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タイラー・コーエン「セックス労働違法化の意図せざる帰結」(2020年9月21日)

[Tyler Cowen, “Unintended Consequences of Criminalizing Sex Work,” Marginal Revolution, September 21, 2020]

本稿では,セックス労働違法化の影響を検討する.インドネシアの東ジャワにある地区で地域行政によってセックス労働が唐突に違法化された一方で,隣接する複数の地区では違法化されなかったのを,ここでは利用する.我々は,違法化前後での女性セックス労働者とその顧客たちからデータを収集した.生物学的検査による計測を検討したところ,違法化によって,女性セックス労働者のあいだで性感染症が 58パーセント増加していることがわかった.この増加を進めた要因は,コンドームの入手・使用が減少した点にある.また,違法化を受けてセックス労働をやめた女性たちの収入は違法化によって減少し,さらに,女性たちの子供が学校に通うのに必要な金銭を工面する能力が下がる一方で,子供たちが世帯所得を補うために労働しはじめる確率は高まった.性産業が永続的に縮小すれば人口当たりの性感染症発生数が改善する余地はあるが,違法化から5年間で市場は再び拡大に転じ,人口全体での性感染症罹患率は高まっている見込みが大きい.

上記は,Lisa Cameron, Jennifer Seager, & Manisha Shah による NBER ワーキングペーパーからの抜粋.

アレックス・タバロック「猿の子育て実験からわかること」(2020年9月2日)

[Alex Tabarrok, “Monkey Parenting Matters,” Marginal Revolution, September 2, 2020]

ジェイムズ・ヘクマンを含む経済学者グループが NBER で新しい論文を出した.複数世代を重ねる猿の子育て実験から得られたデータを分析して児童の発達を研究する流れに,これで経済学者も合流したわけだ.1950年代にハーロウがやった一連の実験で,母親なしで育てられた猿は子育てがあまりうまくないのはよく知られている.(またハーロウの実験は,「肌と肌での母子の接触」という例のマントラの由来でもある.) 今回の論文が独特なのは,母親に育てられる猿と保育所に育てられる猿を無作為に割り振り,これを2世代繰り返したところだ.というか,この新論文に出てくる猿の子供たちには,同じくヘクマンを含む著者たちの以前の論文に登場した子供たちが含まれているんじゃないかと思う.複数世代を重ねる実験を行うことで,不利・短所が後続世代に継承されるのか,不利・短所が緩和されるのかを研究者たちは検証できる.
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サイモン・レン=ルイス「増税は不可避になるか?」(2020年9月1日)

[Simon Wren-Lewis, “Will taxes have to rise?” Mainly Macro, September 1, 2020]

――という問いが,ジョナサン・ポーツとビル・ミッチェルの討議で取り上げられている.今回の議論は私から見て実にいらだつものだった.というのも,なにかもっと根本的な問題を論じているかのように見えて,実は中期的なインフレ予想をめぐって論議しているからだ.いまのパンデミックがもたらす財政コストを「まかなう」ために増税する必要がないという点は,ミッチェルもポーツも同意している.この超低金利の時代に,グローバル金融危機やパンデミックのような事態で対 GDP 比でみた債務にショックが発生しても,債務にかかる金利を経済成長率が上回っているかぎり,時間をかけて徐々に減少させていくのにまかせるべきだ.債務を減らそうとして財政赤字をゼロに近づけたり,それどころかオズボーンがやったように財政黒字にしようと図ったりすれば,景気の完全回復を妨げてしまう.
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VoxEUアブストラクト「経済研究に最良のプログラミング言語はどれか:Juliaか,Matlabか,Pythonか,Rか」(2020年8月20日)

[Alvaro Aguirre & Jon Danielsson, “Which programming language is best for economic research: Julia, Matlab, Python or R?” VoxEU, August 20, 2020]

経済研究でとりわけ広く使われているプログラミング言語は,Julia, Matlab, Python, R だ.本コラムでは,3つの規準でこれらの言語を比較する:すなわち,利用できるライブラリの力,大規模データセットを取り扱う際にできることと速度,計算の負荷が大きいタスクでの速度と使いやすさ,この3点で比較する.R はよい選択肢ではあるものの,著者が一般的に推奨するのは Julia であり,著者が新規プロジェクトによく選ぶのもこの言語だ.

サイモン・レン=ルイス「コロナウイルス感染再拡大の政治経済と心理」(2020年8月11日)

[Simon Wren-Lewis, “The political economy and psychology of COVID rebounds,” Mainly Macro, August 11, 2020]

現状は,第二波と呼んでもいいし,第一波のぶり返しと呼んでもいい.どう呼ぶにせよ,ヨーロッパの一部の国々では,新規感染者数がいったん低下ないし安定した期間が長く続いたのちに,いまや,一貫して(ときに急激に)新規感染者数が増加している.
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VoxEUアブストラクト 「連銀と量的緩和:投資を促進するもインフレは抑える」(2020年8月30日)

[Gregor Boehl, Gavin Goy, Felix Strobel, “The Federal Reserve and quantitative easing: A boost for investment, a burden on inflation,” VoxEU, August 30, 2020]

重要な役割をもちながらも,量的緩和として知られる資産大規模購入がマクロ経済に及ぼす効果については,いまなお議論が決着していない.本コラムでは,グローバル金融危機のさなかに連銀が実施した量的緩和プログラムがマクロ経済にもたらした効果を構造的に検討してえられた知見を述べる.一般的な共通見解どおり,研究結果からは,資産購入が借り入れ条件を大幅に容易にし新規投資を促したことがうかがえる.投資の増加は生産能力の拡大につながり,それがさらに企業の限界コストを低下させた.しかしながら,インフレ〔を年率 0.25% 抑制する〕効果もあった.

スコット・サムナー「個人消費支出水準 135 に注視すべし」(2020年8月28日)

[Scott Sumner, “Focus on 135,” TheMoneyIllusion, August 28, 2020]

ぼくらは連銀の政策を変えられる.ここでいう「ぼくら」には,連銀についてあれこれ語ってるいろんな集団がぜんぶ含まれる.
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スコット・サムナー「今度の平均インフレ率目標が守られたなら」(2020年8月27日)

[Scott Sumner, “The (PCE) price level will be 135.207 in January 2030,” TheMoneyIllusion, August 27, 2020]

2030年1月に(個人消費支出)物価水準は 135.207 になるわけだ.あるいは,少なくとも,そうならなきゃいけない.
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VoxEUアブストラクト「ドイツにおける非伝統的財政政策としての付加価値税減税」(2020年8月25日)

[Felix Montag, Alina Sagimuldina, Monika Schnitzer, “VAT reduction as unconventional fiscal policy in Germany: Fast but heterogeneous pass-through in the fuel market,” VoxEU, August 25, 2020]

アブストラクト
COVID-19パンデミックがもたらす各種の影響に対応すべく,6月3日にドイツ政府は前例のない経済刺激パッケージを公表した.その政策の1つは,2020年6月から12月のあいだ一時的に付加価値税率を引き下げるというものだった.この政策の狙いは,一時的に価格を引き下げてインフレ予想を引き上げることにより消費を刺激することにあった.本コラムでは,経済の主要部門1つをとりあげ,その転嫁率の推定値を提示する〔付加価値税の減税分のうちどれだけが実際の小売価格に反映されたかを推定したということ〕.我々の推定値では,小売り販売の燃料では転嫁が急速かつ相当なものではあったが不完全で,転嫁率は当該市場の競争の度合いによって異なっていることが示されている.

タイラー・コーエン「1918年のスペイン風邪はどれくらいひどかったのか」(2020年8月25日)

[Tyler Cowen, “How bad was the Spanish Flu pandemic of 1918?” Marginal Revolution, August 25, 2020]

〔1918年のインフルエンザ・パンデミックは〕たしかに酷い悲劇だったにはちがいないけれど,多くの地域では,近い年に起きた他の出来事の方がずっと酷かった.
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