メンジー・チン 「ロシアの政策金利とインフレの今後はいかに?」(2022年3月1日)

●Menzie Chinn, “A Forecast on Russian Policy Rate, Inflation”(Econbrowser, March 1, 2022)


ウェルズ・ファーゴ社がロシア経済の今後を予測したレポートを発表している。

図1:赤色の実線は、ロシア中銀が操作する政策金利の推移を表している。赤色のひし形マークは、政策金利の今後の予測値を表している。青色の実線は、ロシアの物価上昇率の実績値を表している。青色の点線は、ロシアの物価上昇率の今後の予測値を表している。物価上昇率は、前年比の変化率;図の出所は、ウェルズ・ファーゴ社(2022年3月1日作成)

ウェルズ・ファーゴ社でのレポート――レポートの執筆者は、マッケンナ&ベンネンブルックの二人――では、「本格的な金融危機も、ロシア国債のデフォルト(債務不履行)も起きなければ」という条件付きで、ロシア経済の今後について次のように予測されている。

・・・(略)・・・ロシア経済は今年(2022年)中に景気後退入りし、2014年~2016年時――ロシアによるクリミアへの侵攻に絡めて経済制裁が発動され、原油価格が暴落した、あの時――と同じようなパターンを辿る可能性があるというのが我々の見立てだ。物価動向に関して言うと、ロシアのCPI(消費者物価指数)は今年1月の段階で既に高騰しており、現段階においてCPIで測った物価上昇率は前年比で9%近くに達している可能性がある。2015年時には、ルーブルの暴落に伴って、物価上昇率は前年比で17%にまで達したが、今年はそれを上回る勢いで物価が急速に上昇するのではないかというのが我々の見立てだ。ウクライナに侵攻する前の段階で既に幅広い範囲の物品で値上げ圧力が高まっていたことに加えて、ここにきてルーブルが急落していることもあり、ロシアの物価上昇率は今年の終わりまでに前年比で18.5%にまで達する可能性が高い金融政策が引き締められ、ルーブルの減価が止まることになれば、ロシアの物価上昇率は2023年を通じて徐々に低下し、2024年にはロシア中央銀行が目標とする4%に落ち着くものと思われる。ロシア中央銀行が操作する政策金利に関して言うと、今後数四半期は20%の水準に保たれ、インフレがピークに達したのが確認されてからようやく利下げに踏み切られるのではないかというのが我々の見立てだ。具体的には、2022年10月の金融政策決定会合で利下げに踏み切られ、インフレが鎮静化するのを横目に見ながら、2023年から2024年にかけて利下げが繰り返されるものと思われる

(追記)繰り返しになるが、ウェルズ・ファーゴ社による予測は、「もしもロシア国債のデフォルトが起きなければ」という条件付きでの予測だ。かなり強い条件ではある [1] … Continue reading

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1 訳注;以下の二つのグラフに示されているように、10年物国債の利回りが急上昇(その裏返しで、10年物国債の価格が急落)していて(上のグラフ)、債務不履行のリスクに備えるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)をやり取りする市場で5年物のCDSスプレッドが急上昇している(下のグラフ)ことから判断すると、ロシア国債がデフォルトに陥る可能性が高まっているとの見方もできる。
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