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タイラー・コーエン 「ネットに転がる経済学のフリー教材」(2014年2月11日)

●Tyler Cowen, “Free economics resources on-line”(Marginal Revolution, February 11, 2014)


オースティン・フラクト(Austin Frakt)のブログエントリーより。

無料で利用できる(ないしは廉価で手に入る)経済学の教材(ただし、良質でなきゃいけない)を探しているところだ。独学用としても使えそうな教材。これまでの調査の成果を以下に掲げておくが、すべてに細かく目を通したわけではないので質に関しては(「良質」と言えるかというと)保証はできない。個人的には(私の専門である)医療経済学の方面に特にこだわりがあるわけではなく、どちらかというとミクロとマクロの対比に興味がある(とは言え、そこまで強いこだわりがあるわけではない)。経済学であれば細かい分野は問わない。何かしらめぼしい教材を御存知であれば(あるいは以下に掲げる教材を実際に利用した経験がおありなようなら)ご意見を頂戴できたら幸いだ。

教科書についてもご意見をお聞かせ願いたい。新品で買うとかなり値が張る品もあるかもしれないが、そのあたりのことは気にせずに好きな教科書をお教え願いたい。中古だったり古い版であれば独学者でも買ってもいいと思える値段で手に入る場合もあるかもしれないしね。参考になるかどうかはわからないが、私がここ最近で一番じっくり読んだ教科書はコーエンとタバロックが共著で執筆している『Modern Principles』だ。ミクロ編には強い感銘を受けたし、マクロ編も楽しく読ませてもらった(コーエン&タバロック本に対する私なりの所見は例えばこちらのエントリーを参照してもらいたい)。サンテール(Rexford Santerre)&ノイン(Stephen Neun)の(医療経済学のテキストである)『Health Economics』も読んだばかり。少しばかり協力させてもらったということもあり、バイアス込みでお薦めしておくとしよう。

コメント欄を一時的に開けておくのでご意見をお寄せいただきたいと思う。

ウォルター・アントニオッティ(Walter Antoniotti)がこちらのページに経済学のフリー教材のリンクをまとめている。タバロックに相談したらプレストン・マカフィー(Preston McAfee)の(無料の)テキストをお薦めされた。

タイラー・コーエン「エコノミスト 売春宿へ行く」

Tyler Cowen “An Economist Walks into a Brothel” Marginal Revolution, April 20, 2019

というのがアリソン・シュレーガーの新著のタイトル。副題は「そしてその他のリスクを理解するための予期せぬ場所」,以下はその本からの抜粋。

多くの点で,その売春宿はほかのどんな職場とも似ていた。しばしば週ごとのスタッフミーティング(多くの企業と異なるのは,女性たちがしばしば奇抜な帽子を被ったりお茶を飲んでいたりするところだ),金融アドバイザー,歩合ボーナス,そして社宅すらあった…

しかし,ホフ(オーナー店長)が価値を提供したところといえば,買い手と売り手双方のリスクを低減したことによる。

その売春宿で一番稼ぐ女性は年間で60万ドルの売り上げを誇り,その約半分がホフの懐に入る。そしてその売春宿のオーディションのため,女性たちは事前の費用(旅費,服装)としておよそ1,500ドルの投資を行うが,最終的に仕事を得られるかの保証はない。

米公共ラジオ局によるアリソンのインタビューはこちら

タイラー・コーエン「セックス景気の後退」(2018年11月14日)

Tyler Cowen ”The sex recession” Marginal Revolution, November 14, 2018


以下はThe Atlanticのケイト・ジュリアンの記事

ジェネレーションX1 やベビーブーマー世代2 も,過去の世代が自分と同年齢だったときよりもセックスする回数が少ない可能性がある。トウェンジは総合的社会調査によるデータを用いることで,1990年代から2014年にかけて平均的な大人のセックス回数は年62回から54回に減少したことを発見した。個人レベルの話であればこの減少に気づくことはないかもしれないが,国として見た場合には大量のセックスが失われていることになる。最近トウェンジは最新の総合的社会調査による2016年以降のデータを観察し,それによれば彼女が研究を行ってから2年の間にセックスの頻度はさらに落ち込んだという。

一部の社会科学者は,トウェンジの分析面に反論を行っている。それ以外にも,彼女のデータ参照元は高い評価を受けているもののセックス研究に完璧に合ったものではないという声も聞かれる。しかしながら私がこの研究についてインタビューを行ったそうした多くの専門家のうち,2018年の平均的な若年成人は数十年前の世代が同年代だった頃と比べてセックスの回数が少ないという考えにまともに異を唱えた人はいない。また,この現実が一般の認識と齟齬をきたしていることを疑う人もいなかった。すなわち,私たちのほとんどはほかの人は実際よりもずっと多くのセックスをしているといまだに考えているのだ。

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  1. 訳注;おおよそ1960年代と1970年代生まれの世代 []
  2. 訳注;第二次大戦後~1960年代半ばの世代 []

タイラー・コーエン「なんでみんなセックスしないの?」(2005年5月9日)

Tyler Cowen “Why don’t people have more sex?” Marginal Revolution, May 9, 2005


以下は当ブログの熱心な読者であるマイケル・ヴァッサーのコメント

どのような形態の帰結主義も,性的な行動の解釈に多大な困難を伴います。端的にいえば,説明できないセックスの不足があるのです。女性も男性もその他のほとんどの活動よりもセックスを楽しく思う(これは平均としての話で,私がそう感じるかは別の話です)ことを示す研究や,セックスが本質的に低コストであることを踏まえれば,おおざっぱな推定に推定したとしても,効用を最大化する人はほとんどの人よりもおそらく多くの時間をセックスすることに費やすように思えます。この点に関する経済学的な議論を何かご存知でしょうか。

僕らに必要なのは正当事由というよりも,取引を拒むことから利益が生じる理由だ。いくつか考えられるところを挙げてみよう。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「大学院時代の思い出 ~マイルズ・キンボールはじめその他大勢の同窓と過ごしたハーバード大学の博士課程での日々を振り返る~」(2012年7月10日)/「アラン・クルーガーよ、安らかなれ」(2019年3月18日)

●Tyler Cowen, “Reminiscences of Miles Kimball, and others”(Marginal Revolution, July 10, 2012)


マイルズ(キンボール)は私と時を同じくしてハーバード大学の博士課程に進学した同窓の一人だ。同窓の院生の中で経済理論への理解の面で誰よりもキレキレだったのはマイルズとアビジット・バナジー(Abhijit Banerjee)の二人。彼らを相手に講義で何かを教えるというのはとんでもない恐怖だったに違いない。二人ともこの上なく紳士的な人物ではあったが、講義の最中に黒板の上に書き付けられる説明だったり論文の中の記述だったりに間違いや曖昧なところがあれば二人によってツッコミが入れられること間違いなしだったものだ。マクロ経済学の最終試験でのこと。アビジットが問題の一つを解いていると教授陣が用意しているであろう模範解答は間違いであることに気付き、そのことを指摘。自力で正しい解を導き出すだけではなく、その他にも答え(解となる均衡)が複数あり得ることまで発見。そこまでやって試験の残り時間はまだたっぷり・・・なんて出来事もあったものだ。スティーヴン・カプラン(Steven Kaplan)も同窓の一人。今では実証家(実証研究を専門とする学者)として知られている彼だが、院生時代には理論家として秀でた才能を示していた。マイルズ、アビジット、スティーヴンの三人が仲間内での理論談義の多くで主役を務めていたものだ。物静かな性格ということもあって理論談義にはあまり口を出さなかったものの、マティアス・ドュワトリポン(Mathias Dewatripont)も理論をお手の物としていた一人だった。二年上の先輩にはアラン・クルーガー(Alan Krueger)がいたが、数ある実証論文の中から一体どれが重要なものかを見抜くピカイチの鑑識眼を備えているだけではなく、実証研究のイロハに精通してもいる人物との評判を勝ち得ていたものだ。アランはラリー・サマーズ(Larry Summers)から多くを学んだようだ。ヌリエル・ルビーニ(Nouriel Roubini)も同窓の一人。何もかも知り尽くしているかのようなオーラを放っていていささかお疲れ気味なように見えることも時にあったが、概して物静かだったという印象だ。 [Read more…]

タイラー・コーエン「無職:良い仕事はみんなどこへいってしまったの?」(2019年2月26日)

Tyler Cowen, “Not Working: Where have all the good jobs gone?“(Marginal Revolution, Feb 26, 2019

これはデヴィッド・G・ブランチフラワー著の新しい本のタイトルだ。以下は本文の抜粋のひとつ。

学歴の高くない人々向けの給与が高くて労組のある民間部門の仕事はなくなって久しい。1982-84年を基準にした恒常ドルで見ると、アメリカ合衆国の2018年4月の民間生産および非管理職労働者(現業職)の実質週給は、ピークだった1973年に比べて約10%低い。イギリスでは2018年の実質賃金は2008年の水準より6%低い。

そして、

金融危機後は、労働市場不振の主な指標として、不完全就業1 が失業の代わりになっていることがあげられる。

これは今日の労働市場に何が起こっているのか再考したいひとにはとても良い本だ。彼の見解では、低迷している賃金動向からも明らかなように、まだたくさん〔労働の〕余裕がある。6月に発売予定だが、ここで予約できる。

  1. 完全雇用に達していない雇用水準のことで、そのため労働者が一般の雇用標準未満の労働時間や日数などの条件で雇用されている状態 []

タイラー・コーエン「女性議員は男性議員よりも有能か」

Tyler Cowen “Do Congresswomen Outperform Congressmen?” Marginal Revolution, August 22, 2018


というのが2011年に全米政治学ジャーナルに掲載されたサラ・F・アンジアとクリストファー・R・ベリーの論文だ。以下はその論文の要旨。

有権者が女性候補に対して投票しない傾向にあるなら,最も才能と勤勉さを備えた女性候補者のみが選挙プロセスを勝ち抜くだろう。 [Read more…]

タイラー・コーエン「IQ経済学 > 行動経済学」(2019年1月31日)

[Tyler Cowen, “IQ economics > behavioral economics,” Marginal Revolution, January 31, 2019]

本稿では,行政データと調査にもとづくデータを用いて,認知能力 (IQ),経済予想の形成,代表的な男性人口の選択の関係を研究する.中央値を上回る IQ の男性(高 IQ 男性)は,そうでない男性にくらべて,インフレ予想の誤りが 50% 低い.高 IQ 男性ではインフレ予想とインフレ認知が時間経過とともに正の相関を示す一方で,そうでない男性ではこの相関が見られない.また,高 IQ 男性は数字を大まかに丸めたりありそうもない数字を予想する場合がより少なかった.選択について見ると,高 IQ 男性だけは,消費者オイラー方程式が推奨するようにインフレ率が高くなると予想したときにだけ消費性向を高める.教育水準・所得・社会経済的な地位・雇用状況は,重要ではあるものの,IQ によって予想や選択が異なる傾向を説明しない.我々の研究結果からは,家計消費・貯蓄・投資に関して〔IQのちがいに応じて〕信念が異なるモデルにさまざまな含意が導かれる.

この引用は,Francesco D’Acunto, Daniel Hoang, Maritta Paloviita, & Michael Weber が新しく出した NBER ワーキングペーパーから.

タイラー・コーエン「奴隷制と《啓蒙》に関するスティーブン・ピンカーの考え」(2019年1月26日)

[Tyler Cowen, “Steven Pinker on slavery and the Enlightenment,” Marginal Revolution, January 26, 2019]

ピンカーがいろんな批判に Quillette で反論している.そのなかから,彼の反論をひとつ引こう:
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タイラー・コーエン 「ピカソ、リヒター、ポルケ ~変幻自在な『概念的イノベーター』~」(2006年2月19日)

●Tyler Cowen, “The versatility of conceptual innovators”(Marginal Revolution, February 19, 2006)


デビッド・ガレンソン(David Galenson)の論文のアブストラクト(要旨)より。

パブロ・ピカソにゲルハルト・リヒターにジグマー・ポルケ。いずれも現代美術を代表する重要な画家であり、三人ともに画風(作品のスタイル)を幾度も――時にガラリと――変えたことで知られている。その変幻自在ぶりは美術史家の間で悩みの種となっているが、ピカソ研究者にしてもリヒター研究者にしてもポルケ研究者にしても研究対象である画家の変幻自在ぶりをその画家だけ(ピカソだけ/リヒターだけ/ポルケだけ)に備わる特異な特徴として見なそうとする傾向にある。三人の変幻自在ぶりの背後に控える「共通の根」を捉え損なってしまっているのだ。実のところ、変幻自在さというのは「概念的イノベーター」によく見られる特徴なのだ。「概念的イノベーター」の対極にいるのが「実験的イノベーター」だ。「概念的イノベーター」は個別具体的な目標(課題)を掲げてそれが解決されたと自覚されると新たな目標(課題)へと切り替えを図る傾向にある一方で、「実験的イノベーター」が掲げる目標(課題)は抽象的で解決するのが難しい。そのため、「実験的イノベーター」は生涯を通じて一つのスタイルに固執する傾向にある。一つのスタイルに囚われずに次々と革新を続ける「概念的イノベーター」は20世紀アートの世界に屹立する重要な存在である。その原型とも言えるのがピカソであり、その後にはマルセル・デュシャンからダミアン・ハーストへと至る数々の顔ぶれが続く。変幻自在ぶりは画家の中の「概念的イノベーター」(「概念的な画家」)だけではなく、アートのその他の分野における「概念的イノベーター」にもさらには学者の中の「概念的イノベーター」にも備わる特徴である。「概念的イノベーター」の変幻自在ぶりの背後に控える「共通の根」を認識することを通じて人間の創造性についての理解が深められることになろう。

(学者の中の「概念的イノベーター」の例として)「ケネス・アロー」の名前が脳裏に浮かぶが、同じくって人はいるかな? ライプニッツなんかはどうだろうね? こちらの本では「万物を知悉せし最後の男」(トマス・ヤング)について詳しく掘り下げられている。ガレンソンの論文はこちらだ。