経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

ファビオ・ロハス 「アートの世界に潜む秩序に迫る手助けとなってくれる三冊」(2003年9月15日)

●Fabio Rojas, “Art careers”(Marginal Revolution, September 15, 2003)


部外者の目にはアートの世界は「カオス」のように映るようだ。しかしながら、アートの世界にはそれなりの秩序が潜んでいる。アートという創造的な世界で働く面々の生態についていくらか手がかりを得るには次の三冊の本がお薦めだ。まず一冊目はデビッド・ガレンソン(David Galenson)の『Painting Outside the Lines』。傑出した芸術家というのは(若くして画期的なアイデアに思い至る)早咲きタイプか(何十年もかけてじっくりと経験を積みながら独創的なビジョンを育んでいく)遅咲きタイプかのどちらかの傾向にあり、その中間というのは稀というのが本書のメッセージだ。二冊目は『I Bought Andy Warhol』。アンディ・ウォーホルの作品(絵)の蒐集に燃える美術商(アートディーラー)の物語であり、アーティストの序列であったり美術商というビジネスのイロハであったりについて詳しく語られている一冊だ。最後は『Hit Me, Fred: Recollections of a Sideman』。ジェームズ・ブラウンのバックバンド(ザ・JBズ)にも参加した大御所のトロンボーン奏者であるフレッド・ウェズリー(Fred Wesley)の自伝だ。「サイドマン」として知られるミュージシャンの面々――ビッグアーティストの背後で演奏するのを生業とした腕利きのミュージシャンたち――の生き様が論じられている一冊だ。以上の三冊を読めばアートの作り手ないしは売り手の視点から20世紀後半におけるアート産業の実態に迫るいい手がかりが得られることだろう。

タイラー・コーエン 「至る所に市場あり ~アートとしての欠陥品~」(2011年7月1日)

●Tyler Cowen, “Markets in everything”(Marginal Revolution, July 1, 2011)


とあるアーティストが世界中の工場から「意図的な失敗作」を取り寄せているらしい。

「欠陥品をあえて作ってくれないか」。アーティストのジェレミー・ハッチソン(Jeremy Hutchison)が世界各地の工場に向けてそのような注文を出したという。

ハッチソンによる説明は次の通り。「世界各地の工場に製品を作ってくれと注文したんです。ただし、どこかに欠陥を抱えた製品を作ってくれと頼んだんです。どこかに欠陥があるためにまったく使い物にならない製品を作ってくれとお願いしたんです。具体的にどんな欠陥かという点については私が決めるのではなく工場で実際に製品を作っている労働者に決めてもらいたいと思っています。現場の労働者がどんな判断を下そうとも(どんな欠陥品が送られてこようとも)返品せずにきちんと代金を支払うつもりです」。

ハッチソンが受け取った欠陥品の中には「歯の無い櫛」なんかも含まれているとのことだ1

  1. 訳注;ハッチソンが受け取った欠陥品(「アートとしての欠陥品」)の一覧についてはこちらのページを参照されたい。 []

タイラー・コーエン 「正しいキャリアに踏み止まる術」(2014年9月3日)/「タトゥーがあると職探しに不利に働く?」(2014年9月3日)

●Tyler Cowen, “How to stay on the right career path”(Marginal Revolution, September 3, 2014)


「労働市場におけるコミットメントデバイス」とも言う。

(アメフトのプロリーグであるNFLのチームの一つである)セントルイス・ラムズの選手登録枠(ロースター)の一番最後(53人目)の枠に新人のイーサン・ウェストブルックス(Ethan Westbrooks)が滑り込むことになった。マイケル・サム(Michael Sam)に競り勝ってディフェンスラインのポジションを手に入れた格好になる。

ウェストブルックスの経歴は注目に値する。今から3年前の2011年当時、サクラメント・シティ・カレッジでアメフト選手としてプレーしながらあの「トイザらス」でも働いていたというのだ。そして今年(2014年)に入ってNFLの門をくぐることになったというわけだ。ウェストブルックス本人の言によると、今回めでたく一番最後の選手登録枠に滑り込むことができたのは「やる気を鼓舞する一風変わったツール」のおかげでもあるとのこと。「顔に入れたタトゥー」のおかげでもあるというのだ。

ウェストブルックスが目の下にタトゥーを入れたのは2011年のことだが、もう二度と普通の仕事なんかしたくないと思ってそうしたとESPN社のリポーターであるニック・ワゴナー(Nick Wagoner)の取材に対して答えている。「顔にタトゥーの入った求職者」にならないためにはNFLで結果を残す(アメフトのプロ選手として成功する)しかない〔そのように自分を追い込んだ〕、というわけだ。

記事の全文はこちら(ウェストブルックスの顔写真付き)。G. Patrick Lynch経由で知ったネタだ。

——————————————————————————————————-

●Tyler Cowen, “What does a tattoo signal?”(Marginal Revolution, September 3, 2014)


タトゥーが入っていると就職に不利に働くかどうかという話題については少し前に取り上げたばかりだが、さらにもう一歩踏み込んだ研究がお出ましだ。ウェストバージニア大学で博士号を取得したばかりのケイトリン・ハーガー(Kaitlyn Harger)女史の手になる論文がそれだ。ハーガーの論文ではフロリダ州の囚人のデータを対象に出所後の元囚人のその後が追われているが、ハーガーが手元に集めたデータは一味違っている。タトゥー入りの囚人とそうじゃない囚人とが区分けされているのだ。

どうやら多くの企業(雇い主)はタトゥーの入った求職者の採用には乗り気ではないようだ。例えば、アメリカ陸軍なんかも「ボディアート」(タトゥー)に関する内規を見直して禁止事項を増やしたばかりだ。ハーガーの論文によると、タトゥーの入った元囚人はタトゥーの入っていない元囚人よりも合法の職にありつくのが難しくて食い扶持(ぶち)を稼ぐために再び犯罪に手を染める傾向が高い――再犯率が高い――との結果が示唆されている。

ハーガーの論文では次のような注目すべき結果が報告されている。囚人全体の平均だと出所してから5000日(およそ14年)もすると再び刑務所に逆戻りしてくる傾向にあるが、タトゥー入りの囚人全体の平均だとその半分の日数(およそ7年)で刑務所に逆戻りしてくる傾向にあるというのだ。

Free Exchangeブログより。全文はこちら

タイラー・コーエン 「ポートランドの商人? ~タトゥーの著作権侵害で提訴~」(2005年2月17日)

●Tyler Cowen, “The Merchant of Portland?” (Marginal Revolution, February 17, 2005)


(オレゴン州にある)ポートランド在住のアーティストが(全米男子プロバスケットボールリーグである)NBAのデトロイト・ピストンズでフォワードを務めるラシード・ウォーレス(Rasheed Wallace)を相手に訴訟を起こした。提訴したのはウォーレスの右腕に「エジプト風のタトゥー」を彫った人物(提訴理由は著作権侵害)。NIKE(ナイキ)のバスケットシューズのCM(テレビコマーシャル)でウォーレスの右腕にある「作品」を映すのをやめてほしいとのこと。CMの放映中止と損害賠償の支払いを求めているが、(著作権を侵害したとの理由で)「肉1ポンド」(違約金)が支払われればそれで納得するとのことだ。

記事の全文はこちら1。ウォーレスの右腕に彫られたタトゥーの画像集はこちら

  1. 訳注;リンク切れ。代わりに例えばこちらの記事(英語)を参照されたい。 []

タイラー・コーエン 「タトゥーを彫るとしたらデザインはどうする?」(2010年11月13日)

●Tyler Cowen, “A theory of optimal tattoos”(Marginal Revolution, November 13, 2010)


本ブログの熱心な読者の一人であるDavid Stearnsから次のような質問を頂戴した。

体のどこかにタトゥーを彫るとしたらデザイン選びはどうしますか? 「未来の自分」も喜んでくれるに違いないようにするにはどんなタトゥーを入れたらいいでしょう? 好きなアート作品を模写します? それともピーター・リーソンに倣って1経済学絡みのタトゥーを入れます? 家族の名前を彫るだとか「誰にも見られないように脇の下とかに小さな点のタトゥーを入れる」とかいう回答は無しの方向でお願いします。

彫るとすればお気に入りの旅行先である国の地形を象(かたど)ったタトゥーにするだろうね。私の場合はメキシコとかブラジルとかになるだろうが、どちらの国も一目でわかる形をしてもいる。お気に入りの旅行先のタトゥーを入れていたら誰かに旅行の思い出話を聞いてもらういい口実になってくれるだろうし、国のかたちのタトゥーを目にしても(タトゥーそのものへの嫌悪感を別にすれば)不快な思いをする人なんてそんなに多くないだろうしね。タトゥーで既存のアート作品を再現しても低俗に見えちゃうだろうね。ケルト模様(幾何学模様)のタトゥーもありだろう。他には犯罪者っぽく見えるタトゥーを入れるという選択肢もある。少なくとも私に関しては思い描く人生設計とうまく調和しそうにないが、犯罪者っぽく見えるタトゥーのおかげで得をする人も中にはいることだろう。

ダン・アリエリー(Dan Ariely)によるタトゥー論(こちら)もあわせて参照あれ。

  1. 訳注;「経済学への関心は海賊への興味とほぼ同じくらい古いものだし、しかもずっと深い。右腕には、需要供給曲線の刺青をしているのだ(17歳のときに入れた)。」(ピーター・T・リーソン(著)/山形浩生(訳)『海賊の経済学』, pp. 2) []

タイラー・コーエン 「私の背中売ります ~キャンバスとしての背中~」(2017年2月2日)

●Tyler Cowen, “Back markets in everything those new service sector jobs”(Marginal Revolution, February 2, 2017)


ティム・シュタイナー(Tim Steiner)氏の背中に彫られた見事なタトゥー。そのデザインを請け負ったのはとある著名なアーティスト。その所有者は(シュタイナー氏ではなく)ドイツ人のアートコレクター。シュタイナー氏が亡くなると、タトゥーが彫られた部位(皮膚)が剥がされて額に入れて飾られる決まりになっている。存命中は(背中のタトゥーが見えるように)シャツを脱いだ状態であちこちのギャラリーで座って過ごすことになるという。

「アート作品を背中に背負っているんです。私はその作品の運搬人なんです」とシュタイナー氏。現在40歳。(スイスの)チューリッヒ出身で前職はタトゥーパーラーのマネージャー。

話は10年前に遡る。シュタイナー氏がその当時付き合っていた恋人がベルギー出身のアーティストに出会ったのが事の始まり。そのアーティストの名はヴィム・デルボア(Wim Delvoye)。豚にタトゥーを入れた作品で物議を醸し名を売ることにもなったアーティストだ。

その恋人はデルボアから「新作を描くための『人間キャンバス』になってもいいという人物を探している」と伝えられたという。誰か興味を持ってくれそうな人を知らないかと尋ねられたというのだ。

・・・(略)・・・シュタイナー氏の背中に彫られたタトゥーの作品名は『TIM』。2008年にドイツ人のアートコレクターであるリク・ラインキング(Rik Reinking)氏が15万ユーロ(13万ポンド)で買い取った。シュタイナー氏は15万ユーロの3分の1にあたる5万ユーロを受け取ったという。

「私の皮膚はあれ以来リク・ラインキング氏のものなんです」とシュタイナー氏。「私の背中はキャンバスなんです。私という人間は背中に背負った作品を一時的に収めておく額なんです」。

シュタイナー氏が亡くなるとタトゥーが彫られた背中の部位(皮膚)を剥がした上でその箇所を額に収めてラインキング氏のプライベート用のアートコレクションに加えられる契約内容になっているという。

そんなのゾッとするばかりじゃないかという声に対してシュタイナー氏は次のように応じている。「ゾッとするという感覚は相対的なものなんですよ」。

記事の全文はこちら。相変わらずキレキレのティム・ハーフォード(Tim Harford)――快著である『Messy』(邦訳『ひらめきを生み出すカオスの法則』)の著者――経由で知ったものだ。

アレックス・タバロック 「バンクシーの真意やいかに? ~1枚60ドルで売ります~」(2013年10月15日)

●Alex Tabarrok, “Banksy Comments on the Nobel Prize?”(Marginal Revolution, October 15, 2013)


Mashable: ストリートアーティストとして知られるバンクシー(Banksy)の絵が土曜日にニューヨークのセントラルパークで路上販売された。露店で売りに出されたのは万ドル単位相当の値打ちがあると見積もられている作品ばかりだが、そのお値段は1点あたりなんとわずか60ドル。

その模様はバンクシーの公式サイトで映像付きで報告されているが、記念すべき最初の売り上げにたどり着くまでに開店から数時間を要したという。最初の購入者は女性。値引き交渉の末に2点の作品を半額で購入していったという。午後6時に店が閉じられるまでに絵を購入していったお客の数は合計で三名。一日の売上高(売り上げ総額)は420ドルにとどまったらしい。

ちなみに、バンクシーの作品のうちで『Space Girl & Bird』は2007年にオークションで57万8000ドルの値がつけられており、『Keep it Spotless』は2008年に187万ドルで落札されている。

ファーマ&シラー&ハンセンの三人――「資産価格の実証分析」への学術的な貢献が讃えられて本年度(2013年度)のノーベル経済学賞を共同で受賞した三人――なら上の結果について何てコメントするだろうね?

複製不可能な作品(アート作品)を売って得られる儲けを最大化する(一つでも多くの作品をできるだけ高値で売りさばく)というのはマッチングの問題の一種であり、「この作品を手に入れるためなら誰よりも金を出してやる」と意気込む相手(買い手の候補)を世界中から探し出す努力が欠かせない(この点について詳しくは “An Economic Theory of Avant-Garde and Popular Art”(pdf)を参照のこと)。・・・という観点からすると、上の結果はマーケティング(宣伝)の失敗として説明がつけられるかもしれない。

「現代芸術(モダンアート)はバブルに彩られている」という別の説明も考え得る。将来的に誰かに(自分が買った時よりも高い値段で)売ってしまえるだろうと予想するからこそ買う。そうじゃなければモダンアートなんて買わない、というわけだ(ファッション感覚で買ったり流行に乗って買うというのもバブルを後押しする働きをする可能性があるが、それでもやはり将来的にいいカモ買い手が見つかる(高値で転売できる)に違いないという予想に支えられている点では変わりがない)。

あるいはバンクシーとしては(「シグナリングの理論」の分野を開拓した)別のノーベル経済学賞受賞者の業績に目を向けよと言いたいのかもしれないね。

タイラー・コーエン 「『穏健な抗議行動』と『暴力的な抗議行動』とではどちらがより効果的?」(2018年11月2日)

●Tyler Cowen, “Are peaceful or violent protests more effective?”(Marginal Revolution, November 2, 2018)


政策変更を促す上で「穏健な(暴力に頼らない)抗議行動」と「暴力的な抗議行動」とではどちらがより効果的なのだろうか? 本論文では公民権運動の一環として繰り広げられた(市民による)抗議行動が米下院における議員の投票行動にいかなる効果を及ぼしたかを検証する。具体的には、固定効果モデルを用いて出身選挙区別に議員の投票行動が抗議行動を受けて時とともに(1960年~1972年の間に)どのような変化を辿ったかを探る。本論文で得られた検証結果によると、「穏健な抗議行動」は(下院における法案の審議で)議員からリベラル寄りの――公民権運動の目的に沿う――投票を引き出す傾向にある一方で、「暴力的な抗議行動」は裏目に出てしまう――議員から保守寄りの投票を引き出す――傾向にあることが見出された。さらには、「穏健な抗議行動」のリベラル化効果(議員からリベラル寄りの投票を引き出す効果)が及ぶ範囲は公民権関連の審議に限定される一方で、「暴力的な抗議行動」の保守化効果(議員から保守寄りの投票を引き出す効果)が及ぶ範囲は福祉関連の審議にまで波及することも見出された。議員の投票行動の変化を説明し得るその他の代替的な仮説についても検討を加えて本論文の結論が頑健である(覆されない)ことも示す。「穏健な抗議行動」のリベラル化効果は議員の入れ替えが起きた(現職が選挙で敗れた)選挙区や白人比率の高い選挙区ほど大きい傾向にある。以上の結果は「抗議行動のシグナリングモデル」と整合的であり、抗議行動は(黒人ではなく)白人の有権者に対して新しい(よく知れ渡っていない)情報を伝える役目を担った可能性があることを示唆している。

以上、デューク大学の博士課程で学ぶガボール・ニェキ(Gábor Nyéki)ジョブ・マーケット・ペーパー(pdf)のアブストラクト(要旨)より。

オリヴィエ・ブランシャール 「フランスにおける『黄色いベスト運動』と『代議制民主主義の失敗』」(2018年12月3日)

●Olivier Blanchard, “The French “Yellow Vest” Movement and the (Current) Failure of Representative Democracy”(RealTime Economic Issues Watch, The Peterson Institute for International Economics, December 3, 2018)


フランスにおける「ジレ・ジョーヌ」(gilets jaunes;黄色いベスト)運動――抗議行動に参加している市民が揃って「黄色いベスト」を着用しているのにちなんでそのように名付けられている――の模様を収めた映像がメディアを賑わせている昨今である。「ジレ・ジューヌ」運動が広がりを見せているのはなぜなのか? その根っこにある原因は何かと突き詰めると共産主義の終焉にまで遡らねばならない。市場経済の代わりとして期待された計画経済が失敗に終わったことにまで遡る必要があるのだ。 [Read more…]

マーク・ソーマ 「消費経済の歴史は想像以上に古い?」(2005年9月8日)/ アレックス・タバロック 「自壊する絵 ~本物のアーティストがここに~」(2018年10月6日)

●Mark Thoma, “The Consumer Driven Economy”(Economist’s View, September 08, 2005)


消費経済(消費者主導の経済)の歴史は思っていたよりも古いようだ。


上の画像は大英博物館が公表した「嘘っぱち」の洞窟壁画。大英博物館に展示されていた作品で原始人がショッピングカートを押す姿が描かれている。作者は匿名の「アート・テロリスト」ことバンクシー(Banksy)。大英博物館に無断でこっそり置いていったという。・・・(略)・・・〔全文はこちら1

——————————————————————————————————-

●Alex Tabarrok, “Banksy is the Real Deal”(Marginal Revolution, October 6, 2018)


Hyperallergic: 金曜日の夜にロンドンで開催されたオークションでバンクシーの作品が「自壊」した

競売大手のサザビーズが取り仕切るオークションの午後の部の締め括りとして登場した(バンクシーの代表作である)『少女と風船』(2006年制作)。「95万3829ポンド(約1億4000万円)!」という印象的な掛け声とともにオークションは終了。

キャスターライン・グッドマンギャラリーの創業者であるロバート・キャスターライン(Robert Casterline)もオークション会場にいた一人。我々の取材に対して落札直後に何が起こったかを説明してくれた。「オークションの終了を告げる小槌が打ち鳴らされた瞬間でした。額縁の内側から警報音が鳴り響いてきたんです」。会場は「大混乱」。

「百万ドルを超える値で落札され、私も含めて聴衆の面々が席に座ろうとしたその時です。絵が突然動き出したんです」とキャスターライン。作品が収められている額縁もバンクシー本人が用意したものであり、シュレッダーが仕掛けられていたという。作品が落札されるやシュレッダーが作動して絵をバラバラに裁断し出したというのだ。「はじめのうちはすっかり混乱して何がなんだかわかりませんでしたが、しばらくすると興奮に襲われて震えましたね」とキャスターライン。

サザビースの現代アート部門(欧州地域)の責任者を務めるアレックス・ブランクチク(Alex Branczik)がアート・ニュースペーパーの取材に応じているが、どうやら彼も会場にいた一同と同じくらい仰天したようだ。

バンクシーって天才だね。

  1. 訳注;リンク切れ。ちなみに、バンクシーが件の作品を大英博物館に無許可で置き去ったのは2005年のことだが、今現在は晴れて「許可を得て」大英博物館に置かれているとのこと。大英博物館にて開催中の展覧会(会期は2018年9月6日~2019年1月20日)で正式な作品として展示されているらしいのだ。 []