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タイラー・コーエン「新刊『あなたの起源:子供時代がいかにのちの人生を形成するか』」(2020年3月7日)

[Tyler Cowen, “*The Origins of You: How Childhood Shapes Later Life*,” Marginal Revolution, March 7, 2020]

本書は Jay Belsky, Avshalom Caspi, Terrie E. Moffitt, & Richie Poulton の共著による近刊だ.きっと,この数年でなされた最重要にして最良の研究だと認められることだろう.想像してみてほしい.ニュージーランドのダニーディンに住む人々 1,000人余りの人生を出生から38歳まで追跡して多岐にわたるデータを記録し,さらに,15カ所でイギリス人の双子たちを20歳まで,アメリカ人の子供たちを15歳まで同じように追跡調査していくなんて,いったいどれほどのことがわかるだろう.想像できるかな.
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タイラー・コーエン「誰でもトイレを使えるようにしたスターバックスの顛末」(2020年3月7日)

[Tyler Cowen, “Facts about Starbucks against free bathrooms charge them all,” Marginal Revolution, March 7, 2020]

2018年5月に,抗議の声に応じてスターバックスは全国で方針を変更し,商品を買わなくても誰もが客席やトイレを利用できるようにした.本研究では,匿名化した携帯電話位置情報データを大量に用いて推計を行った.これによれば,新方針により,近隣のコーヒーショップやレストランに比べて,スターバックスの店舗への訪問が7.3% 低下することにつながっている.立ち寄りの低下は,スタバックスが公に開示している情報からは計算できない.開示情報には,他のコーヒーショップという対照群が欠けているためだ.訪問者の減少は,ホームレスシェルターの近くにある店舗ではおよそ 84% 大きくなっている.また,新方針により,集約的限界需要にも影響している:すなわち,新方針の実施後に立ち寄った顧客は,近隣のコーヒーショップに比べてスターバックスでの滞在時間が 4.1% 減っている.より裕福な顧客ほどスターバックス店舗への訪問を減らしているが,〔人種だけに注目すると〕黒人・白人どちらの顧客も同程度に訪問しなくなっている.新方針により,スターバックス店舗近隣では立ち小便の処罰件数が減っているが,社会秩序を乱す他の類似した犯罪にはなんら影響が見られない.こうした結果から,企業が公共財を提供しようと試みても,支払いをしない人々によって潜在的な顧客たちが閉め出されるために困難が生じることがわかる.

上記は,Umit Gurun, Jordan Nickerson, & David H. Solomon による新論文からの抜粋だ.Kevin Lewis の洞察力は誰にも疑いようがないんじゃない?

ボールドウィン & ディ=マウロ「コロナウイルス感染拡大時の経済学:序文」(2020年3月6日)

[Richard Baldwin & Beatrice Weder di Mauro,”Economics in the time of COVID-19: A new eBook,” VoxEU, March 6, 2020]

新しいコロナウイルスは,古くもあり新しくもある.このパンデミックも通例どおり総需要と総供給の両方に対するショックとなっている.だが,今回は中国が発生地となりしかも最大の打撃を受けたこと,そして,それにともないサプライチェーンにさまざまな影響が生じたことは,新しい.このコラムでは,COVIC-19 の経済問題に関連する多様な話題について,指導的な経済学者たちが執筆した14編の論考を集めた Vox eBook の新著を紹介する.
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アレックス・タバロック「電気を権利扱いすることの帰結」(2020年3月5日)

[Alex Tabarrok, “The Consequences of Treating Electricity as a Right,” Marginal Revolution, March 5, 2020]

貧しい国々では,電気料金が安い.あまりに安くて,「電気を1単位売るたびに電力事業はお金を損する」ほどだ.その結果として,使用量割り当てや電力不足が日常茶飯事になっている.Journal of Economic Perspective の共著論文で,Burdgess, Greenston, Ryan, Sudarshan はこう論じている――「こうした電力不足は,電気を権利として扱って私的財として扱わないことの帰結として生じる.」
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サイモン・レン=ルイス「パンデミックの経済的影響」(2020年3月2日)

[Simon Wren-Lewis, “The economic effects of a pandemic,” Mainly Macro, March 2, 2020]

10年少し前,医療の専門家たちから連絡をもらった.なんらかのインフルエンザ・パンデミックが発生した場合の経済的な影響を知りたいのだという.彼らが必要としていたのは,一般均衡での影響を見るためのマクロ経済モデルだった.1990年代に,私は小さなチームを率いて,COMPACT というモデルを構築していた.連絡をくれた専門家たちと私で論文を1本書き,のちに Health Economics に掲載された.論文では,それまでになされていた他の研究も参照している.
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タイラー・コーエン「イギリスによるナイジェリア植民地支配」(2020年3月4日)

[Tyler Cowen, “British colonialism in Nigeria,” Marginal Revolution, March 4, 2020]

イギリスによるナイジェリア植民地支配は60年ほど続いた(…).当初,イギリスはナイジェリア統治を安上がりにすませようと模索した.このため,間接統治が好まれることとなった.植民地統治の実務の多くは,伝統的なアフリカの権威と共同作業でなされた.中央集権化された支配・整然とした武力・専門的な行政職員を創出することに,イギリスは労力をほとんど注がなかった.イギリスがつくりあげてナイジェリアに残した国家の質は,かなりおそまつなものだった(…)

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タイラー・コーエン「コロナウイルスで科学と出版の文化はどう変化しているか」(2020年2月27日)

[Tyler Cowen, “How the coronavirus is changing the culture of science and publication,” Marginal Revolution, February 27, 2020]

10年前には存在すらしていなかったプレプリント・サーバーに次々と大量のデータが公表され,正式なピアレビューがはじまる前からSlack や Twitter といったプラットフォームやメディアで分析・検討されている.学術誌のスタッフは時間外労働までして記録的な速度で草稿を査読に回し,編集し,出版している.格式ある New England Journal of Medicine (NEJM) では,COVID-19 に関する論文を投稿から48時間以内で掲載した.すでに 200以上ものウイルスゲノムが GISAID というプラットフォームに投稿され,進化生物学者たちの大軍によってすぐさま分析されている.彼らはプレプリントとソーシャルメディアでウイルスの系統発生ツリーを共有している.

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タイラー・コーエン「予測市場で景気後退のリスクが上昇中」(2020年3月1日)

[Tyler Cowen, “Recession risk is rising,” Marginal Revolution, March 1, 2020]

2020 @PredictIt recession prediction market probabilities are now above 40% amid #Coronavirus concerns.
コロナウイルスの懸念が広まるなか,2020 @PredictIt の予測市場で,景気後退の確率がいまや 40% を超えている.

That is from Jon Hartley, and here is his closely related new paper “Recession Prediction Markets and Macroeconomic Risk in Asset Prices.” Here is the prediction market page, at 47 as I am writing.
上記は Jon Hartley のツイート.これと密接に関連する新論文「景気後退の予測市場と資産価格のマクロ経済リスク」はこちら.予測市場のページはこちら.これを書いてるいま,確率は 47% だ.

スコット・サムナー「安倍政権の雇用面での奇跡と無意味な「景気後退」」(2020年2月19日)

[Scott Sumner, “Abe’s employment miracle and Japan’s meaningless ‘recessions’“, TheMoneyIllusion, February 19, 2020]

2013年のはじめに安倍が政権についたとき,驚愕するほど雇用がよくなるとは,ほぼ誰も予想していなかった(ぼくも含めて).それまでの20年間,就労年齢の雇用はだいたい 70% あたりをうろうろしていた.当時,専門家をつかまえて「これから2010年代の大半を日本は「景気後退」のなかで過ごすことになるよ」と言ったら冷たくあしらわれただろうけど,それに比べても,「これから雇用の奇跡が起こるよ」と言った場合の方がよほど冷たくあしらわれたことだろう:
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アレックス・タバロック「英語のポップソングは悲しみと怒りが色濃くなってきてる」(2020年2月17日)

[Alex Tabarrok, “Pop Songs are Getting Sadder and Angrier,” Marginal Revolution, February 17, 2020]

AEON: 英語圏のポップソングは,だんだんネガティブになっている.ネガティブな情動に関連する単語の使用頻度が,1/3 以上も増えている.一例として,ビルボードのデータセットをとりあげよう.歌一曲あたり平均 300語が使われていると仮定すると,ヒット曲の上位 100曲の歌詞は毎年 30,000語使うことになる.1965年に,否定的な情動に関連した単語はおよそ 450ほどだった.2015年に,その数字は700以上になっている.その一方で,同じ期間に,ポジティブな情動に関連した単語は減少している.1965年の歌には,ポジティブな情動の単語がおよそ1,750語あったのに対して,2015年にその数はたった 1,150ほどにまで減っている.ここで気にとめておきたい点がある.絶対数でみると,ネガティブな情動に関連した単語よりもポジティブな情動に関連した単語の方がいつでもより多く現れているのだ.これは人間の言語に普遍的に見られる特徴で,「ポリアンナ原則」と呼ばれている(ポリアンナはその名前を冠した小説の主人公で,いつでも完璧に楽観的な女の子だ).これが逆転するとは,まず予想しがたい:その上で言うと,問題なのは変化の方向だ.

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