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アレックス・タバロック「ギャンブルで科学を救えるかな?:予測市場と再現実験プロジェクト」(2018年8月28日)

[Alex Tabarrok, “Gambling Can Save Science,” Marginal Revolution, August 28, 2018]

30年近く前のこと,ジョージメイソン大学の同僚ロビン・ハンソンがこんな疑問を言っていた――「もしかしてギャンブルで科学が救えるんじゃない?」 いまや,答えは「救える」だとわかっている.予測市場(ロビンの呼び名は「アイディアの先物市場」)を使って科学理論の品質を計測するというアイディアは裏付けられている.社会科学再現プロジェクト (Social Science Replication Project) の最新論文 Camerer et al. (2018) では,2010年から2015年のあいだに Nature と Science に掲載された社会科学研究21件を再現しようと試みた.再現実験を実施する前に,著者たちは(これまでの再現実験研究でやったのと同じように)予測市場を開いた.その結果,今回も予測市場はうまく再現される研究とそうでない研究を実にうまく予測してみせた.
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サイモン・レン=ルイス「この10年で最悪の経済政策の失敗」(2018年8月21日)

[Simon Wren-Lewis, “The biggest economic policy mistake of the last decade, and it had nothing to do with academic economists,” Mainly Macro, August 21, 2018]

「この10年で最悪の経済政策の失敗」は,ライアン・クーパーが書いた記事の題名で,ここでいう最悪の失敗とはもちろん緊縮だ.(クーパー記事はもっぱらアメリカの事情に視野を絞っているので,EU離脱は比較対象に含まれていない.) 「緊縮は必要だ」と言った学者たちがどんな理由を挙げていたかクーパーは総ざらいして,彼らの分析がどう瓦解したかを検討している.(こうした著者たちに関するかぎりは,どれくらい瓦解したのかはいまなお論争の対象ではある.)
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アレックス・タバロック「グローバル中間階級」(2018年8月27日)

[Alex Tabarrok, “The Global Middle Class,” Marginal Revolution, August 27, 2018]

ワシントンポスト:世界は歴史上の大きな到達点を前にしている:ブルッキングズ研究所の研究者 Homi Kharas によれば,2020年までに,世界人口の半数以上が「中間階級」になるという.

Kharas が定義する中間階級とは,食料・衣類・住居といった基本的な生活必需品をまかなった上で,さらに美食・テレビ・バイク・住宅の改善・高等教育といった贅沢品にもわずかながら出費できる階級のことだ.

これは画期的な到達点だ:数千年にわたってこの惑星の生きる人々の大半が農奴や奴隷その他として貧苦のなかにあったのに,いまや人口の半分がただ生き延びるだけでない生活をおくる金銭的な手段をもちあわせている.

「1830年代に産業革命がはじまる以前に,中間階級はないも同然だった」と Kharas は言う.「ただ王族と小作農がいるだけだった.いまや,中間階級が多数派を占める世界になろうとしている.」

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ノア・スミス「書評: ライアン・D・イーノス『ぼくらのあいだの隙間』」

[Noah Smith, “Book Review – ‘The Space Between Us’“, Noahpinion, June 30, 2018]

「おいおい,ぼくらのあいだに隙間なんてありゃしませんって」(“Hey, there ain’t no space between us!”)
――機中で本書を読んでいたぼくを目にした客室乗務員の言葉

この本は分離と人種どうしの関係というとても大事な話題に関するとても大事な本だ.それに,世の中の仕組みについてぼくが前から思っていたことと強く合致する本でもある.しかも,たんに先入見と合致するばかりか,ぼくの願望とも合致している――分離はわるいことであってほしい,とぼくは思ってる.というわけで,本書の論を好むバイアスがぼくにはかかっているので,この書評ではとりわけきびしい目で見ていきたい.ぜひ,この点を肝に命じてほしい.本書はぜったい読むべき必読本だ.本書で解説されている研究は手抜かりなく実施されていてその内容は啓発的,しかもぼくらの国の未来にとってとても重要だ.著者のイーノスが四苦八苦して解説している理論は,国民的な議論で柱になるだけの値打ちがある.この点だけ言い終えたところで,ここからは過剰に批判的に書いていくことにしよう.
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ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(6/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.6: ルイ・ナポレオンとグローバー・クリーブランド: これは驚きではないはずだ。富と名誉と血縁で閉じられた貴族制がなくなると――〔社会階層の〕上昇移動が可能になると――全面的に人を平等にする社会主義は北大西洋でそれほど魅力的な思想ではなくなっている。最初にこれが見られたのは、1848年のフランスでのことだ。当時、都市の職人たちに完全な雇用を提供するために課税されることをフランス人の圧倒的大多数が望んでいなかったのをアレクシ・ド・トクヴィルは発見している。失業者に機会を提供することよりも自分たちの財産の方を大事にして、トクヴィルと同じく社会主義に反対する側にいたのだ:
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タイラー・コーエン「密度の経済学:ベルリンの壁でわかること」

[Tyler Cowen, “The economics of density: evidence from the Berlin Wall,” Marginal Revolution, August 16, 2018]

Ahfeldt, Redding, & Wolf の論文から:

ベルリンの壁は都市発展の主要な源泉をつきとめる独特な自然実験を提供してくれる。本研究(先日、今回の研究で名誉あるフリシュ・メダルを著者たちは授与された)では、ベルリンが分割されたとき東ベルリンの歴史的な中央商業地域に近い西ベルリンの東側で不動産価格と経済活動がどのように下降しはじめ、その後、東西ドイツ統合後の1990年代に同地域がどのように発展しはじめたかを示す。理論でも実証的な証拠からも、「累積的な因果関係」の好循環で都市の密度と生産性のあいだにプラスの関係があることが確証される。

Via the excellent Samir Varma.

サイモン・レン=ルイス「マクロ経済安定化には政策金利か財政政策か」

[Simon Wren-Lewis, “Interest rate vs fiscal policy stabilisation,” Mainly Macro, August 15, 2018]

主流経済学者と現代貨幣理論 (Mondern Monetary Theory; MMT) 経済学者をわかつのは、「マクロ経済の安定化に金融政策と財政政策のどちらを用いるべきか(需要を制御してインフレ率と産出に影響を及ぼす方法として)」という論点だ。この文脈では、よい手段になるのはどういうものだろう? 前にも論じたように、主流と MMT の大きなちがいは、この問いにそれぞれちがう答えを出すところに関わる。次の論点が決定的に重要だ。
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ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(5/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.5: ジョン・ピーター・オルトゲルドの経歴: オルトゲルドはドイツに生まれた。1848年、生後3ヶ月だったオルトゲルドを連れて両親はオハイオ州に移り住む。南北戦争では北軍に参加。バージニア州タイドウォーターのモンロー要塞でマラリアにかかり、生涯にわたって苦しむことになる。戦後、オルトゲルドは高校を卒業して鉄道作業員や学校教師などをして転々と渡り歩きつつ、どこかで法律を学ぶ。1872年、ミズーリ州サバンナで市法務官 (city attorney)、1874年には郡検事となる。1875年、オルトゲルドは『罰せられるべき我らの機械とその犠牲者』(Our Penal Machinery and its Victims) の著者としてイリノイに姿をあらわす。1884年のオルトゲルドはふるわない民主党議員候補だった――そして、民主党大統領候補グローバー・クリーブランドの強力な支持者でもあった。
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ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(4/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.4: シカゴランド(シカゴ都市部): では、最前線で政治と経済はどう相互作用したのだろうか?――第一次世界大戦以前の世界でどこよりも急速に成長し工業化を進めていた場所で、政治と経済はどう相互作用したのだろう? その場所、現代でいえば上海にあたる場所とは、シカゴだ。
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ブラッドフォード・デロング「大衆政治と『ポピュリズム』:『長い20世紀の経済史』抜粋」(3/6)

[Bradford DeLong, “Mass politics and “populism”: An Outtake from “Slouching Towards Utopia: An Econonmic History of the Long Twentieth Century,” Grasping Reality with at Least Three Hands, August 09, 2018]

5.2.3: 人民党と進歩主義運動: 中産階級の多く、とくに農民たちは、金持ち・東部人・銀行家のせいで19世紀後半のアメリカがおかしくなっていると非難した。1890年代の人民党(ポピュリスト; the Populists)は、東部の銀行家たち・金本位制・独占企業が悪いと言った。彼らはなにをやったか。貨幣供給(マネーサプライ)を増やし金利を下げ企業物価を上げるために、16対1の比価で銀貨を自由に発行することを追求した。反トラスト法で独占企業を打破しようと模索した。鉄道その他に料金規制を導入して、大半が田園部にある本物のアメリカ人 (real Americans) の屋台骨が都市の鉄道貴族・製造業の独占企業・銀行家といった相手に搾取されないようにしようと模索した。
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