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タイラー・コーエン「40年前のトラクターがいまアツい――実用品として」(2020年1月8日)

[Tyler Cowen, “40-year-old tractors are now a hot commodity,” Marginal Revolution, January 8, 2020]

1970年代後半から1980年代にかけて生産されたトラクターが中西部でこのごろ人気商品になっている――べつに,骨董品としてではない.

コストに敏感な農家は,お得な掘り出し物を探し求めている.この時代のトラクターは,つくりがしっかりしていて機能面も問題ない.しかも,洗練されたソフトウェアで動作する最近のモデルとちがってややこしくない上に修理代も高額にならない.

「こういうトラクターに囲まれて育った人間なら,愛着を覚えるもんで,それも要因ではありますがね.でも,それだけじゃないんですよ」とピーターソンは言う.「こいつらは頑丈そのものなんすよ.1万5000時間使ってもまだ動くし,どっか壊れたらすぐ直せちまう.」

ネブラスカを本拠とするディーラーの「BigIronオークション」は,先月,3,300台の農業機器をオンラインのオークションに出して2日でさばいた.このディーラーは,2019年に「ジョンディーア 4440」モデルのトラクターを 27台販売している.

ジョンディーア社がアイオワ州ウォータールーの工場で1977年から1982年にかけて製造した同モデルは,内部部品にいっそう強固で重いものを使用してより出力の大きいエンジンを支えたトラクターで,同社の「アイロンホース」シリーズのなかでも一番人気だった.大きく安全なキャビンをもち,1960年代に登場していまや標準になった設計をさらに発展させていた.

このトラクターが,動作時間が短い完動品の状態で売りに出ると――トラクターはたいてい 1万2000時間~1万5000時間の耐久性能がある――すぐさま競り合いの戦争がはじまる.レイクシティで農業機器オークションに動作時間 2,147時間の1980年製ジョンディーア 4440 が出てくると, 43,500ドルで落札された.8月にビンガムレイクで動作時間わずか 826時間の1979年製ジョンディーア 4640 がオークションに出ると,61,000ドルで落札された

もしかしてトラクターは大停滞してるのかも.ことによると,製品として後退してる部分すらあったり? Adam Belz の記事はこちら.(via Naju Mancheril)

タイラー・コーエン「知性格差が拡大中?」(2019年12月5日)

[Tyler Cowen, “Is the inequality of intelligence increasing?” Marginal Revolution, December 5, 2019]

「重大な格差とは~」と,かつてよく言われたものだけど:
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タイラー・コーエン「大卒プレミアムが *ゼロ* に?」(2019年12月26日)

[Tyler Cowen, “Is the college wealth premium *zero*?” Marginal Revolution, December 26, 2019]

これはなんともびっくりだ:

大卒でない家族の所得に比べて,大卒の世帯主がいること以外は似ている家族が余計に稼ぐ所得を大卒の所得プレミアムという.この大卒プレミアムはいまもプラスではあるものの,近年の卒業生を見てみると下落が続いている.大卒の資産プレミアム(〔大卒でないこと以外は似ている人たちと比べたときの〕追加の資産)は,1940年以降に生まれたすべての世代で顕著に下がり続けている.1980年代生まれの非ヒスパニック系白人世帯主を見ると,大卒の資産プレミアムは歴史的な低水準にある.他の人種・民族集団をみると,統計的にゼロと区別がつかない[太字強調はコーエンによるもの].2016年消費者金融調査ではじめて利用できるようになった変数を用いて検討したところ,本人の親の教育水準を揃えた場合,大卒と院卒の所得・資産プレミアムは 8%~18% 下がるのがわかった.また,回答者の金融に関する見識を示すさまざまな計測値――これには生得的な部分もあるかもしれない――を揃えて比較したところ,大卒・院卒の学位が加える価値は 30%~60% 低下していることもわかった.これらを総合すると,大学・大学院の教育を金融投資として見た場合,近年の卒業生では失敗になっていることが我々の分析結果からうかがえる.本稿では,さまざまな説明を検討し,大卒資産プレミアムが低下しているのは,生まれた年による偶然・金融の自由化・高等教育のコスト増大に起因しているかもしれないという結論を示す.

上記は,William R. Emmons, Ana H. Kent, Lowell R. Ricketts による論文からの引用だ.著者たちはセントルイス連銀の所属で,どこかの(大学で教育を受けた)変人ではないよ.

Via 優秀なる Samir Varma

タイラー・コーエン「堅実性 vs. 長時間労働」(2019年11月25日)

[Tyler Cowen, “Conscientiousness vs. working hard,” Marginal Reovlution, November 25, 2019]

韓国は堅実性で下から2位だが,労働時間で見ると1位にある.韓国は例外ではない.国レベルでみたビッグファイブ性格特徴の報告書によると,堅実性は労働時間と関連していない.さまざまな国で,労働時間と堅実性のランクは負の相関を示している.ただし,統計的に有意ではない.

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タイラー・コーエン「男女交際に関する実におどろきのデータ」(2019年11月16日)

[Tyler Cowen, “Pretty stunning data on dating,” Marginal Revolution, November 16, 2019]

全体をとおして面白いけれど,ばつぐんに面白いのは pp.5-6 で,男性が女性をどう評価するのかと,女性が男性をどう評価するのかを比較している.そのうち,半分はこんな感じ〔交際相手マッチングサイト OKQupid のデータ〕:
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タイラー・コーエン「結婚する誘因の減少と労働力からの男性の撤退」(2019年10月31日)

[Tyler Cowen, “Declining marriage incentives and male withdrawal from the labor force,” Marginal Revolution, October 31, 2019]

1965年以降,これほど多くの若い男性が労働力から撤退しているのはなぜだろうか? 本稿では,男性が就業して婚姻パートナーとしての価値を高めるのに時間を投資するモデルを提示する.この時間投資に対する婚姻市場での見返りが低下すると,あまり望ましくなくなった婚姻市場に対応して,若い男性の就業も低下する.この予測をデータと照らし合わせることで,婚姻における性別役割の特化がもつ価値を低下させる2回の介入のあと,就業をもとめる若い男性が減ることを本稿は示す.その2回の介入は,次のとおり:i) 一方的な離婚制度の採用と,ii) 需要に応じた女性の就業機会の改善.次に,本稿では構造的な推定を用いて,労働市場に生じたショックが雇用に及ぼす影響を,そのショックに対する婚姻市場における内生的な調節が決定することを示す.こうした発見により,若い男性の労働市場参加の低下に婚姻市場の変化が重要な要因としてはたらいていることが確認される.

上記は,ミシガン大学で雇用市場の研究で博士号をとろうとしている Ariel J. Binder雇用市場論文から.

タイラー・コーエン「都市の歩きやすさは経済的な階層移動を促進する?」(2019年10月6日)

[Tyler Cowen, “Does walkability boost economic mobility?” Marginal Revolution, October 6, 2019]

貧しい家庭出身の子供たちが,大人になってから経済的な階層のはしごを上に登っていく機会がどれくらいあるのか――これを「世代をまたいだ経済的な上方への移動しやすさ」という (intergenerational upward economic mobility).この移動しやすさは,公正な社会に欠かせない特徴だ.アメリカでは,上方への移動しやすさが地域によって大きく異なっている.本研究は,上方への移動しやすさが都市によって容易であったり困難であったりする理由を検討した.我々の研究は,住民の上方への社会的な移動しやすさの鍵となっている要因が都市の「歩きやすさ」(walkability) にあるとつきとめた.「歩きやすさ」とは,自動車を使わずにどれくらいかんたんに用事をすませられるかということだ.まず,我々は1980年から1982年のあいだに生まれたアメリカ人およそ1000万人の租税データを利用して,歩きやすさと上方への階層移動とに関係があることをつきとめた.この関係は,経済要因と心理要因の両方に関係していることもわかった.366万人以上を対象としたアメリカコミュニティ調査 (American Community Survey) のデータを用いて検討したところ,歩きやすい都市の住民の方が自動車を所有しているかどうかによって雇用や賃金にちがいが現れにくく,上方への階層移動への障害を1つ顕著に減らしていることが明らかになった.これに加えて,2つの研究を実施した.このうち1つは〔データ収集前に仮説や分析計画を〕あらかじめ第三者に登録した研究だ(アメリカ人 1,827名,韓国人 1,466名).これらの研究から,より歩きやすい地域に暮らす人々の方が,地域コミュニティに所属している感覚が強いことがわかった.このコミュニティへの所属感覚は,個人の社会階層の変化と結びついている.

Oishi, S., Koo, M., & Buttrick, N. R. による論文はこちら.via Anecdotal.

タイラー・コーエン「エスカレーターを歩くのは非効率か」

Tyler Cowen “Is it inefficient to walk up the escalator?” Marginal Revolution, September 29, 2019


ロンドンでのとある調査によれば,74.9%の人は歩くよりも立ち止まることを選び,このことは特にエスカレーターが長いほど顕著だ。この「右側は立ち止まる用,左側は歩く用」ルールのせいで,通勤者の約25%の人に50%のスペースを与えていることになる。

ここで,ラッシュアワーで「立ち止まる用」の側にエスカレーターに乗ろうとしている人が列をなしている場合を考えてみよう。これは直観に反するように見えるかもしれないが,通勤時間を減らそうとしてエスカレーターを歩く人たちは,実のところそれ以外の全員を遅れさせているのだ。

効率性を脇においても,エスカレータを歩くことが良くないかもしれない理由がもうひとつある。安全性だ。エスカレーター事故は私たちが考えているよりもずっと身近なものだ。

CBCの調査によれば,モントリオールの地下鉄ではエスカレーター事故が2日に1度の割合で起きている。アメリカでは,毎年約10,000件エスカレーターに関係した怪我で緊急治療室に運び込まれている。

こうした被害者の多くがエスカレーターを歩いていたとみられる。東京でのとある調査では,2013年から2014年にかけて発生したエスカレーター事故の約60%が,歩いたり駆け上がったりといったことを含むエスカレーターの不適切な使用が原因だった。

ミシェル・ドーソン経由で知ったこの記事の全文はこちらから。だがしかし,エスカレーターを歩くことを選ぶ人たちが立ち止まることを選ぶ人たちよりも時間に対してはるかに高い価値をつけているのであれば,エスカレーターで歩くことは効率的になる。実際にそんな場合はありえるかな?

タイラー・コーエン「紛争の発生頻度は世界でどう変わってきたか」(2019年9月19日)

[Tyler Cowen “Frequency of conflict initiation worldwide,” Marginal Revolution, September 19, 2019]

上の画像は,Bear F. Braumoeller が書いた興味深い新刊『現代における戦争の永続』(Only the Dead: The Persistence of War in the Modern Age) から.

この本は,世界がだんだん平和になってきているっていうピンカーの説を批判するのに大部分を割いている(ピンカーはヨーロッパ限定の,より楽観的なデータだけを示している).本文から抜粋しよう:

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タイラー・コーエン「(特に日本の)経済学者はイデオロギーバイアスがあって権威に弱い?」

Tyler Cowen “Ideological bias and argument from authority among economists” Marginal Revolution, September 5, 2019 


と,いうのがモフセン・ジャブダーニとハジュン・チャンの新論文のテーマだ。以下は論文要旨からの抜粋。

19か国の経済学者に対してオンラインでのランダム化対照実験を行うことで,我々は経済学者たちの見解に対するイデオロギーバイアスの効果を検証した。我々は参加者に対して様々なテーマに関する有力な経済学者の言説を評価するよう求めるとともに,それぞれの言説の主張者の名前は参加者に知らせずにランダムに割り振った。各言説について,参加者は主流派経済学者の名前,イデオロギーの異なる非主流派ないしは主流派色の薄い経済学者の名前,名前なしのいずれかを提示された。我々は,イデオロギーの異なる非主流派ないしは主流派色の薄い経済学者の名前や,名前がないことが,言説に対して経済学者たちが同意を示すのを有意に減少させることを見出した。これは経済学者たちが自らに抱いているイメージとは相反する

以下は論文の本文内から

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