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タイラー・コーエン「人工子宮って政治的に左っぽい?右っぽい?」(2022年1月20日)

[Tyler Cowen, “Are artificial wombs a left-wing or right-wing proposal?” Marginal Revolution, January 20, 2022]

〔※訳者の補足: イーロン・マスクが人口減少について発言したツイートを発端に,「人工子宮が実現したら子供をつくりやすくなる」「男女の負担の差がなくなる」etc. のネタがひとしきり盛り上がっていた流れでの文章です〕

一方では,人工子宮は出生主義寄りだから,右っぽい.

他方で,人工子宮は(うわべだけは?)フェミニストっぽい.つまり女性の負担を軽減するわけだからね.その点で,左っぽい.
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アレックス・タバロック「体験じゃなくモノを買え!」(2022年1月15日)

[Alex Tabarrok, “Buy Things Not Experiences!” Marginal Revolution, January 15, 2022]

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モノじゃなく体験を買うべきだって考えがよく言われるようになったけれど,根拠をよく考えてこれに反論してるいい文章を Harold Lee が書いてる:
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タイラー・コーエン「今日の事実:日本編」(2022年1月11日)

[Tyler Cowen, “Japan facts of the day,” Marginal Revolution, January 11, 2022]

同調査によれば,海外で働いたり学んだりしたい人々,日本で外国人と働きたい人々,外国語を学びたい人々の数は昨年に比べて減少した.とりわけ顕著な点を挙げれば,「仕事で英語を使いたい」人々の割合は2020年のピークから 10.6ポイント下がって,38パーセントとなった.

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タイラー・コーエン「どうして会議ってあんなダメなんだろう?」(2022年1月3日)

[Tyler Cowen, “Why are meetings so bad?” Marginal Revolution, January 3, 2022]

Andrew Alexander が疑問を書いてる

どうして会議ってあんなダメなんだろう? 会議について言われる批判は,だいたい決まっている(e.g. 目的があやふや,時間の浪費,リーダー格によるプレゼンや司会進行のおそまつな技術).そういう批判の大半は,おおよそ正確だ.会議がロクでもない理由がそこまでおなじみのものになっていて,しかもダメである理由も正確にわかってるんだったら,どうして会議がいまだにダメなんだろう?

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ノア・スミス「2022年に向けてのテクノ楽観主義」

[Noah Smith, “Techno-optimism for 2022,” Noahpinion, December 8, 2021]

いまわくわくしてなきゃおかしい技術の展開

去年,このブログをはじめたとき,これはテクノ楽観主義のブログだよって明言しておいたんだけど,このところその看板からちょっとばかり遠ざかってしまった気がしてる.べつにテクノロジーについて前ほど楽観的でなくなったわけじゃない.ただ,経済政策だとか社会不安だとか中国経済だとかコロナウイルスだとかの話題についついうっかり注意をそらされてただけだ.でも,ここであらためて,初心に立ち返ってみたい.
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タイラー・コーエン「Airbnbでの民族差別」(2021年12月31日)

[Tyler Cowen, “Ethnic discrimination on Airbnb,” Marginal Revolution, December 31, 2021]

本研究では,Airbnb から得られたデータを使用して,民族的少数派ホストに対する差別の根底にあるメカニズムをつきとめる.同じ居住地域内で,民族的少数派集団のホストたちは同等の宿泊物件よりも請求金額が 3.2 パーセント少ない.〔利用者による宿泊先の〕レイティングにより宿泊客たちは物件の質についてますます豊かな情報をえられるようになっているため,統計的差別の寄与分を計測できる.これは Altonji & Pierret (2001) の先行研究にもとづく.本研究では,民族による価格差がすべて統計的差別で説明されうることを示す:すなわち,かりに観測不可能なものがすべて明らかにされれば,民族による価格差は消失するだろう.また,当初の民族別の価格差のうち 4分の3(2.5ポイント)はホストたちの集団としての平均的な質に関してユーザーが抱いている不正確な信念に帰せられうる.

上記は Morgane Laouénan & Roland Rathelot による新しい論文 (AEA) からの抜粋.

タイラー・コーエン「いまの経済学者たちの共通見解はさらに左寄りに動いてる」(2022年1月1日)

[Tyler Cowen, “The new consensus of economists is further to the left,” Marginal Revolution, January 1, 2022]

アメリカ経済学会 (AEA) 会員の大規模調査にもとづき,本稿では.過去40年間にわたる経済学における多くの命題に関する経済学者たちの共通見解を比較検討する.そこから得られる主な結果として,多くの経済学命題に関して共通見解が増えていることが示される.とくに,マクロ経済学における財政政策にふさわしい役割と,所得分布をめぐる各種問題について経済学者たちの見解が一致するようになっている.いまの経済学者たちが受け入れている財政政策の役割は,これまでの調査では明瞭ではなかった.また,経済学者たちの大部分は所得格差を緩和する政府の各種政策を支持している.見解が共通している他の領域としては,気候変動に関わる懸念と気候変動に対処するのにふさわしい政策ツールの使用が挙げられる.

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アレックス・タバロック「思考の語彙と感情の語彙の興亡」(2021年12月19日)

[Alex Tabarrok, “The Rise and Decline of Thinking over Feeling,” Marginal Revolution, December 19, 2021]

英語とスペイン語の文章ではテクノロジーと社会組織に関連する思考の単語(「実験」・「重力」・「重み」・「コスト」・「契約」)は 1850年からおおよそ1977年ごろにかけてよく使われるようになった(1977年は「大停滞」の始まった年だ).これはフィクション・非フィクションのちがいを問わない.ところが,その後に思考系の単語は顕著に減少して,思い・精神性・知恵・直観に関連した感情系の単語がよく使われるようになっている(e.g. 「赦し」「癒やし」「感覚」).


▲ 合理性の単語の平均的な出現頻度/直観の単語の平均的な出現頻度の比の推移を示す.数字が大きいほど,合理性の単語の出現頻度が相対的に大きい.

上記のグラフには,合理性の単語と直観の単語との比が各種コーパスで時と共にどう変化してきたのかを示してある.論文はこちら

ポスト真理時代の〔真理・事実をないがしろにする〕政治の語り方が台頭してきていることから,感情と理性のバランスに関して特殊な時代に我々が暮らしていることがうかがわれる.実際にそうなのかどうかを検討するため,本研究では, Google nグラムで扱われている 1850年から2019年にかけての数百万冊の書籍の言語を分析する.本研究からは,「判断する」「結論」といった合理性に関連する単語の使用が 1850年以降系統的に隆盛していった一方で,「感じる」「信じる」といった人間の体験に関連する単語が減少していったことが示される.このパターンは,過去数十年で逆転している.この変化は,集団から個人に焦点が移る動きと並行している.この動きは,”I”/”we” や “he”/”they” といった単数形の代名詞と複数形の代名詞の比の変化に映し出されている.書籍の言語で機を同じくしてこうした変化が起きたことをどう解釈するかは,いまなお難題である.しかし,本稿で示すように,この逆転はフィクションだけでなくノンフィクションでも起こっている.さらに,感情と合理性それぞれの代表的な単語の比は,『ニューヨークタイムズ』の記事でも 1850年以降に変化している.ここから,我々が分析したコーパス群〔の性質・偏り〕ゆえに生じた不自然な結果ではないことがうかがえる.最後に,書籍に見られる単語の傾向は,グーグル検索語の傾向と対応していることを本稿では示す.この分析結果は,書籍の言語に見られる変化は人々の関心の変化を部分的に反映しているという考えを支持している.まとめると,我々の研究結果からは,過去数十年間で人々の関心が集団から個人へ,合理性から感情へと顕著に移ってきたことがうかがえる.

論文の著者たちは,言語が感情の方へ変化しているのは「ネオリベラリズム」の失敗によるものだと言っているけれど,これは疑わしいし,もっともらしい仕組みも提示されていない.どちらかと言うと,因果関係は逆向きだとぼくなら考える.もっと当たっていそうな説明としては,女性の書き手が増えてきたことと,それと密接に関連した文化の女性化が挙げられそうだ.

以前,『ニューヨークタイムズ』がどれほど短期間に〔差別・偏見に敏感な〕「覚醒派」になったかって記事を書いたけれど,この論文の分析はあれと整合してる.

多謝: Paul Kedrosky.

タイラー・コーエン「AI による投資信託は市場に勝てる?」(2021年12月5日)

[Tyler Cowen, “Do AI-powered mutual funds outperform the market?” Marginal Revolution, December 5, 2021]

本研究では,人口知能 (AI) 駆動による投資信託のパフォーマンスを評価する.我々の研究からは,そうした投資信託が市場そのものに優ることはないことが見出された.しかしながら,比較してみると,AI 駆動による投資信託は,人間が管理している投資信託よりも有意にすぐれた実績を上げていることが示される.さらに本研究では,AI投資信託がパフォーマンスで〔人間よりも〕すぐれている要因は,次の点に求められることを示す.すなわち,取引コストがより低いこと,銘柄選び能力で上回っていること,行動バイアスがより抑えられていること.

「AI 駆動による」がまともに定義されているのかわからないけれど,研究結果が興味を引く点は変わりない.Rui Chen & Jinjuan Ren の論文はこちら.via 目利きの Kevin Lewis

タイラー・コーエン「リモートワークについてプロのチェスが教えてくれること」(2021年12月6日)

[Tyler Cowen, “Lessons for remote work, from professional chess,” Marginal Revolution, December 6, 2021]

COVID-19 パンデミックのあいだ,伝統的な(オフラインでの)チェストーナメントは禁止になり,代わりにオンラインで開催された.本研究では,この類例のない状況を利用して,リモートワーク政策が個々人の認知パフォーマンスにおよぼす影響を評価する.強力なチェス・エンジンの人工知能を利用してチェスでの指し手およびそれに関連したエラーの質を評価することにより,本研究ではオフラインの対面状況にくらべてリモートで対戦中の人物では統計的・経済学的に有意なパフォーマンス低下を見出した.効果量は時間経過とともに小さくなっていることから,新しいリモート環境への適応がなされていることがうかがわれる.

Steffen Künn, Christian Seel, & Dainis Zegners による Economic Journal 論文はこちら.via telk.