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サイモン・レン=ルイス「新たなマクロ経済政策割り当て」(2019年8月28日)

[Simon Wren-Lewis, “A New Macropolicy Assignment,” Mainly Macro, August 28, 2019]

次に景気後退が生じたときにこれを抑えられるかどうかについて中央銀行家たちが正しくも悲観的になるなか,中央銀行はインフレを目標値に維持しつつその責務を政治家に渡すときがきているのかもしれない.

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サイモン・レン=ルイス「イギリスで景気後退のさなかに財政緊縮をやった事例:1981年と2010年を比べてみると」(2019年8月3日)

[Simon Wren-Lewis, “Fiscal tightening in UK recessions: 1981 and 2010 compared,” Mainly Macro, August 3, 2019]

健康で平穏な生活を守るために,Twitter でのやりとりを控えることにしている.ただ,先日,Andrew Dentance とのやりとりを例外にした.論点は,1981年の財政引き締めが2010年の緊縮とどれくらい同等と言えるのか,という点だ.明らかに,これにはあれこれと話を整理するためにちょっと文章を書くしかない.このあと掲載するいくつかのグラフで,1981年/82年(青)と2010年/11年(赤)がGDP に占める割合でみたさまざまな財政の尺度でどう比較できるか見ていこう.(厳密に言うと,それぞれのグラフが取り上げている財政の尺度が GDP に占める割合を X とすると,青い線が示しているのは1980年/1年の X をその後数年から差し引いたもので,同じく赤い線は2009年/10年の X をその後数年から差し引いたものを示す.データの出典は予算責任局 (OBR) の公共ファイナンスデータバンク〔※OBR のデータはこちらのExcelファイルを参照.〕)

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サイモン・レン=ルイス「ヘリコプターマネー・インフレ目標・量的緩和」(2012年6月14日)

[Simon Wren-Lewis, “Helicopter money, Inflation targets and Quantitative Easing,” Mainly Macro, June 14, 2012]

経済学者向け

ヘリコプターマネーについてよく質問を受ける.それに,この政策を実施しようという要請もときおりなされてきた.(最近の例はこちら.) ヘリコプターマネーについてごく基本的な水準で私がどう考えているかを述べるなら,「ヘリコプターマネーは,一時的にインフレ目標を引き上げようという要求と同じことだ」と考えている.

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サイモン・レンルイス「緊縮の教訓はこうして学ばれずじまいになった」(2019年7月23日)

[Simon Wren-Lewis, “How the lessons from austerity have not been learned,” Mainly Macro, July 23, 2019]

イギリスとユーロ圏はどちらも来たるべき景気後退に対して脆弱だが,どちらの政治家たちも中央銀行も,「あちらが景気後退に対応すべきだ」と考えている.

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サイモン・レン=ルイス「右派ポピュリズムが成功する理由を理解する」(2019年7月6日)

[Simon Wren-Lewis, “Understanding why right-wing populism succeeds,” Mainly Macro, July 6, 2019]

このところ,『ロンドン・レビュー・オブ・ブックス』に掲載されたヤン=ヴェルナー・ミュラーの「ポピュリズムと人々」を読み返している(2019年5月).ごく簡潔ながらも,右翼ポピュリズムの台頭といういまの時代にもっとも懸念される政治の動きを慧眼で読み解いた文章だと私は思う.私が取り上げるのはトランプとファラージだが,ハンガリーのオルバーンも,トルコのエルドアンも,ポーランドのカチンスキも,インドのモディも,ブラジルのボルソナロも,共通点がある.それは:

ポピュリストの統治手法だ.その基礎をなしているのは(…)ナショナリズム(人種差別をしばしばにじませる)であり,国家をハイジャックして党派に忠実な人々の私物にすることであり,さらに,そこまで明白ではないが,経済を武器にして政治的な権力を確保することだ:つまり,文化戦争と身内びいきと大衆を相手にした政治的な恩顧主義の組み合わせが彼らの手法の基礎をなしている.

ただ,ひとつ気がかりなパラグラフがある.全文を以下に引用しておこう:

だが,これほど多くの人たちが本当に極右の見解に転向したのだろうか? 評論家たちやポピュリスト当人たちがよく述べているドミノ理論とは逆に――つまり,まず EU離脱があり,次にトランプがきて,さらにル=ペンその他もろもろが続いたという説とは逆に――西ヨーロッパや北米のどこにも,右派ポピュリストが保守本流エリートの協力なくして権力についた国はないという事実はいまも変わっていない.ファラージは彼ひとりで EU 離脱〔が国民投票で支持される結果〕をもたらしたわけではない.マイケル・ゴーヴ,ボリス・ジョンソンその他が有権者に「EU離脱はすばらしい考えだ」と請け合ってくれる必要がファラージにはあった.トランプにしても,よく決まり文句のように言われるのとはちがって,怒れる白人労働者階級による自発的な草の根運動の指導者として大統領に選ばれたわけではない.トランプは伝統的な上流階層の政党が認めた候補であり,クリス・クリスティやルディ・ジュリアーニ,ニュート・ギングリッチの支持を必要とした.こうした面々がそろってトランプにお墨付きを与えたのだ.2016年11月8日に起きたことは,ある意味ではごく凡庸な切り口で説明できる.共和党に共鳴する市民たちが家を出て投票日にすべきことをした:つまり,共和党に投票した.ここで起きたことはごく普通のことだ.いつもとちがったのは,票を投じられた候補の方はそれほど普通ではなかったという点だ.

右派が生き残るには極右に売り込みをかけるほかなく,右派には他の選択肢はなかった――これを当然視すれば,このプロセスは完璧に普通なことに見えうる.だが,元イギリス独立党のメンバーたちで自陣営が急速に膨らんでいき,そうした面々が「取り決め無用」に反対論を唱える候補者たちを非公認にしていく様を保守党がみすみす許したのは,べつに避けようのない事態ではなかった.キャメロンが EU離脱の賛否を問う国民投票を実施すると約束しつつ,離脱支持側がいったいどういうかたちの離脱を提案しているのか限定しないままにさせたのは,別に不可避な選択肢ではなかった.さらに,90年代後半から00年代前半にかけて野党の保守党とそれを支援する右派系新聞が移民問題を政治的な武器に利用しはじめたのも,べつにそうするしかなかったからではない.のちに EU離脱の下地を整える一因となった緊縮策をオズボーンが選んだのも,他に選択肢がなかったからではない.

これは,長期的にははるかに大きなコストをもたらすリスクをともなう短期的な利得を追求する選択肢だ.まちがいなく,保守党首脳部の誰かが,党員を拡大すれば有利にはたらくと考えたのだ.保守党が移民問題に注力したことで,のちにイギリス独立党の台頭につながる.そして,けっして達成されようのない移民制限目標を2010年に設定すると,これがイギリス独立党をさらに強化することとなった.キャメロンがのちに悪夢となる約束をすることになったのは,まさにこうしてイギリス独立党が強化されたからだった.オズボーンの緊縮策は労働党を悩ませ国家を縮小させた一方で,反移民の世論は強化した.

ただ,少なくともイギリスにかぎっていえば,これで話は終わらないだろう.BBC が極右を正常扱いする一方で,より広く中道が左派を悪者扱いするようになったという事情も働いている.政権とその支援新聞に圧力を受けた BBC が労働党よりも保守党に好意的な態度を取り始めたのは,周知の事実で異論の余地がない.もちろん,当の BBC は例外だが.ただ,同じくらい危険な極右の正常扱いにもこれはつながったと私は思う.極右の正常扱いは小さな事情がたくさん絡んで成り立っている:ブレグジット党立ち上げの無批判な報道,バノンとジョンソン外相のつながり〔辞任演説についてバノンがジョンソンに助言を与えた件〕に焦点を当てようとしないこと(ITV による報道はこちら),クライストチャーチのテロ襲撃事件直後に極右の代表を『ニュースナイト』に招いたこと,などなど.BBC ではさらに事態は悪いが,他の放送局にしても全面的に無罪な局はない.ブレスレット党は政党ではなく,誰も指導者を批判しない団体であり,その指導者は1930年代のファシストのイメージに通暁している人物だ.

中道が極右を正常扱いするのと組み合わさっているのが,保守党に対する主な対立勢力の悪者扱いだ.ゲイリー・ヤングを引用しよう

金融界や政界のエリート層と同じ階級を出自とするメディアエリートたちは,「選挙で選びにくい」ともっともらしく言われている労働党のリーダーシップ危機にこの間ずっと執心してきた.その労働党は,4年間同じ指導者に率いられてきた――そして,前回の総選挙では議席と得票率を伸ばしている.こうしたメディアエリートたちは,EU離脱からここ2回の選挙まで,なにか大きな政治的出来事がおこるたびにそれを不正確にとらえてきた.

50万人の党員を抱える政党で民主的に選ばれた指導者が〔メディアで〕不適格だと思われているとき,もう一方の主要政党が政治的に右へと移行するのを許すのが避けられない環境がうまれる.〔合意なき離脱への反対を回避する手として〕議会を閉会させるのを〔ボリス・〕ジョンソンが民主制への直接攻撃として除外せずにいるのを,全てのまともな報道機関はしつこく追求していてしかるべきなのに,そうしていない.一方の真実に対して嘘でバランスをとるのが理屈に合わないのと同じく,民主制への攻撃を許容するのは理屈に合わない.メディアと政治家からその種の擁護がなされないでいれば,ヤン=ヴェルナー・ミュラーがこれほど鋭く語っているポピュリズムへの移行は容易になってしまう.

サイモン・レン=ルイス「労働党の財政ルールについてビル・ミッチェルが広めている幻想」(2019年6月14日)

[Simon Wren-Lewis, “Bill Mitchell’s fantasy about Labour’s fiscal rule,” Mainly Macro, June 14, 2019]

MMT論者の一部が労働党の財政信認ルール (FCR) に行っている突拍子もない攻撃について,前回の記事でとりあげた.あの記事は経済学者でない人たちに向けた文章だったので,ビル・ミッチェルが財政ルールについて広めている幻想に紙幅を無駄に割いたり読者を退屈させたりしたくはなかった.ただ,そういう幻想の1つが Twitter のレスで何度も送られてくるので,ここでまとめておきたい.

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サイモン・レン=ルイス「労働党の財政政策ルールはネオリベラルか?」(2019年6月11日)


[Simon Wren-Lewis, “Is Labour’s fiscal policy rule neoliberal?” Mainly Macro, June 11, 2019]

労働党の財政信認ルール (Fiscal Credibility Rule; FCR) に対して「ネオリベラルだ」という批判が出ている.批判しているのは左派の一部,とくに現代金融理論 (MMT) という運動の支持者たちだ.MMT という名称を聞いてもなんのことかいまひとつわかりにくいけれど,主流とはちがう左翼のマクロ経済学の学派だ.MMT の主導者のひとりであるビル・ミッチェルはブログで財政信認ルールに対してはげしい批判を展開している.ジョナサン・ポーツと私の共同研究が財政信認ルールを支える知的な基盤を提供する助けをしたいきさつがあるので,ここで「財政信認ルールはネオリベラル」批判を馬鹿げていると思う理由を説明したい.

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サイモン・レン=ルイス「人々の量的緩和,コービンの量的緩和」(2015年8月16日)

[Simon Wren-Lewis, “People’s QE and Corbyn’s QE,” Mainly Macro, August 16, 2015]

政治家たちは,いかにも魅力的に聞こえる言葉を我田引水して巧みに利用することがある.しかも,言葉の意味を歪めながら利用してしまう.実際には最低賃金の部分的ながら大幅に引き上げることを,オズボーンは「生活賃金」と称した.これは実にあくどい命名だった.実際の生活賃金では税額控除も計算に入れているのに,オズボーンは同時にそちらを引き下げようとしていたのだ.
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サイモン・レン=ルイス「金利下限の罠,そして罠を脱出不可能にしている思想」(2019年2月2日)

[Simon Wren-Lewis, “The Interest Rate Lower Bound Trap and the ideas that keep us there,” Mainly Macro, February 2, 2019]

日本では,中央銀行が設定する短期金利が1990年代中盤からゼロ近傍にとどまっている.イギリスでこれに相当する短期金利も,2009年からゼロ近傍にある.ユーロ圏では,2014年からだ [1].べつに意図してこういう状況になっているわけではない.そして,アメリカでは短期金利がゼロより上にあるため,アメリカ中心のマクロ経済学業界ではしかるべき関心がこの状況に払われていない.
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サイモン・レン=ルイス「所得最上位層に高い税率をかけるべき理由は金銭的でもあり政治的でもある」(2019年1月24日)

[Simon Wren-Lewis, “The key arguments for high top rates of income tax are political as well as pecuniary,” Mainly Macro, January 24, 2019]

「ネオリベラルなんて無意味な概念だ」という批判を聞いたら,相手にこう教えた方がよさそうだ――「アメリカやイギリスにかぎらず他の国でも,1980年ごろから所得税の最高税率はこんな具合になっているよ」(出典; Marcel Fratzscher のご教示に感謝)
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