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タイラー・コーエン「間違ったAmazon批判」

Tyler Cowen “The rant against Amazon and the rant for Amazon” Marginal Revolution, September 19, 2018


ワオ!こうした問題すべては買い手独占と売り手独占(monopsony and monopoly)タイプの市場集中によって引き起こされているってことをこんなにも一生懸命否定しようと頑張ってるなんて驚きだ。Amazonと競合するのが簡単だと思うかい?Amazonが各産業に参入を考えたとき,それによってその産業の競合他社の株価がどうなったか考えてみなよ。従業員への支払いを低く抑えるためにAmazonがその市場影響力とブランドネームを使っていないとでも?同じものを使って政治家のインセンティブを引き出してない?経済に占める企業利益の割合は記録的な高さになっているけど,それはどうやって維持されてると思う?こうしたことに目をつぶって企業の力が増しているのを否定しているのはどんな思惑からかな?論理的とは思えないね。

上はSteven Wolfによるコメント1 。Amazonについては正当な非難というものもありうるけれど,このコメントはこれだけの短い中に驚くほど多くの間違いを含んでいる。 [Read more…]

  1. 訳注;景気回復にも関わらず賃金の上昇が鈍い,資本収益率が高い,国内投資が弱いといったアメリカ経済の異変について,その原因は資本の移動が自由であることや投資家が高利益を求めるようになったからだではないかという趣旨のコーエンの過去記事についたコメント。つまりSteven Wolfは,コーエンはごちゃごちゃ屁理屈をこねているけれど,今の経済問題はAmazonが市場の支配力を濫用して人々から搾取しているのが原因だろうということを述べている。 []

タイラー・コーエン「現金給付に効果はあるか」

Tyler Cowen “Chris Blattman is becoming more skeptical of cash transfersMarginal Revolution, September 12, 2018


以下はネイサン・フィアラとセバスティアン・マルティネスとの共著によるクリス・ブラットマンの新しい論文だ。

2008年,ウガンダは数百の小集団に対し,しっかりと訓練を受けた上で個人商売を始められるよう一人当たり400ドルを給付した。その4年後に行われた実証評価では,給付によって収入が38%上昇したことが確認された。9年後に再度確認したところ,こうしたスタートアップ給付は貧困からの脱脚というよりもスタートダッシュとして機能したことが分かった。現金受給者による投資は頭打ちとなる一方で,対照群1 は事業や一時的な雇用を通じて次第に所得を増加させたため,両者の雇用,収入,消費において収斂した。現金給付は資産,技能労働,そして場合によっては児童の健康に対して持続的な影響を与えたが,死亡率,出産率,保健,教育に対してはほとんど効果が見られなかった。

以前に僕が行ったクリス・ブラットマンへのインタビューはここから読めるけど,そこでも同じような結果について議論されている。

  1. 訳注:現金給付を受けていないグループ []

タイラー・コーエン「履歴書不要,先着順で雇います」

[Tyler Cowen, “Open hiring,” Marginal Revolution, September 8, 2018]

履歴書不要.面接ナシ.身元確認ナシ.

一部の企業では,伝統的な採用方法をやめて,応募者を誰でも先着で雇いはじめている――その他は一切不問だ.

ニューヨーク州ヨンカーズにあるグレイストン・ベーカリーはこの採用方式をトレードマークにして,「不問採用」(open hiring) と称している.ファースト・カンパニーによると,同ベーカリーとこの採用方式は36年前にバーニー・グラスマンがつくったのだという.(略)

「やり方は単純ですよ」とブレイディは『ニューヨーク・ビジネス・ジャーナル』に語った.「ベーカリーをざっと見て知ってもらって,名簿に名前と電話番号とメールアドレスを書いてもらって,人員の空きができたらこちらから電話をかけて,『働きに来てもらう用意はできてますが』と伝える,それだけです」

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タイラー・コーエン「古いオーケストラ向けコンサートホールのほうが音が良いのはなぜ?」(2015年12月4日)

Tyler Cowen, “Why older halls for symphony orchestras sound better than new ones?“(Marginal Revolution, December 4, 2015)

ヴィトルト・リプチンスキーによると、それは大きさと形の問題だという。ウィーン楽友協会(1870年建設)、コンセルトヘボウ(1888年建設)やボストンシンフォニーホール(1900年建設)といった古いコンサートホールは〔長方形の〕シューボックス型になっている。オーケストラはホールの先端に位置し、「音は(約18-24メートル離れた)平行な2枚の壁と天井で反響して聴衆に届く。聴衆は演奏家たちに比較的近いところにいるため、空間は視覚的にも聴覚的にも親密だ」。

収入のためにより多くの座席が必要となり、それがコンサートホールに座席数を最大で3000まで膨張させ、ホールが良い音を響かせるのをより難しくした。とりわけ「ベース音を壁で反響させる」ことが難しくなった。

更に、異なったホールは異なった「残響」時間があり、ゆえにホールが違うタイプの音楽に使われるほどホールのデザインは妥協を招くことになる。理論的には、グレツキとバッハの演奏には別々のホールがあるべきだ。なので、多目的ホールが理想的な音を作り出すのは稀だろう。

これは彼の新しい本 Mysteries of the Malls and Other Essys(188-192ページ)の中にすべて書かれている。

タイラー・コーエン 「サマータイムが導入されると電力需要(電力消費量)はかえって増える?」(2008年2月27日)

●Tyler Cowen, “Daylight savings time increases energy usage”(Marginal Revolution, February 27, 2008)


少し前(2006年)に(アメリカの)インディアナ州全域でサマータイムが導入されるという「自然実験」が行われた(それまではインディアナ州では一部の地域(郡)だけでサマータイムが実施されていた)。その実験の結果についてマシュー・コチェン(Matthew Kotchen)& ローラ・グラント(Laura Grant)の二人が次のように報じている(pdf)1

サマータイムは――政策意図とは反対に――(インディアナ州における)一般家庭の電力需要を高めたというのが我々が見出した結果である。具体的にはサマータイムの導入に伴って電力需要は全体で1~4%ほど高まったとの推計結果が得られているが、サマータイムが電力需要に及ぼす効果はサマータイムの期間を通じて(季節ごとに)違いがあることも見出された。サマータイムが始まったばかりの春の間は電力需要は抑制される傾向にあるが、そのような省エネ効果は時とともに(春から夏、夏から秋へと季節が移りゆくにつれて)徐々に弱まっていってやがては電力需要は抑制されるのではなく高められる方向へと向きを転じることになる。そして電力需要が高められる効果は秋を迎えてサマータイムが終わる頃にピークに達する傾向にあるようなのだ。我々が見出した結果はサマータイムに備わるトレードオフ――照明用の電力需要を抑制する一方で冷暖房用の電力需要を高めるというトレードオフ――を考慮に入れたシミュレーション結果とも整合的である。我々の(サマータイムの期間が延長された2007年以前のデータに依拠した)推計結果によると、サマータイムはインディアナ州の住民全体が支払う電気代を一年あたり860万ドルだけ上乗せする効果を持っただけではなく、(電力需要を高めるのに伴って)二酸化炭素や大気汚染物質の排出量を増大させることで一年あたり160万~530万ドルに上る社会的費用を生み出すに至ったと見積もられている。

つまりは、サマータイムが導入されると照明が使われる機会は減る(照明の使用に伴って支払う電気代の額は抑えられる)一方で、エアコンが使われる機会は増える(エアコンの使用に伴って支払う電気代の額は増える)というわけだ。コチェン&グラントの研究についてはウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載のこちらの記事でも概要が紹介されているが、文中での次の指摘には注意を払っておきたいところだ。

サマータイムには二人(コチェン&グラント)の研究では考慮されていない社会的な便益も備わっているかもしれない。エドワード・マーキー上院議員が中心となってサマータイムの期間延長が提案された際にその論拠として(サマータイムの実施に伴って)夕方に日が照っている時間が伸びると「犯罪や交通死亡事故の抑制、余暇時間の増大、経済活動の活性化」につながると説く研究結果が引き合いに出されている。

  1. 訳注;学術誌に掲載されたバージョンはこちら。なお、もう少し詳しい内容については本サイトで訳出されている次の記事を参照されたい。 ●マシュー・コチェン&ローラ・グラント 「サマータイムは省エネにつながるか? ~インディアナ州における『自然実験』の結果は何を物語っているか?~」(2018年8月21日) []

タイラー・コーエン「続・統計的差別」

[Tyler Cowen, “More on statistical discrimination” Marginal Revolution, August 18, 2018]

先日の筆者の統計的差別仮説に関する投稿に、もしそれが正しいとすれば、「トップに立った」少数派の人は、それほど多数の選別や暗黙の「税」を潜り抜けてきたのだから、相当なやり手のはずだ、という趣旨の反論をいくつかいただいた。筆者は電子メールで次のような返事を書いた(修正込み)。

そうかもしれませんね。でもあたなは、どの部門でも才能の質は変わらないと決めつけているように思います。

世の中に2種類の部門があるとしましょう。1つ目はCEO部門で、女性が統計的差別に直面し、複数の階段があるような部門です。2つ目は統計的差別のない部門で、他にも例はありますが、仮に女子テニス部門と呼ぶことにしましょう。

才能のある女性のほとんどは、自分が実際にもっとも簡単に成功しそうな場所がどこかを判断できるので、後者の部門にばかり押し寄せる可能性があります。そのような場合、CEO部門の勝者は、差別の存在を考慮に入れても、必ずしもそれほど特別ではないことになります。

これはまた、雇用主や仲介者には、特にそのような才能を発掘するインセンティブがないということでもあります。そのような才能は、他のより差別の少ない部門に逃げ出しているからです(付け加えれば、そのせいでCEO部門の賃金も下がります)。

余談だが、この投稿に対して、Willittsから次のような鋭いコメントがあった:

…スキルのシグナルが「経験年数」だとすると、低い地位でふるい落とされる人は、高い地位でも常に客観的に低評価になるでしょう。

あなたは高い地位の意思決定者に、どこの馬の骨ともわからない候補を考慮する機会(と意欲)があると見なしているし、さらに、そのようなどこの馬の骨ともわからない候補に、選別を経た候補に対する優位性をシグナリングする適切な手段があるとも見なしています。

私は史上最高のCEOになれるかもしれませんが、経営経験がないので、面接を受けることすらできないでしょう。梯子の複数の段での(軽度の)差別が、トップの直前の段に登ることすら妨げているとすれば、トップの段に登れる可能性は、ほんのわずかな可能性はおろか、完全にゼロでしょう。

そしてこれはディヴィッドのコメント:

エリートは一生涯通じて優れた業績を挙げています。でも、彼らが高いモチベーションを維持できるのは、すぐ出世できるからです。統計的に差別されている人は、そのような恩恵からも無縁です。

そしてこれはJwilli7122のコメント:

そう、最初の関門には被差別集団を採るような博打をする動機がありません。その理由は、a)その段階ではまだ大きなギャップがないから、b)そんなことをするとステレオタイプ化の恩恵(Danの3番目の投稿で参照しているベイズ分析を参照)を放棄することになるからです。

そして被差別集団がその後の関門に来る段階になると、その前の関門での差別によって貴重な経験を積む機会を妨げられているので、実際に大きな能力ギャップが形成されることになります。

筆者はこの問題について考え続けていくつもりだ。

タイラー・コーエン「統計的差別が社会的に最適ないしベイズ合理的な水準よりも強いのはなぜか」

[Tyler Cowen, “Why statistical discrimination is higher than is either socially optimal or Bayesian rational” Marginal Revolution, August 16, 2018]

制度の中にあるのが軽度の統計的差別だけであるとしよう。統計的差別とは、偏見ではなく、単に特定の仕事で一部の集団が他の集団より成功する確率が高い、という社会的判断だ。たとえば、大多数の人は、女性がNBA(訳注:全米バスケットボール協会のこと。MBAではない。為念)に入れるとは思ってないだろうが、だからと言ってそれが偏見だとは筆者は思わない。

だがここで、さらなる仮定を導入してみよう。世の中には評価の階層が複数あって、各階層の人や組織は、人材発掘者、師匠、指導者として成功していると思われたいと願っている。高校はよい大学に入る学生を育てたい。大学は最高の大学院に入るか最高の職に就く学生に投資したい。会社は、たとえ他社であってもいいから、CEOに昇進するような社員を雇いたい。などなど。そしてこの「ゲーム」には階層が10段階あるとしよう。

各段階には、意図的かどうかはともかく、固有の「統計的差別税」が課せられる。たとえば、CEOの段階では、女性に対する(軽度の)統計的差別があるとしよう。未来のCEOを雇って育てたいと願う会社は、低い地位であっても女性を雇う確率は低くなるだろう。これは意識的なバイアスかもしれないし、違うかもしれない。たとえば、その会社は特定の性格的特徴を持った人を探すことにしていて、その特徴は何らかの理由で女性にはあまり見られない特徴なのかもしれない。そのような会社は単純に、優れた人材を発掘する会社として賞賛されるような決断をするだろう。

大学も同じような要因を考えて判断するだろうし、高校もそうするだろうし…、以下同文となる。均衡状態では、このゲームの10段階すべてにおいて、意識的なバイアスがあるかないかに関わらず、差別せよという神の御心にしたがって、部分的な「統計的差別税」が課せられる。

これは読者にもお馴染みなのではないか? これはミクロ経済学で言う二重/多重限界化のジレンマにちょっと似ている。「差別税」の量は、各段階で累積される。ちょうど中世の貴族たちが運河の通行税を何重にもかけたように。当初の軽度の統計的な差別は、落選に関わるような多数の段階で適用されることにより、突然軽度なものではなくなる。(二重限界化の問題からわかるように、各供給者は、制度内の他のところで貿易の利益に対して課されるマークアップ(つまり「税」)の影響を計算に入れていない)。

だから、制度内の誰もが利己的に行動したとすると、仮に「ベイズ合理的」な統計的差別の水準が5パーセントの割引だとしても、被差別集団に対する実効税率はこれよりはるかに大きくなる可能性がある。

そしてもちろん、このような「税」は、効率はおろか正義にとっても有害なレベルで、被差別集団のやる気を失わせるだろう。

(この議論の役に立つ質問をAnecdotal氏からいただいた)。

タイラー・コーエン「密度の経済学:ベルリンの壁でわかること」

[Tyler Cowen, “The economics of density: evidence from the Berlin Wall,” Marginal Revolution, August 16, 2018]

Ahfeldt, Redding, & Wolf の論文から:

ベルリンの壁は都市発展の主要な源泉をつきとめる独特な自然実験を提供してくれる。本研究(先日、今回の研究で名誉あるフリシュ・メダルを著者たちは授与された)では、ベルリンが分割されたとき東ベルリンの歴史的な中央商業地域に近い西ベルリンの東側で不動産価格と経済活動がどのように下降しはじめ、その後、東西ドイツ統合後の1990年代に同地域がどのように発展しはじめたかを示す。理論でも実証的な証拠からも、「累積的な因果関係」の好循環で都市の密度と生産性のあいだにプラスの関係があることが確証される。

Via the excellent Samir Varma.

タイラー・コーエン「テレビとセックス頻度」

[Tyler Cowen, “Television and the frequency of sex,” Marginal Revolution, August 6, 2018]

代替関係はほんと,いたるところにあるもので:

本論文では,テレビ所有と性交頻度の関係を検討する.五大陸80ヶ国の全国的世帯調査の4百万人近くから得られたデータを使用する.研究結果からは,テレビが性生活を消し去ったわけではないものの性生活の停滞には関連していることがうかがえる.もっとも控えめな推定でも,テレビを所有していると,その人が過去1週間にセックスした確率がおよそ6パーセント減少するという関連がある.これは,テレビ視聴と性的活動との間に小さな度合いの代替関係があることと整合する.世帯の豊かさと生殖関連の保健知識はこの関連を後押しする要因ではないらしい.

以上は,Adrienne Lucas & Nicholas Wilson の新しい NBER 論文から引用.

タイラー・コーエン「どうしてマックで宿泊するの?」

[Tyler Cowen, “Why sleep in a McDonald’s?” Marginal Revolution, August 7, 2018]

ある研究によれば,マクドナルドの店舗で宿泊する人たちの数が,過去5年間で6倍に増えている.この傾向の原動力になっている一因に,家賃の上昇と基準未満の居住環境がある.居住環境がよくないために,とくに都市部の焼け付くような気候で生活が耐えがたくなっている面があるのだ.

国際青年会議所が組織して有志によって6月に行われたこの調査では,過去3ヶ月にマクドナルドの店舗で一晩眠ったことのある人々334名を見つけている.市内で24時間営業している110店舗のうち,84店舗で宿泊する客が見られたという.

この数字は,2013年に行われた同様の調査の6倍だ.2013年の調査では57名しかこうした人々は見つかっていなかった.当時,彼らは「マック難民」「マック宿泊民」と広く呼ばれた.

ツェンワン〔香港〕の1店舗では,30名をこす宿泊客が滞在した.今回の調査に依れば,全店舗でも最大の人数だという.

研究者たちは30名以上のマック難民に詳しい聞きとり調査をすることができた.年齢は19歳から79歳で,57パーセントが仕事をもっており,71パーセントはアパートの部屋を借りたり所有したりしている.「マック難民は無職やホームレス」という通念とは異なる結果だ.

マックで宿泊する理由を訪ねられて彼らが答えた理由の1位には,「居心地」・「安全」と並んで「空調」が来ている.その下に続くのが,「高い家賃」「家族とのいざこざ」「マックでできる対人関係」「基準未満の居住環境」となっている.

全文はこちら.via Kevin Lewis