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サイモン・レン=ルイス「人々の量的緩和,コービンの量的緩和」(2015年8月16日)

[Simon Wren-Lewis, “People’s QE and Corbyn’s QE,” Mainly Macro, August 16, 2015]

政治家たちは,いかにも魅力的に聞こえる言葉を我田引水して巧みに利用することがある.しかも,言葉の意味を歪めながら利用してしまう.実際には最低賃金の部分的ながら大幅に引き上げることを,オズボーンは「生活賃金」と称した.これは実にあくどい命名だった.実際の生活賃金では税額控除も計算に入れているのに,オズボーンは同時にそちらを引き下げようとしていたのだ.
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サイモン・レン=ルイス「金利下限の罠,そして罠を脱出不可能にしている思想」(2019年2月2日)

[Simon Wren-Lewis, “The Interest Rate Lower Bound Trap and the ideas that keep us there,” Mainly Macro, February 2, 2019]

日本では,中央銀行が設定する短期金利が1990年代中盤からゼロ近傍にとどまっている.イギリスでこれに相当する短期金利も,2009年からゼロ近傍にある.ユーロ圏では,2014年からだ [1].べつに意図してこういう状況になっているわけではない.そして,アメリカでは短期金利がゼロより上にあるため,アメリカ中心のマクロ経済学業界ではしかるべき関心がこの状況に払われていない.
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サイモン・レン=ルイス「所得最上位層に高い税率をかけるべき理由は金銭的でもあり政治的でもある」(2019年1月24日)

[Simon Wren-Lewis, “The key arguments for high top rates of income tax are political as well as pecuniary,” Mainly Macro, January 24, 2019]

「ネオリベラルなんて無意味な概念だ」という批判を聞いたら,相手にこう教えた方がよさそうだ――「アメリカやイギリスにかぎらず他の国でも,1980年ごろから所得税の最高税率はこんな具合になっているよ」(出典; Marcel Fratzscher のご教示に感謝)
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サイモン・レン=ルイス「専門家とエリート」(2018年12月2日)

[Simon Wren-Lewis, “Experts and Elites,” Mainly Macro, December 2, 2018]

まるで2016年をそっくり再演しているかのようだ.前回の事例が多少でも基準になるとすれば,EU離脱シナリオのもとでイギリスがいまよりどれほど貧しくなるかに関する多くの予測は,イギリス国民のおよそ半数によって無視または等閑視されるだろう.おそらく,いったいどんな事態が進行中なのかを我らがイギリスの国会議員たちが理解できるようになるまで,専門家たちによる発言は完全かつ総体として閉ざしてしまうよう訴えた方がいいのかもしれない.
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サイモン・レン=ルイス「メディアマクロなお健在:それが暗示する根深い問題」

[Simon Wren-Lewis, “Mediamacro is in rude health, and is also indicative of a deeper failure,” Mainly Macro, November 2, 2018]

今度出版された拙著 [AA] で大きく取り上げている問題に,メディアマクロがある.メディアマクロとは,あたかも政府が家計と同じであるかのように財政政策がメディアで扱われている有様のことだ.メディアでは,まるでケインズなんていなかったかのようだ――学術分野としてのマクロ経済学のはじまりとなった『一般理論』が存在しなかったかのような状況になっている.大学1年生向けの経済学教科書では,かならず「政府は家計とはちがう」と解説しているにもかかわらずだ.
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サイモン・レン=ルイス「医療支出の推移」(2018年11月5日)

[Simon Wren-Lewis, “Health spending over time,” Mainly Macro, November 5, 2018]

NHS への支出が近年増加したことでイギリスの国家支出に医療予算の占める割合が伸びてきているという事実について論評が多少なされている.しばらく Flip Chart Fairy Tales(ブログ)の投稿がなくて物寂しいところでもあるし,今回はグラフ満載で記事を書いてみよう,政治報道で歯がゆいほどに伝えられていない明白な論点を1つ2つばかり指摘したい.
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サイモン・レン=ルイス「政府予算と医療」(2017年2月28日)

[Simon Wren-Lewis, “The Budget and Health Care,” Mainly Macro, February 28, 2017]

国民医療制度 (NHS) と社会的ケアへの現在の支出を大幅に増やすべき理由は明白だ.いくつかデータを示そう.1つ目は,イギリスの医療支出が GDP に占める割合が長期間にどう変わってきたのかを示す OECD のデータだ(出典).
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サイモン・レン=ルイス「イギリスの貧困:根っこからの社会変革が進められつつある」(2018年11月19日)

[Simon Wren-Lewis, “Poverty in the UK: radical social re-engineering,” Mainly Macro, November 19, 2018]

英チャンネル4の番組で,国連特別報告者がイギリスの貧困について報告した件を報道したのに続いて,クリシュナン・グル=マーシー〔チャンネル4のジャーナリスト〕と財務相のあいだで議論が交わされた.財務相が貧困と格差の傾向に関するお決まりのあれこれの統計を繰り返し持ち出して説明すると,グル=マーシーがだいたいこんなことを言った――今回の報告書では政府が貧困を認めようとしていないと言っているわけで,いまあなたは報告書が正しいと図らずも証明したわけですね.とはいえ,財務相の言い分には正しいところもある:各種の貧困統計は顕著に悪化してはいないし,日付を注意深く選べばよくなってすらいる.それに,最低賃金の引き上げで貧困層は助かっている(こちらの IFS 参照).
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サイモン・レン・ルイス「なぜBrexitは新自由主義的なのか」(2018年8月24日)

●Simon Wren-Lewis, “Why Brexit is a neoliberal project” (mainly macro, Friday, 24 August 2018

一般的に、新自由主義と言えば市場を礼賛しグローバル化を促進するといったビジネスサイドに立つ考え方のことだ。Brexitはイギリス企業の市場規模を小さくするのでグローバル化とは逆の動きになる。よってイギリス財界の多数が望むというものではないはずなのだが、実はBrexitは新自由主義的と言えるのだ。どういうことだろうか?

良い出発点は、自由貿易とは何かについての議論に戻ることである。ほとんどの人と、そして間違いなくほとんどの経済学者は、自由貿易は「貿易をする自由」を意味していると考えるだろう。この定義に従えば、企業が多くの国においてはるかにより容易に貿易することを可能にする国家間に渡って規制を調和させることは自由貿易を増大させている。理想は単一市場であるが、それはEUが財および多くのサービスについて達成したものである。

多くの新自由主義者はそのように考えるだろう。しかしそうでない新自由主義者は自由貿易をいかなる種類の政府の介入からも自由という意味とみなすだろう。単一市場は、そのルールや規制が破られているか否かを判断する法廷があるので、その意味では自由ではないように思われる。彼らの理想はあらゆる種類の国家規制から可能な限り自由な貿易となる。彼らは、調和のとれた規制ではなく最小限の規制を欲しているのである。

もし自由貿易を貿易に関する規制から自由であることという意味とみなすのがおかしいように思われるなら、おかしいと思うべきではない。どれほど多くの新自由主義者がまさに彼らがよくその意味で用いている自由市場という用語を使っているかを考えてみよう。役員報酬が自由市場によって決定されるという人がいるとすれば、その人は経済学者が市場の不完全性と呼んでいるであろう意味から離れて市場という単語を使用しており、単に政府の干渉から解放された市場を意味しているのである。オルドリベラリズムと異なり、この種の新自由主義者は、独占生産者のいる市場を自由という一方で、競争政策が独占を破った市場を政府の介入を被っているというだろう。

私は、Brexitの賛同者が強調するグローバル・ブリテンという考えは、Brexitが貿易に制約を与えるという厄介な事実から純粋に目をそらすことであるという独自の考えを持っていた。私は、自分はフェアではなかったと思う。真に新自由主義的であることは、Brexit賛成者が貿易を破壊することを望むのではなく、貿易は可能な限り規制をなくさなくてはならないことである。したがって、イギリスが、単一市場よりも規制が弱いアメリカや新興市場と取引することは、はるかに優れている。Brexitの賛同者の観点からの単一市場の問題は、それが様々な種類の強い規制に固執していることである。

このことは、なぜそれほど多くのBrexit賛成者がまた強固な新自由主義者であるように表面上見えるのかを説明する一助となる。より大きな市場へのアクセスの利益のために規制に対して妥協しようとしてきたオズボーンやキャメロンのような別の新自由主義者とは対照的に、Brexitはある種の新自由主義者にとってはある種のユートピアのための努力のようなものである。そして、新自由主義者は、それがまったく違うものであるように見せることによって国民が彼らのユートピアに投票するように欺くことについて何の懸念も持たない。同様に、彼らは、彼らのやっていることが最終的に自分たちの利益になることを理解できない企業に時間をかけて関わろうとはほとんどしない。マーケティングとしての政治は、より上手く描写すれば国民全体に対する欺瞞であるが、一般的な新自由主義的な形質である。

Brexitの賛同者は、新自由主義の理想の境地に関する彼ら自身のビジョンに触発されたグループ以外の何物でもない。オズボーンやキャメロンは小国に向けた解決策を用意していたが、Brexitの賛同者は可能な限りの少ない規制を望んでいた。どちらも、彼らのビジョンを欺瞞によって達成して、彼らが望むものを得るために語られていない欺瞞と不快さに満ちたダメージを経済に与えることにためらいがない。すべての善良なレーニン主義者のように、彼らは最終的に(Rees-Moggによれば50年後には)それが割に合うと信じている。このことは、もし新自由主義者が新自由主義の道を進めば、われわれは彼らのビジョンがもう一つの新自由主義のファンタジーであることを証明するためだけに半世紀にわたる経済的なダメージに耐えることになるだろうということを意味しているのだ。

サイモン・レン=ルイス「左派はこうして労働者階級の政党であることをやめた」(2018年10月6日)

[Simon Wren-Lewis, “How the left stopped being a party of the working class,” Mainly Macro, October 6, 2018]

トマ・ピケティが最近出した論文について,そのうち書こう書こうと思っていた.ピケティ論文は,第二次世界大戦後のフランス・イギリス・アメリカでどんな特徴が有権者が左派または右派への投票行動に影響したのかを検討している.(サイモン・クーパーがうまいタイトルの記事〔「2つのエリート層の対立:持てる者とヨット持てる者の闘い」〕でこの研究をうまくまとめている.) 下のグラフを見てもらうと,第二次世界大戦後に教育水準の高い有権者たちが右派に投票しがちになっていたのがいまや左派に投票しがちになっている様子がわかる(所得・年齢その他で統制したあとでもこの傾向は変わらない――ボックス内を参照)
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