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アレックス・タバロック「国際的な数学の才能の無駄遣い(の改善)」(2018年7月18日)

[Alex Tabarrok “The Misallocation of International Math Talent,” Marginal Revolution, July 18, 2018]

豊かな国ほど,科学や工学に割り振られる労働者の割合は大きくなる.そして,科学や工学がもたらすアイディアはみんなの利益になることも多い.だからこそ,他国が豊かになるとじぶんたちも得をするわけだ.とはいえ,科学者やエンジニアの人数だけが重要なわけじゃない.Agarwal & Gaule はかしこい論文を発表している.この論文では,同等な才能をもつ人たちであっても,より豊かな国にいる方が生産性が高くなることが示されている.
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アレックス・タバロック 「遺伝子 -> 教育 -> 社会的流動性」(2018年7月11日)

[Alex Tabarrok, “Genes->Education->Social Mobility,” Marginal Revolution, July 11, 2018]

子供の家族の社会経済的な地位と,その子が長じてからの所得・富・業績などさまざまな結果がどうなるかに相関を見出して,さらにその相関が因果関係なのだと主張する研究は何万件とある.そうした研究のうち,遺伝を統制する研究はほんのわずかしかない.双子の養子を追跡した研究では遺伝が重要だと提起されているにもかかわらずだ.だが,ゲノム分析が安上がりになったことで,双子研究にとどまらない研究が可能になった.たとえば,とある新研究では,同一の家庭で育てられた一卵性でない双子を対象にして,教育に関連する遺伝子のちがいに着目している.するとわかったのは,教育に関連した遺伝子が多い子供ほど教育面での成績がすぐれていて,大きくなってからの所得も大きくなるということだ.つまり,家庭どうしでも同じ家庭内でも,遺伝が部分的に原動力となって子供の残す結果が異なっているわけだ.
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アレックス・タバロック「どうして性差別と人種差別は減っていかないんだろう――誰もが性別差別も人種差別もあまりやらなくなってるのに」

[Alex Tabarrok, “Why Sexism and Racism Never Diminish–Even When Everyone Becomes Less Sexist and Racist,” Marginal Revolution, June 30, 2018]

概念は参照クラスしだいでちがってくるという考えはべつに新しくもない.背の低いバスケ選手は背が高いし,貧しいアメリカ人はお金もちだ.とはいえ,青い点はとにかく青い点だろ,と思ったことがある人はいるだろう.青色は波長で定義できる.だから,青いかどうかの線引きにはあいまいなところがあるにしても,「背が低い」「お金もちだ」といった相対的概念とちがって青い点の背後にはなんらかの客観的な現実がある,というわけだ.ところが,Levari, Gilbert, Wilson, Sievers, Amodio & Wheatley のオールスター研究チームによる Science 掲載論文が実に思考を触発する報告をしている.ぼくらが青だと判定する範囲は,青の刺激出現率 [prevalence] が低下するのにともなって拡大していくんだそうだ.
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アレックス・タバロック「サプライチェーンを張り巡らせた世界の貿易戦争は高くつく」(2018年6月25日)

[Alex Tabarrok, “Trade War Costs in a Supply Chain World,” Marginal Revolution, June 25, 2018]

アメリカ人がメキシコから車を1台買ったとしよう.このとき,買ったもののほぼ半分はもともとアメリカから輸入されたものだ(自動車関連で海外からメキシコに輸入されるものの74パーセントはアメリカからで,海外からの輸入と労働力がその価値の 2/3 をしめる.すると,0.74 * 0.66 = 48.44%となる――前のバージョンから修正した).
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アレックス・タバロック「セックスの再分配と障害者」

Alex Tabarrok “Sex Redistribution and Disability” Marginal Revolution, May 5, 2018


セックスの再分配に関するロビン・ハンソンロス・ドウザットの論説にまつわる議論の中で,セックスと障害という問題が争点に上がっていないのに驚く。この問題は医療倫理に関する研究では活発な議論の的の一つとなっている。生命倫理学者のジェイコブ・アペルは2010年の医療倫理学誌(Journal of Medical Ethics)で次のように主張している。

著者が考えているように性的快楽が基本的人権だとすれば,身体的・精神的障害のせいで無報酬の成人との性的関係を持つことが不可能ないしほとんど起こりそうにない個人のために,売春の法による禁止には狭い例外を作るべきである。

(略)改革が強く必要とされている第二の領域は,アメリカの介護施設,精神病院,グループホームにおける「ノーセックス」方針である。こうした施設の多くは,患者の部屋のドアをいかなる時にも開けておくことを義務付けており,秘め事は不可能も同然となっている。こうした制約の根底には,完全に健常で合理的な個人によるはっきりと表現された要望以外は,性的関係の最低限の同意基準を満たさないという前提がある。そうしたアプローチによって推進された原則は,施設に入れられた個人は施設の外で生活している個人よりも高度な保護を必要とするというものだ。これは確かに多くの物事については正しい。しかしながら,性的関係に関してはそうした「高度な」基準は,「現実世界」の同意基準に合わせることのできない個人の要望と利益を満たすにあたってはしばしば障害となる。

性的自由の「消極的権利」という概念以上に取り組むべきは,伴侶を見つけるには障害が重過ぎる,身体的障害が重すぎて自分自身で慰めることができない,のいずれかもしくは両方に当てはまるような障害者の性的快楽の「積極的権利」も認めるというものだ。ドイツ,オランダ,デンマーク,スイスといったいくつかのヨーロッパの国は,非営利団体による深刻な障害者のための限定的な「接触」サービスを許可している。

イギリスには,性労働者と障害者のマッチングを助ける慈善事業がある。デンマークやオランダでも同じようなサービスがあり,そうした国では性的な障害者サービスのために(多くはないものの)納税者の資金が使用されている。緑の党はそうしたサービスを他所へ提案している。

あるドイツの政治家は,深刻な障害を抱える人々が国家の負担で「性的介護」を受けられると示唆したことで議論を巻き起こした。

緑の党の高齢者・介護政策担当広報官であるエリザベート・シャルフェンベルクは,他のいかなる手段でも満足を得られない障害者に対する性的サービスのため,政府が「補助金を提供する」ことは可能であると述べた。

そうした制度はデンマークとオランダで現在実施されており,特別な訓練を受けて認証された「性的介護者」がお金のない障害者への訪問を行っている。

誰が何と言おうと,これは関係する人々にとって奥深い重要性を持った正当な問題だと思う。こうした問題を公の議論に持ち込む人が非難され,気色悪いなどと言われるのは不幸なことであると同時に間違いだ。改善できることだし,すべきだろう。

アレックス・タバロック「生徒主導型の授業は教員の技能を無駄にしている」

[Alex Tabarrok, “Student-Led Classrooms Waste Teacher Skill,” Marginal Revolution, May 2, 2018]

大量の研究によって,他の教示法に比べて直接教示法 (direct instruction) の方が,すぐれた結果をもたらすことがわかっている.『労働経済学ジャーナル』に載ったエリック・テイラーの新研究では,いかにして,そしてなぜそうなっているのかについてさらに情報を提供している.テイラーは無作為対照実験をもちいて,弱いかたちの直接教示法の授業と生徒主導の授業とを比べている.生徒主導の授業では――
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アレックス・タバロック「2017年王立経済学会賞」

Alex Tabarrok “The Royal Economic Society Prize” Marginal Revolution, May 4, 2018

2017年の王立経済学会掲載論文の最優秀賞にバート・ウォレン・アンダーソン,ノエル・ジョンソン,マーク・コヤマの「Jewish Persecutions and Weather Shocks 1100-1800(ユダヤ迫害と天候不良 1100年~1800年)」(ungated版はこちら)が選ばれた。ノエルとマークはジョージ・メイソン大学(GMU)の同僚だし,ロバートもGMUの卒業生だ。論文の要旨は以下のとおり。

前近代から近代にかけてのヨーロッパで少数民族の迫害を引き起こしたのはいかなる要素だっただろうか。1100年から1800年にかけてのヨーロッパの936都市におけるユダヤ人迫害1366例からなるパネルデータを用い,我々は気温の低い作物成長期の後では迫害が起きる可能性が高まるか検定を行った。過去5年間における成長期の気温が1標準偏差下がると迫害が起きる可能性は(基準値である2%に対して)1~1.5%ポイント上昇する。この効果は土地が貧しく貧弱な国家で最も大きくなる。迫害の長期的な減少は,部分的には市場統合の拡大と国家の能力の増大によるものとできる。

王立経済学会の判断は正しい。これは理論と原データを巧みに組み合わせた素晴らしい論文だ。

今回の賞によってまた一つGMU経済学部が一流である証拠が増えた。

アレックス・タバロック「フェイスブック公聴会を理解する勘所:ペルツマンの規制モデル」

[Alex Tabarrok, “The Peltzman Model of Regulation and the Facebook Hearings,” Marginal Revolution, April 11, 2018]

フェイスブック公聴会について理解したければ,プライバシーやテクノロジーについて考えるよりも,政治家たちがのぞむことについて考える方が役に立つ.ペルツマンの規制モデルでは,利潤(企業ののぞみ)と低価格(地元有権者たちののぞみ)とのトレードオフをとるのに政治家たちは規制を使って,じぶんたちののぞみを最大化する.つまり,再選だ.ここでカギを握るのは,利潤と低価格のどちらでも政治家たちへのリターンは逓減する,という点だ.競争の働いている産業を考えてみよう.競争の働いている産業は,政治家にとって得るものはあまりない.そこで,彼らはその産業を規制して価格を上げたり企業利益を上げたりしたがるかもしれない.そのおかげで利潤をあげるようになった企業は,そうしてくれた相手〔政治家〕に報いるべく,選挙資金を出したり,その産業の利益の一部を政治家にとって最重要の選挙区への助成に回すだろう.価格が上がって消費者たちは腹をたてるだろうけれど,競争が働いている場合の価格からあまり上がりすぎなければ,政治家にとっての差し引き正味の利得はプラスになる.
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アレックス・タバロック 「車検は安全性を高めない」

[Alex Tabarrok, “Vehicle Safety Inspections Don’t Increase Safety,” Marginal Revolution, March 22, 2018]

2003年に書いたポスト「政治家と修理工が共謀してぼくからふんだくってる」で、年1回の自動車検査は安全性を高めずただ時間とお金を無駄遣いしながら不必要な修理をつくりだしていることを示す研究を引用した(別の研究もある)。その後ずっと、こうした無駄政策についてなにかとぶちまき続けている。

でも、今日はちょっといいニュースがある。自動車の品質が向上しつづけていることで、アメリカの一部の州でこうした「安全」検査を本当に打ち切るところがでてきている。たとえば、コロンビア特別区(2009年)、ニュージャージー(2010年)、ミシシッピ(2015年)が車検をやめている。とはいえ、車検の撤廃をめぐって、いまなお多くの州で熱い論戦が交わされている。

「もし[車検の撤廃が]可決されると、夜もおちおち寝ていられなくなりますよ」とテキサス州の上院議員 Eddie Lucero は言う。「どうして[撤廃案を]可決して自分やほかのテキサス人を危険な目に合わせようなんて気を起こしたんです?」 同様に、ユタ州の下院議員 Jim Dunnigan はこう主張する――彼の地元住民は「ブレーキが壊れ、マフラーが外れ、タイヤがどこかにいくまで、運転しつづけるでしょうよ。」潜在的な安全面の懸念事項に自動車の所有者が確実に対処するようにする唯一の方法は車検なのだと彼は言う。こうした主張は、大半の自動車サービスステーションが支持している。総じて彼らは車検の実施で利益を得ており、車検制度の撤廃は「確実に事故を増やす結果になる」と主張している。

これは、Hoagland & Woolley の新論文からの引用だ。この研究では、車検制度を撤廃したニュージャージーを使って、撤廃が事故増加につながるかどうかを検証している。アメリカ全土から集められた死亡事故率の精密なデータと合成統制法 (synthetic control methodology) を使って、Hoagland & Woolley はこういう結論を導いている:

(…)〔車検の〕義務を取り除いても、1人あたり交通事故死も、とくに自動車による1人あたり交通事故死も、自動車による交通事故頻度も、有意に増加しない結果となった。したがって、自動車安全性検査は政府予算の効率的な使い方とは言えず、交通事故における自動車の故障が果たす役割になんら有意な減少効果をもたらすようには見えない。

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そろそろ、年1回の車検をやめて、車検制度をまるまる無くしてしまうなり、メリーランドのように自動車譲渡時にのみ安全性検査を課す制度に移行するなりしていい頃合いだ。譲渡時の検査も、ぼくには必要だと思えない。譲渡時こそ、義務があろうとなかろうと買い手が検査を実施する場面にほかならないからだ。ともあれ、少なくともその制度でも車検回数は大幅に減るだろう。

Hat tip: Kevin Lewis.

アレックス・タバロック 「囚人の食料費を懐に入れた保安官が告発者を牢屋に入れる」

[Alex Tabarrok, “Sheriff Takes Food from Prisoners, Locks up WhistleBlower,” Marginal Revolution, March 20, 2018]

アラバマ州の郡保安官が、囚人の食費予算を使って住宅を購入した。一週間前にこの新聞見出しを見かけた時には、「またホワイトカラーのありきたりな不祥事ネタか」と思って受け流した。その後の展開に促されて、昨日になってもっと調べてみた。実情は、想像していたのよりもずっとひどかった。保安官がやったことは、完璧に合法なんだそうだ。
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