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ブラッド・デロング「いまや『第二の金ぴか時代』に生きてるってことははっきりさせておこう」(2019年6月26日)

[Bradford DeLong, “Making it real that we live in the “second gilded age”…,” Grasping Reality with Both Hands, June 26, 2019]

このところ,いろんな人たちからこんなことを聞かされる.「ポール・クルーグマンが書いたこのコラムやその同類どもが書いた同趣旨の文章は血も涙もない話だし提案も成果を挙げないだろう」
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ブラッド・デロング 「カード、クルーガー、アッシェンフェルター」(2018年9月17日)

●Brad DeLong, “Equitable Growth in Conversation: An interview with David Card and Alan Krueger: Hoisted from the Archives”(DeLong’s Grasping Reality, September 17, 2018)


2016年にEquitable Growthブログに掲載されたインタビュー(Equitable Growth in Conversation: An Interview)の一部を再掲するとしよう。インタビューに応じているのはデイビッド・カード(David Card)とアラン・クルーガー(Alan Krueger)の二人。聞き手はベン・ジッペラー(Ben Zipperer)。

ジッペラー:インタビューのはじめのところでオーリー・アッシェンフェルター(Orley Ashenfelter)の名前が何度も話題に出てきたように記憶しています。あなた方の個人的な研究であったりあるいは労働経済学という分野全体に対するアッシェンフェルターの影響についてお話いただけないでしょうか?

カード:ええと、そうですね。オーリーには博論を書くにあたって指導教官を務めてもらいましたし、そもそもプリンストン大学の大学院に進学しようと決断した理由も彼がプリンストン大学で教えていたからでした。そういうわけで私個人に関してはオーリーからかなり強い影響を受けていますね。ついでながらですが、学部生の頃に講義を通じて特に影響を受けた教授が二人いるのですが、両名ともにオーリーの教え子だったんですよ。

そんなわけでオーリーとのつながりはかなり昔まで遡ることになります。オーリーとは長年にわたって(共同研究者として)一緒に論文もたくさん書いてきましたし、力を合わせて数多くの学生の指導にもあたってきました。話は私だけに限りません。ジョー・アルトンジ(Joe Altonji)だとかジョン・アボード(John Abowd)だとかといった私と同世代のその他の労働経済学者の面々もオーリーから強く影響を受けていると思います。

「可能なようなら実験を試みよ」、「可能なようなら自力で独自のデータを集めよ」、「可能なようなら自腹を切れ」。オーリーは出会った当初からずっと口を酸っぱくしてそう強く訴えていたものです。確かアラン(クルーガー)はある年の夏にオーリーと一緒に(オハイオ州の)ツインズバーグの「双子祭り」に出かけたんじゃなかったっけ? 双子に関するデータを集めるために。

クルーガー:ある年だって? 一回だけじゃないよ。ツインズバーグには4年連続で出かけたんだ。学生も連れてね。1ダースもの数の学生を引き連れていったんだよ(笑)。

あの時のオーリーは古風な面影が前面に出ちゃってましたね。夕食を食べるレストランを選んだりとか誰かとおしゃべりするのにはたっぷり時間を割くくせに、データ集めにはそこまで時間を割かなかったんですよ。

私は学部生の頃にオーリーの論文を読んでましたね。就職先としてプリンストン大学に惹かれるに至った大なる部分はオーリーがいたからというところにありました。そんなわけでいざプリンストンにやって来るとデイビッド(カード)というおまけが待ち構えていました。十年におよぶ濃密な共同研究に立ち向かうことになる仲間と遭遇したわけです。

プリンストン大学の労使関係局における研究環境の雰囲気を形作ったのはオーリー周辺の面々だったと思います。オーリーはボブ・スミス(コーネル大学)と一緒になって最低賃金に関する研究に取り組んでいましたが、その研究では最低賃金法が遵守されているかどうか、最低賃金法を遵守していない(法律に違反して最低賃金を下回る賃金を支払っている)企業はどのくらいの数に上るかといった話題がテーマとなっていました。最低賃金の(改定の)効果を探るつもりなら、現行の最低賃金と同額の賃金を得ている働き手なり雇い主が最低賃金法を遵守している事業所なりに着目せよ。オーリー&ボブの二人の研究はそのような考えを根付かせるきっかけになりました。

オーリーは全米最低賃金研究委員会(National Minimum Wage Study Commission)による研究を深く疑っていました。オーリーが「あそこは全米低級研究委員会(National Minimum Study Commission)だ」なんて口にしているのを時折耳にしたものです。

カード:低級研究賃金委員会(Minimum Study Wage Commission)ね。

クルーガー:低級研究賃金委員会か(笑)。

カード:この件については僕の名前を引用してくれてもいいよ。

クルーガー:オーリーひとりに押し付けることにしようよ(笑)。それはともかく、オーリーがよく好んで語る話があります。鮮明に覚えている話なんですが、確かオーリーが労働省で働いていた時に複数のレストラン経営者と話をする機会があったそうです。その時に「我々の業界が抱えている問題があります」と言われたそうです。最低賃金の水準があまりにも低すぎて人手が足りない(働き手が十分に集まらない)というのです。

「賃金の水準は市場で決まってくる。市場で決まる賃金を払えば働き手を必要なだけ集めることができる。もしも人手が足りない(働き手が十分に集まらない)ようなら賃金を上げればいい」。レストランの経営者たちが語った先の話はかような通説的な見解とは食い違っています。この問題との絡みでオーリーはアダム・スミスの『国富論』の中のかの有名な文章を気に入っている様子でした。雇い主の面々が一堂に会する機会を持つことは滅多にない。ただし、労働者の賃金を低く抑えることが主題となる場合は別。雇い主の面々は暗黙かつ不断の団結を通じて労働者の賃金を低く抑え込もうとしている・・・とかいうあの文章ですね1。研究の結果が通説に逆らうようなものであったとしても受け入れてもらえるような雰囲気が作られたのはオーリー周辺の面々のおかげだったと思いますね。

低賃金労働者に対する労働需要曲線は右下がりであり、それゆえ最低賃金の水準が引き上げられようものなら低賃金労働者の雇用量は減る。そこまで大幅に減りはしないが、通説から予想される如くともかく減る。・・・なんてことを(私が院生として学んだハーバード大学に籍を置いていた学者で)異端派の経済学者という面をいくらか持っていたリチャード・フリーマン(Richard Freeman)でさえも唱えていたものです。プリンストンにやって来る前の私はそのような論が幅を利かせている環境の中で学んでいたんです。

  1. 訳注;「職人の団結ということはよく耳にするけれども、親方の団結については滅多に聞かない、といわれている。だが、そうであるからといって、親方たちは滅多に団結しないなどと考える人があれば、その人はこの問題に無知なのはもちろん、世間知らずというものである。親方たちは、いつどこにあっても、一種暗黙の、しかし不断の、統一的な団結をむすんで、労働の賃銀を現在の率以上に高くしないようにしている。この団結をやぶることは、どこでも、最も不評な行動の一つであって、親方にとっては近隣や同輩のあいだで一種の不名誉となるのである。たしかにわれわれは、こういう団結については滅多に耳にしないが、そのわけは、だれも耳にすることがないほど、それがものごとの通常の状態、いうなれば自然の状態だからである。親方たちは、ときとして労働の賃銀をこの現在の率以下にさえ引き下げようとして特定の団結をむすぶことがある。こうした団結は、その実行の瞬間まで極度の沈黙と秘密のうちにことが運ばれるのが普通である。」(アダム・スミス 著/大河内一男 監訳『国富論 Ⅰ』, 中公文庫, pp. 114) []

ブラッド・デロング「クルーグマン:機能的ファイナンスのどこが問題か」(2019年2月14日)

[Brad DeLong, “Paul Krugman: What’s Wrong With Functional Finance?,” Grasping Reality with Both Hands, February 14, 2019]

ポール・クルーグマン:機能的ファイナンスのどこが問題か:「MMT はアバ・ラーナーの「機能的ファイナンス」[pdf] とだいたい同じものに思える(…).そこで,このメモでやりたいのは,ラーナーの機能的ファイナンスをぼくが全面的には信じていないワケを説明することだ.この批判は MMT にも当てはまると思う.ただ,これまでのいろんな論争の経験から何事かが示唆されるとすれば,きっとすぐさまこんな風に言われることだろう,「クルーグマンはわかってない」「あいつは寡頭政治の腐った手先だ」とかなんとか.(…)
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ブラッド・デロング 「星条旗の色ってこないでしたっけ? ~星条旗の塗り絵でポカをやらかしたトランプ大統領~」(2018年8月26日)

●Brad DeLong, “How Much Is Left of Donald Trump’s Brain? The Level of Cognitive Decline Here is Close to Being Absolute…”(Grasping Reality with at Least Three Hands, August 26, 2018)


(星条旗の色を塗り間違える大統領。

こちらからは以上です。)

続けてロブ・ベスキッツァ(Rob Beschizza)の記事より。

President Trump colors U.S. flag wrongly in classroom photo op”(「塗り絵の授業で星条旗の色を間違って塗るトランプ大統領。その様子を写真に収められる」);トランプ大統領は星条旗の前でしばらく跪く時間を持つべきなのかもしれない。そうすれば星条旗がどんな見た目かわかるだろうから。以下に「トランパメリカ」国旗を再現したのでご堪能あれ。

ブラッド・デロング 「花の運び人」(2005年5月28日)

●Brad DeLong, “The Flower Carrier”(Grasping Reality with at Least Three Hands, May 28, 2005)


サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)にてディエゴ・リベラ(Diego Rivera)作の “The Flower Carrier”(『花の運び人』)を鑑賞。

ガイド役の職員(学芸員)曰く、「この作品を理解するためには共産主義者――あるいは少なくとも経済学者――のようなものの見方をする必要があります」とのこと。

仰せの通りだ。次の点をおさえておくべし。

  1. 花の運び人にとって一体何が重荷なのかというと、背中に担いでいる花がぎっしり詰まった大きなカゴ・・・ではない。現代資本主義体制下で非熟練労働者として生きること。そのことが骨が砕けんばかりの重荷となってずっしりとのしかかっているのだ。
  2. 花=心地よい贅沢の象徴という意味合いが込められているが、花の運び人は花には一切目もくれない。花には何の使用価値もなく交換価値しか備わっていない1。花の運び人にとっては花はそういう存在なのだ。

『花の運び人』はサンフランシスコ近代美術館に展示されている作品の中でも一番のお気に入りかもしれない。

いや、ウィリアム・ケントリッジ(William Kentridge)作の “Tide Table”(『潮見表』)も捨てがたい。すごくいい。すごくいいんだよ。

artblog: サンフランシスコ近代美術館の二階・・・(略)・・・に向かうために螺旋階段を上る。二階にたどり着くと永久コレクションの中にケントリッジ作の(アニメーション作品である)『潮見表』(2003年制作)を発見。・・・(略)・・・本作品では(ケントリッジの他の作品でも度々登場する)ソーホー・エクスタイン(Soho Eckstein)という名の白人の実業家――ケントリッジの分身――の暮らしと南アフリカに住む黒人の暮らしが交錯する。砂浜(ビーチ)で休暇を過ごすソーホー。すると突如として場面が転換。そこは病室だ。収容されているのはエイズで絶命寸前の大勢の患者。波が寄せては返す。満潮と干潮。満ち足りた人生と干からびた人生。・・・(略)・・・

  1. 訳注;眺めたり飾ったりして楽しむ対象ではなく生計の資を稼ぐための手段でしかない、という意味。 []

ブラッドフォード・デロング「グローバル化に関して読むべき5冊 by ラリー・サマーズ」

Bladford Delong”Larry Summers:TheFive Best Books on GlobalizationGrasping Reality with at Least Three Hands, September 17, 2018


ラリー・サマーズが挙げている「グローバル化に関する最も優れた5冊」は次のとおり1

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  1. 訳注:以下では原文のGoogleへのリンクをamazon.co.jpのものへと差し替えた。 []
  2. 訳注:ほかに「ケインズ全集 第2巻」収録の早川忠訳と救仁郷繁訳「講和の経済的帰結」があるがどちらも絶版。 []

ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(6/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.6: ルイ・ナポレオンとグローバー・クリーブランド: これは驚きではないはずだ。富と名誉と血縁で閉じられた貴族制がなくなると――〔社会階層の〕上昇移動が可能になると――全面的に人を平等にする社会主義は北大西洋でそれほど魅力的な思想ではなくなっている。最初にこれが見られたのは、1848年のフランスでのことだ。当時、都市の職人たちに完全な雇用を提供するために課税されることをフランス人の圧倒的大多数が望んでいなかったのをアレクシ・ド・トクヴィルは発見している。失業者に機会を提供することよりも自分たちの財産の方を大事にして、トクヴィルと同じく社会主義に反対する側にいたのだ:
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ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(5/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.5: ジョン・ピーター・オルトゲルドの経歴: オルトゲルドはドイツに生まれた。1848年、生後3ヶ月だったオルトゲルドを連れて両親はオハイオ州に移り住む。南北戦争では北軍に参加。バージニア州タイドウォーターのモンロー要塞でマラリアにかかり、生涯にわたって苦しむことになる。戦後、オルトゲルドは高校を卒業して鉄道作業員や学校教師などをして転々と渡り歩きつつ、どこかで法律を学ぶ。1872年、ミズーリ州サバンナで市法務官 (city attorney)、1874年には郡検事となる。1875年、オルトゲルドは『罰せられるべき我らの機械とその犠牲者』(Our Penal Machinery and its Victims) の著者としてイリノイに姿をあらわす。1884年のオルトゲルドはふるわない民主党議員候補だった――そして、民主党大統領候補グローバー・クリーブランドの強力な支持者でもあった。
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ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(4/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.4: シカゴランド(シカゴ都市部): では、最前線で政治と経済はどう相互作用したのだろうか?――第一次世界大戦以前の世界でどこよりも急速に成長し工業化を進めていた場所で、政治と経済はどう相互作用したのだろう? その場所、現代でいえば上海にあたる場所とは、シカゴだ。
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ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(3/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.3: 人民党と進歩主義運動: 中産階級の多く、とくに農民たちは、金持ち・東部人・銀行家のせいで19世紀後半のアメリカがおかしくなっていると非難した。1890年代の人民党(ポピュリスト; the Populists)は、東部の銀行家たち・金本位制・独占企業が悪いと言った。彼らはなにをやったか。貨幣供給(マネーサプライ)を増やし金利を下げ企業物価を上げるために、16対1の比価で銀貨を自由に発行することを追求した。反トラスト法で独占企業を打破しようと模索した。鉄道その他に料金規制を導入して、大半が田園部にある本物のアメリカ人 (real Americans) の屋台骨が都市の鉄道貴族・製造業の独占企業・銀行家といった相手に搾取されないようにしようと模索した。
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