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タイラー・コーエン 「『精神病的傾向』が高いのは『保守派』ではなく『リベラル派』? ~社会科学の悲しき現状~」(2016年7月15日)

●Tyler Cowen, “How social science got the “psychoticism” factor wrong”(Marginal Revolution, July 15, 2016)


「『保守派』は『精神病的傾向』(を測る尺度の値)が高い傾向にある」との結果を得た論文1には統計データの処理で誤りがあって、本来は「『リベラル派』は『精神病的傾向』(を測る尺度の値)が高い傾向にある」というのが正しかった・・・ってな話があったのは覚えてるだろうか? そもそもの話として、いかにして誤りが起きたんだろうか? 誤りが修正されるまでに長い時間がかかったのはどうしてなんだろうか? この件についてジェシー・シンガル(Jesse Singal)がスクープを報じている。少しだけ引用しておくと、 [Read more…]

  1. 訳注;本サイトで訳出されている次のエントリーで紹介されている論文がそれ。 ●タイラー・コーエン 「パーソナリティーと政治意識の複雑な関係」(2021年7月19日) []

タイラー・コーエン 「パーソナリティーと政治意識の複雑な関係」(2016年3月8日)

●Tyler Cowen, “Does personality cause politics?”(Marginal Revolution, March 8, 2016)


まずはじめの分析では、性格特性(パーソナリティー)と政治意識(政治的態度)との間に統計的に有意な相関関係が見出された。とりわけ特筆すべき結果をまとめると、以下のようになる。アイゼンクのP〔Pというのは、「精神病的傾向」(“Psychoticism”)の頭文字を表している。いくらか複雑な尺度〕の値が高い人ほど1、(同性愛だとか中絶だとかに不寛容であり、安全保障問題でタカ派寄りという意味で)保守寄りの傾向が強い。社会的望ましさ(Social Desirability)を測る尺度の値が高い人ほど2、(同性愛だとか中絶だとかに寛容という意味で)社会問題に関してリベラル寄りの傾向が強い。神経症的な傾向を測る尺度の値が高い人ほど3、(経済的な弱者の救済を意図した公共政策に好意的という意味で)経済問題に関してリベラル寄りの傾向が強い〔ゴシック体による強調は、引用者によるもの〕。オーストラリア人を対象とした同様の研究 (Verhulst, Hatemi, and Martin 2010)でも、我々の分析と整合的な結果が得られている。

双子のデータが分析対象になっているとのこと。以下に引用する議論には、ひどく興味を引かれた。性格特性から政治意識へという因果の向きで片がつく話じゃないようだ。

本稿で得られた一連の結果は、性格特性こそが政治意識を育(はぐく)む原因であると想定しているいくつかの先行研究(例えば、Gerber et al. 2010; Mondak et al. 2010)に真っ向から異を唱える格好になっている。性格特性が原因でリベラル寄り(ないしは保守寄り)になるわけではなく、性格特性と政治意識との間にはそれとは別の二通りの関係性が成り立つ可能性があるのだ。同じ遺伝子の組が性格特性と政治意識の双方に影響を及ぼしているというのが第一の関係性だ。これはコレスキー分解と因果モデルの分析結果から示唆される関係性だが、遺伝子という先天的な要因こそが性格特性と政治意識との間の相関関係を成り立たせているというわけだ(図1の右側のパネルを参照)。さらには、因果モデルの分析結果によると、逆向きの因果――政治意識こそが性格特性を育むという第二の関係性――が成り立つ可能性も示唆されている。すなわち、政治意識の違いを生む遺伝子の組が性格特性の違いを生んでいる可能性があるのだ。これはいくつかの先行研究(例えば、Gerber et al. 2010; Mondak et al. 2010)で想定されているのとは正反対の因果関係だが、政治意識の違いを生む遺伝子が性格特性の個人差を徐々に育んでいく可能性があるわけだ。この観点からすると、政治意識というのは、行動や環境の選択を左右する生来の気質の一つということになろう――政治意識がはっきりとかたちをとる(リベラル寄りになるか、保守寄りになるかが決まる)までには、しばらく待つ必要があるとしても――。遺伝子という要因にすべてを帰すことができるのかどうか、性格特性と政治意識との間に双方向の因果関係が成り立つのかどうかという点については議論の余地があるが、いずれにせよ、性格特性こそが政治意識を育む原因であるとの広く受け入れられている想定を大きく見直す必要があるとは言えよう。

全文はこちら

  1. 訳注;アイゼンクのPの値が高いほど、頑固だったり、協調性が低かったりする傾向にある。 []
  2. 訳注;社会的望ましさを測る尺度の値が高いほど、周りからよく見られたい(自分をよく見せたい)と思う気持ちが強い傾向にある。 []
  3. 訳注;神経症的な傾向を測る尺度の値が高いほど、不安を感じやすくて悲観的な傾向にある。 []

タイラー・コーエン 「誰かといたい保守、一人でいたいリベラル」(2008年2月25日)

●Tyler Cowen, “The personality traits of liberals and conservatives”(Marginal Revolution, February 25, 2008)


まだまだ続報がありそうだ

ウィルソン(David Sloan Wilson)&ストロム(Ingrid Storm)の二人は、その他の要因(交絡要因)の影響をコントロールするために、白人のプロテスタントである10代の若者に対象を絞ることにした。実験に協力したのは、プロテスタントの二つの異なる派に属する若者たち。その二派というのは、保守寄りとして知られるペンテコステ派と、リベラル寄りとして知られる聖公会派。

実験に参加した若者たちにはポケットベルが渡された。2時間おきくらいの間隔で呼び出し、今何をしているのか、今の気分はどうかなどといった質問に答えてもらったという。

それぞれの派に属する若者の間には、意外な違いが見出されたという。例えば、聖公会派に属するリベラル派の若者は、ペンテコステ派に属する保守派の若者よりも、強いストレスを感じて日々を過ごしているのが見出されたという。それは1日のうちで時間を問わずだが、誰と一緒に過ごすかを自分で決められない場合はとりわけ強いストレスを感じる傾向にあったという。一方で、保守派の若者に関しては、誰と一緒に過ごすかを自分で決められようが決められまいが、感じるストレスの度合いに違いは見られなかったという。意外な違いは他にもある。リベラル派の若者は一人でいるのが好きなようで、自由に使える時間の4分の1を一人で過ごしている――保守派の若者は、自由に使える時間の6分の1を一人で過ごしている――。リベラル派の若者は、一人でいる場合も、誰かと一緒にいる場合も、同じくらい退屈に感じており、一人でいる時間が多いのはそのことも関係しているのかもしれない。保守派の若者は、誰かと一緒にいる方が一人でいるよりもずっと楽しく(退屈じゃなく)過ごせており、血の繋がっていない他人(友人も含む)よりは家族と一緒にいる方を好んでいる。おそらく最も興味をそそられる違いは、信仰心の篤(あつ)さと親に反論するかどうかの関係だろう。リベラル派の若者に関しては、信仰心が篤いと自認しているほど、親と意見が合わない時に反論するのも厭(いと)わない傾向にある一方で、保守派の若者に関しては、それとは逆の傾向が見られる――信仰心が篤いと自認しているほど、親と意見が合わない時に反論を控える傾向にある――らしいのだ。

ウィルソン本人による研究の要約はこちら。うまく要約されてはいるが、数ある発見の中でも「どうだかね」っていう結果――保守派の方が同調傾向が強い――が強調されているようだね。

いつかはきっとはっきりしたことがわかるようになるんだろうけど、ランダムに選ばれたわけじゃない二つの集団であっても、まったく同じパーソナリティーを備えてるってことはあり得ないだろう。適切な比較対象を選ぶにはどうすればいいんだろうね? 信心深いプロテスタント同士を比較対象に選べば、いくつかの要因はコントロールできるんだろうけど、果たして保守派とリベラル派の典型と言えるメンバーを選び出せているんだろうかね? ペンテコステ派と聖公会派を比べてるだけなんじゃないのかね?

タイラー・コーエン 「几帳面な保守、奔放なリベラル」(2007年1月11日)

●Tyler Cowen, “Does politics reflect personality?”(Marginal Revolution, January 11, 2007)


Psychology Todayの記事によると、保守派とリベラル派の間にはパーソナリティーの面で次のような違いがあるらしい。

  • リベラル派は、保守派に比べると、奔放。部屋にモノが溢れている(部屋が散らかっている)という意味でも奔放だし、内装がカラフルという意味でも奔放。一方で、保守派の部屋は、リベラル派の部屋に比べると、整理整頓が行き届いていて、明るくて(照明の明るさが強くて)、内装はありきたり。リベラル派は保守派よりも蔵書の数が多くて、蔵書のジャンルも広い。
  • 保守派は、リベラル派に比べて、曖昧さへの耐性が低い(曖昧さを嫌う)。ジョージ・W・ブッシュ(第43代米国大統領)の発言――「私の仕事は、発言に含みを持たせることではなく、何を考えているかをはっきりと伝えることだ」/「私は決定者なのだ」――がそのいい例。
  • 保守派は、リベラル派に比べて、死への恐れが強い。
  • リベラル派は、保守派よりも、開放的。知的好奇心が強いという意味でも、スリル好きという意味でも、新しいもの好きという意味でも、創造的という意味でも、刺激を追い求めがちという意味でも。
  • 保守派は、リベラル派よりも、実直。 几帳面という意味でも、ルールにきちんと従うという意味でも、義務を重んじるという意味でも、規律正しいという意味でも。
  • 保守派は、リベラル派よりも、即断即決を重んじる傾向にあり、一度決めたことは最後までやり通そうとする傾向が強い。
  • 「死」について考えるように仕向けると――心理学者が「死の顕在化」と呼ぶ心的状態に置かれると――、多くの人は保守寄りの意見に傾く。
  • 保守派は気弱な幼児だった過去を持ちがちな一方で、リベラル派は気丈な(自信のある)幼児だった過去を持ちがち。

ちなみに、私の部屋は散らかってるんだよね。保守かリベラルかに二分するんじゃなくて、もう少し細かく分類した方がいいんだろうかね。

タイラー・コーエン 「遺伝子の中に潜む政治意識 ~政治意識は遺伝子の影響を受けるか?~」(2005年6月21日)

●Tyler Cowen, “How much is politics in the genes?”(Marginal Revolution, June 21, 2005)


ジョン・ヒッビング(John Hibbing)&ジョン・アルフォード(John R. Alford)&カロリン・フンク(Carolyn L. Funk)の3名の政治学者が着手した研究1では、8,000組を超える双子を対象にした聞き取り調査のデータが徹底的に分析されている。

その聞き取り調査では、性格特性だったり、宗教上の信条だったり、心理的な傾向だったりについて事細かに調べられているが、件の研究では、その中から政治に関わりが深いと思われる28個の質問に対する答えを抽出した上で分析が加えられている。具体的には、財産税だとか、資本主義だとか、労働組合だとか、成人向け映画(ポルノ映画)だとかに関する質問への答えに分析が加えられているが、双子の多くはすべての質問に一貫して保守寄り(ないしはリベラル寄り)の答えを返しているわけではなく、ある質問に関しては保守寄りの答え、別の質問に関してはリベラル寄りの答えを返しているという。しかしながら、28個の質問すべてを総合すると、保守かリベラルのどちらか一方にわずかながら寄っているのが見て取れるという。

件の研究では、二卵性双生児の調査データと一卵性双生児の調査データが比較されている。二卵性双生児の遺伝子の共有度は50%であり(遺伝子の半分が同じ)、この点はふつうの兄弟と変わらない。一方で、一卵性双生児の遺伝子の共有度は100%だ(遺伝子が丸々同じ)。

まずは、28個の質問それぞれに対して一卵性双生児の二人がどれだけ似た答えを返しているかを相関係数のかたちで求め、次に、28個の質問それぞれに対して二卵性双生児の二人がどれだけ似た答えを返しているかを同じく相関係数のかたちで求める。前者の値から後者の値を差し引いて2倍すると、それぞれの質問への答え――その人なりの態度――に対する遺伝子の影響を測る大雑把な指標(遺伝要因の寄与度)が得られることになる2。ただし、同じ家で育った双子は家庭環境を共有していると想定した上での話だ。

例えば、「公立学校で祈りを捧げることに賛成しますか?」という質問に関して言うと、一卵性双生児の答えの類似度を表す相関係数は0.66で、二卵性双生児の答えの類似度を表す相関係数は0.46だったという。ということは、遺伝要因の寄与度は41%3ということになる。

遺伝子の影響が最も強く表れた(遺伝要因の寄与度が一番大きかった)のは、公立学校でのお祈り、財産税、徴兵制といった質問への態度(答え)に対してだったという。現代アートや離婚にまつわる質問に関しては、遺伝子の影響はやや弱まるという。28個の質問すべてを総合すると、遺伝要因の寄与度は53%。28個の質問への態度(答え)の違い――保守寄りか、リベラル寄りかの違い――の53%は、遺伝子の違いによって説明できるというわけだ。

しかしながら、似たような政治的イデオロギーの持ち主同士が結婚する「同類婚」の可能性を考慮して分析をやり直すと、双子が共和党と民主党のどちらを支持するかは、親から受け継いだイデオロギー(遺伝要因)よりも、しつけや人生経験といった環境要因にずっと強く影響されることが見出されたという。共和党と民主党のどちらを支持するかの違いに対する遺伝要因の寄与度はわずか14%だというのだ。

記事の最後は、次のように締め括られている。しかめっ面をするしかないね。

超党派で協力して国が一つになる未来はどうもやって来そうにないとのこと。その理由は、政治的なイデオロギーが似ている相手と一緒になる「同類婚」志向が強まっていることもあって、遺伝子のプールに偏(かたよ)りが出てこざるを得ないためだという。

全文はこちら

  1. 訳注;John R. Alford, Carolyn L. Funk and John R. Hibbing(2005), “Are Political Orientations Genetically Transmitted?“(The American Political Science Review, Vol. 99, No. 2, pp. 153-167) []
  2. 訳注;この点については、例えば次のページも参照されたい。●安藤 寿康, “第2回「遺伝子は『不都合な真実』か?」(1)”(日本子ども学会、2013年2月23日) []
  3. 訳注;=(0.66-0.46)×2 []

アレックス・タバロック 「日差しの中を散歩してインフルエンザに(新型コロナにも?)備えよう」(2020年11月15日)

●Alex Tabarrok, “Sunny Days Protect Against Flu”(Marginal Revolution, November 15, 2020)


ビタミンDのサプリメントは、安くで手に入れられる。しかし、日差しの中を散歩するのは、もっと安くで済む。私の話になるが、コロナ禍がはじまって間もないうちから、ビタミンDのサプリを摂るようにしているし、日差しの中を散歩するようにもしている。私のやっていることが無駄ではなかった証拠をスラスキー(David J.G. Slusky)&ゼックハウザー(Richard J. Zeckhauser)の二人が挙げてくれている1[Read more…]

  1. 訳注;草稿はこちら(pdf)。 []

マイルズ・キンボール 「コロナの科学 ~コロナから我が身を守るためのサバイバルガイド~」(2020年6月23日)

●Miles Kimball, “June 2020 Covid-19 Science Roundup”(Confessions of a Supply-Side Liberal, June 23, 2020)


読者のうちの誰か一人のためにでもなればと思って、「コロナの科学」関連の最近のニュースの中から有益なやつをかき集めてこようじゃないかと思い立った。その大半は、少し前に「4タイプの異質性:ロックダウンに頼らずに新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるのは可能か?」(“4 Types of Heterogeneity that Offer a Bit of Extra Hope for Keeping the Pandemic Under Control without Blanket Lockdowns”)と題された拙エントリーで述べたことを追認してくれている。すなわち、新型コロナウイルスへの感染のしやすさは、(a) 近くにいる人の数、(b) 他人と接触する時間の長さ、(c) 他人との距離、(d) マスク着用の有無、によって左右される可能性があるのだ。「新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を記録する州が続出。カリフォルニア州ではマスクの着用が義務付けられることに」(“California Requires Face Coverings as Some States See Daily Record Cases”)と題された2020年6月18日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事(執筆しているのは、ジェニファー・カルファス記者)では、新型コロナウイルスへの感染のしやすさを左右する他の要因として、(e) 所在場所の通気性の良し悪し、および、(f) 会話の声量、の二つが挙げられている。

最近の研究によると、他人と近距離で接触したり、人が密集するイベントに出かけたり、通気性が悪い場所にいたり、大声で会話したりすると、新型コロナウイルスに感染するリスクが高まることが見出されている。その一方で、屋外であれ屋内であれ、他人と接触する時間を短く抑えることができれば、新型コロナウイルスに感染するリスクをいくらか下げることができるという。かような発見は、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が国民に対してロックダウン解除後もマスクの着用とソーシャルディスタンス(自発的に他人との距離を保つこと)の徹底を求める根拠となっている。

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マイルズ・キンボール 「空気をきれいにすることも大事だよ ~通気性が悪い屋内にいると、新型コロナウイルスに感染する危険性が高まる~」(2020年9月3日)

●Miles Kimball, “Indoors is Very Dangerous for COVID-19 Transmission, Especially When Ventilation is Bad”(Confessions of a Supply-Side Liberal, September 03, 2020)


 

ニュースを見ていてつくづく実感させられるのは、新型コロナウイルスに感染するかどうかを左右する上で「ウイルス量(ウイルス負荷)」(“viral load”)がいかに重要かということだ。大量のウイルスに曝(さら)されるのは、少量のウイルスに曝されるのに比べると、ずっと危険なようなのだ。このことから次の二つの帰結が導かれることになる。 (a) 他人と近い距離にいる時間の長さによって新型コロナウイルスへの感染のしやすさは変わってくる。(b) 所在場所の通気性の良し悪しによって――屋外のような通気性がいい場所にいるか、屋内のような通気性が悪い場所にいるかの違いによって――新型コロナウイルスへの感染のしやすさは変わってくる。

あるいは、こうも言い換えられるだろう。できることなら、家族以外の赤の他人と屋内で長時間一緒に過ごさないこと。 どうしても赤の他人と屋内で長時間一緒に過ごさなければいけないようなら、マスクを着用せよ。相手との距離を保て。通気性をよくするためにできる限りのことをしろ。飛行機に乗らないといけないようなら、エアコンの吹き出し口を開けて、その間近の席に座れ(飛行機には高性能のHEPAフィルターが搭載されていて、機内の空気が清められているのが普通だ)。 [Read more…]

スコット・サムナー 「真の解決策はロックダウンじゃない。マスクだ。」(2020年6月12日)/「マスクは空の旅でも有効」(2020年10月23日)

●Scott Sumner, “Masks, not lockdowns”(TheMoneyIllusion, June 12, 2020)


折角のチャンスをふいにしてしまったことが日に日に明らかになる一方だ。それもこれも、あれやこれやの「悪人」たち(私もそのうちの一人)のせいだ。

(新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための)真の解決策は、「マスク着用、検査(PCR検査)、ソーシャルディスタンス(自発的に他人との距離を保つ)」・・・だったのに、ロックダウン(都市封鎖)に乗り出してしまった。(2020年)2月前半の段階で「マスク着用、検査、ソーシャルディスタンス」を徹底していたら、新型コロナウイルスによる死者の総数は115,000人(11万5千人)じゃなくて、115人を下回っていた可能性だってある。この国で「マスク着用、検査、ソーシャルディスタンス」を徹底するのは政治的に無理ってことはよくわかってる。でも、やはり言っておかなきゃいけない。折角のチャンスをふいにしてしまったんだよ。

最新の研究結果によると、人口の半分(50%)が公共の場でマスクを着用するようにしたら、それだけでR0(基本再生産数)を1未満に抑えられる可能性があるとのこと。東アジアの一部の国のように、人口のほぼ100%がマスクを着用するようにしたら、R0の値は1を大幅に下回る可能性があるとのことだ。

この研究によると、多くの人が症状の有無にかかわらず公共の場でマスクを着用するようにすると、症状が現れてからマスクを着用する場合と比べて、基本再生産数を減らす効果が倍増することが見出されている。

件の研究では様々なシナリオが検討されているが、どのシナリオでも、人口の50%以上がマスクを日頃から着用するようにすれば、基本再生産数が1未満に抑えられることになる――それゆえ、新型コロナウイルスの感染拡大が抑えられ、対抗措置としてのロックダウンも比較的緩やかで済む――との結果が得られている。

ついでに、お気に入りのイラストも紹介しておこう。

 

ワシントン・ポスト紙の報道によると、月に700万枚の医療用マスクを製造できる設備を持った会社の製造ラインが5月まで止められていたらしい。政府の愚かしい介入によってね(おそらくは、便乗値上げを規制しようとしたんだろう)。

警察官でさえマスクを着けてないっていうんだから、何て言ったらいいんだろうね?

アメリカ人は、あまりにも長いこと甘やかされてきちゃったみたいだね。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「一番安全なのは何食を出してるレストラン?」(2020年3月14日)/スコット・サムナー 「レストランでテラス席を選ぶ理由」(2020年8月25日)

●Tyler Cowen, “Which are the safest restaurants to eat in?”(Marginal Revolution, March 14, 2020)


科学的な調査結果の裏づけがあるわけじゃなくて、あくまでも個人的な印象に過ぎないと断っておくが、身の安全(健康への影響)を重視するなら、母国がコロナウイルスでトラウマになるような経験を味わっていて、加熱処理が施されている料理を提供しているレストランに行くのがいいんじゃないかと思う。母国が辛酸をなめていることもあって、リスク(コロナの感染リスク)に相当真剣に向き合っているだろうからね。その一方で、コロナ対策がなおざりな国から輸入されていて、加熱処理されていないサラダを出しているレストランは避けといたほうがいい。

言い換えると、中華料理が一番安全だろうと思われるのだ。さらには、中国から(アメリカへ)の入国が制限されていることもその根拠の一つに加わるだろう。というのも、母国(中国)でコロナに感染したコックやウェイターが店内にいる可能性は(入国が制限されていることもあって)極めて小さいからね。翻って、イタリアからの入国は今のところは制限されていないし、空港で細かいチェックがされてるわけでもない。

さらに付け加えておくと、中華レストランは(『密』じゃない)郊外にあることが多いし、一つのテーブルに詰め込まれる客の数も少なめだ。

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●Scott Sumner, “Why I dine outside”(TheMoneyIllusion, August 25, 2020)


レストランで食事をする時は、これまでとは違って、屋外(テラス席)で食べるようにしている。どうしてかって? 韓国で起きた出来事がその理由を説明する助けになってくれるだろう。

新型コロナウイルスに感染した女性がソウル近郊にあるスターバックスの店舗を訪れてから数日後に、その場に居合わせた他の顧客27人が新型コロナ検査で陽性であることが判明した。しかし、マスクを着用していた従業員4名は感染を免れた。

韓国の北部にある坡州(パジュ)市で起きた今回の集団感染は、新型コロナウイルスが狭い屋内空間でいかに急速に拡散し得るかを示す新たな事例であると同時に、感染を最小限に抑えるためのヒントを提示してもいる。マスク着用の効果については世界中の保健当局の間でも未だに論争が続いているが、店内にはエアコンが取り付けられていたにもかかわらず27人が集団感染してしまったわけであり、マスクの着用を義務付けることが新型コロナウイルスの拡散を抑える一助になる可能性を指し示していると言える。

レストランだったり商店だったりに入店する時は、マスクは勿論着けている。でも、マスクを着けたままでは食事できない。だから(マスクを外しても比較的安全な)屋外で食べる、というわけだ。

(追記)韓国では、コロナの感染率はかなり低い。そのことを踏まえると、27人はそれぞれ別の場所で別の時刻に感染したわけじゃなく、同じ場所で同じ時刻に感染した――つまりは、件のスターバックスの店舗で感染した――可能性が高い。ところで、マスクを着用していた従業員4名は今のところはまだ誰もコロナに感染していないようだ。