ラルス・クリステンセン 「君はデブだ! ~『マーケット』の冷酷な宣告~」(2013年11月18日)

●Lars Christensen, “The Crowd: “Lars, you are fat!””(The Market Monetarist, November 18, 2013)


去る金曜日のことだ。ダンスケ・バンク・グループで投資アドバイザーを務める40~50人くらいの同僚を前にして、グローバル経済をテーマに――言うまでもなく、世界各国の金融政策の話題を軸にして――プレゼンテーションを行う予定になっていた。

私の出番がやってきて準備をしていると、誰かがふと口にした。「おやおや。みなさん、今日はお静かなようで」。私に対する挑戦状だと感じて、即座に目の前にあるテーブルに飛び乗った。効果あり。一同の目は、すっかり覚めたようだった。

すかさず、目の前にいるみんなに問い掛けた。「僕の体重を予想してくれたまえ」。一同は、渡された紙に自分なりの予想を書き込む。私のプレゼン中に手の空いている同僚に紙を残らず回収してもらい、みんなの予想をすべて足し合わせてその総和を人数で割ってもらった。つまりは、予想値の平均――「コンセンサス予想」――を求めてもらったわけだ。

プレゼンが始まるやいなや、私の予測なんて当てにならない理由について語り出した。私(というか、一個人)がマーケットに打ち勝つ(beat the market)ことなんてできやしないのだ。先程のデモンストレーションの狙いも、そのことを実証してみせることにあったのだ。「群衆の叡智」(wisdom of the crowds)――効率的市場仮説の姉妹版――を知らしめてやろうと思ったのだ。

定期的に体重を測っているわけではないので、自分の体重がどのくらいかは正確にはわからない。そこで、あれこれと推量を重ねて、自分でも体重を予想してみた。そして、私なりの予想を一同に伝えた。「僕の体重は、服込みで81kgだと思う」。正確な体重はわからないものの、おそらく80kgあるか無いかのはずだ。今は服をたっぷり着込んでいるから、その分を加味する必要がある。加えて、「ちょっと太ったんじゃない?」と妻に揶揄されたばかりでもある。となると、まあ、81kgくらいだろう。

今回もきっと、「サーベイ」の結果は、限りなく「正しい」数値を言い当てるに違いないと信じて疑わなかった。そのため、私の体重に関する「コンセンサス予想」の結果を知って、少しばかり驚いた。「コンセンサス予想」によると、私の体重は84.6kgじゃなかろうかというのだ。

「マーケット」――群衆(「みんな」)――は、「予測」が得意だ。それは確かだ。しかし、しかしだ。この「宣告」は、どう考えてもおかしい。きっと間違いだ。84.6kg。85kg目前じゃないか。デブじゃないか。私はデブじゃない・・・はずだ。

仕事が終わって家に戻ると、すぐさま体重計に乗ってみた。今回ばかりは、さすがの「マーケット」も間違えたに違いないと信じて。しかし、体重計が告げた宣告は、冷酷なものだった。84kg!

というわけで、「コンセンサス予想」(84.6kg)は、わずか0.5キロ差で間違えたに過ぎず、本人の予想(81kg)よりもずっと正確に私の体重を言い当てたわけだ。私はデブなだけじゃなく、自分の体重を予想する争いで「マーケット」に敗れもしたのだ。

ケーキが欲しくてたまらない

(追記)私の身長は183センチ。183センチで84kgなので、BMI(ボディマス指数、肥満度)は25.08ということになる。BMIの値が25以上だと肥満らしいので、私はBMIの数値的に(あくまでもほんのちょっぴり)肥満ってことになる。

(追々記)過去にも似たような実験を行ったことがある。こちらを参照されたい。

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