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アレックス・タバロック「世代・年齢でみた富」(2019年11月26日)

[Alex Tabarrok, “Wealth by Generation and Age,” Marginal Revolution, November 26, 2019]

カート・アンダーソンこんな注目ツイートをしてる:
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アレックス・タバロック「妊娠が増えれば犯罪も減る?」(2019年11月22日)

[Alex Tabarrok, “More Pregnancy, Less Crime,” Marginal Revolution, November 22, 2019]

こと犯罪に関しては,経済学者はもっぱら抑止に関心を集中させる.抑止は機能するけれど,機能するのは抑止に限られない.質が良い初等教育や,認知行動療法などの心理学的な介入でも犯罪は減るし,街灯を改善したりといった単純なことでも犯罪は減る.社会学の研究では,犯罪は制約の問題であると同時に選好の問題でもあることを強調する.たとえば,結婚や出産など人生の帰路になる大きな出来事は犯罪に関わる選好を大きく変えうる.すぐれた新論文「家族形成と犯罪」で,マキシム・マセンコフイヴァン・ローズ(2人ともバークレー出身の雇用市場研究者)は,こうした知見を大規模データセットで実証している.
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アレックス・タバロック「安全なセックスのためにもっとセックスしよう」

Alex Tabarrok ”More Sex is Safer SexMarginal Revolution, October 26, 2019

スティーブン・ランドバーグのMore Sex is Safer Sex[もっとセックスするほどもっと安全に](右のリンクは1997年のNew York Times掲載版,書籍版はこちら)は今年のノーベル賞受賞者のマイケル・クレマーの論文から着想を得ているというのを忘れていた。以下はその要約。

ありとあらゆるところで淫奔は罪であるというのを目にしてきたことだろう。ここでは自己抑制の罪について話してみたい。

あるところにマーティンという魅力的だけど割と慎重で少ないセックス履歴を持つ若い男性がいるとしよう。彼は職場の同僚のジョーンとよろしくやっている。先週のオフィスパーティーが迫るにあたって,ジョーンもマーティンもお互いに相談はしなかったけれども,パーティの後にどちらかの家で一緒に過ごすんじゃないだろうかと考えてはいた。不幸なことに,運命の女神がその手先であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)を通じて介入をしてきた。パーティーの朝,禁欲の美徳を説くCDCの中吊り広告がマーティンの目に入った。マーティンは反省し,パーティーに行かず家に留まることにした。マーティンが来なかったので,ジョーンはマーティンと同じくらい魅力的だけれど彼よりずっと慎重さを欠くマクスウェルと一夜をともにした。そしてジョーンはAIDSに罹ってしまった。

注意深いマーティンがセックス相手探しから手を引いてしまうと,ヤリチンのマクスウェルが不運なジョーンを美味しく頂くのを容易にしてしまう。電車の中吊り広告がマクスウェルよりもマーティンに対してより効果的である場合,そうした広告はジョーンの安全に対する脅威となる。そうした広告が,マーティンをより社会的に有益にするかもしれないカルバン・クラインの広告を押しのけてしまう場合にはより一層だ。

世界中のマーティンがちょっとだけ性に開放的になったならば,AIDSの拡散を遅らせることができる。もちろんやり過ぎれば良いってものじゃない。マーティンが開放的になりすぎると,マクスウェルと同じように危険になってしまう。しかし,性に保守的な人たちが性的活動を多少増やすのであれば,それ以外の私たちにとってそれはとても良いことだ。ハーバード大学教授のマイケル・クレマーは,年間2.25人未満のパートナーしかいない人たち全員がそれ以上のパートナーをもっと頻繁に得るようになれば,イングランドにおけるAIDSの拡散を相当程度遅らせることができると推測している。

クレマー(チャールズ・モーコム)の元々の論文はこちら。ランズバーグはこうした状況においてはコンドームに対する補助金が最適だと示唆している。全文を読んでみてほしい

追記:後になって気づいたけれど,クレマーのモデルはタイで起きたことに非常に良く当てはまるようだ。

アレックス・タバロック「大麻を吸うと頭がおかしくなるのか,頭がおかしいから大麻を吸うのか」

Alex Tabarrok “The Causal Effect of Cannabis on CognitionMarginal Revolution, November 3, 2019


大麻をたくさん吸うと頭がおかしくなるのか,頭がおかしいから大麻をたくさん吸うのか。大概は後者だ。Ross et al. (2019)は以下のように述べている

大麻が認知に機能障害を引き起こすと多くの研究者が結論づけているものの,別の説明もある。まず,認知機能が貧弱であることは薬物使用のリスク要因である。具体的には,幼年期に計測された実行機能は,その後の薬物使用及び薬物使用障害を占うものである(SUDs; Ridenour et al., 2009)。したがって,研究にあたっては事前の認知機能をコントロールする必要がある(Meier et al., 2012)。次に,貧弱な認知機能と大麻使用も関連している可能性があり,このことは一方が他方を引き起こしているのではなく,両者が社会経済的地位の低さという共通のリスク要因を共有しているからである  (Rogeberg, 2013) 。Lynskey and Hall (2000)は,早期の薬物使用は薬物使用グループへの加入,登校率の低さ,中退などによって尚早に大人の役割を演じることになるなどの社会的背景のもとで引き起こされる可能性が高く,そうした学業上の参加に関わる影響は後々の認知機能にも影響を与えうると提案している。

実際,遺伝子及び家族環境をコントロールした双子研究は,大麻が認知を低下させるとはしていない。

Lyons et al. (2004)は通常使用の後に20年にわたって使用状況の異なる一卵性双生児を調べ,両者の間で有意な差があるのは50以上の認知指標のうちたったひとつだけだったことを見いだした。また,Jackson et al. (2014)は,大麻使用の状況が異なる一卵性双生児において用量依存関係や認知の有意差について何の証拠も見つからないとした。同様に,Meier et al. (2017)は,大麻依存や使用頻度の異なる一卵性及び二卵性の双子からなるサンプルにおいて,認知機能の差に何の証拠も見つからないとした。したがって,双生児を使ってコントロールするようデザインした準実験においては,大麻が貧弱な認知を引き起こすという証拠はほとんど得られていないのである。

Ross et al.は類似の研究を行っているが,計画する,焦点を合わせる,衝動を抑える等の実行機能も検証している。これらはIQと関連しているものの別個のスキルであり,彼らは次のように結論している。

大麻使用が多い家庭ほど一般的な認知能力がより低いことが示された。しかし,家庭内において,より使用量の多いほうの双子がより低い認知スコアを示すことは稀だった。総合的に見れば,認知に対する大麻の因果効果についての証拠はほとんどなかった。

素晴らしい情報源のケヴィン・ルイスに感謝。

アレックス・タバロック「本日の政治的に正しくない論文: ユナイテッド・フルーツ社は善玉だった!」(2019年11月12日)

[Alex Tabarrok “Politically Incorrect Paper of the Day: The United Fruit Company was Good!” Marginal Revolution, November 12, 2019

ユナイテッド・フルーツ社〔現チキータ〕といえばラテンアメリカの悪鬼,新植民地主義のきわみだ.たしかに,ユナイテッド・フルーツ社の歴史には悪しき行いもあるし,各種の陰謀論のネタには事欠かない.でも,ユナイテッド・フルーツ社はラテンアメリカにバナナを(輸出作物として)もたらしたし,観光旅行ももたらした.多くの場合には,ラテンアメリカのあちこちによい統治ももたらした.こうしたことの多くを左右したのは,ユナイテッド・フルーツ社の操業地域内の制度的な制約だ.Esteban Mendez-Chacon と Diana Van Patten(雇用市場研究)は,コスタリカにおけるユナイテッド・フルーツ社に着目している.

ユナイテッド・フルーツ社は,遠く離れた場所に労働者をもちこむ必要があった.そこで,同社は労働者の福利厚生に大きく投資した.

(…)ユナイテッド・フルーツ社は衛生インフラに投資し,保健プログラムを立ち上げ,従業員に医療診断を提供した.インフラ投資には,水道管・飲用水システム・下水システム・街灯・砕石舗装された道路・堤防も含まれていた (Sanou and Quesada, 1998).さらに,1942年までに同社はコスタリカ国内で3つの病院を運営をはじめていた.

(…)大農場が遠隔地にあり,また,輸送コストを削減する目的もあって,ユナイテッド・フルーツ社は従業員の大多数に同社敷地内にある無料の住宅も提供した.これは,マラリアや黄熱病のような病気の懸念が動機の一部になっていた.集団が大農場の外から絶え間なく通勤していると,こうした病気は簡単に拡大してしまう.1958年まで,労働者の大多数はバラック式の建物で生活していた.(…)こうした住居は,多くの近隣コミュニティの生活水準よりも高かった (Wiley, 2008).

ユナイテッド・フルーツ社は,たんに健康な労働者に関心を持っていただけではなく,安定した家庭をもった労働者を引き寄せる必要もあった:

(…)同社が労働者の集落に提供したサービスはさまざまだった.そのなかには,従業員の子供たちの初等教育もあった.学校のカリキュラムには,職業訓練も含まれていた.また,1940年代以前は大半が英語で教えられていた.初等教育に力を入れたのは際立っていた.バナナ地域で児童労働は普通のことでなくなった (Viales, 1998).1955年までに,同社はコスタリカにある同社の土地に62校の小学校を建設した (May & Lasso, 1958).図6a に示すように,1947年から1963年まで,ユナイテッド・フルーツ社が運営する学校で児童一人当たりに投じた支出額は初等教育への公共支出を上回っていた.平均で見ると,この期間に同社の年間支出は政府による支出よりも23パーセント高かった.

(…)ユナイテッド・フルーツ社は中等教育を直接に提供こそしなかったが,いくらかのインセンティブは提供した.親が子供にアメリカの中等教育を2年受けさせるお金が出せる場合には,ユナイテッド・フルーツ社が残り2年分を支払い,アメリカと行き来して学校に通う無料の交通手段も提供した.

ユナイテッド・フルーツ社による投資を促した主要な要因は次の点にあった.たしかにユナイテッド・フルーツ社は操業地域内でこそ唯一の雇用主ではあったけれど,他の地域から労働力を獲得するために競争せざるをえなかったんだ.1925年に,同社の報告書はこう記している:

会社の各種医療にとどまらず,いっそうの福利厚生に投資することを我々は推奨する.従業員人口を安定させるための試みがなされるべきである(…).たんに魅力的で快適な従業員集落を建設・維持するのにとどまるべきではない.さらに,既婚男性の家族に手当てする各種の手段も提供しなくてはならない.それには,庭園設備・学校・なんらかの娯楽を集落に備えさせるといった方法がある.つまり,今後も従業員たちの献身をえたいとのぞむのであれば,彼らに関心を寄せねばならない.

これこそ,不当にも中傷されてきたアメリカの企業城下町がサービスとインフラを提供するのを促した力学だ.また,これこそ,ジャムシェトジー・ヌッセルヴァーンジー・タタがつくったインドのジャムシェードプルの企業城下町にRajagopalan とぼくが見出したものでもある.

コスタリカのユナイテッド・フルーツ社は1984年に終わりを迎えたが,著者たちによれば,同社は長期的なプラスの影響を残したそうだ.歴史記録を利用して,ユナイテッド・フルーツ社の地域とそれ以外の地域とを区切る,おそらくランダムに決定されただろう境界線を見出した著者たちは,その境界線の内外の生活水準を比較した.すると,今日,境界線の内側の世帯は,外側の世帯にくらべて,よりよい住宅・衛生条件・教育・消費を享受していることがわかった.全体として:

本研究では,同社が生活水準に永続的なプラスの影響をもたらしたことを見出した.ユナイテッド・フルーツ社の操業地域は,近隣の反実仮想的な地域〔ユナイテッド・フルーツ社の操業地域でなかった以外の条件がよく似ている地域〕に比べて,1973年に貧しくなる確率が26パーセント低く,その差は30年間にわたって63パーセントしか埋まらなかった.

論文には付論がなんと A から J まで付けられている.そのうちのひとつでは,著者たちは衛星データを用いて,境界内の地域の方がそのすぐ外側の地域よりも夜間の明かりが多いことを示している.このデータの収集はとりわけ目を見張る.

ユナイテッド・フルーツ社が営業していた時期の生活水準と投資をよりよく理解するために,本研究では,賃金・従業員数・生産に関するデータや教育・住宅・保健への投資に関するデータを記した同社のレポートを電子化・収集した.こうしたレポートは,コーネル大学・カンザス大学・中央アメリカ歴史研究所が保有するコレクションから得られた.また,ユナイテッド・フルーツ社の医療部門が出した年間レポートも利用した.このレポートには,衛生・保健プログラムや,同社が運営した病院で1912年から1931年までに患者一人当たりに支出していた額が記載されていた.また,コスタリカ統計年鑑からのデータも収集した.この統計年鑑は,1907年から1917年まで,コスタリカの病院が行った保健支出と患者の人数が詳しく記載されている.そうした病院には,同社が運営していたものも含まれる.輸出データも,こうした年鑑や輸出広報から収集された.1900年から1984年までのあいだに行われた19件の農業国勢調査からは,土地利用に関する情報が得られた.また,本研究では1964年から1984年までのコスタリカ国勢調査から得られたデータを用いて,人口全体のパターンを分析した.たとえば,ユナイテッド・フルーツ社全盛期とそれ以前の移民動向や,同社の労働力の規模と職務分類などの分析である.

全体として,とてつもない論文だ.

アレックス・タバロック「悪いニュースを出すなら金曜に:製薬会社もね」(2019年11月1日)

[Alex Tabarrok, “Release Bad News on a Friday,” Marginal Revolution, November 1, 2019]

「悪いニュースを公表するなら金曜に」――政治家ならずっと昔から知っていたことだ.そして,どうやら製薬会社も同じようにするらしい.

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アレックス・タバロック「今年のノーベル経済学賞はバナジー,デュフロ,クレマーが受賞」

Alex Tabarrok “ The Nobel Prize in Economic Science Goes to Banerjee, Duflo, and KremerMarginal Revolution, October 14, 2019

今年のノーベル経済学賞は,開発経済学でのフィールド実験を理由にアビジット・バナジーエステル・デュフロマイケル・クレマー(リンク先は各人のホームページ)に与えられた。デュフロはジョン・ベイツ・クラーク賞,マッカーサー「天才」賞を受賞し,今やノーベル経済学賞を受賞した史上2番目の女性で,これまでの受賞者の中で群を抜いて一番若い(これまで一番だったのはアロー1 )。デュフロとバナジーは夫婦なのでノーベル経済学賞を受賞した最初の夫婦ということになるが,ノーベル賞を受賞した最初の夫婦というわけじゃない。過去に夫婦でノーベル賞を受賞してそのうち片方がノーベル経済学賞受賞者だった夫婦がいる。さて,どの夫婦かわかるかな?2

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  1. 訳注;アローの受賞は51歳のとき,デュフロは46歳 []
  2. 訳注;正解はhicksian氏訳の過去記事を参照。 []

アレックス・タバロック「モンティ・ホール問題の直観的にわかりやすいバージョン」(2019年9月19日)

[Alex Tabarrok, “The Intuitive Monty Hall Problem,” Marginal Revolution, September 19, 2019]

いろんなパズルは,ある角度から眺めたときには解きにくいのに視座を変えてみたらかんたんになることがよくある.Q&Aサイトの StackExchange に,モンティ・ホール問題と本質は同じで正解を切り替えるかどうかの正しい選択が一目瞭然なものはなにか,という質問があがっている.ジョシュア・B・ミラーが,見事な回答を寄せている.おさらいしておくと,もともとのモンティ・ホール問題では,3つ並んだドアのうち1つにすてきな賞品が待っていて,回答者がどれか1つを選ぶと,司会者のモンティ・ホールが残り2つのうち1つを開けてハズレなのを見せる(開けるのは必ずハズレの方だ).これを見たあとで,ドアの選択を切り替えるか,それとも最初に選んだままにしておくか? たいていの人は,切り替えるべき理由を見出さない.あのポール・エルデシュですら,切り替えない派だった.さらに,切り替えると答える人も,たいていは,直観的にわかりにくいベイズの確率計算をやってその結論にたどり着く.

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アレックス・タバロック「アクティブ・ラーニングは機能するけれど学生のお気には召さない」(2019年9月9日)

[Alex Tabarrok, “Active Learning Works But Students Don’t Like It,” Marginal Revolution, September 9, 2019]

一貫して同じ学生と教員を対象にして注意深く実施された実験により,アクティブ・ラーニング〔能動的学習〕の授業の方が学生たちはより多く学ぶものの,このスタイルの授業を学生は嫌い,学ぶものがそれほど多くないと考えていることが明らかになった.べつにものすごく意外な結果ではない――アクティブ・ラーニングは難しくて,学生はまるで自分がバカなような思いをしてしまうものだ.それよりも,イスにふんぞり返ってご立派な講師が巧みな講義でなにもかも単純なように思わせてくれるのを楽しんでいる方がずっとラクだ.

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アレックス・タバロック「女子の読解における比較優位は数学関連分野での男女格差をだいたい説明する」

Alex Tabarrok “Girls’ comparative advantage in reading can largely explain the gender gap in math-related fields” Marginal Revolution, September 3, 2019


前に「男子の方が数学・科学に比較優位がある?(optical_frog氏による訳)」という記事で,男子は女子よりも読解がずっと下手だから数学に比較優位があることを示す証拠をご覧に入れた(男子が数学に大きな絶対優位をもつわけではないのだ)。みんなが自分の比較優位に特化するとすると,このことが女子よりも多くの男子が数学教育課程に入ることを容易に促してしまう。たとえ女子に男子と同じかそれ以上の才能があったとしてもだ。このことは以前書いたとおり。

さて,これで生徒たちにこう告げたらどうなるだろう――「得意なことをやってごらん!」 大雑把に言えば,状況はこんな具合になるだろう:女子はこう言う――「歴史と国語は A で科学と数学は B だから,長所をもっと伸ばして歴史や国語と同じ技能を活かすことにしよっと!」 一方,男子はこう言う――「科学と数学は B で歴史と国語は C だから,長所をもっと伸ばして科学や数学がからんでることをやろっと!」

米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたブレダとナップの新論文は,この比較優位仮説についてもっと多くのことを見出している。ブレダとナップは,学習到達度調査(PISA)を受ける最大30万人の世界各地の学生の数学を勉強する意欲を調べた。

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