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アレックス・タバロック「経済学を学ぶと賃金は大幅に増えるみたいよ」(2020年10月14日)

[Alex Tabarrok, “Studying Economics Increases Wages a Lot,” Marginal Revolution, October 14, 2020]

経済学を専攻した学生たちの賃金中央値は,40歳で9万ドルに達する(2018年).他の社会科学を専攻した学生たちは,6万5千ドルでしかない.この大差はどこから来たんだろう? 統計的な選択効果だろうか,それとも因果関係がはたらいているんだろうか? Zachary Bleemer と Aashish Mehta は,南カリフォルニア大学の学生たちを対象に,足きりで専攻がとれなかった学生たちと,かろうじて専攻がとれた学生たちを比較している.必要な成績をとれていた場合,経済学専攻を選ぶ学生は大きく増え,彼らが20代半ばに稼ぐ給与がおよそ $22,000増える.このように,専攻による給与に観察される差の大半またはすべては,どうやら因果関係によるものらしい.給与の増加をうながしている要因は,経済学を専攻した学生たちが高給の産業に専門化するよう選好を変える点にあるようだ.
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アレックス・タバロック「本日の政治的に正しくない論文:給与格差のしぶとさ」(2020年10月8日)

[Alex Tabarrok, “Politically Incorrect Paper of the Day: The Persistence of Pay Inequality,” Marginal Revolution, October 8, 2020]

職場での差別が不可能だったりありそうにない市場ですら,男女の賃金格差があるようだ.たとえば,Uber の運転手は,性別を考慮しないアルゴリズムで賃走を割り振られ,賃走の時間と距離に基づいて対価を支払われる.だが,運転手の手にするお金にはおよそ 7% と小さいながらも男女差が長らく続いている.これは,男性運転手の方がわずかに速く,混雑した地域で働くのを選び,わずかながら経験が多いことに起因しているようだ.Litman et al. (2020) によれば,これと同種の相違がメカニカルタークでの稼ぎにも見られるという.
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アレックス・タバロック「猿の子育て実験からわかること」(2020年9月2日)

[Alex Tabarrok, “Monkey Parenting Matters,” Marginal Revolution, September 2, 2020]

ジェイムズ・ヘクマンを含む経済学者グループが NBER で新しい論文を出した.複数世代を重ねる猿の子育て実験から得られたデータを分析して児童の発達を研究する流れに,これで経済学者も合流したわけだ.1950年代にハーロウがやった一連の実験で,母親なしで育てられた猿は子育てがあまりうまくないのはよく知られている.(またハーロウの実験は,「肌と肌での母子の接触」という例のマントラの由来でもある.) 今回の論文が独特なのは,母親に育てられる猿と保育所に育てられる猿を無作為に割り振り,これを2世代繰り返したところだ.というか,この新論文に出てくる猿の子供たちには,同じくヘクマンを含む著者たちの以前の論文に登場した子供たちが含まれているんじゃないかと思う.複数世代を重ねる実験を行うことで,不利・短所が後続世代に継承されるのか,不利・短所が緩和されるのかを研究者たちは検証できる.
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アレックス・タバロック「高校の授業に Zoom爆撃してみた」(2020年4月10日)

[Alex Tabarrok, “Zoom Bombing a High School Class,” Marginal Revolution, April 10, 2020]

現代マクロ経済学の原理』を使っている高校の授業に「Zoom爆撃」してみた.ウイルス感染の経済学を通常の経済学に関連づけるとお役に立つんじゃないかと思ったんだ.そこでぼくが言ったこと:
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アレックス・タバロック「忘れられた1957年パンデミックと景気後退」(2020年3月24日)

[Alex Tabarrok, “The Forgotten 1957 Pandemic and Recession,” Marginal Revolution, March 24, 2020]

1957年のアジアインフルエンザ・パンデミックでは,アメリカ国内で7万人~10万人の死者が出た(57年インフルエンザは COVID-19 ほど感染率も死亡率も高くなかった).1957年の第4四半期に,経済成長率(年率換算)は -4% になり,翌58年の第1四半期には -10% まで落ちた.これは,第二次世界大戦後では最大の成長率低下で,のちの金融危機のときよりも大きい.だが,1958年の第3~第4四半期に成長率は大きくもどして 10% 近くにまで上がった.通年でみると,GDP の低下は 1% 未満となっている―――悪い景気後退にはちがいなく,第二次世界大戦後では3番目に深刻ではあったけれど,前例がないような景気後退ではなかった.
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アレックス・タバロック「マスクが足りない? 市場にまかせよう」(2020年3月23日)

[Alex Tabarrok, “Let the Markets Work,” Marginal Revolution, March 23, 2020]

多くの人が大統領は「国防生産法」(Defense Productions Act; DPA) を用いるべきだって言っているけれど、現実には、国防生産法はとりたてて有用でもないし必要不可欠でもない。各種の市場はすでに急速かつ洗練されたかたちでリソースの再配分を行なっている。品物の不足は、その大部分が一時的な需要の増加によるものだ。いま、店頭の棚にはふたたび品物が揃いつつある。食品は潤沢にある。手指の消毒剤と手洗い用石鹸は、店頭まで届けられつつあるか、すでに並べられている。トイレットペーパーが品切れになることはない。CDC と FDA が認可したことで、検査キットは増産中だ。
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アレックス・タバロック「1918年インフルエンザパンデミックの持続的な影響」(2020年3月10日)

[Alex Tabarrok, “The Lasting Effects of the 1918 Influenza Pandemic,” Marginal Revolution, March 10, 2020]

[いままで記事の冒頭に閲覧注意の警告をおいたことなんてなかったけれど,いまの状況では,子供を授かる予定がある人たちがここに出てくる情報を読むと不安を覚えたり気を悪くしたりするかもしれない.いまのパンデミックが1918年当時ほど悪くなるとは思わない.また,天気がぼくらにとって良い方にはたらくことを願っているし,タイラーが論じたようにアメリカが本格的に対応をはじめることも願っている.ぜひ,「1918年-1919年のパンデミックで有効だったのは?」(原文)も読んでほしい.あちらにはもっと前向きなメッセージがある.]

1918年インフルエンザパンデミックがアメリカでもっとも猛威を振るったのは,1918年10月のことだ.その後4ヶ月間でインフルエンザによって死亡した人々の数は,20世紀に戦闘で死亡したアメリカ人の数を超えている.パンデミックは急速に展開する.このため,生まれるタイミングがほんの数ヶ月ちがっただけで,赤ちゃんが子宮内で経験する環境は大きく異なっていた.とりわけ,1919年生まれの赤ちゃんたちは,1918年生まれや1920年生まれの赤ちゃんたちよりもずっと大きな度合いで,子宮内でインフルエンザにさらされることとなった.1918年インフルエンザによって急激に相違が生じたことで,ダグラス・アーモンドは長期的な影響を検証する機会を得た.その成果が「1918年インフルエンザ・パンデミックは終わった過去か?」だ.

アーモンドは,〔赤ちゃんがインフルエンザに〕接触してから何十年ものちに大きな影響が見られるのを発見している.

1960年・1970年・1980年の国勢調査の記録を見ると,〔1918年パンデミック当時の〕胎児の健康状態は,ほぼあらゆる社会経済的な結果に影響している.パンデミック当時に子宮にいた場合,男女ともに学業成績が不連続的な大幅低下を示している.感染しいた母親の子供は,高校を卒業する確率が最大で 15% 低くなっている.男性の賃金は,感染によって 5~9% 少なくなっている.社会経済的な地位は(…)大幅に低下していて,貧しくなる確率は,他の世代に比べて 15% も上昇している.公共の福祉受給額も同じく上昇している.

一例として,下記のグラフを見てもらいたい.これは,1980年時点の男性の身体障害率を示している.1980年当時に60歳前後だった男性を生まれた四半期別にまとめてある.1919年の1月~9月に生まれた世代は,「パンデミック当時に子宮内にいた.この人々は,61歳で身体障害をもつ確率が 20パーセント高くなると推定される(…).」

さらに,下記の図3 は,1960年の平均就学期間〔学校に通った年数〕を示している.ここでも,1918年生まれの人々では明らかに年数が下がっている.ここで留意してほしいのが,当時妊娠していた女性がみんなインフルエンザに感染したわけではない点だ.つまり,〔当時の赤ちゃんが〕インフルエンザに接触した実際の影響はこれよりもっと大きく,就学期間がおよそ5ヶ月短くなっている.その大半は,卒業率の低下というかたちで現れている.

身体障害率が高くなり教育水準が下がるということは,政府が支払うお金がもっと増えるということだ.これを示しているのが下記の図だ.

アーモンドは,こうした支出に福祉給付のラベルを付けているけれど,これは少しばかり誤解を招くラベルかもしれない――これらは1970年だと社会保障障害給付 (Social Security Disability payments) だった.アーモンドは次のように記している:

女性と非白人への平均支払額をプロットしたのが図8だ.平均福祉給付は,女性も非白人も1919年生まれで12パーセント大きくなっている.母親がインフルエンザに感染した子供では,およそ3分の1高くなっている.四半期にわけて生まれたタイミングに注目すると,こうした支払い額の増加は,1919年の4月から6月に生まれた人々への支払いが大きくなっていることで生じているのが明らかになる.

とくに障害の度合いが高い男女は1970年以前になくなっていたかもしれない.つまり,ここで言われているのは障害の影響の最低ラインだ.

アーモンドは他に考えうるさまざまな要因を検証して除外しているため,子宮内での接触が重要に思える.たとえば,1918年の子供たちは,1920年の子供たちとさして変わりがないように見える.つまり,インフルエンザで体の弱い子供たちが1918年にバタバタと亡くなってしまったわけではない.

アーモンドは,たんに歴史のいちエピソードとして1918年パンデミックに関心を抱いたわけではなく,乳幼児の健康と乳幼児の保険プログラムは費用対便益の比率が高いと主張するためでもあった.後者は,いまなお意義のある教訓だ.

多謝: Wojtek Kopczuk.

アレックス・タバロック「1918年-1919年のパンデミックで有効だったのは?」(2020年3月7日)

[Alex Tabarrok, “What Worked in 1918-1919?” Marginal Revolution, March 7, 2020]

1918年のインフルエンザパンデミックは,人類を苛んだ史上最大の感染拡大だった.死者数は世界でおよそ 4,000万人にのぼった.これには,合衆国での死者 55万人も含まれる.現代のパンデミックに対して,公衆衛生対応策と並行して公衆衛生の便益を最大化しつつパンデミックが社会にもたらす混乱の影響を最小限にとどめようとの対応を計画するにあたって,1918年~1919年のパンデミックから得られる教訓は適用できるだろうか?

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アレックス・タバロック「電気を権利扱いすることの帰結」(2020年3月5日)

[Alex Tabarrok, “The Consequences of Treating Electricity as a Right,” Marginal Revolution, March 5, 2020]

貧しい国々では,電気料金が安い.あまりに安くて,「電気を1単位売るたびに電力事業はお金を損する」ほどだ.その結果として,使用量割り当てや電力不足が日常茶飯事になっている.Journal of Economic Perspective の共著論文で,Burdgess, Greenston, Ryan, Sudarshan はこう論じている――「こうした電力不足は,電気を権利として扱って私的財として扱わないことの帰結として生じる.」
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アレックス・タバロック「英語のポップソングは悲しみと怒りが色濃くなってきてる」(2020年2月17日)

[Alex Tabarrok, “Pop Songs are Getting Sadder and Angrier,” Marginal Revolution, February 17, 2020]

AEON: 英語圏のポップソングは,だんだんネガティブになっている.ネガティブな情動に関連する単語の使用頻度が,1/3 以上も増えている.一例として,ビルボードのデータセットをとりあげよう.歌一曲あたり平均 300語が使われていると仮定すると,ヒット曲の上位 100曲の歌詞は毎年 30,000語使うことになる.1965年に,否定的な情動に関連した単語はおよそ 450ほどだった.2015年に,その数字は700以上になっている.その一方で,同じ期間に,ポジティブな情動に関連した単語は減少している.1965年の歌には,ポジティブな情動の単語がおよそ1,750語あったのに対して,2015年にその数はたった 1,150ほどにまで減っている.ここで気にとめておきたい点がある.絶対数でみると,ネガティブな情動に関連した単語よりもポジティブな情動に関連した単語の方がいつでもより多く現れているのだ.これは人間の言語に普遍的に見られる特徴で,「ポリアンナ原則」と呼ばれている(ポリアンナはその名前を冠した小説の主人公で,いつでも完璧に楽観的な女の子だ).これが逆転するとは,まず予想しがたい:その上で言うと,問題なのは変化の方向だ.

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