスコーニ首相がオーナーを務めるテレビ局のスポンサーになろうとするのではないか。〔広告費を支払うのと引き換えに、政府から政策面で何らかの便宜を図ってもらおうとするのではないか。〕そのように予測されることになるが、実際のデータもそのことを裏付けている。ベルルスコーニの首相在任中に、メディアセットが擁する民放チャンネルに広告費を支払う動きが勢いを増しているのである。規制の多い業界に属する企業ほど、その傾向が強いことも見出されている。・・・(略)・・・

ベルルスコーニのアメリカ版がリンドン・ジョンソン(第36代アメリカ合衆国大統領)だ。ラジオ局のオーナーだった妻のレディ・バードの力を借りて、同じ手口で財を築いた(私腹を肥やした)のだ。 ロバート・カロ(Robert Caro)が(リンドン・ジョンソンの伝記である) 『Means of Ascent』(「成り上がる術」)の中で次のようなエピソードを紹介している。

とあるビジネスマンは語る。「お役所から仕事を受注したいなら、リンドンにそのための力添えをしてもらいたいなら、彼が所有するラジオ局のスポンサーになればいいってことは誰もが知るところでしたよ」。

この件については、ジャック・シェーファー(Jack Shafer)がこちらの記事で――カロの上記の本を踏まえつつ――もう少し詳しくまとめているので、あわせて参照されたい。

情報を寄せてくれたジョン・バン・リーネン(John van Reenen)に感謝。

タイラー・コーエン 「ビジネスマンが選挙に出馬するのはなぜ?」(2007年4月5日)

●Tyler Cowen, “Why do businessmen run for public office?”(Marginal Revolution, April 5, 2007)


イタリア観光も終えて帰路の真っ只中なのだが、イタリアにいたせいか、こういう話に自然と目が向いちゃうね1

民主主義の成熟度が低い国では、ビジネスマンは、議員ないしは首長といった公職にありつくことを通じて、公共政策の立案に直接関わろうとする。その一方で、民主主義の成熟度が高い国では、ビジネスマンは、公職にありつく以外の手段2を通じて、公共政策に影響を及ぼそうとする。本稿で組み立てられたシンプルなモデルから導かれる予測によると、ビジネスマンが公職にありつくために選挙に出馬するのは、以下の二つの条件が満たされる場合に限られることになる。まず一つ目の条件は、民主主義の成熟度が低い国においてそうであるように、選挙で掲げた公約の遵守を促す制度が整っていないこと。公約を破っても大してお咎めを受けないようであれば、公共政策を自分の意に沿うように操って私的なレントを手に入れる余地が生まれることになる。私的なレントに惹かれて、ビジネスマンも(自らのビジネスに有利になるように公共政策に手を加えられる地位にありつくために)選挙に出馬するというわけである。次に二つ目の条件は、公共政策を自分の意に沿うように操ることで得られるうま味(私的なレント)が大き過ぎないこと。公職にありつくことに伴って得られる私的なレントがあまりに大き過ぎると、職業政治家の立候補が相次ぐことになり、それに伴って(勝ち目は薄いと踏んで)ビジネスマンは選挙への出馬を見合わせる格好となるのである。本稿ではロシアの地方選挙のデータに分析を加えているが、モデルの予測と整合的な実証結果が得られている。すなわち、1)「報道の自由度」も「行政の透明性」も高く、それゆえ、選挙で掲げた公約の遵守を促す制度が整っている(公約を破ると、手痛いしっぺ返しを覚悟せねばならない)地域(選挙区)に加えて、2)「報道の自由度」も「行政の透明性」も低いが、公職にありつくことに伴って得られる(天然資源の豊富さによって測られる)私的なレントが並外れて大きい地域(選挙区)では、ビジネスマンは選挙への出馬を控える傾向にあるのである。

論文のリンクはこちら。この論文はこちらのセミナーで発表されたものだが、「民主主義はいかにして暴動(市民による暴動)のコストを低く抑えているのか?」をテーマしたジェームズ・フィアロン(James Fearon)の論文も同じセミナーでお披露目されてるみたいだね。

  1. 訳注;おそらくは、ベルルスコーニあたりのことが念頭にあるのだと思われる。 []
  2. 訳注;議員や首長への陳情だったり献金だったりといったロビー活動など。 []

タイラー・コーエン 「ビジネス経験を有する政治指導者は『ただ乗り』しがち? ~国際公共財の一種たる集団安全保障を例に~」(2020年1月24日)

●Tyler Cowen, “Are political leaders with a business background any different?”(Marginal Revolution, January 24, 2020)


・・・(略)・・・ビジネス経験を有する政治指導者は、集団安全保障への協力を渋りがちとの仮説が浮かび上がってくることになるが、なぜそうなのかというと、利己的だからというのがまず一つ目の理由。〔自己効力感(セルフ・エフィカシー)が高く、それゆえ、〕(集団安全保障への協力を怠っていたとしても)いざという時は同盟国に頼れる(自国を守るために同盟国を説得して助太刀してもらうように持っていけるだけの力が自分にはある)と信じて疑わない傾向にあるからというのが二つ目の理由である。NATO(北大西洋条約機構)への加盟国のうち、アメリカを除く17カ国の1952年から2014年までの防衛費のデータを分析したところ、件の仮説と整合的な実証結果が得られた。ビジネス経験を有する政治指導者は、ビジネス経験の無い政治指導者に比べると、効用の最大化に向けて利己的に振る舞う可能性が高い。本稿で得られた分析結果はそう示唆している。

論文のリンクはこちら。論文の著者はマシュー・ファーマン(Matthew Fuhrmann)。かの情報通たるケビン・ルイス経由で知ったもの。