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ヴィラ et al.「財政緊縮とナチ台頭」(VoxEU, 2020年8月16日)

[Gregori Galofré Vilà, Christopher Meissner, Martin McKee, David Stuckler, “Fiscal austerity and the rise of the Nazis,” VoxEU, August 16, 2020]

2007-2008年の金融危機で発生した債務への対策として,多くの西洋諸国は強い緊縮策を追求した.COVID-19 の経済刺激策パッケージののちにも,またこれを繰り返すかも知れない.このコラムでは,1930年代前半に,いかにして緊縮策が社会の苦境を悪化させ,政治的不安定を増す一因となり,やがてドイツにおけるナチ党の台頭の布石となったかをまとめる.本稿の主張は次のとおり――ワイマール政府で生じた社会の苦境に対して一貫した対策がなされなかったことで,不況は悪化し,これがドイツ有権者の急進化と二極化を進める一因となった.
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VoxEUアブストラクト「COVID-19 によって高等教育での格差が広がっている」(2020年8月9日)

[Esteban Aucejo, Jacob French, Paola Ugalde Araya, Basit Zafar, “COVID-19 is widening inequality in higher education,” VoxEU, August 9, 2020]

すでに1世代の学生たちが COVID-19 にどう影響を受けているのかを評価する新研究が登場してきている.本コラムでは,合衆国でも有数の規模の公立大学の学生たちを対象にした調査を用いて,新たな知見を示す.パンデミックは学生たちに幅広く混乱をもたらしているが,その混乱は低所得の学生たちほど大きくなっている.その主な要因は次の点にあるように思われる.すなわち,所得が低いほど,COVID-19 に金銭面で影響を受けやすく,しかも,ウイルスによる直接的な健康リスクをより懸念しがちとなっているのだ.

タイラー・コーエン「フェイクニュースに言及するのもダメ」(2020年8月8日)

[Tyler Cowen, “Don’t mention the fake news,” Marginal Revolution, August 8, 2020]

定義不良の用語「フェイクニュース」を使ってフェイクニュースが広まっていると主張しているのを読んだり聞いたりするのですら,有害になりうる.Van Duyn & Collier (2019) の研究では,メカニカルタークの回答者を対象に実験を行い,「フェイクニュース」という単語を含むツイートに触れると,回答者たちが虚偽のニュースと事実のニュースを識別しにくくなるのを見出している.同様に,Clayton et al. (2019) の研究では,メカニカルタークで回答者たちに実験に参加してもらい,ソーシャルメディアで誤解を誘う情報が広まっているという一般的な警告を読んでもらうと,妥当なニュース源と信頼できないニュース源のどちらのヘッドラインも正確さを〔比較的に〕低く評価する傾向が出てくるのを見出している.ここから,この警告によって〔ニュース源が信頼できるところかそうでないかについて〕無差別な懐疑が引き起こされることがうかがえる.

上記の出典は,誤認がどう生まれて存続するのかについて Brendah Nyhan が調査した JEP のすぐれた論文

タイラー・コーエン「これは現代の奴隷制と戦うのにふさわしい方法ではない」(2020年8月2日)

[Tyler Cowen, “How not to fight modern-day slavery,” Marginal Revolution, August 2, 2020]

――というのが,今回『ブルームバーグ』に書いたコラムの話題だ.ちょっと抜粋しよう.
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タイラー・コーエン「ロックダウン以後に就業時間の過ごし方はどう変わってるかな」(2020年8月4日)

[Tyler Cowen, “How the workday is changing post-lockdown,” Marginal Revolution, August 4, 2020]

3,143,270名のユーザーによる会議とメール利用について得られたメタデータを匿名化して集積して用いたところ,パンデミック以前の水準に比べて,一人当たりの会議回数が増加し(+12.9パーセント),会議1回あたりの出席者数も増加している(+13.5パーセント)一方で,会議の平均時間は減少している(-20.1パーセント).全体を総合して見ると,ロックダウン期間以後に,一日当たりの会議時間は減っている(-11.5パーセント).また,就業時間の平均的な長さは顕著に持続して伸びている(+8.2パーセント,すなわち +48.5分).さらに,電子メール利用時間も短期的に増加している.

上記の抜粋は,Evan DeFilippis, Stephen Michael Impink, Madison Singell, Jeffrey T. Polzer, & Raffaella Sadun による新しい NBER 論文から引用した.この研究は,ヨーロッパ・北米・中東から得られたデータに基づいている.

スコット・サムナー「人種差別の真実」(2020年7月25日)

[Scott Sumner, “The truth of racism,” TheMoneyIllusion, July 25, 2020]

人種差別の真実を解説する前に,真実の真実を解説しておく必要がある.たまにこんなことを言う人たちがいる――「あいつは人種差別で非難されてるけど,あいつはホントに人種差別者なのかな?」 この言葉遣いはややこしい.そこで,まずはなにを問題にしてるのか整理しておこう.
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サイモン・レンルイス「景気回復のサボタージュ」(2020年7月7日)

[Simon Wren-Lewis, “Sabotaging the recovery,” Mainly Macro, July 7, 2020]

先週は,イギリスにおける都市封鎖(ロックダウン)を時期尚早に緩和すればいっそう多くの人命を失うことになるだろう理由について書いた.今回の文章では,時期尚早な封鎖緩和を行って生じる景気回復は低調なものとなり,一部の事業は倒産し多くの雇用が失われる見込みが大きい理由について述べよう.
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VoxEUアブストラクト:「マスクの義務的着用とその他の都市封鎖政策による合衆国における COVID-19 の感染拡大は減少した」(2020年7月15日)

[Victor Chernozhukov, Hiro Kasahara, Paul Schrimpf, “Mask mandates and other lockdown policies reduced the spread of COVID-19 in the US,” VoxEU, July 15, 2020]

COVID-19 に直面して,人々は合理的かつ自発的にリスク情報に対応して行動をとった.このため,封じ込め政策の効果を自発的対処の効果から区別しにくくなっている.このコラムでは,合衆国において義務的なマスク着用政策が COVID-19 の感染者数と死者数にどう影響したか検討する.もしも,合衆国において,2020年4月1日時点で,不特定多数と接触する事業者にマスクの着用をするようが全面的に義務づけられていたなら,6月初めの時点で死者数は 40% 近く少なくなっていただろう.封じ込め政策は,直接には感染率を減少させることによって,そして間接には人々の行動を制約することによって,COVID-19 の感染者数と死者数に多大な影響を及ぼした.その影響は,感染者数と死者数の増加率で実際に観察された変化のおよそ半分を占める.

(コラム全文(英語)はこちら.)

タイラー・コーエン「どうしてアメリカ人のリーダーたちはこんなに高齢なんだろう?」(2020年7月18日)

[Tyler Cowen, “Why does America have such old leaders?” Marginal Revolution, July 18, 2020]

1950年いらい,OECE に加盟する30ヶ国ほどの政府首脳陣の平均年齢は一貫して下がってきている.当初の平均年齢は60歳以上だったのが,今日では平均54歳だ.OECE 加盟国首脳陣の平均年齢は,いまやトランプ氏より20歳ほど若い――バイデン氏に比べると,さらに四半世紀近くも若い(…)

高齢なのは,アメリカの大統領だけではない.議員の平均年齢も,数十年にわたって高齢化している.下院議長ナンシー・ペロシは80歳,上院多数党院内総務ミッチ・マコーネルは78歳だ.最高裁判事9名の平均年齢は67歳を超えている.トランプ氏の閣僚たちの平均年齢は,OECD諸国で最高齢となっている.

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スコット・サムナー「アイデンティティ派 vs. リベラル派」(2020年7月8日)

[Scott Sumner, “Identitarians vs. liberals,” TheMoneyIllusion, July 8, 2020]

[これよりずっといい記事を Econlog の方に書いてる.話題は貨幣経済学だ.]

多くの知識人は,政治というと「左派 vs. 右派」の切り口で考える.今日,左右よりももっと大きな分断が,アイデンティティ政治に取り憑かれている人々と,そうでない人々のあいだにある.つまり,アイデンティティ問題にとりつかれている左派イデオローグは,主流のリベラル派(進歩派と古典的リベラルの両方)よりも白人ナショナリストに近い.

マット・イグレシアスが冴えたツイートでこの概念を図解してる:
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