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タイラー・コーエン「スポックはどれくらい合理的だった?」(2021年4月17年)

[Tyler Cowen, “How rational was Spock?” Marginal Revolution, April 17, 2021]

[ジュリア・]ゲレフは,こうした予測がどれほど当たっているのか気になって,正確に知りたいと考えた.「そこで,『スタートレック』全エピソードと映画版を全部通して調べてみたんです――見つけられるかぎりすべての書き起こしを調べて――それで,スポッックが「確率」「見込み」「偶然」「確実に」「おそらく」といった単語を使っている事例を検索してみました」とゲレフは言う.「スポックがなにか予測した事例をすべてカタログにして,その予測が当たったか外れたかをまとめていきました.」

その結果はどうなったか.ガレフの新著『スカウト・マインドセット』にも述べられている結果は,惨憺たるありさまだった.スポックの予測実績はひどいものだったし――「不可能」とスポックが言っていた出来事の 83パーセントは実現していた――,そればかりか,スポックの確信度は現実と逆相関していた.「しかじかのことが起きるという予想に――宇宙船が大破するとか,生存者が見つかるとか,その手の予想に――スポックが自信をもっていればいるほど,その出来事は起こりにくいんです.そして,スポックの自信が小さいほど,その出来事はよく起こります」とゲレフは言う.

スポックの最大の弱点は,他人がいつでも「論理的に」ふるまうとはかぎらないことを理解し損ねているところだ.また,スポックは自分のアプローチを更新しようと試みない.自分の失敗が仲間が死ぬ憂き目になってもなお,アプローチを改めようとしないのだ.

Wired の記事全文はこちら.ジュリアの新著はこちらから購入できる.テレビシリーズに比べて映画版の方がスポックは合理的になってたりしないかな.あと,ファンの二次創作だとどうだろう? 劇的な不合理性がとりわけ強く求められる場面って,どんなのだろう? その理由は?

タイラー・コーエン「どうしてもっと多くの人が大学に進学しないんだろう?」(2021年4月2日)

[ Tyler Cowen, “Why don’t more people go to college?” Marginal Revolution,  April 2, 2021]

American Economic Journal: Macroeconomics に掲載されてるこの論文は,Bryan Caplan の議論にいくつかの点で通じるものがありそうだ:
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タイラー・コーエン「パンデミックのあいだ,個人破産は減少」(2021年3月31日)

[Tyler Cowen, “Personal bankruptcies have declined during the pandemic,” Marginal Revolution, March 31, 2021]

政府による支援で所得が下支えされ,住宅ローンや学資ローンの返済が猶予されたことで,このパンデミック期に個人破産の手続きに入った人々の数は急激に減少した.

Epiq のデータによれば,連邦破産法第7章にもとづく消費者による破産手続きは,2019年に比べて昨年は 22% 減った.他方で,第13章にもとづく個人の破産手続きは 46% 減少している.2019年から2020年第1四半期にかけて 5万件以上の手続きがなされたあと,パンデミックが発生した昨年3月以降にとられた破産手続きはいまなお 4万件を下回っている.

これと対照的に,事業破産の申告は 29% 増加した.Epiq によれば,7,100以上の事業者が連邦破産法第11章の適用をもとめているという(…)

経済学者や破産専門弁護士によれば,立ち退き・差し押さえ・学生ローン返済を連邦政府が停止したことが,破産件数を抑える助けになっているという――とはいえ,支援の終了後に破産率が上昇するのではないかと彼らは懸念している.コロナウイルスを避けるために人々が自宅にとどまり旅行をキャンセルし対人距離を維持するなかで,世帯支出も減少した.世帯への直接給付や失業手当の強化などをともなう数回にわたる政府の支援により,所得は下支えされた.個人貯蓄率は上昇した.

続きは『ウォールストリート・ジャーナル』の記事で.

タイラー・コーエン「いたるところに市場あり:メーン州のマリファナ」(2021年3月28日)

[Tyler Cowen, “Maine marijuana markets in everything those new service sector jobs,” Marginal Revolution, March 28, 2021]

メーン州では,マリファナの使用・所有は合法だ(限度量までであれば).でも,マリファナを売ったり人にあげたりするのは違法になってる.じゃあ,いったいどうやって譲渡されてるんだろう?
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タイラー・コーエン「チャーター都市がついにホンジュラスで開始?」(2021年3月27日)

[Tyler Cowen, “Charter city finally in Honduras?” Marginal Revolution, March 27, 2021]

民間で統治されるチャーター都市のプロジェクトとして,「プロスペラ」がホンジュラスから初の承認を受けた.プロスペラは全国的プログラムとして2013年に開始された.プロスペラには独自の憲法に相当するものがあり,政治的代表と法的な係争の解決のための各種枠組みをもった3,500ページにのぼる法典を備えている.また,最低賃金(ホンジュラスよりも高い)と所得税(大半の場合よりも低率)もある.5年近くにわたる開発をへて,この夏の移住希望者からの応募の検討に入ることを来週にも発表する予定だ.

最初の植民者は e-住人となる.プロスペラの住宅地はまだ整備が完了していないため,入居できない.だが,建設が完了しても,大半の住人たちは当地に足を踏み入れることはないだろうとプロスペラの主要所有者 Erick Brimen は言う.かわりに,同地の事業の法人をおいたりよそで生活しつつ地元の雇用主と雇用契約を結んだりするために住民登録する人々がプロスペラ人のおよそ 3分の2を占めるだろうと,Brimen は予想している.

チャーター都市を研究する人類学者 Beth Geglia によれば,長年にわたる論争を経て,チャーター都市という賛否の分かれるリバタリアンのアイディアを現実世界で検証する初の事例がプロスペラになるという.「Próspera Zede プロジェクトが実現に向かって動き出すまで,スタートアップ都市運動全般は顕著に低調になっていました」と彼女は言う.「これがグラウンドゼロなんです.」

リンク先の記事にはかなり詳しい話がある.これが軌道に乗って続くなら,喜んで訪問して報告するつもりだ.

タイラー・コーエン「名声の性質」(2021年3月26日)

[Tyler Cowen, “The nature of fame,” Marginal Revolution, March 26, 2021]

1930年代初頭,アルバート・アインシュタインはハリウッドで来客した友人のチャーリー・チャップリンをもてなしていた.2人はエルザ・アインシュタインが焼いたタルトを楽しみながら,のんびりおしゃべりしていた.そんななか,アインシュタインの息子がチャップリンに話を向けた.「チャップリンさんは人気者ですよね」と息子.「人気の理由は,あなたが大衆に理解されているからです.ところが,こっちの大学教授の人気は,大衆に理解されていないことに理由があります.」

上記は, Charles Seife の新著『ホーキング,ホーキング:とある科学界セレブの売り出し方』から.

タイラー・コーエン「大学教授陣の社会経済的な出自」(2021年3月25日)

[Tyler Cowen, “Socioeconomic roots of academic faculty,” Marginal Revolution, March 25, 2021]

STEM,社会科学,人文学の8つの学術分野で合衆国内にあるPhDを授与する学部の教授 7218名を対象とした調査を用いて,本研究では,教授陣の子供時代の推定世帯所得中央値が国民全体よりも 23.7% 高く,また,教授陣は PhD をもつ親がいる確率が 25倍高いことを見出した.さらに,一流大学ほど PhD をもつ親がいる教授の割合は高くなっている.この点は過去 50年間で変わらず安定している.

論文の全文はこちら.このネタは Twitter のあちこちで話題になっている

タイラー・コーエン「新たなマクロ戦争についてノア・スミスが言ってること」(2021年3月24日)

[Tyler Cowen, “Noah Smith on the new macro wars,” Marginal Revolution, March 24, 2021]

この新しいマクロ経済学戦争でなにより面白いのは,学術研究にほぼまったく出番がないところだ.2011年は,ゼロ下限だのDSGEモデル対誘導型モデルだのといった話をめぐって論争が交わされていた.いまはどうかと言うと,たしかに学者は論争に参加してるけれど,実際の論文が議論に持ち出されるところはめったに見かけない.論文が引っ張り出されてきても,それはほぼきまって実証論文で,理論論文じゃない.

なんでだろう? 学者たちみずからが論争に関わってないなら,それでかまわないと言ってよさそうだ.「論争してる人たちは研究文献を知らないんだね」ですむ.でも,学者が参加していて,彼らは研究文献のことを間違いなく知ってて,それでいて論文を話に持ち出さないわけだよ.それに,Twitter の経済論争が軽薄だからとか,参照文献が足りてないからというわけでもない――たとえば最低賃金の論争では,しょっちゅう論文が引用されてる.

どうしてこうなったか,いろんな仮説が思い浮かぶとことだろう.でも,みんなが学術的なマクロ理論の有用性を信じるのをやめてしまったことに理由があるのはかなりはっきりしているように,ぼくには思える.マクロ経済学の教授たちはいまもいるし,マクロ経済学の研究をやって,理論論文を書いて,けっこうな給料をもらってる――というか,中村恵美,ジョン・スタインソン,ユーリ・ゴロドニチェンコ,アイヴァン・ワーニングみたいな面々が教授職についていて,マクロ理論の分野は最高の才能がひしめいている.それに,こうした面々はいい人たちで,自分たちの仕事を真剣にやってるし,政治的な物語を押し立てたりもしていない.

ただ,問題は,マクロ理論がものすごく,ものすごく難しいってことだ

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タイラー・コーエン「どうして経済成長がはじまったのか」(2021年3月23日)

[Tyler Cowen, “When Did Growth Begin?” Marginal Revolution, March 23, 2021]

――という論文が出た.副題は「1250年~1870年のイングランドにおける生産性成長の新たな推定」で,Paul Bouscasse, Emi Nakamura, Jon Steinsson の3名による共著だ:

1250年から1870年にかけてイングランドで生産性がどう推移したか,その推定を本稿では提示する.この期間に実質賃金に強く影響を及ぼしていたのは,疫病で増減を誘発された人口の変動だった.本稿では,こうしたマルサス的な経時変化を考慮した生産性推定の新手法を開発し実地に試す.我々が用いた標本では,早い時期の生産性成長はゼロなのが見出される.生産性の成長は1600年にはじまっている――名誉革命のほぼ1世紀前だ.1600年以降の生産性成長には,2つの局面がある:最初の局面は1600年から1810年で,10年あたり 4% の穏やかな成長を見せている.その後,産業革命の時代に急速に加速して10年あたり 18% の成長を見せている.我々の証拠は,成長がはじまった理由に関する諸説を区分する助けとなる.とりわけ,17世紀イングランドのブルジョワ的制度改革に先立って広範な基盤をもつ経済的変化が起こり,これが制度改革を引き起こす助けとなったかもしれないという考えを我々の発見は支持している.また,本稿ではマルサス的人口要因が実質賃金に及ぼした影響の強さを推定する.そうした要因は弱く,1800年以降の生産性成長に容易に圧倒される程度にすぎない.
我々の発見は,

Via Anton Howes. 著者の一人である Steinsson が関連した連続ツイートをしている.

タイラー・コーエン「セックス欠乏の原因」(2021年3月2日)

[Tyler Cowen, “Causes of the sex drought,” Marginal Revolution, March 2, 2021]

若い男性たちのあいだでは,飲酒頻度の減少,コンピュータ・ゲームで遊ぶ時間の増加,親と同居する人たちの割合の増加がすべてカジュアルセックスの減少に有意に寄与する.若い成人の経済状況・インターネット利用・テレビ視聴に見られる傾向が近年のカジュアルな性的活動の減少を説明するという証拠を,著者たちは見出していない.

上記は Scott J. South & Lei Lei からの抜粋.via 目利きの Kevin Lewis