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サイモン・レン=ルイス「サド・ポピュリズム」(2021年8月21日)

[Simon Wren-Lewis, “Sado-populism,” Mainly Macro, August 21, 2021]

「サド・ポピュリズム」は,ティモシー・スナイダー(イェール大学歴史学教授)の用語だ.2017年に公開された連続ミニ講義の第4回で用いられた.おそらくこの講義はトランプ当選に触発されている.最近になって,The New European の  Alastair Campbell によって,この用語はイギリスで広まってきている.彼は,「サド・ポピュリズム」を EU離脱とジョンソンに当てはめている.この記事では,金権政治ポピュリズムに関する私じしんの議論にサド・ポピュリズムの概念を関連づけたい(金権政治ポピュリズムについては,たとえばここを参照).
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サイモン・レン=ルイス「新古典派対抗革命のあとにマクロ経済学の古いアイディアを学び直す」(2021年8月3日)

[Simon Wren-Lewis, “Relearning old ideas in macroeconomics after the New Classical Counter Revolution,” Mainly Macro, August 3, 2021]

Chris Dillow が書いた記事への補足として,今回の記事を書いている.Dillow はマクロ経済学について,2つの論点を述べている.これを理解するには,主流経済学と異端経済学の区別をおさえておく必要がある.両者の線引きを定義するのは難しい(これを試みて論文や書籍の章が書かれている).だが,いくらかの所見は述べられる.大学の学部に所属する経済学者の大半は主流で,異端系の経済学者たちはそれとはちがった各種学校の多くに属している.もう一点はなにかと言うと,異端系の経済学者たちがやっていることを,主流の経済学者たちがほぼ完全に無視している,ということだ.なお,「異端系の経済学者たちはみんな左派で,主流経済学者たちはそうではない」という見方は,事実と異なる.
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サイモン・レン=ルイス「景気後退時の量的緩和(お金の創出)はいいことだ,ただし効果的な財政刺激をともなっているかぎりで」(2021年7月27日)

[Simon Wren-Lewis, “Quantitative Easing (creating money) is fine during a recession, as long as it goes alongside effective fiscal stimulus,” Mainly Macro, July 27, 2021]

誰もが知っているように,イングランド銀行のような中央銀行はお金を創出している.このことを指して,「中央銀行がお金を刷る」と言ったりもする.だが,現実に中央銀行がお金を創出したいとのぞんだ場合には,市中銀行が保有する「準備金」という
一種の電子的なお金を中央銀行がつくりだすことで,それをなしとげる.量的緩和とは,中央銀行が準備金を創出して自国政府の債券を買う場合を言う.
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サイモン・レンルイス「アメリカでいまにもインフレスパイラルが始まるという話についてどう考えるべきか」(2021年6月7日)

[Simon Wren-Lewis, “How should we think about talk of an impending US inflationary spiral?” Mainly Macro, June 7, 2021]

2013年に,イングランド銀行のカンファレンスで私が講演をしていたときの話だ.イギリス経済は,3年にわたって景気が急激に悪化していた.講演の詳細は思い出せないが,イギリス経済には財政刺激が切実に必要だ,また緊縮を繰り返してはいけない,という話をしていた.そのとき,非常に著名な学者で,とある中央銀行にも勤めていた経歴の持ち主が,こんな話を言い出した――インフレが起こって,インフレ予想の「タガが外れる」恐れがある.これに返答して喋っているうちに,あやうく,激高しそうになってしまった.
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サイモン・レン=ルイス「インド変異株がイギリス国内に広まったのは,コロナウイルスと暮らす必然的な結果か?」(2021年5月17日)

[Simon Wren-Lewis, “Is the spread of the Indian variant in the UK an inevitable result of living with COVID?” Mainly Macro, May 17, 2021]

迅速に手を打つ

COVID-19 のインド変異株 (B.1.671.2) は,いまやイギリス各地にかなり定着してしまい,急速に広まってきている.北東部の感染者数は増加中で,とりわけ若年層で急激だ.この変異株についていま何がわかっていて,どう感染拡大しているか(インドから来た感染者を除外)を詳しく分析した話を読みたいなら,Christina Pagel (@chrischirp) をフォローするのがいちばんいい.たとえば,これを参照.Pagel をはじめとする専門家たちの考えでは,この変異株は大いに懸念すべきであり,今日の都市封鎖緩和は取りやめるべきだったそうだ.
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サイモン・レン=ルイス「なぜ西洋諸国の大半はパンデミックでこれほど失敗したのか」(2021年5月4日)

[Simon Wren-Lewis, “How most of the West got the pandemic so badly wrong?” Mainly Macro, May 4, 2021]

近頃は,そうそう大したことでは驚かなくなっている私だが,OECD 諸国の大半が今般のパンデミック対応で失敗したのには愕然とした.とはいえ,ジョンソンのイギリス,トランプのアメリカ,ボルソナーロのブラジル,モディのインドの成り行きに愕然としたわけではない.こうした国々が失敗する理由は,あまりに歴然としていた.なにより,パンデミックが始まる前から,「イギリスは人命を救うために経済を制限することから手を引く国になるべきだ」と,ジョンソンは考えていた.そうすることで,イギリスは世界経済でなんらかの大きな優位を得られるだろうというのが,彼の思惑だった.これによって国民保健サービス (NHS) が陥った混沌ぶりを説明されてはじめて,ジョンソンは考えをあらためた.私が愕然としたのは,ほぼ例外なく欧州本土の国々が失敗したことだ.
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サイモン・レン=ルイス「コロナウイルス景気後退からの2タイプの回復,あるいは近い過去に戻っても金権政治ポピュリズムと効果的に戦えない理由」(2021年4月12日)

[Somon Wren-Lewis, “Two types of recovery from the COVID recession, or how you cannot effectively fight plutocratic populism by returning to the recent past,” Mainly Macro, April 12, 2021]

普段は予測の話はしないのだが,先週出た IMF の世界経済予測 (World Economic Outlook) は,多くの人が言っている論点を例示している.イギリスも EU諸国も,インフレを加速しない産出水準と自分たちが信じるところまで徐々にもどしていく用意を調えている.その一方で,アメリカはオーバーシュートするアプローチをとっている.しばらく経済を少しばかり過熱させていくアプローチだ.世界経済予測から引用した下記の表は,GDP 成長の予想を示している.重要な数字は,最後の段に出てくる.これは,パンデミックが始まってから景気回復がおおよそ完了する時点までの全体的な経済成長を示している.これを見ると,2022年の成長にばかり注目するのが完全に見当外れだとわかる.だが,きっとイギリスもヨーロッパも2022年の経済成長にばかり関心をしぼることだろう.
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サイモン・レンルイス「サイモン・レンルイス「貧困層が取り残されない景気回復をうみだすよう予算を組むべきときに赤字が懸念されてしまう」(2021年3月2日)」(2021年3月2日)

[Simon Wren-Lewis, “The budget should create a balanced recovery, but instead it will be about the deficit,” Mainly Macro, March 2, 2021]

まずは,明白な論点から述べておこう.私たちはいまなおパンデミック下にある.そのため,被雇用者・自営業者・企業の支援策を継続すべきだ.また,遅ればせとはいえ,財務大臣は疾病手当も大幅に増額すべきだ.政府の対コロナウイルス戦略の成否は,そうした支援がなければ自宅にこもることもかなわない人たちに自宅にこもってもらうようはからえるかどうかにかかっている.
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サイモン・レン=ルイス「英米におけるメディアの急進化」(2021年2月8日)

[Simon Wren-Lewis, “Media radicalisation in the US and UK,” Mainly Macro, February 8, 2021]

合衆国でおきたキャピトルヒル襲撃がどれほど危険なものだったか,おそらく,合衆国外の多くの人々は認識していないだろう.議事堂の外から見た様子は,すぐにメディアで伝えられた.それでもまだ,十分に無害なものに見えた.現実は,それと大きく異なっている.5名の死者が出た.これには警官も含まれる.警官隊のバリケードを押し通って議事堂のなかになだれ込もうとしていた人々の顔を見て,ある共和党議員が述べたように――
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サイモン・レンルイス「緊縮の2つの側面」(2021年1月25日)

[Simon Wren-Lewis, “The two sides of austerity,” Mainly Macro, January 25, 2021]

『フィナンシャル・タイムズ』が〔財政政策に関する〕過去の誤りを認めたのをきっかけに,世間の議論で見落とされやすい論点を述べておこうと思う.イギリスで2010年からごく最近まで継続されて人々を苦しめた緊縮はひどいものだった.それには,2種類の理由がある.第一に,政府支出の削減(国家規模の縮小)は,たんに無駄を削ぐどころではなく支出をあれこれと切り詰めて紛れもない苦しみを引き起こした.この点に,大半の人々は関心を集中させている.第二に,マクロ経済に関わる理由がある.景気後退期に政府支出を削減するのは,けっしてよい考えではない.しかも,金利がゼロ下限にあるときに政府支出を削減したのは,災厄だった.
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