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アレックス・タバロック「妊娠が増えれば犯罪も減る?」(2019年11月22日)

[Alex Tabarrok, “More Pregnancy, Less Crime,” Marginal Revolution, November 22, 2019]

こと犯罪に関しては,経済学者はもっぱら抑止に関心を集中させる.抑止は機能するけれど,機能するのは抑止に限られない.質が良い初等教育や,認知行動療法などの心理学的な介入でも犯罪は減るし,街灯を改善したりといった単純なことでも犯罪は減る.社会学の研究では,犯罪は制約の問題であると同時に選好の問題でもあることを強調する.たとえば,結婚や出産など人生の帰路になる大きな出来事は犯罪に関わる選好を大きく変えうる.すぐれた新論文「家族形成と犯罪」で,マキシム・マセンコフイヴァン・ローズ(2人ともバークレー出身の雇用市場研究者)は,こうした知見を大規模データセットで実証している.
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タイラー・コーエン「男女交際に関する実におどろきのデータ」(2019年11月16日)

[Tyler Cowen, “Pretty stunning data on dating,” Marginal Revolution, November 16, 2019]

全体をとおして面白いけれど,ばつぐんに面白いのは pp.5-6 で,男性が女性をどう評価するのかと,女性が男性をどう評価するのかを比較している.そのうち,半分はこんな感じ〔交際相手マッチングサイト OKQupid のデータ〕:
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アレックス・タバロック「本日の政治的に正しくない論文: ユナイテッド・フルーツ社は善玉だった!」(2019年11月12日)

[Alex Tabarrok “Politically Incorrect Paper of the Day: The United Fruit Company was Good!” Marginal Revolution, November 12, 2019

ユナイテッド・フルーツ社〔現チキータ〕といえばラテンアメリカの悪鬼,新植民地主義のきわみだ.たしかに,ユナイテッド・フルーツ社の歴史には悪しき行いもあるし,各種の陰謀論のネタには事欠かない.でも,ユナイテッド・フルーツ社はラテンアメリカにバナナを(輸出作物として)もたらしたし,観光旅行ももたらした.多くの場合には,ラテンアメリカのあちこちによい統治ももたらした.こうしたことの多くを左右したのは,ユナイテッド・フルーツ社の操業地域内の制度的な制約だ.Esteban Mendez-Chacon と Diana Van Patten(雇用市場研究)は,コスタリカにおけるユナイテッド・フルーツ社に着目している.

ユナイテッド・フルーツ社は,遠く離れた場所に労働者をもちこむ必要があった.そこで,同社は労働者の福利厚生に大きく投資した.

(…)ユナイテッド・フルーツ社は衛生インフラに投資し,保健プログラムを立ち上げ,従業員に医療診断を提供した.インフラ投資には,水道管・飲用水システム・下水システム・街灯・砕石舗装された道路・堤防も含まれていた (Sanou and Quesada, 1998).さらに,1942年までに同社はコスタリカ国内で3つの病院を運営をはじめていた.

(…)大農場が遠隔地にあり,また,輸送コストを削減する目的もあって,ユナイテッド・フルーツ社は従業員の大多数に同社敷地内にある無料の住宅も提供した.これは,マラリアや黄熱病のような病気の懸念が動機の一部になっていた.集団が大農場の外から絶え間なく通勤していると,こうした病気は簡単に拡大してしまう.1958年まで,労働者の大多数はバラック式の建物で生活していた.(…)こうした住居は,多くの近隣コミュニティの生活水準よりも高かった (Wiley, 2008).

ユナイテッド・フルーツ社は,たんに健康な労働者に関心を持っていただけではなく,安定した家庭をもった労働者を引き寄せる必要もあった:

(…)同社が労働者の集落に提供したサービスはさまざまだった.そのなかには,従業員の子供たちの初等教育もあった.学校のカリキュラムには,職業訓練も含まれていた.また,1940年代以前は大半が英語で教えられていた.初等教育に力を入れたのは際立っていた.バナナ地域で児童労働は普通のことでなくなった (Viales, 1998).1955年までに,同社はコスタリカにある同社の土地に62校の小学校を建設した (May & Lasso, 1958).図6a に示すように,1947年から1963年まで,ユナイテッド・フルーツ社が運営する学校で児童一人当たりに投じた支出額は初等教育への公共支出を上回っていた.平均で見ると,この期間に同社の年間支出は政府による支出よりも23パーセント高かった.

(…)ユナイテッド・フルーツ社は中等教育を直接に提供こそしなかったが,いくらかのインセンティブは提供した.親が子供にアメリカの中等教育を2年受けさせるお金が出せる場合には,ユナイテッド・フルーツ社が残り2年分を支払い,アメリカと行き来して学校に通う無料の交通手段も提供した.

ユナイテッド・フルーツ社による投資を促した主要な要因は次の点にあった.たしかにユナイテッド・フルーツ社は操業地域内でこそ唯一の雇用主ではあったけれど,他の地域から労働力を獲得するために競争せざるをえなかったんだ.1925年に,同社の報告書はこう記している:

会社の各種医療にとどまらず,いっそうの福利厚生に投資することを我々は推奨する.従業員人口を安定させるための試みがなされるべきである(…).たんに魅力的で快適な従業員集落を建設・維持するのにとどまるべきではない.さらに,既婚男性の家族に手当てする各種の手段も提供しなくてはならない.それには,庭園設備・学校・なんらかの娯楽を集落に備えさせるといった方法がある.つまり,今後も従業員たちの献身をえたいとのぞむのであれば,彼らに関心を寄せねばならない.

これこそ,不当にも中傷されてきたアメリカの企業城下町がサービスとインフラを提供するのを促した力学だ.また,これこそ,ジャムシェトジー・ヌッセルヴァーンジー・タタがつくったインドのジャムシェードプルの企業城下町にRajagopalan とぼくが見出したものでもある.

コスタリカのユナイテッド・フルーツ社は1984年に終わりを迎えたが,著者たちによれば,同社は長期的なプラスの影響を残したそうだ.歴史記録を利用して,ユナイテッド・フルーツ社の地域とそれ以外の地域とを区切る,おそらくランダムに決定されただろう境界線を見出した著者たちは,その境界線の内外の生活水準を比較した.すると,今日,境界線の内側の世帯は,外側の世帯にくらべて,よりよい住宅・衛生条件・教育・消費を享受していることがわかった.全体として:

本研究では,同社が生活水準に永続的なプラスの影響をもたらしたことを見出した.ユナイテッド・フルーツ社の操業地域は,近隣の反実仮想的な地域〔ユナイテッド・フルーツ社の操業地域でなかった以外の条件がよく似ている地域〕に比べて,1973年に貧しくなる確率が26パーセント低く,その差は30年間にわたって63パーセントしか埋まらなかった.

論文には付論がなんと A から J まで付けられている.そのうちのひとつでは,著者たちは衛星データを用いて,境界内の地域の方がそのすぐ外側の地域よりも夜間の明かりが多いことを示している.このデータの収集はとりわけ目を見張る.

ユナイテッド・フルーツ社が営業していた時期の生活水準と投資をよりよく理解するために,本研究では,賃金・従業員数・生産に関するデータや教育・住宅・保健への投資に関するデータを記した同社のレポートを電子化・収集した.こうしたレポートは,コーネル大学・カンザス大学・中央アメリカ歴史研究所が保有するコレクションから得られた.また,ユナイテッド・フルーツ社の医療部門が出した年間レポートも利用した.このレポートには,衛生・保健プログラムや,同社が運営した病院で1912年から1931年までに患者一人当たりに支出していた額が記載されていた.また,コスタリカ統計年鑑からのデータも収集した.この統計年鑑は,1907年から1917年まで,コスタリカの病院が行った保健支出と患者の人数が詳しく記載されている.そうした病院には,同社が運営していたものも含まれる.輸出データも,こうした年鑑や輸出広報から収集された.1900年から1984年までのあいだに行われた19件の農業国勢調査からは,土地利用に関する情報が得られた.また,本研究では1964年から1984年までのコスタリカ国勢調査から得られたデータを用いて,人口全体のパターンを分析した.たとえば,ユナイテッド・フルーツ社全盛期とそれ以前の移民動向や,同社の労働力の規模と職務分類などの分析である.

全体として,とてつもない論文だ.

アレックス・タバロック「悪いニュースを出すなら金曜に:製薬会社もね」(2019年11月1日)

[Alex Tabarrok, “Release Bad News on a Friday,” Marginal Revolution, November 1, 2019]

「悪いニュースを公表するなら金曜に」――政治家ならずっと昔から知っていたことだ.そして,どうやら製薬会社も同じようにするらしい.

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タイラー・コーエン「結婚する誘因の減少と労働力からの男性の撤退」(2019年10月31日)

[Tyler Cowen, “Declining marriage incentives and male withdrawal from the labor force,” Marginal Revolution, October 31, 2019]

1965年以降,これほど多くの若い男性が労働力から撤退しているのはなぜだろうか? 本稿では,男性が就業して婚姻パートナーとしての価値を高めるのに時間を投資するモデルを提示する.この時間投資に対する婚姻市場での見返りが低下すると,あまり望ましくなくなった婚姻市場に対応して,若い男性の就業も低下する.この予測をデータと照らし合わせることで,婚姻における性別役割の特化がもつ価値を低下させる2回の介入のあと,就業をもとめる若い男性が減ることを本稿は示す.その2回の介入は,次のとおり:i) 一方的な離婚制度の採用と,ii) 需要に応じた女性の就業機会の改善.次に,本稿では構造的な推定を用いて,労働市場に生じたショックが雇用に及ぼす影響を,そのショックに対する婚姻市場における内生的な調節が決定することを示す.こうした発見により,若い男性の労働市場参加の低下に婚姻市場の変化が重要な要因としてはたらいていることが確認される.

上記は,ミシガン大学で雇用市場の研究で博士号をとろうとしている Ariel J. Binder雇用市場論文から.

サイモン・レン=ルイス「EU離脱は知識としての経済学の否定」(2019年10月22日)

[Simon Wren-Lewis, “Brexit is a denial of economics as knowledge,” Mainly Macro, October 22, 2019]

とある有名な EU離脱支持者がこんなことを言った――レン=ルイスが腹を立てるだけでも,EU離脱はやる値がなきにしもあらずというものだ.EU離脱がなされそうな見通しを思うと,緊縮のときに覚えたのと同じ恐怖で私の心はいっぱいになる.この2つのつながりは,自明ではない.どちらも,基本的な経済学から見てほぼ誰もが痛手を被る政策に一国全体を巻き込む点で共通している.

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タイラー・コーエン「都市の歩きやすさは経済的な階層移動を促進する?」(2019年10月6日)

[Tyler Cowen, “Does walkability boost economic mobility?” Marginal Revolution, October 6, 2019]

貧しい家庭出身の子供たちが,大人になってから経済的な階層のはしごを上に登っていく機会がどれくらいあるのか――これを「世代をまたいだ経済的な上方への移動しやすさ」という (intergenerational upward economic mobility).この移動しやすさは,公正な社会に欠かせない特徴だ.アメリカでは,上方への移動しやすさが地域によって大きく異なっている.本研究は,上方への移動しやすさが都市によって容易であったり困難であったりする理由を検討した.我々の研究は,住民の上方への社会的な移動しやすさの鍵となっている要因が都市の「歩きやすさ」(walkability) にあるとつきとめた.「歩きやすさ」とは,自動車を使わずにどれくらいかんたんに用事をすませられるかということだ.まず,我々は1980年から1982年のあいだに生まれたアメリカ人およそ1000万人の租税データを利用して,歩きやすさと上方への階層移動とに関係があることをつきとめた.この関係は,経済要因と心理要因の両方に関係していることもわかった.366万人以上を対象としたアメリカコミュニティ調査 (American Community Survey) のデータを用いて検討したところ,歩きやすい都市の住民の方が自動車を所有しているかどうかによって雇用や賃金にちがいが現れにくく,上方への階層移動への障害を1つ顕著に減らしていることが明らかになった.これに加えて,2つの研究を実施した.このうち1つは〔データ収集前に仮説や分析計画を〕あらかじめ第三者に登録した研究だ(アメリカ人 1,827名,韓国人 1,466名).これらの研究から,より歩きやすい地域に暮らす人々の方が,地域コミュニティに所属している感覚が強いことがわかった.このコミュニティへの所属感覚は,個人の社会階層の変化と結びついている.

Oishi, S., Koo, M., & Buttrick, N. R. による論文はこちら.via Anecdotal.

スコット・サムナー「中国・アメリカ・日本の購買力平価について少し考える」(2019年9月23日)

[Scott Sumner, “Some thoughts on PPP in China, the US, and Japan,” Money Illusion, September 23, 2019]

中国についてぼくが考え違いをしていたことに,為替レートがある.2010年前半に,ぼくはこう予想していた――「バラッサ・サミュエルソン効果〔散髪みたいな非貿易財よりも自動車みたいな貿易財の生産性が高い国は物価が高くなる効果〕により,ドルに対する人民元の実質為替レートは強く価値が上がるだろう.」 そうはならなかった.さらに,中国を訪れた後でも,その理由はいまひとつわからずにいる.それでもいちおう,中国に行ってみて気づいたことについて,いくつか書いてみよう.

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アレックス・タバロック「モンティ・ホール問題の直観的にわかりやすいバージョン」(2019年9月19日)

[Alex Tabarrok, “The Intuitive Monty Hall Problem,” Marginal Revolution, September 19, 2019]

いろんなパズルは,ある角度から眺めたときには解きにくいのに視座を変えてみたらかんたんになることがよくある.Q&Aサイトの StackExchange に,モンティ・ホール問題と本質は同じで正解を切り替えるかどうかの正しい選択が一目瞭然なものはなにか,という質問があがっている.ジョシュア・B・ミラーが,見事な回答を寄せている.おさらいしておくと,もともとのモンティ・ホール問題では,3つ並んだドアのうち1つにすてきな賞品が待っていて,回答者がどれか1つを選ぶと,司会者のモンティ・ホールが残り2つのうち1つを開けてハズレなのを見せる(開けるのは必ずハズレの方だ).これを見たあとで,ドアの選択を切り替えるか,それとも最初に選んだままにしておくか? たいていの人は,切り替えるべき理由を見出さない.あのポール・エルデシュですら,切り替えない派だった.さらに,切り替えると答える人も,たいていは,直観的にわかりにくいベイズの確率計算をやってその結論にたどり着く.

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タイラー・コーエン「紛争の発生頻度は世界でどう変わってきたか」(2019年9月19日)

[Tyler Cowen “Frequency of conflict initiation worldwide,” Marginal Revolution, September 19, 2019]

上の画像は,Bear F. Braumoeller が書いた興味深い新刊『現代における戦争の永続』(Only the Dead: The Persistence of War in the Modern Age) から.

この本は,世界がだんだん平和になってきているっていうピンカーの説を批判するのに大部分を割いている(ピンカーはヨーロッパ限定の,より楽観的なデータだけを示している).本文から抜粋しよう:

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