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ノア・スミス「時給15ドルの最低賃金がかなり安全な理由」(2021年1月15日)

[Noah Smith, “Why $15 minimum wage is pretty safe,” Noahpinion, January 15, 2021]

最低賃金について経済学者たちが考えを改めた理由

1994年に,デイヴィッド・カードとアラン・クルーガーが画期的な研究を発表した.最低賃金を大幅に引き上げても,(大半の経済学者の予測に反して)失業が増えないというのが,その内容だった.カードは,多くの同僚たちに能動的に無視された.彼らは,最低賃金が雇用をつぶすという理論に深く傾倒していた:
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タイラー・コーエン「アメリカでの総需要不足?」(2021年1月16日)

[Tyler Cowen, “Our aggregate demand shortfall?” Marginal Revolution, January 16, 2021]

Ben Casselman から:「(…)大半の経済数値とちがって,実のところ小売業の売り上げはパンデミック以前の水準を上回っている.〔2020年〕2月に比べて 2.6%増,前年に比べると 2.9%増になっている.雇用みたいなきれいな話になっていない.」
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タイラー・コーエン「泥棒して受け渡し金を要求するマカクザル」(2021年1月15日)

[Tyler Cowen, “Money-maximizing macaque thieves demand ransoms,” Marginal Revolution, January 15, 2021]

バリのウルワツ寺院では,猿たちが商売にはげんでいる.寺院をうろつく長い尾をもつマカクザルたちは悪名高い.油断している観光客たちに強盗をはたらき,厚かましくも彼らの持ち物にしがみついて,受け渡し金として食べ物が渡されるまで離そうとしないのだ.

研究者たちによれば,寺院のマカクザルたちは,カモとなる観光客の持ち物のうちどれにいちばん価値があるのか判断して,この情報を活用してみずからの利益を最大化するのだという.

目ざといマカクザルたちは,人間どもが引き換えに食べ物をよこす見込みがいちばん大きい品物を好んで標的にする.たとえば電子機器がそうした標的だ.逆に,ヘアピンや空のカメラバッグのように,とられても観光客が諦める品物は狙わない.そう語るのは,ジャン=バプティスト・ルカ博士だ.博士はカナダのレスブリッジ大学心理学部の准教授で,この研究の筆頭執筆者だ.

マカクザルたちが盗む価値の高い品物には,携帯電話・サイフ・度付き眼鏡などが挙げられる.「貴重品をハンドバッグにしまってジッパーを閉めてしっかり首からかけておくように寺院のスタッフが忠告しても,観光客のなかには上の空で聞き流している人がいるものです.そうした観光客から引ったくる専門家に,ここのマカクザルたちはなってしまっています」と博士は言う.

マカクザルたちと寺院の観光客たちのやりとりを研究者たちが273日以上かけて撮影しつづけたところ,より価値の高い品物にはもっといい見返りを――たとえばもっとたくさんの食べ物を――マカクザルが要求するのがわかった.

泥棒マカクザル・観光客・寺院スタッフのあいだでなされる交渉は,4~5分以上も続く場合がよくある.品物が返されるまでにかかった最長時間は25分で,交渉に17分が費やされた.より価値の低い品物の場合には,より少ない見返りを受け入れてマカクザルたちは物々交換のやりとりを首尾よく終わらせることが多い.

記事の全文はこちら.via David Curran.

ノア・スミス「2020年代のテクノ楽観論」(2020年12月4日)

[Noah Smith, “Techno-optimism for the 2020s,” Noahpinion, December 4, 2020]
Cheap taxis and fancy smoothies are out. Big Science is in.

安いタクシーもおしゃれスムージーも飽きた.これからはスゴイ科学の時代だ

2010年代:テクノ悲観論と停滞

2010年代,「いまは技術停滞のまっただ中だ」というのが大方の見方だった.2011年にタイラー・コーエンの『大停滞』が出たり,2016年にロバート・ゴードンの『アメリカ経済:成長の終焉』が出たりした.ピーター・ティールは「空飛ぶ車をのぞんでたのに,手に入れたのは140字だった」と宣言した.デイビッド・グレーバーもこれに同調した.ポール・クルーグマンは,キッチン器具に新しいモノが登場しないのを嘆いた.経済学者のなかには,とにかくアイディアを新規発見しにくくなっているのではないかと問う向きもあった.スタートアップ企業の Juicero が高価な新キッチン器具をひっさげて登場したときには,これこそテック系産業のダメっぷりを示す象徴だといろんな人たちからこき下ろされた.「テック系」(tech) は,だいたいソフトウェア企業の同義語になった.とくに,ソーシャルメディアやギグ経済企業やベンチャーキャピタル企業をそう呼ぶ.多くの人たちは,この手のイノベーションは果たして社会をよくしているんだろうかと疑問視した

こんなわけで,2010年代はテクノ悲観論が深まった10年間だった.

これはちょっとしっくりこない.全要素生産性で見ると2010年代はそんなにメタメタなわけじゃなかったからだ(経済用語に疎い人に補足すると,全要素生産性 (TFP) とは,経済学者たちのあいだでおおよそテクノロジーの生産力を測るものと考えられてる数値だ).TFP は計測しにくいけれど,アメリカでは2010年から2017年のあいだに 3パーセント上がったようだ.他の各種推計では,民間部門の TFP 成長率はだいたい年率1パーセントになっている.たしかに,2000年代に比べると伸びが遅いけれど,70年代後半や80年代前半の停滞ぶりに比べればそう悪くない.というか,近年とりわけ停滞していたのは2000年代の後半だったように見える.


[2011年を1として合衆国の全要素生産性の推移を表す.グレーの範囲は景気後退期.]

というわけで,2010年代のテクノ悲観論がこうもあちこちに出回っている理由は,ただ経済統計を見るだけではちょっと説明しにくい.もしかすると,過去50年間で2度目に生産性が停滞した時期だったために,停滞が例外ではなくて通例なように思えるのかもしれない.あるいは,もしかすると,19900年代から2000年代序盤の極端なまでのテクノ楽観論から生じた,振り子の揺り戻しみたいなものなのかもしれない.もしかすると,格差や景気後退や政治的な分断やソーシャルメディアの炎上合戦やマヌケなテック系企業創設者たちへのいらだちを間接的に表しているのかもしれない.あるいはひょっとすると,人々はたんに自分がのぞむとおりのテクノロジーを手に入れていないだけかもしれない.ぼくにはわからない.全部当たってるのかもね.

ただ,2020年代には大きな変化が起きそうに思える.科学とテクノロジーに起きているいろんな変化を見ると,技術進歩がふたたび加速する見込みがありそうだ.しかも,それは「もっとスマホアプリが登場するよ,やったね」みたいな変化ではない.

テクノロジー vs.「テック系」

ここで,ぜひ,世間が考える「テック系」とテクノロジーがどうちがうのか区別しておきたい.「テック系」「シリコンバレー」「テック産業」と言えば,ソフトウェア産業を意味するか,それに加えてなんであれベンチャーキャピタルに資金提供されたものを意味するか,さらにそういうものに文化的なつながりがあると受け取られる人物(e.g. イーロン・マスク」を意味するかといったところだ.典型的には,ゼネラルエレクトリックやゼネラルモーターズのようなもっと古くからの企業や,バイオテック/製薬企業,政府から資金提供された科学は含まない.

技術進歩の大半はテック系産業からやってくるとアメリカ人が考えていても仕方ないと言えなくもない.1980年いらい,ぼくらの生活をとりわけ大きく変えた製品の多くは――コンピュータ,インターネット,スマートフォン,ソーシャルメディアは―――テック系産業からやってきた.テック系企業のトップ5社(マイクロソフト,アップル,アマゾン,グーグル,フェイスブック)は,いまやアメリカ株式市場のだいたい5分の1を占めている.世間の人たちが〔技術進歩をもたらす人として〕思い浮かべるイメージで言えば,ある程度白衣を着た科学者のイメージからガレージでコンピュータをつくるスティーブ・ジョブズという元型に変わったところがある.

でも,そのテック系産業は,科学とイノベーションの広大な生態系の下流にある.公表される科学の大半は大学からもたらされている.その大学の資金を提供しているのは,政府の研究助成金・学費・企業の共同ベンチャー資金の組み合わせだ.(大企業の研究所は,かつて研究のかなりの割合を占めていたけれど,いまはちがう.ただ,AI でのグーグルの取り組みはその変化を逆転させる動きを代表しているのかもしれない.)


[分野別に見た研究開発への支出(世界のトップ企業1000社)]

たしかに,民間部門はかなりのお金を研究開発に費やしている.でも,ぼくらの知る「テック系」産業は,そうした支出の3分の1ほどを占めるにすぎない.

「テック系」は間違いなくとても重要だ.でも,テック系で全体が語れるわけでないのも確かだ.

それに,大半の製品イノベーションをやったのは大企業であってスタートアップではなかった.近年,経済学者の Daniel Garcia-Macia, Chang-Tai Hsieh & Peter J. Klenow による研究では,創造的破壊生産性向上のうち,創造的破壊ではなく既存製品の改善による部分がどれくらいを占めるのかを推計しようと試みている――Clay Chirstensen がいう「持続的イノベーション」に当たるそうした改善による生産性向上がだいたい75%で,破壊的イノベーションが25%だと彼らは推計している.

さらに,技術進歩の多くは,App Store からアプリをダウンロードしたり Best Buy で電子機器を購入するといったチャンネル以外で実施されている.首尾よく進んだと伝えられる驚嘆すべきCOVID-19 ワクチン開発が示すように,医療制度をとおして影響をもたらすイノベーションは多い.太陽光発電・風力発電の展開は,大半が公益事業会社によってなされるだろうし,電気自動車は大手製造企業からもたらされるだろう.それに,軍もテクノロジーの多くを利用する.ただ,そのことを大規模戦争で思い起こす機会がやってこないことをぼくとしては願ってるけど.

言い換えると,2020年代には,ソフトウェアや電子機器のスタートアップ企業が新しい製品や人々どうしの新しい交流方法をもたらすってかたちを,技術進歩の大半はとらない見込みが大きいってことだ.大手ソフトウェア企業は大企業なまま,スタートアップはスタートアップのままにとどまり,ベンチャーキャピタルは相変わらず設け続けるだろうけれど,おそらく,趨勢を変えるイノベーションという領域では,「ビッグサイエンス」が優位になってくるだろうとぼくは踏んでる.

そして,それはいいことだ.個人的な話をすれば,IT革命は世界にあれこれのすばらしいことをしてくれたと思う――IT 革命のおかげで旧友とつながりを保てるようになったし,離婚した後にもかんたんに交際できるし,世界中の人たちと会えるようにもなった.それに,IT革命が生み出したいろんな社会運動は,いろんなラジオや印刷出版の到来に似た水準ですでに社会を変えている.IT 時代に産み出された進歩と社会の変化は,生産性の数字でとらえられるものよりもずっと大きいと思う.でも,この話に賛成でないとしても,まだ悲観しなくていい.2020年代の技術進歩はいまある「テック系」に集中するとはかぎらない.

新たな鉱脈

科学とテクノロジーは鉱石がねむる鉱脈を掘るようなものだとぼくは思ってる.ときに,うまく掘り当てて大もうけすることもある.DNA の構造を発見するような理論的発見があると,まったく新しい知識分野が切り開かれる.トランジスタのような鍵となる発明があれば,そこからありとあらゆる発明が可能になったりする.時が経つにつれて,そうした鉱脈はどんどん掘り尽くされていき,さらに鉱石を掘り出すのに必要な労力は増えていく.でも,そういう古い鉱脈は,新しい鉱脈につながる筋道を見出す助けになる.科学は線形に進歩しない.科学は,枝分かれしながら広がっていくものだ.

じゃあ,次の10年間に急速に伸びていきそうなのは,どんな分枝だろう? 確信をもって答えるのは難しいけれど,いくらか推測はできる.Caleb Watney がいい感じの新しい記事を書いて,推測を語っている.彼がもっぱら関心を向けているのは,ワクチン・太陽光発電と蓄電池・人工食肉・AI・自動運転車・核融合・VR だ.

個人的には,自動運転車や核融合や VR がこの10年で世界を席巻するか懐疑的で,こういうのはもうちょっと先のことなんだろうと思ってる.この推量が外れてくれればそれはそれでありがたい.

ただ,ワクチン技術が飛躍的に進歩したのは疑いようがない.COVID の危機に後押しされて,mRNA ワクチンはうまくいくかどうか定かでないツールから証明済みのものに変わった.きっと,これによって,あらゆる種類の新ワクチン開発が加速するだろう.ガン用ワクチンもそれに含まれうる.いまのフレーズをぜひ読み返してちょっと考え直してほしい:「ガン用ワクチン」

近年ふるわなくなっている新薬発見率に,AI も大きな影響をもたらしうる.グーグルの DeepMind が「タンパク質の折りたたみを解決した」と言ったら誇張だけれど,グーグルの機械学習技術によってこの分野の急速な発展が可能になったのは否定できない.

また,自動運転車が遅々として実現できずにいたとしても,間違いなく機械学習は他のいろんな分野を確信するだろう.どの分野に革新が起きるかは予測しがたい.たとえば,自律的ドローン集団によって戦争に革新が起こるかもしれない.ディープフェイクが伝統的な映画制作にとってかわるかもしれない.アルゴリズムが新聞・雑誌の論説を書けるようにすらなるかもしれない.それに,数多くの研究分野が機械学習の導入で変わりうる.

もちろん,人工食肉も世界を変えるだろう.ものすごく広大な土地が,家畜用の牧草地から他の用途に使えるようになるだろう.

それに,言うまでもなく最大の革新が起きるのはグリーンエネルギーと蓄電だろう.先日の投稿でも触れたように,太陽光発電・風力発電の価格はこの10年で大きく下がった.この下がり具合は,申し分なく革新的だ.でも,それより蓄電の方がいっそう大きな革新になりうる.利用が増えるにつれて急速に値段が下がっているのは,リチウムイオンバッテリーだけじゃない――ありとあらゆるテクノロジーも同様だ.

気候変動を食い止めて文明を持続可能にするのに,これは大いに役立つだろう.突き詰めて言えば,それ自体が計測しようがない生産性向上となる.しかも,それに加えて,太陽光発電と蓄電が安価になれば,これまで数十年にわたってご無沙汰だったものが復活することだろう――つまり,より安価なエネルギーだ.

石油価格が下がらなくなり,原子力発電も思ったように発展しなくなってからというもの,人類は化石燃料の旧式技術でやりくりするしかなかった.その化石燃料はいつか枯渇するのが確実で,しかも気候変動を促進してしまう.この現状は,人類にとってとてもよくない.安価なエネルギーの終わりは,おそらく1970年代におきた最初の生産性停滞の原因になっていただろうし,『宇宙家族ジェットソン』みたいな SF 風の未来が一向に実現しなかった理由でもあったろう

でも,60年代いらいはじめて,テクノロジーによってエネルギーが安くなりそうだ.これは生産性を急激に高め,しかも普通の労働者達が直接に便益を手にしやすくする可能性を秘めている(エネルギーは人間の知性を大いに補うので).それに,予測しがたい無数の他のイノベーションを産み出すことも確実だ――夏に連邦捜査官たちが用いた催涙ガスを撃退するのにポートランドの抗議集団が電動リーフブロワーを使ったような,そういう意外なイノベーションが産み出されるだろう.

さらに,自分の身に手を加えられるようにするテクノロジーもある――とくに,CRIPSr だ.最初の CRIPSr によるヒト遺伝子編集は,ものすごいスキャンダルを引き起こしたけれど,もっと穏当な試みもそう遠からず表に出てくるだろう.

次の10年に大きく花開く可能性を秘めた分野は他にもたくさんある――合成生物学,積層造形,脳-コンピュータ・インタフェイス,生物化学工学,ドローン戦争,再生医療,などなど.それに,ぼくがよく知らない分野だって,大きな可能性を秘めている.たとえば,単細胞生物学とか.

こうしたものの大半は,ラボでの研究や医療制度や軍やソフトウェア産業以外の企業によるイノベーションに依存している点に留意しよう(AI は大きな例外だ).これらが本当に「すごい」と興奮するほどに進歩を遂げる分野だとしたら,それはつまり,2020年代の技術進歩は「テック系」を大きく超えるものになるということだ.

…そして,お次は宇宙だ.

あらたなスプートニク

読者は気にとめていなかったかもしれないけれど,中国はちょうど無人ロボット宇宙船を月に着陸させたところだ.ヒトを月面に届けるのもそう遠くない話だろうし,月面基地も現実味がある.中国のこうした動きに刺激を受けて,インド・日本・ヨーロッパ・アメリカでも独自の月面ミッションを計画している.一方,アメリカには「スターシップ」という巨大ロケットがある.こいつは短距離を行き来できて,しかも,もしかすると月や火星まで飛べるかもしれない.さらに,ここ地球軌道では,アメリカ・中国・ロシアのあいだで宇宙を軍事的に掌握する戦いが進行している.

宇宙開発競争の復活だ.

さて,軍事競争なんて物騒な話ではある.でも,大国どうしが再び競り合わざるをえないとすれば――現時点で,これはほぼ不可避に思える―――少なくとも,新たな宇宙開発競争がもたらされるはずだ.

技術進歩にはお金がかかる.しかも,時が経つにつれてますますお金がかかるようになる.進歩の泉から水を湧き出させ続けるために必要な大金を議会に出させるのはすごく難しくなりうる.60年代以降,GDP 比で連邦政府の研究助成は減り続けている

でも,60年代にものすごい増加があったのに留意しよう.その相当部分は,第一次宇宙開発競争だった.アポロ計画はとてつもなく高くついた.でも,ソ連とアメリカという大国どうしが宇宙の掌握をめぐって競争するというだけで,議会にそのためのお金を決済させるのに十分だった.

宇宙開発競争は技術開発を前進させて,〔宇宙食から民生用に広まった〕フリーズドライ食品なんかをはるかに超えるものをもたらした.でも,ここにはそれよりもっと重要な原則がある.大国どうしの競争は,近視眼的で視野の狭い政治階級に圧力をかけて適切な水準での研究に資金提供させるのに使えるんだ.

アメリカが中国と繰り広げる競争は,たんに月面基地や宇宙兵器をめぐるものにはとどまらないだろう.ものすごく多岐にわたる技術でお互いに張り合うことになるはずだ.エネルギー,AI,ドローン,ワクチン,そして民生用・商業用に波及するありとあらゆる分野も,熾烈な米中競争の焦点になるだろう.すでに,「終わりなきフロンティア」法案を通す理由に中国との競争が持ち出されている.この法案は,連邦政府の研究助成を拡大するものとして大いに必要とされている.

というわけで,技術進歩を駆動するために国際競争が必要なければ結構なことではあるものの,少なくとも,国際競争は次の10年でイノベーションと研究について楽観的になる理由をもうひとつ加えてくれる.

結びに

前へ,そして高みへ! 科学だ,もっと科学をよこせ! なにもかも発見しつくせ! 2010年代は背後に置き去りにして,2020年代をテクノ楽観主義の10年にしてやろう.

アレックス・タバロック「同じ量のワクチンで接種回数を2割増しにする魔法とサプライチェーン最適化」(2021年1月14日)

[Alex Tabarrok, “The Magical Extra Doses and Supply Chain Optimization,” Marginal Revolution, January 14, 2021]

ファイザー製ワクチンを使って薬剤師たちがワクチン接種をはじめたところ,標準的な 5回分小瓶から 6回~7回の投薬が可能なのを発見した.追加分はどこから生まれたんだろう? べつに,規定量を超える量が瓶につめられていたわけじゃない.小瓶には,標準的な注射器を使ったらきっかり5回分になる量しか入っていない.ところが,ワクチン接種会場によっては,死容積が少ない注射器が利用できたところがあった.「死容積が少ない」とは,注射が終わったときに吸引具と注射針のあいだに残るワクチンが少なくてすむ,ということだ.このため,死容積が少ない注射器を使うと,注射器に残ったまま無駄になるワクチンが減って,同じ瓶からより多くの人にワクチン接種できるようになるわけだ.
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タイラー・コーエン「娘がいる方が離婚しやすい?」(2021年1月13日)

[Tyler Cowen, “Daughter-driven divorce?” Marginal Revolution, January 13, 2021]

息子がいる夫婦よりも,娘がいる夫婦の方が離婚しやすいのだろうか? オランダの住民登録データとアメリカの調査データを用いて,本稿では次の点を示す:娘がいる夫婦の方が離婚するリスクは高くなるが,それは娘が13歳から18歳のときにかぎられる.このように年齢が限定される研究結果は,時期に関係ない息子選好・出産時における性選別という説明と食い違う.本稿では,十代の娘がいる家庭における人間関係の緊張と考慮した説明を提案する.副次標本の分析から,性別役割の考え方が娘とパートナーと異なっている見込みが大きい親たちほど子供の性別による離婚リスクが大きく異なっていることが見出される.また,十代の娘がいる家庭における人間関係の緊張を示す調査の証拠も本研究は見出している.

この抜粋は,Jan Kabátek % David C Ribar による新論文から.via 優秀なる Kevin Lewis

タイラー・コーエン「今と昔:キャピトルヒルでの銃撃事件」(2021年1月6日)

[Tyler Cowen, “That was then, this is now,” Marginal Revolution, January 6, 2021]

1954年3月1日にアメリカ国会議事堂で銃撃事件が起きた.犯行に及んだのは,プエルトリコのナショナリスト4名だった.国会議事堂下院議場の「婦人傍聴席」(訪問客用のバルコニー)から,彼らはセミオート拳銃で30発を発砲した.プエルトリコを合衆国支配から独立させる自分たちの要求に注目を集めるのが,彼らののぞみだった.

犯行に及んだナショナリストたちは,プエルトリコの旗を掲げ,第83回議会で集まっていた下院議員たちに向かって発砲をはじめた.議員たちは,移民法をめぐって議論している最中だった.5名の下院議員が負傷,そのうち1名は重傷を負ったが,全員がのちに回復している.犯人たちは逮捕され,連邦裁判所で裁判にかけられ長期刑を言い渡された.長期といっても,刑期は長く実質的に終身刑だった.1978年と1979年に,大統領ジミー・カーターにより彼らは赦免され,4名全員,すなわち Lolita Lebrón, Rafael Cancel Miranda, Andres Figueroa Cordero, Irvin Flores Rodríguez がプエルトリコに帰国した.

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ノア・スミス「移民がやってきても賃金が下がらない理由」(2020年12月30日)

[Noah Smith, “Why immigration doesn’t reduce wages,” Noahpinion, December 30, 2020]

証拠に耳をかしてもらえるわけじゃないけれど…

この記事では,移民がやってきても,その国で生まれ育った人たちの賃金が下がらない理由を解説する(ただし,一握りの特別な状況ではもしかすると少しばかり下がるかもしれない).ただ,その話に入る前に,ぜひ理解してほしいことがある:誰も,この記事で意見を変えないだろうってことだ.それには2つ,理由がある.
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ノア・スミス「新しいマクロ経済学:「みんなにお金あげろ」」(2020年12月6日)

[Noah Smith, “The new macro: ‘Give people money‘”, Noahpinion, December 6, 2020]

今回の苦境では経済理論は主役をおりている

この前 Twitter でジョークをつぶやいた.この10年でマクロ経済学がどう変わったかってネタだ:

・2010年のマクロ経済学: 「確率的均衡を定義する要因は右のとおりである―――消費経路(…),物価(…),賃金(…),政策の各種変数(…).政策変数には次のようなものがある(以下略)」
・2020年のマクロ経済学: 「みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお」

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サイモン・レン=ルイス「COVID-19パンデミック下とその後の財政政策」(2020年12月1日)

[Simon Wren-Lewis, “Fiscal policy during and after the coronavirus pandemic,” Mainly Macro, December 1, 2020]

先日行われたこのセミナーに触発されたのもこの記事を書こうと思ったきっかけだが,同時に,The Resolution Foundation から出たこの見事な論文にも触発された.長文失礼.だが,とりあげるべき事柄が多いのだ.

この記事は5パートにわかれる.最初のパートでは,過去10数年に財政政策の理解がどう発展してきたかに目を向ける.パンデミック下で財政政策をどう実施すべきかを考えるのに,この点は必須の背景知識だ.2つ目のパートでは,パンデミック下の財政政策支援に目を向ける.3つ目のパートでは,大衆がワクチンを接種した結果としてパンデミックが実質的に終わったときから,経済が完全に回復するまでのごく短期間にできることを考える.4つ目のパートでは,ひとたび経済が完全に回復したあと,徐々に対 GDP 比の債務を減らしていくよう試みるべきかどうかを考える.最後のパートでは,イギリス財務大臣の近年の行動とそのメディア報道のあり方に目を向ける.
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