ラルス・クリステンセン 「ロシア国債のデフォルトリスクがウクライナ国債のデフォルトリスクを上回ったらしい」(2022年3月29日)/ メンジー・チン 「ロシア国債への信認が低下中」(2022年4月10日)

●Lars Christensen, “Ukrainian default risk drops BELOW Russian default risk”(The Market Monetarist, March 29, 2022)


プーチン大統領にとっては、ちょっとした屈辱だろう。ウクライナ国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドが、ロシア国債のCDSスプレッドを下回ったのだ。

CDSというのは何かというと、国債のデフォルト(債務不履行)に備えた保険のようなものであり、保険料を支払うのと引き換えにデフォルト時に損失を補償してもらえるデリバティブ(金融派生商品)の一つだ。CDSの買い手が支払う保険料と国債の元本の比率(=保険料÷国債の元本)がCDSスプレッドということになる。

ウクライナ国債のCDSスプレッドがロシア国債のCDSスプレッドを下回ったということは、それぞれの国債に対する投資家の評価がひっくり返ったことを意味する。すなわち、ウクライナ国債がデフォルトに陥るよりも、ロシア国債がデフォルトに陥る可能性の方が高いと見なされているのだ。

それぞれの国債のCDSスプレッドの推移をまとめたのが以下のチャートだ(単位は、ベーシスポイント。1ベーシスポイント=0.01%)。上側のチャートにある白色の実線がウクライナ国債のCDSスプレッドの推移を跡付けたものであり、オレンジ色の実線がロシア国債のCDSスプレッドの推移を跡付けたものだ。下側のチャートにある緑色に塗られたグラフは、ウクライナ国債のCDSスプレッドとロシア国債のCDSスプレッドの差を表している。


色々と不確定要素はあるものの、上のチャートには、ロシアとウクライナの二国が置かれている状況――「体制転換」が成し遂げられない限りは、西側諸国から厳しい経済制裁が何年にもわたって科され続けるおそれのあるロシア vs. 再び平和が訪れて復興に向けて動き出した暁には、西側諸国から手を差し伸べてもらえるだろうウクライナ――が的確に捉えられていると言えるだろう。

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●Menzie Chinn, “Russian (External) Debt in Doubt”(Econbrowser, April 10, 2022)


CDSスプレッドから導かれるロシア国債(外貨建て国債)のデフォルト確率が100%――デフォルト時の債権の回収率を40%として計算した場合――に達している。主要な格付け機関も軒並みロシア国債の格下げを発表している。

(追記;2022年4月11日)S&P社がロシア国債の格付けを(部分的にデフォルト状態にあることを意味する)SDランクにまで引き下げたようだ。

ロイターのこちらの記事で、外貨建て国債のデフォルトを余儀なくされた場合にロシア政府が訴えそうな措置について論じられている。

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