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タイラー・コーエン 「危機の最中に読むべき本は?」(2020年4月1日)

●Tyler Cowen, “What should you read during the crisis?”(Marginal Revolution, April 1, 2020)


アグネス・カラード(Agnes Callard)がニューヨーク・タイムズ紙で次のように述べている

他の多くの人たちと同じように、私もここのところ「終末もの」の本だとか映画だとかに引き寄せられつつあることに気付く。それに加えて、「終末もの」のフィクションから距離をとって接するのがコロナ禍前よりもずっと難しくなっていることにも気付く。

何かやましいことがあれば、そのことについて後ろめたく思いたい。何かおっかない出来事に遭遇したら、恐がりたいって思う。つまり何が言いたいかというと、何か悪い事が起きたら、苦しみたいと思うのだ。思うだけじゃなく、実際にも苦しみを味わおうとするし、苦しみの種をあえて探し出そうとさえしてしまうのだ。

『第七の祈り』『処女の泉』(いずれもイングマール・ベルイマンが監督した映画)を見返したばかりということもあって、カラードの主張にもある程度は同意するが、完全同意ってわけじゃない。以下に、私なりの考えをいくつか述べさせてもらうとしよう。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「ロバート・ブラウニング、イングマール・ベルイマン、コロナ禍における娯楽」(2020年3月16日)

●Tyler Cowen, “Robert Browning and Ingmar Bergman in a Bloomberg column”(Marginal Revolution, March 16, 2020)


バーに通ったり、コンサートに出かけたり、はたまたマラソンを走りに出かけたりする聞かん坊たちがいることを思うと、コロナ禍において自宅でも楽しめる娯楽をどうやって提供するかという問題を何とかして解く必要がある・・・ってなことをブルームバーグに寄せた拙稿で論じたばかりだ。

第二次世界大戦時のエンタメ業界の状況を振り返ると、教えられるところが多い。当時、米政府はハリウッドが陽気な映画を制作するのを強力に後押ししたし、役者を徴兵しようともしなかった。メジャーリーグ(プロ野球)は当時の国民的な娯楽だったが、戦争中も従来通りにレギュラーシーズンだけでなくワールドシリーズ(優勝決定戦)も開催された。テッド・ウィリアムズをはじめとして一流選手の中には兵役につくことになった面々もいたが、空いた穴を埋めるかのように代わりがちゃんと出てきた。当時の米政府は、戦争というドラマだけでは国民の欲求(ドラマを求める欲求)を満たしきれないってことがわかっていたのだ。

コロナ禍の中では、エッセンシャルワーカー以外のみんなに自宅待機をどうにかして続けてもらうことが課題となる。しかし、自宅にいるのがあまりに退屈だと、外出できないイライラが募ってきて、やがては町に繰り出す人が続出する可能性がある。自宅でじっと我慢しておくべきなのに、大勢で集まってワイワイやり出す可能性がある。新型コロナウイルスの被害を最小限に抑えるためにも、国民の心身を健康に保つためにも、気晴らしになる娯楽をどうやって提供するかという問題を解くことは極めて大事なのだ。

最悪極まりないシナリオは、コロナウイルスそれ自体――コロナの感染状況だったり、国のお偉方なり有名人なり隣人なりのコロナへの反応だったり――が一番の娯楽となることだ。 コロナ禍という名の「現在進行形のホラーショー」を鑑賞しているうちに正気を失い、政治に対してますますシニカル(冷笑的)になっていく観客たち・・・。最悪、そうなってしまう可能性があるのだ。

不満やら恐怖やらに苛(さいな)まれる事態を避けるために、私なりにささやかな提案がある。従来からあるエンタメにちょっとだけ手を加えて、コロナウイルスを寄せ付けないエンタメに作り変えればいいのだ。

Twitterで見かけた意見だが、どこかのケーブルテレビ局が数ヶ月限定でネット配信を無料で見れるようにしてみるっていうのはどうだろう? そう言えば、メトロポリタン・オペラが無料でネット配信を始める予定らしいね。

続きをもう少しだけ引用しておこう。

あるいは、NBA(米プロバスケットボール)のファイナル(優勝決定戦)もどきをやってみるっていうのはどうだろう? ちゃんと実力のあるチームを選んで、選手全員にPCR検査を実施する。そして、辺鄙(へんぴ)なところにある大学の体育館に選手たちを隔離する。試合時間は従来よりも短くして、テレビカメラマンを一人だけ中に入れて、試合の模様をテレビで放映するのだ。公けのイベントがどれもこれも中止されていることもあって、視聴率もおそらくは史上最高値を記録するだろうし、この上ないドラマを味わえるだろう。決して忘れられないファイナルになるだろうし、観ている側の気持ちの高ぶりもあってプレイの質もそりゃもう格別に見えることだろう。

ワシントン・ポスト紙の記者であるベン・ゴリバー(Ben Golliver)がNBA向けのコロナ対策を提案しているので、あわせて参照されたい。

タイトル詐欺で申し訳ないが、ブラウニングベルイマンの話はここでは引用していない。気になるようなら、冒頭で貼ったリンク先に飛んでもらって、全文に目を通してもらえたらと思う(ただし、ベルイマンの話題はイースターエッグみたいにどこかしらにひっそり潜ませてあるので要注意)。そう言えば、チェスの候補者トーナメントは予定通り開催されるみたいだね。何週間かは全試合ネットで無料で見れるから、www.chessbomb.comをチェックしてみるといい。確か火曜日から始まるんじゃなかったっけ。

「外に出ちゃいけません!」って説教するだけじゃうまくいかないだろう。家に閉じ篭(こも)っていても楽しめるようにする必要があるのだ。

タイラー・コーエン 「『コンフォート・フード』の人気が再燃?」(2020年4月26日)/「『コンフォート・ミュージック』への回帰?」(2020年4月28日)

●Tyler Cowen, “Comfort foods make a comeback”(Marginal Revolution, April 26, 2020)


大手の食品メーカーが手掛ける「コンフォート・フード」(comfort foods)1人気が再燃しているコロナ禍の中で、消費者が馴染みやすさと利便性を追い求めているのがその一因と見られている。

大手の食品メーカーの加工食品よりも、新鮮な食材や特産品、あるいは、小売店が独自に販売する安価なブランド。消費者の近年の好みの傾向はそうなっていたが、大手の食品メーカーの幹部が語るところによると、ロックダウン(都市封鎖)の発令により自宅で食事をする機会が増えたのに伴って、冷凍ピザ、パスタソース、マカロニ&チーズの売り上げが伸びているという。

世界最大の食品メーカーであるネスレが金曜日に発表したレポートもここのところのトレンドを裏付けている。ディジョルノ・ピザ、ストファーズの冷凍食品、ホットポケット・サンドイッチの売れ行きが好調で、既存事業の第1四半期の売上高が伸びに伸びているというのだ。ネスレの子会社ブランドであるトール・ハウスやカーネーションのベーカリー製品(クッキーなど)の売れ行きも好調だという。

調査会社大手のニールセンがまとめたレポートによると、(2020年)4月11日までの1週間の間に、米全土でのスープの売上高は37%増、肉の缶詰の売上高は60%増、冷凍ピザの売上高は51%増をそれぞれ記録しているという。

「消費者が不安を感じたり恐怖にさらされると、大手メーカーが勢いを取り戻すというのはこれまでに何度も繰り返されてきたパターンです」と語るのは、ユニリーバのCEOを務めるアラン・ヨーペ氏。大手メーカーの巻き返しは今後数年は続くのではないかとも付け加える。

全文はこちらだが、どのくらい一般的な現象なんだろうね? 食品以外の分野でも似たような傾向が見られるんだろうかね? 例えば、本(小説)の話になるが、分厚い古典の売り上げが伸びてるっていうデータがある。個人的に肌で感じたレベルの話でいうと、車を運転している時に――といっても、車を運転する機会もめっきり減ってるわけだが(だって、どこにお出かけすればいいっていうんだ?)――、衛星ラジオのビートルズチャンネルにあわせると、「ヘイ・ジュード」とか「イン・マイ・ライフ」とかが前よりも頻繁に流れてくるような気がする。わざわざ車を20分かそこら走らせて、6分超も尺がある(ジョージ・ハリソンが作詞・作曲した)「イッツ・オール・トゥ・マッチ」を聞きたいって思う人がいるだろうかね?

食べ物の件で言うと、個人的には、持ち運びが楽で、保存するのが簡単な食品を買う傾向が強まってる。あと、冷凍に向いてるやつ。持ち運びが楽で、保存するのが簡単で、冷凍に向いてるっていう条件を満たす食品というと、肉とか豆とかってことになる。その一方で、生の果物とかパンとかは条件から外れることになる。最も条件に合うのは、冷凍コーンだ。あと、ピクルスも。野菜で言うと、比較的長持ちするやつを選ぶようにしている。カリフラワーとかスカッシュとか。ホウレンソウは傷みやすいんで、ごめんなさいだ。コンフォート・フードそれ自体を贔屓にしているわけじゃないが、できるだけ少ない食材で出来る料理を作りたいんで(食材をたくさん使う料理はたぶん作れないだろうからね。私の腕ではね)、そうなると結果的にコンフォート・フードを買い求めるってことになる。 [Read more…]

  1. 訳注;自宅で簡単に調理できて、「家庭の味」を思い起こさせてくれる食品。心に安らぎを与えてくれる食品。 []

マイルズ・キンボール 「あれに感謝、これに感謝」(2020年11月26日)/「『感謝』にまつわる名言」(2019年11月28日)

●Miles Kimball, “Gratitude in a Pandemic”(Confessions of a Supply-Side Liberal, November 26, 2020)


Link to the 7 Summit Pathways post “20 Gratitude Questions”

目下のパンデミックは、多くの物事に対する視座(見方)を新たにする機会を提供している。パンデミックのせいで色んな制約が課されて、不満を抱くこともあるかもしれない。しかし、これまでは(平時においては)当たり前だと思っていたけど、パンデミックのおかげでそのありがたみに気付けたってケースもあるかもしれない。

仕事があって働けているなら、仕事があることのありがたみにこれまで以上に気付けたなら、感謝だ。それなりに快適な住環境で暮らせているなら、感謝だ。同居人がそれなりに感じのいい人柄なようなら、感謝だ。これまでよりも「距離」への抵抗がなくなって、そのおかげで遠くで生活する古い友人と再び繋がることができたようなら、それにも感謝だ。

感謝に値することは他にもたくさんある。もしかしたら、たった今列挙したどれにも恵まれてないっていう人もいるかもしれない。でも、そういう人でも感謝に値する何かをきっと見つけられるはずだ。最悪のケースに陥ることだって十分にあり得るのに、今のところ多くの人はどうにかそうならずに済んでいる。それだって感謝に値することなのだ。

感謝の心は、人生におけるありがたいあれもこれもすべてに対する感情を高ぶらせてくれる。素晴らしい気分にさせてくれる。あれにもこれにも感謝していると、周りの人間から「感じのいい奴」って思ってもらえるようにもなる。感謝に万歳三唱だ!

ところで、このブログを読んでくれてどうもありがとう。私の語ることに耳を傾けてくれる人がいるっていうのは、本当に嬉しいことだ。誰かが目を向けてくれているからこそ、何かを書こうっていう気にもなれるのだ。

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●Miles Kimball, “Alfred North Whitehead, Epictetus, Melody Beattie and Amy Poehler on Gratitude”(Confessions of a Supply-Side Liberal, November 28, 2019)


image source

「感謝」にまつわる50の名言の中から、個人的なお気に入りを引用しておこう。

  • 「他人の助けなしに成功を手にした人などいない。賢くて信用できる人物なら、他人の助けに感謝を捧げるものだ。」――アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド
  • 「自分にないものを思って嘆くのではなく、自分にあるものを思って喜ぶ。そうするのが賢い人なり。」――エピクテトス
  • 「感謝の心は、人生をこの上なく豊かにする鍵を開けてくれる。 充分以上のものを授けてくれる。感謝の心は、否定を受容に変え、混沌を秩序に変え、乱雑を明澄に変える。ごはんをごちそうに、家を温かい家庭に、赤の他人を友人に変えてくれる。」――メロディ・ビーティ
  • 「自分の人生を振り返ると、感謝を感じずにはいられない。過去にタイムスリップする(昔のことを思い出してそれに感謝する)には、我が身に起こったことを細かいところまで見逃さずに覚えておかなきゃいけない。まるであの時にいるかのようにできなきゃ、あの時にタイムスリップすることはできない。タイムスリップしたい『あの時』を持つには、『今』から目を離しちゃいけない。」――エイミー・ポーラー

タイラー・コーエン 「ウィズコロナ時代の恋愛のかたち」(2020年8月25日)

●Tyler Cowen, “The new marginal revolution”(Marginal Revolution, August 25, 2020)


サラ――フィラデルフィア在住の31歳女性――も、キスには大きなリスクが伴うことはわかっている。だからこそ、「誰かとキスするんなら、一気に何段もすっ飛ばしてそのまま一夜を共にしちゃった方がいいんじゃないかしらね」とのこと。

全文はこちら。こんな記事にそのうちお目にかかるんじゃないかって気になっていたものだ。他にも興味深い箇所を引用しておこう。

ウィズコロナ時代には、初デートまで行き着く前に(コロナ絡みの)尋問がネット経由で繰り返される。そのおかげで、まだ直接会わないうちから、二人の間では親密さがいや増すことになる。フォアマンは次のように語る。「初めてのデートでキスしたら・・・、キスできるのはそれまでにいくつもの尋問を受けてきたからですけど、もう4回目のデートを迎えたようなもんです。たとえ彼女になってもらえなくても、どちらとも羽を伸ばしたくて仕方ないんです。何ヶ月も耐えてきたんですからね」。

もう一丁、興味深い・・・というよりは、議論を呼びそうな箇所を引用しておこう。

過去数ヶ月は注意深く過ごしてきたというマーチン。しかし、今では、安心そうと感じた相手とは一夜限りの関係を持っているという。

コロナ禍でのゆきずりの恋の安全性(危険性?)について信頼できるデータを手に入れられそうな見込みは・・・無さそうだ。

タイラー・コーエン 「ヒトは無意識のうちに自分の匂いを頻繁に嗅いでいる?」(2020年4月24日)

●Tyler Cowen, “Are humans constantly but subconsciously smelling themselves?”(Marginal Revolution, April 24, 2020)


以下に引用するのは、オフェル・パール(Ofer Perl)率いる研究チームの論文のアブストラクト(長~いアブストラクト)の冒頭部分だ。自分の顔を手で触らずにいるのがなかなか難しい理由を説明する一助になるかもしれない。

人間をはじめとして霊長類に属する生物は、かなりの頻度で自分の顔を触ることが知られているが、その機能についてもその由来についても未だもって不明なままである。本稿では、人間が自分の顔を触るのは自分の手の匂いを嗅ぐためではないかとの仮説を提示する。まずはじめに、人間がかなりの頻度で自分の顔を触っている事実を確認するために先行研究を展望する。次いで、人間が自分の顔を触るのは自分の手の匂いを嗅ぐためであることを示唆する実験結果を詳しく取り上げる。その実験結果によると、被験者が手で自分の顔を触るのに伴って鼻の呼気量が大きく増えるだけでなく、被験者に気付かれないように香水やステロイド化合物を振りかけると、それに伴って手で顔を触る頻度が増えたり減ったりする(香水を振りかけた場合は増え、ステロイド化合物を振りかけた場合は減る)ことが確認されている。自分の顔を触って自分の手の匂いを嗅ぐのは大体において無意識の行為である可能性が高いが、人間は(自分の顔を触る以外の方法で)意識的にも自分の匂いをかなりの頻度で嗅いでいるようである。

「滅多に問われない疑問集」にまた一つ追加だ。情報を寄せてくれたミシェル・ドーソンに感謝。

アレックス・タバロック 「挨拶はグータッチで」(2020年2月26日)

●Alex Tabarrok, “All Praise the Fist Bump”(Marginal Revolution, February 26, 2020)


誰かと出会った時にどう挨拶したらいいだろうか? 握手は細菌を拡散させるので、まずい。個人的には(インド流の挨拶である)ナマステがお気に入りだが、相手が手を差し出してきた時に色々と気まずい。グータッチ(fist bump)の方がまだスムーズにいきそうだし、習慣として根付く可能性も高そうだ。

サラ・メラ(Sara Mela)&デビッド・ホイットワース(David E. Whitworth)の二人がAmerican Journal of Infection Control誌に発表した研究によると、グータッチに伴って拡散されるバクテリアの量は、軽く握手する場合の4分の1程度に抑えられるとのことだ(言うまでもないが、力強く握手する場合と比べると、その量はもっと低く抑えられる)。 その理由は、グータッチの方が相手の手と接触する時間も短くて、接触する面積も狭いからだ。

グータッチってどうやるのって? トム・ハンクスをお手本にするといい。

フランシス・ウーリー 「税による資源配分の歪み ~窓税、レンガ税、固定資産税を例に~」(2012年1月3日)

●Frances Woolley, “The concrete impacts of taxes”(Worthwhile Canadian Initiative, January 03, 2012)


1695年から1851年までの期間にわたり、イギリスでは「窓」に対して税金が課されていた(pdf)。

窓税を賦課するのは比較的容易だった。一人ひとりの納税額を算出するのに、住まいにどれだけの数の窓があるかを数えるだけでよかったからである。窓税は「累進的」な性質を備えた税でもあった。というのも、所得が多い人ほど、住まいのサイズが大きい傾向にあったからである。住まいのサイズが大きいと、それに伴って、窓の数も多くなる。つまりは、窓税の支払額も多くなるわけだ。おまけに、窓税が課されたのは、窓の数が10個以上ある住まいだけに限られていた(その後、7つ以上に法改正された)。窓の数が9つ以下(法改正後は、6つ以下)であれば、窓税の支払いを免除されたのである。

(窓税が課されるために)窓の「値段」が高くなると、どうなるか? 窓に対する需要は減る。そう予想されるが、実際にもそうなった。市井の人々は、住まいにある窓をレンガで塞いだのである。イギリスを歩いて回ると、窓がレンガで塞がれている古い家を今でもあちこちで目にすることができる。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「ノーベル賞の権威に陰りが見えつつある?」(2020年10月11日)

●Tyler Cowen, “Are Nobel Prizes worth less these days?”(Marginal Revolution, October 11, 2020)


どうやらそのようだね。受賞者もたくさんいるしね1ブルームバークに寄稿したばかりのコラムの一部を以下に引用しておこう。

今年のノーベル平和賞は、国連(国際連合)の機関である世界食糧計画(World Food Programme)に授与されたが、グローバル開発センター(Center for Global Development)――その方面では名の知られた有数のシンクタンク――が作成している「援助効果」ランキングによると、世界食糧計画は(途上国の援助に取り組んでいる計40の組織のうちで)最下位という結果になっている。ウィリアム・イースタリー(William Easterly)&トビアス・プフッツェ(Tobias Pfutze)の二人による2008年の研究(pdf)でも、世界食糧計画には手厳しい評価が下されている。

この件に関して特筆すべきは、ノーベル賞委員会が判断を誤ったかもしれないってことではなく、誰も気にもかけてないようだってことだ。世界食料計画の成果に疑問を呈する声がツイッターの一部で上がっているものの、大きな論争を巻き起こすまでにはなっていないのだ。

私もツイッターでノーベル賞受賞者を何人かフォローしているが、その面々の全体的な印象として、20代(あるいはそれ以下)の若者よりも気まぐれ屋に見える。そのこともノーベル賞の威光を弱めることになっているかもしれない(この点について詳しくは、コラムを参照してほしい)。マーティン・グッリ(Martin Gurri)の言う通りってわけだ。

もう一丁引用しておこう。

インターネットは、別のかたちでも賞のインパクトを弱める方向に働いている。ポール・ローマー(Paul Romer)のケースがいい例だ。「チャーター都市」構想をはじめとして、ローマーのアイデアの多くについては、2018年に彼がノーベル経済学賞を受賞(文句なしで受賞)するよりもずっと前から(10年近くは)、ネット上で盛んに論じられていた。ブログだったり、ツイッターだったり、Medium(ミディアム)だったりで。ネット上でその議論を追っていた誰もが、「ローマーはそのうちノーベル経済学賞を受賞するだろう」と予想していたが、2018年になってローマーに実際に賞が授与されると、「今頃になってか」と拍子抜けしたものだ。労働経済学者であるデビッド・カード(David Card)が(おそらくは共同研究者と一緒に)今年のノーベル経済学賞を受賞することになったとしたら(その可能性はありそうだが)、同じような反応(「今頃になってか」)になることだろう。

ちなみに、今年のノーベル経済学賞は「カードと誰かの共同受賞」というのが私の予想だ。

  1. 訳注;受賞者の数が年々積み上がるのに伴って、賞の特別感が薄れていっている、という意味。 []

ラルス・クリステンセン 「Fedが『平均インフレ目標』の採用へ ~インフレ目標を2.5%へと引き上げたも同じ?~」(2020年8月27日)

●Lars Christensen, “The Fed just de facto increased its inflation target to 2.5%”(The Market Monetarist, August 27, 2020)


久しく待たれていたが、遂にその時がやって来た。Fedが金融政策の戦略を見直すと宣言したのだ。

「金融政策の長期的な目標と戦略」に関する声明の変更点のうちで重要なポイントがこちらにまとめられている。引用しておこう。

  • 「雇用の最大化」について言うと、幅広い指標に照らして総合的に評価されるべき包括的な目標である旨が強調されている。さらには、「足元の雇用水準が最大限の雇用水準を『どれだけ下回っている』か」を慎重に評価した上で、金融政策の策定にあたる旨が明記されている(ちなみに、これまでの声明では、「足元の雇用水準が最大限の雇用水準から『どれだけ乖離している』か」を慎重に評価した上で、と表現されていた)。
  • 「物価の安定」について言うと、2%の長期的なインフレ目標の達成に向けて、「インフレ率が『平均して』2%に向かうよう試みる」と記されている。インフレ率が平均して2%に向かうようにするためには、「インフレ率が2%を一貫して下回り続けた後には、インフレ率が2%を若干上回るのをしばらくの間にわたって容認するのが適当である」とも記されている。
  • 今回見直された声明では、低金利が常態化することに伴う挑戦についてもはっきりと言及されている。政策金利が下限に達してしまう(政策金利を引き下げる余地がなくなってしまう)事態に追いやられる可能性がアメリカをはじめとして世界各国でこれまで以上に高まっているのだ。

ほぼほぼ予想通りの線に沿った変更だが、Fedのこれまでの戦略に比べるとかなり大きな変化だと言える。 [Read more…]