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アレックス・タバロック「英語のポップソングは悲しみと怒りが色濃くなってきてる」(2020年2月17日)

[Alex Tabarrok, “Pop Songs are Getting Sadder and Angrier,” Marginal Revolution, February 17, 2020]

AEON: 英語圏のポップソングは,だんだんネガティブになっている.ネガティブな情動に関連する単語の使用頻度が,1/3 以上も増えている.一例として,ビルボードのデータセットをとりあげよう.歌一曲あたり平均 300語が使われていると仮定すると,ヒット曲の上位 100曲の歌詞は毎年 30,000語使うことになる.1965年に,否定的な情動に関連した単語はおよそ 450ほどだった.2015年に,その数字は700以上になっている.その一方で,同じ期間に,ポジティブな情動に関連した単語は減少している.1965年の歌には,ポジティブな情動の単語がおよそ1,750語あったのに対して,2015年にその数はたった 1,150ほどにまで減っている.ここで気にとめておきたい点がある.絶対数でみると,ネガティブな情動に関連した単語よりもポジティブな情動に関連した単語の方がいつでもより多く現れているのだ.これは人間の言語に普遍的に見られる特徴で,「ポリアンナ原則」と呼ばれている(ポリアンナはその名前を冠した小説の主人公で,いつでも完璧に楽観的な女の子だ).これが逆転するとは,まず予想しがたい:その上で言うと,問題なのは変化の方向だ.

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アレックス・タバロック 「迂回賄賂」(2014年2月17日)

●Alex Tabarrok, “Indirect Bribing with Plausible Deniability”(Marginal Revolution, February 17, 2014)


ステファノ・デッラヴィーニャ(Stefano DellaVigna)&ルーベン・デュランテ(Ruben Durante)&ブライアン・ナイト(Brian Knight)&エリアナ・ラ・フェラーラ(Eliana La Ferrara)の四人の共同研究の成果をまとめたワーキングペーパーより。

・・・(略)・・・本稿では、1994年から2009年までの期間を対象に、イタリア国内の民間企業が支払った広告費の変遷を検証する。1994年から2009年までというのは、シルヴィオ・ベルルスコーニが断続的に計3度にわたってイタリアの首相を務めていた時期にあたるが、ベルルスコーニは首相の地位にある間も、イタリアを代表する民間放送局グループであるメディアセット(Mediaset)のオーナーの座から退かずにいた。政府のご機嫌をとろうとする企業は、ベルルスコーニ首相がオーナーを務めるテレビ局のスポンサーになろうとするのではないか。〔広告費を支払うのと引き換えに、政府から政策面で何らかの便宜を図ってもらおうとするのではないか。〕そのように予測されることになるが、実際のデータもそのことを裏付けている。ベルルスコーニの首相在任中に、メディアセットが擁する民放チャンネルに広告費を支払う動きが勢いを増しているのである。規制の多い業界に属する企業ほど、その傾向が強いことも見出されている。・・・(略)・・・

ベルルスコーニのアメリカ版がリンドン・ジョンソン(第36代アメリカ合衆国大統領)だ。ラジオ局のオーナーだった妻のレディ・バードの力を借りて、同じ手口で財を築いた(私腹を肥やした)のだ。 ロバート・カロ(Robert Caro)が(リンドン・ジョンソンの伝記である) 『Means of Ascent』(「成り上がる術」)の中で次のようなエピソードを紹介している。

とあるビジネスマンは語る。「お役所から仕事を受注したいなら、リンドンにそのための力添えをしてもらいたいなら、彼が所有するラジオ局のスポンサーになればいいってことは誰もが知るところでしたよ」。

この件については、ジャック・シェーファー(Jack Shafer)がこちらの記事で――カロの上記の本を踏まえつつ――もう少し詳しくまとめているので、あわせて参照されたい。

情報を寄せてくれたジョン・バン・リーネン(John van Reenen)に感謝。

アレックス・タバロック 「ウォー・ポリティクス ~国内景気、戦争、大統領選挙~」(2004年4月14日)

●Alex Tabarrok, “War Politics”(Marginal Revolution, April 14, 2004)


あれは1995年のこと。経済学の世界で最も権威のある学術雑誌であるアメリカン・エコノミック・レビュー誌に一篇の論文が掲載された。その論文とは、“War Politics: An Economic, Rational-Voter Framework”。著者はグレゴリー・ヘス(Gregory Hess)&アタナシオス・オルファニデス(Athanasios Orphanides)の二人。アメリカン・エコノミック・レビュー誌の長い歴史の中でも一二を争うくらい物議を醸した論文の一つだ。

「国内経済の舵を取る能力」に「戦争を指揮する能力」。有権者はその二つのマネジメント能力を行政府の長(大統領)に求める。本論文ではそのようにモデル化されている。二期目を狙う現職の大統領が再選を果たすためには、「国内経済の舵を取る能力」と「戦争を指揮する能力」の二つのマネジメント能力の面で挑戦者(対立候補)よりも秀でていることを有権者に納得してもらわねばならないというわけだ。 [Read more…]

アレックス・タバロック「透明性を高めすぎると世の中いっそう不透明になる」(2020年1月10日)

[Alex Tabarrok, “Too much transparency makes the world more opaque,” Marginal Revolution, January 10, 2020]

『ニューヨークタイムズ』のキャスリン・キンズバリーの論説ページを見ると,誇らしげにこう宣言している――これまで伝統的に,選挙の候補者たちとオフレコで話したあとに,自分たちが支持する候補を公表するやり方をとってきたけれど,今後は完全に「透明に」するんだそうだ.
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アレックス・タバロック「原発は人命を救う」(2020年1月4日)

[Alex Tabarrok, “Nuclear Energy Saves Lives,” Marginal Revolution, January 4, 2020]

福島の事故を受けてドイツでは原子力発電所を閉鎖した.これによって,大気汚染が増加して数千もの人たちが亡くなり,数十億ドルのコストが生じている.「ドイツの原発廃止による私的コストと外的コスト」について,Stephen Jarvis, Olivier Deschenes & Akshaya Jha の論文はこう述べている:
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アレックス・タバロック「イノベーション版,囚人のジレンマ」(2019年12月30日)

[Alex Tabarrok, “The Innovation Prisoner’s Dilemmam,” Marginal Revolution, December 30, 2019]

ぼくは風車って美しいなって思うけど,そうは思わない人たちも大勢いる.環境保護の意識が高いドイツにすらたくさんいる.
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アレックス・タバロック「汚染と健康に関する『ランセット』委員会報告から」(2019年12月30日)

[Alex Tabarrok, “The Lancet Commission on Pollution and Health, and IQ,” Marginal Revolution, December 30, 2019]

〔医学系学術誌〕『ランセット』の汚染と健康に関する委員会から,10数名の傑出した共著者たちが執筆した権威あるレビューが出ている.汚染物質(とくに鉛)が IQ に及ぼす影響について,異例なほど率直に記している.そこに出てくる数字のなかには,大きすぎるように思えるものもある(とくに第3パラグラフ)けれど,方向は間違いなく正しい.

神経に害を及ぼす汚染物質は,子供たちの認知発達を阻害することで生産性を下げうる.鉛その他の金属(水銀やヒ素)の接触・摂取は IQ の低下という数値で計った認知能力を低下させる.

認知能力の低下・喪失は,学業や労働力参加での成功に直接影響し,間接的に生涯所得に影響する.アメリカでは,1920年代から1980年ごろまで加鉛ガソリンが広く使われていた結果,何百万人もの子供たちが過剰濃度の鉛を体内に取り込んだ.使用量がピークに達した1970年代に,ガソリンに使用されたテトラエチル鉛の年間消費量は10万トン近くに及んだ.

これによって生じた無症状の鉛中毒によって,傑出した知能(IQ スコア130ポイント以上)をもつ子供の数を50パーセント以上減らしえただろうと推測されている.また,これにともなって,IQ スコア 70以下の子供たちの数も 50% 以上増加することとなったとも推測される(図 14 参照).

鉛が原因となって認知能力が低下した子供たちは学業がふるわなかったり,特別な教育やレメディアル・プログラムを必要としたり,成人後に社会に十分に貢献できなかったりした.

グロスと共同研究者たちの報告によれば,神経に害を及ぼす汚染物質によって IQ スコアが 1ポイント下がるごとに,平均生涯所得は 1.76% 低下する結果となる.さらに,サルケヴァと共同研究者たちは,この分析を拡大して IQ が学業に及ぼす影響も含めて検討している.彼らの報告によれば,IQ が 1パーセントポイント低下すると,平均生涯所得が 2.38% 低下する.2000年代にアメリカのデータを用いてなされた研究群は,それまでに発見を支持しているが,IQ 1ポイントの低下ごとに所得に生じる悪影響は 1.1% だと主張している.鉛摂取と IQ 低下のつながりの分析からは,鉛の血中濃度が 1μg/dL 増えるごとに,平均生涯所得がおよそ 0.5% 低下することが示唆されている.2015年にチリで行われた研究では,汚染地域で鉛を摂取した子供たちを追跡調査して,この影響はそれよりずっと大きいと主張している.ミュエニグによる2016年の分析では,幼い時期に鉛を摂取したために生じる経済的な損失は,たんに認知的な障害によって生じるコストだけにとどまらず,後に鉛を摂取した子供たちによる社会福祉サービスの利用が増加することで生じるコストや〔精神病院などに〕収監される確率の上昇も含んでいると主張している.

アレックス・タバロック「世代・年齢でみた富」(2019年11月26日)

[Alex Tabarrok, “Wealth by Generation and Age,” Marginal Revolution, November 26, 2019]

カート・アンダーソンこんな注目ツイートをしてる:
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アレックス・タバロック「妊娠が増えれば犯罪も減る?」(2019年11月22日)

[Alex Tabarrok, “More Pregnancy, Less Crime,” Marginal Revolution, November 22, 2019]

こと犯罪に関しては,経済学者はもっぱら抑止に関心を集中させる.抑止は機能するけれど,機能するのは抑止に限られない.質が良い初等教育や,認知行動療法などの心理学的な介入でも犯罪は減るし,街灯を改善したりといった単純なことでも犯罪は減る.社会学の研究では,犯罪は制約の問題であると同時に選好の問題でもあることを強調する.たとえば,結婚や出産など人生の帰路になる大きな出来事は犯罪に関わる選好を大きく変えうる.すぐれた新論文「家族形成と犯罪」で,マキシム・マセンコフイヴァン・ローズ(2人ともバークレー出身の雇用市場研究者)は,こうした知見を大規模データセットで実証している.
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アレックス・タバロック「安全なセックスのためにもっとセックスしよう」

Alex Tabarrok ”More Sex is Safer SexMarginal Revolution, October 26, 2019

スティーブン・ランドバーグのMore Sex is Safer Sex[もっとセックスするほどもっと安全に](右のリンクは1997年のNew York Times掲載版,書籍版はこちら)は今年のノーベル賞受賞者のマイケル・クレマーの論文から着想を得ているというのを忘れていた。以下はその要約。

ありとあらゆるところで淫奔は罪であるというのを目にしてきたことだろう。ここでは自己抑制の罪について話してみたい。

あるところにマーティンという魅力的だけど割と慎重で少ないセックス履歴を持つ若い男性がいるとしよう。彼は職場の同僚のジョーンとよろしくやっている。先週のオフィスパーティーが迫るにあたって,ジョーンもマーティンもお互いに相談はしなかったけれども,パーティの後にどちらかの家で一緒に過ごすんじゃないだろうかと考えてはいた。不幸なことに,運命の女神がその手先であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)を通じて介入をしてきた。パーティーの朝,禁欲の美徳を説くCDCの中吊り広告がマーティンの目に入った。マーティンは反省し,パーティーに行かず家に留まることにした。マーティンが来なかったので,ジョーンはマーティンと同じくらい魅力的だけれど彼よりずっと慎重さを欠くマクスウェルと一夜をともにした。そしてジョーンはAIDSに罹ってしまった。

注意深いマーティンがセックス相手探しから手を引いてしまうと,ヤリチンのマクスウェルが不運なジョーンを美味しく頂くのを容易にしてしまう。電車の中吊り広告がマクスウェルよりもマーティンに対してより効果的である場合,そうした広告はジョーンの安全に対する脅威となる。そうした広告が,マーティンをより社会的に有益にするかもしれないカルバン・クラインの広告を押しのけてしまう場合にはより一層だ。

世界中のマーティンがちょっとだけ性に開放的になったならば,AIDSの拡散を遅らせることができる。もちろんやり過ぎれば良いってものじゃない。マーティンが開放的になりすぎると,マクスウェルと同じように危険になってしまう。しかし,性に保守的な人たちが性的活動を多少増やすのであれば,それ以外の私たちにとってそれはとても良いことだ。ハーバード大学教授のマイケル・クレマーは,年間2.25人未満のパートナーしかいない人たち全員がそれ以上のパートナーをもっと頻繁に得るようになれば,イングランドにおけるAIDSの拡散を相当程度遅らせることができると推測している。

クレマー(チャールズ・モーコム)の元々の論文はこちら。ランズバーグはこうした状況においてはコンドームに対する補助金が最適だと示唆している。全文を読んでみてほしい

追記:後になって気づいたけれど,クレマーのモデルはタイで起きたことに非常に良く当てはまるようだ。