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コーエン & クルーグマン「インタビュー, pt.2: アメリカ政治について」(2018年10月10日)

[“Paul Krugman on Politics, Inequality, and Following Your Curiosity,” Conversations with Tyler, Oct. 10, 2018]

コーエン: 最近,政治についてたくさんツイートしてますよね.とくに,以前ご自分が思っていた以上によからぬ意図が強力かもしれないという考えをよく言ってますね.かりに,誰かを相手に,近年のアメリカのどこがまずくなっているのかを説明するとして,実在の人たちの名前やら,さらには政党名すら出さずに,ただモデルだけを使って 説明するならどう語りますか?

この点を,あなたがよく言うトイモデルの観点でギュッと本質につきつめて言うとしたら,どうです?
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タイラー・コーエン「死者が郵送で投票してるってほんと?」(2020年10月29日)

[Tyler Cowen, “Are Dead People Voting By Mail?” Marginal Revolution, October 29, 2020]

――という論文の副題は,「ワシントン州行政記録からの証拠」で,著者は Jennifer Wu, Chenoa Yorgason, Hanna Folsz, Cassandra Handan-Nader, Andrew Myers, Tobias Nowacki, Daniel M. Thompson, Jesse Yoder, Andrew B. Hall だ.アブストラクトを引こう:

合衆国において郵送による投票についてよく表明される懸念に,郵送票が死者に送られ,悪意の者がこれを盗み,不正な投票に数えられているというものがある.これがどれくらい発生しているのかを見積もるべく,本研究ではワシントン州を調査した.同州では,登録された有権者全員に郵送票を送付している.我々は,投票と行政の死亡記録とを関連づけて,オンラインの死亡記事から得た生没年月日を用いて偽陽性の事例を取り扱い,死者の郵送票が不適切に有効票に数えられた割合を推計した.本研究の推計では,2011年から2018年のあいだに,ワシントン州のおよそ450万人の有権者のうち,疑わしいほど死亡から時を隔てて投票がなされたかもしれない死亡者が14名いる.これは,有権者の 0.0003% にあたる.こうしたごく一握りの事例ですら,詐欺行為ではなく氏名と誕生日が同じ2人の人物がいたのを反映しているのかもしれない.氏名の合致の条件を弱めて我々の発見の頑健性を検討したうえで,有権者に一律に郵送票を送付するワシントン州の制度で死者の票が有効票に数えられることはきわめて稀に思われると本稿は結論する.

つまり「それはない」ってことだね.Andy Hall がこの論文について連続ツイートをしている

コーエン & クルーグマン「インタビュー, pt.1: テック系企業と反トラスト」(2018年10月10日)

[“Paul Krugman on Politics, Inequality, and Following Your Curiosity,” Conversations with Tyler, Oct. 10, 2018]

※訳者の註記: このインタビューは,タイラー・コーエンのポッドキャスト Conversations with Tyler で 2018年10月になされたものです.

ノーベル経済学賞を受賞して,ポール・クルーグマンは「野望の終着点」にたどりついた.もう,これから達成すべき新たな業績も残されてはいない.こんな状況に憂鬱になってもおかしくない.だがクルーグマンは,終着点での安住を避けてみせた:好奇心の赴くところに向かって,なにより心をつかまれる題材に精力を傾けて取り組むという,いつもの流儀のたまものだ.

タイラーはニューヨークにあるクルーグマンのオフィスを訪れ,いまクルーグマンが関心を寄せている話題を議論した――反トラスト,最高裁判事の任期,格差をなくす最良の方法,YIMBY でいる理由,インフレ目標,貿易(グローバル貿易も恒星間貿易も),渋滞税,存命のお気に入りSF作家,移民政策,賢い読者のためにうまく書く方法,経済研究の新しい方向,などなど.
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タイラー・コーエン「窓税」(2020年10月23日)

[Tyler Cowen, “The window tax,” Marginal Revolution, October 23, 2020]

イギリスで実施されていた窓税(1696年~1851年)は,課税によって資源配分の歪みが誘発されるめざましい実例となっている.住戸に課される税は,その住戸にある窓の数で変わっていた.その結果,人々は窓に板を打ち付けて塞ぎ,新たに立てる住宅の窓はごくわずかに抑えた.これにより,人々の健康も美観も損なわれた.地域の個別住宅の課税記録から得られたデータを用いたところ,本稿の分析では,こうした節税を示す説得力ある証拠を見出すとともに,さらに,窓税に関連した過大な税負担の概算を示す.

Robert M. Schwab と Wallace E. Oates による論文の全文はこちら

タイラー・コーエン「パンデミック下の最低賃金法」(2020年10月24日)

[Tyler Cowen, “Minimum wage laws during a pandemic,” Marginal Revolution, October 24, 2020]

ブルームバーグの Michael Strain 記事から:
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アレックス・タバロック「経済学を学ぶと賃金は大幅に増えるみたいよ」(2020年10月14日)

[Alex Tabarrok, “Studying Economics Increases Wages a Lot,” Marginal Revolution, October 14, 2020]

経済学を専攻した学生たちの賃金中央値は,40歳で9万ドルに達する(2018年).他の社会科学を専攻した学生たちは,6万5千ドルでしかない.この大差はどこから来たんだろう? 統計的な選択効果だろうか,それとも因果関係がはたらいているんだろうか? Zachary Bleemer と Aashish Mehta は,南カリフォルニア大学の学生たちを対象に,足きりで専攻がとれなかった学生たちと,かろうじて専攻がとれた学生たちを比較している.必要な成績をとれていた場合,経済学専攻を選ぶ学生は大きく増え,彼らが20代半ばに稼ぐ給与がおよそ $22,000増える.このように,専攻による給与に観察される差の大半またはすべては,どうやら因果関係によるものらしい.給与の増加をうながしている要因は,経済学を専攻した学生たちが高給の産業に専門化するよう選好を変える点にあるようだ.
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アレックス・タバロック「本日の政治的に正しくない論文:給与格差のしぶとさ」(2020年10月8日)

[Alex Tabarrok, “Politically Incorrect Paper of the Day: The Persistence of Pay Inequality,” Marginal Revolution, October 8, 2020]

職場での差別が不可能だったりありそうにない市場ですら,男女の賃金格差があるようだ.たとえば,Uber の運転手は,性別を考慮しないアルゴリズムで賃走を割り振られ,賃走の時間と距離に基づいて対価を支払われる.だが,運転手の手にするお金にはおよそ 7% と小さいながらも男女差が長らく続いている.これは,男性運転手の方がわずかに速く,混雑した地域で働くのを選び,わずかながら経験が多いことに起因しているようだ.Litman et al. (2020) によれば,これと同種の相違がメカニカルタークでの稼ぎにも見られるという.
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タイラー・コーエン「セックス労働違法化の意図せざる帰結」(2020年9月21日)

[Tyler Cowen, “Unintended Consequences of Criminalizing Sex Work,” Marginal Revolution, September 21, 2020]

本稿では,セックス労働違法化の影響を検討する.インドネシアの東ジャワにある地区で地域行政によってセックス労働が唐突に違法化された一方で,隣接する複数の地区では違法化されなかったのを,ここでは利用する.我々は,違法化前後での女性セックス労働者とその顧客たちからデータを収集した.生物学的検査による計測を検討したところ,違法化によって,女性セックス労働者のあいだで性感染症が 58パーセント増加していることがわかった.この増加を進めた要因は,コンドームの入手・使用が減少した点にある.また,違法化を受けてセックス労働をやめた女性たちの収入は違法化によって減少し,さらに,女性たちの子供が学校に通うのに必要な金銭を工面する能力が下がる一方で,子供たちが世帯所得を補うために労働しはじめる確率は高まった.性産業が永続的に縮小すれば人口当たりの性感染症発生数が改善する余地はあるが,違法化から5年間で市場は再び拡大に転じ,人口全体での性感染症罹患率は高まっている見込みが大きい.

上記は,Lisa Cameron, Jennifer Seager, & Manisha Shah による NBER ワーキングペーパーからの抜粋.

アレックス・タバロック「猿の子育て実験からわかること」(2020年9月2日)

[Alex Tabarrok, “Monkey Parenting Matters,” Marginal Revolution, September 2, 2020]

ジェイムズ・ヘクマンを含む経済学者グループが NBER で新しい論文を出した.複数世代を重ねる猿の子育て実験から得られたデータを分析して児童の発達を研究する流れに,これで経済学者も合流したわけだ.1950年代にハーロウがやった一連の実験で,母親なしで育てられた猿は子育てがあまりうまくないのはよく知られている.(またハーロウの実験は,「肌と肌での母子の接触」という例のマントラの由来でもある.) 今回の論文が独特なのは,母親に育てられる猿と保育所に育てられる猿を無作為に割り振り,これを2世代繰り返したところだ.というか,この新論文に出てくる猿の子供たちには,同じくヘクマンを含む著者たちの以前の論文に登場した子供たちが含まれているんじゃないかと思う.複数世代を重ねる実験を行うことで,不利・短所が後続世代に継承されるのか,不利・短所が緩和されるのかを研究者たちは検証できる.
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サイモン・レン=ルイス「増税は不可避になるか?」(2020年9月1日)

[Simon Wren-Lewis, “Will taxes have to rise?” Mainly Macro, September 1, 2020]

――という問いが,ジョナサン・ポーツとビル・ミッチェルの討議で取り上げられている.今回の議論は私から見て実にいらだつものだった.というのも,なにかもっと根本的な問題を論じているかのように見えて,実は中期的なインフレ予想をめぐって論議しているからだ.いまのパンデミックがもたらす財政コストを「まかなう」ために増税する必要がないという点は,ミッチェルもポーツも同意している.この超低金利の時代に,グローバル金融危機やパンデミックのような事態で対 GDP 比でみた債務にショックが発生しても,債務にかかる金利を経済成長率が上回っているかぎり,時間をかけて徐々に減少させていくのにまかせるべきだ.債務を減らそうとして財政赤字をゼロに近づけたり,それどころかオズボーンがやったように財政黒字にしようと図ったりすれば,景気の完全回復を妨げてしまう.
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