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ピーター・ターチン「実質賃金の上昇が止まった理由Ⅳ:全て統合する」(2013年4月15日)

Putting It All Together (Why Real Wages Stopped Growing IV)
April 15, 2013
by Peter Turchin

このシリーズの過去のエントリでは、疑問を提示し、可能性がある答えの個別構成要素を検討した:まずGDPと労働力の需要/供給の長期のトレンドを、次に文化的影響。全てを統合し、(もしあるとすればだが)この3つの要因の相対的な寄与を定量分析する時だ。

私がこれから行うのはステップワイズ分析と呼ばれているものだ:各段階(ステップ)で一つずつ説明変数を代入し、一連の段階でモデルを構築していく。このアプローチにより、応答変数の動態を解き明かすのには、どの説明変数が必要になっているかの理解が可能となる(応答変数は、この場合1927年から2012年までの実質賃金だ)。また、各説明変数が、〔実質賃金の実際値〕データのどの特徴を説明しているのかの理解も可能となる。 [Read more…]

ビル・ミッチェル「朝日新聞インタビュー完全版:東京にて」(2019年11月6日)

Interview with Asahi Shimbun in Tokyo – November 6, 2019

先日、日本に旅行した際には、日本の国会での大規模な講演を含む、様々な団体に対するプレゼンテーションを行ったが、多くの報道機関からの関心も寄せられることになった。これは良い兆候だ。紙媒体の報道記事のいくつかを翻訳版としてゆっくりと編集中だ。今日は、2019年11月6日に東京を行われた中道左派の新聞(朝日新聞)による私へのインタビューの翻訳版(私の注釈付き)をお届けする。朝日新聞は日刊紙で、日本の5大全国紙の中の1つだ。朝日には興味深い歴史的過去があるが今日のこのブログエントリの主題ではない。記事は、冒頭で現代貨幣理論(MMT)を紹介した後、Q&A形式に移行している。本エントリで掲載している回答は、朝日新聞の二人の記者のインタビューに実際に答えたものと、前日の東京での合同記者会見の回答を、纏めて編集したものとなっている。 [Read more…]

ピーター・ターチン「二国物語:スウェーデンとデンマークを比較する」(2020年5月5日)

A Tale of Two Countries

May 05, 2020
by Peter Turchin

北欧の2国、スウェーデンとデンマークは、同じような言語を話し、文化と歴史の多くを共有している。しかし、両国はCOVID-19パンデミックへの対処において非常に異なるアプローチを採用した。デンマークは、学校やレストラン、他に美容院のような商業施設を閉鎖したヨーロッパでは最初の国の一つだ。対照的に、スウェーデンは、商業施設は営業を続けることを許可し、路上での移動を規制せず継続させている。従って、この2国は、コロナウィルスを制御するにあたって、ロックダウンの有効性を研究する自然実験を我々に提供してくれている。ロックダウンは社会・経済の両面で多大な混乱をもたらすので、〔ロックダウンの有効性は〕非常に重要な論点になっている。 [Read more…]

ジョセフ・ヒース「住宅の巨大化は、現世における多くの害悪の元凶である」(2015年6月4日)

These houses are the source of a great many problems in the world
Posted by Joseph Heath on June 4, 2015

私は先日、ブランプトンにある新興住宅開発区の近くをドライブしたついでに、少し車を止めて写真を撮ってきた。私は過去にも巨大な住宅を見てきたが、ここの住宅群には仰天した。まあとにかく、まずは住宅のサイズを見てほしい。住宅というより施設のようだ。(2台収納駐車場を見れば、住宅のスケール感を把握することができる。)さらに、下の写真ではよく見えないかもしれないが、この住宅群は、1~2エーカー〔4000~8000平方メートル〕区画にぽつねんと建っているのではない。住宅は密集して建設されており(このまま開発が進むなら)、おそらく100棟以上は建築されることになるだろう。

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ジョセフ・ヒース「人種差別と人種意識:『啓蒙思想2.0』没原稿より」(2014年5月28日)

On racism and race consciousness
Posted by Joseph Heath on May 28, 2014

私の本『啓蒙思想2.0』の抜粋を一連のシリーズとして、ナショナル・ポスト紙で4月14日から19日にかけて1週間掲載できたのはジョナサン・ケイおかげだ。感謝している。ただ紙面で、連載の最後の見出しが「人種差別を打ち負かす方法」と掲載されたことで、私は少し不利益を被っている(新聞を読む時には、見出しをつける人と、記事の執筆者が別人であることに覚えておくことは重要だ)。このような見出しで掲載されたことで、人種差別を克服するのに取り込み可能な簡単な処方箋が存在していると、まるで私が考えているかのように思われてしまった。(Ivor Tossellも、グローブ&メイル紙で、記事にして取り上げ、「ジョセフ・ヒースは、アメリカの人種差別問題を軽減させる診断と治療を、薄っぺらい3ページに纏めようとした」と批判している。)

アメリカにおける人種は「永遠の問題」である、と論じ続けている事実をもってして、この問題は近い将来に解決されると私が楽観視していないことを慮ってほしい。私が強調したかったのは、人種差別は人種意識のほとんど必然的な帰結であり、人種差別を撲滅する唯一の方法は、人種意識を取り除くことにある、ということだ。これを、簡単にできるだろう、と提案したつもりはなかった。(私は「可能な」解決策を示したが、「実施可能」だとは示していない。) [Read more…]

ピーター・ターチン「2020年」(2020年6月1日)

2020
June 01, 2020
by Peter Turchin

アメリカが燃えている。全米各地の数十の都市に、1968年のマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺事件が原因となった暴動以来、観察されていなかったレベルでの夜間外出禁止令が出されている。ほとんどの解釈は、既に6日続いている暴力の波の直接的な原因に焦点を合わせている。実際、ジョージ・フロイドがゆっくりと絞め殺されていく映像を、怒りと悲しみを感じずに視聴するのは難しい。しかし、私の仕事は、いうなれば、事件の表層からは解しかねる、深い構造的原因を調べることだ。 [Read more…]

ジョセフ・ヒース「インテリは保守の首相になぜヒステリーを起こすのか?」(2015年8月24日)

Stephen Harper versus the intellectuals
Posted by Joseph Heath on August 24, 2015 | politics

スティーブン・ハーパー1 が首相だった時代を振り返ると、彼が統治に関して2つの重要な「発見」を行ったことがわかる。1つ目は、ケベックでの一切の支持がなくとも国を統治する方法を発見したことだ。2つ目は、インテリ層からの一切の支持がなくとも国を統治する方法を発見したことだ。

後者の芸当は、もちろん前者よりはるかに首尾よく実行できる。なぜなら、インテリは多数の票に影響を与えず、ごく少数の票田にクラスターとして群がるからだ。アメリカの共和党は、ずっと昔にインテリを見限っている。(2004年の大統領選の直前に、アメリカのインテリ達が集まって「ジョージ・W・ブッシュの再選を阻止しよう!」と訴えたニュヨーク・レビュー・ブックスの痛々しい号を今でも私は思い出すことができる。これは何も変えることができなかった。) [Read more…]

  1. 訳注:第28代カナダ首相(在任2006~2015年)。極右政党「カナダ改革党」を出自に持ち、後に2004年のカナダ保守党に結党に関与し党首に就任。2006年の総選挙後にカナダ首相に就任。 []

ピーター・ターチン「実質賃金の上昇が止まった理由Ⅲ:非市場影響要因の代替値」(2013年4月11日)

A Proxy for Non-Market Forces (Why Real Wages Stopped Growing III)
April 11, 2013
by Peter Turchin
labor, norms, structural-demographic

前回までの一連のエントリで、なぜ実質賃金は1970年代に上昇が止まったのか、そして労働需要と労働供給の長期の動向はこの疑問に応えることができるかどうかを問うてみた。このエントリでは、経済的影響要因より定量化が困難な「経済の領域外」(非市場)の影響要因に目を向けてみたい。

非市場的影響要因は、実質賃金へ潜在的に影響を与えている、多量のメカニズムから成り立っている。1つ挙げるなら、国家の経済統制(一部の人に言わせれば、国家による干渉)を起因とする政治的要因である。様々な関係者間の権力勾配の存在が影響をもたらしている。政治・立法的環境が労働組合に有利ならば、労働者は雇用者と団体交渉が可能になり、権力を得ることになる。逆の場合は、雇用者が優勢となる。 [Read more…]

ピーター・ターチン「エリート達の内輪での競争:複雑な社会の動態を理解するための重要な概念」(2016年12月30日)

Intra-Elite Competition: A Key Concept for Understanding the Dynamics of Complex Societies
December 30, 2016
by Peter Turchin

国家レベルの複雑な社会は、社会と政治の不安定性の大波という苦境に周期的に陥るが、これを説明する最重要要因の一つがエリート達の内輪での競争である。この考えは、約30年前にジャック・ゴールドストーンによって提唱された。ゴールドストーンは、イングランド内戦1 、フランス革命、17世紀のトルコと中国での内乱の構造的な前兆を分析することで、この考えを実証的に検証した。他の研究者達(セルゲイ・ネフェドフ、アンドレイ・コトラエフ、そして私を含む)はゴールドストーンの理論を発展させ、古代ローマ、古代エジプト、古代メソポタミア、中世イングランド、中世フランス、中世中国、1848年のヨーロッパでの諸革命、1905年と1917年のロシアでの革命、アラブの春の暴動のような異なる社会における、ゴールドストーンのこの考えを検証した。もっと身近だと、近代民主主義国家の安定性もまた、エリート間の過度の競争によって蝕まれることを最近の研究は示唆している(アメリカ史における構造人口動態分析に関しては“Ages of Discord(『不和の時代』)”を参照)。なぜエリート達の内輪の競争は不安定化の重要なトリガーになるのだろう? [Read more…]

  1. 訳注:イギリスで1641~1653年にオリバー・クロムウェル率いる議会派と王党派との間起こった内戦。『清教徒革命』とも呼ばれる。 []

ピーター・ターチン「コロナウィルスの長期的影響」(2020年4月20日)

Long-Term Consequences of Coronavirus
April 20, 2020 by Peter Turchin
cooperation, economics, elites, health, inequality, structural-demographic

我々は今COVID-19パンデミックの中盤にいる、現状とどこに向かおうとしているのかを詮索するのに良い時期だ。例えば、人口統計学的には、このパンデミックの影響は軽微であることが既に明らかになっている。人口の1%未満しか死亡しないだろうことと、コロナによる死亡者は既に定年退職した人に大きく偏っているからだ。アメリカ合衆国だけでも既に4万人がこの感染症で死亡しているが、これは総人口の観点からはたいして、もしくは何も変えないだろう。

中期(今後数年)の疫学的見通しはまだ不透明だ。我々はウィルスを絶滅に追い込むことができるのだろうか? それとも、風土病化し秋から冬にかけて毎年再来することになるのだろうか? 通常の〔風邪やインフルエンザの〕ケースのように、ウィルスは致死性の低い形態に進化するのだろうか? 私の見解では、今後2~3年中にコロナウィルスを駆除することは十分に可能だ。問題となっているのは、この駆除目的を達成するのに、我々がどこまで自身の生態を集合的に変更できるかどうかだ。全ての旅行者や他の伝染させる可能性がある保菌者を徹底的に検査し、ウィルス感染多発地域を積極果敢に検疫隔離し、自国内の感染症を制御するつもりがない、あるいは制御能力がない国を取り囲んでの衛生的閉鎖を行うことが必要になるだろう。

しかしながら、このブログは社会的動態に焦点を当てているので、今回のパンデミックが社会的健全性にどう影響を与えるのかについて論じてみよう。前回の投稿で論じたように、現在のグローバリゼーションと大衆の窮余化の度合いを考慮すれば、致死的なパンデミックが再来する可能性は非常に高い。つまるところ、COVID-19や将来の未知の病気は、世界システムの水準からは、内在的動態の一部なのだ。しかしながら、個々の国家レベル(国家に中心を絞った私の研究枠組み)の水準からは、COVID-19は外的ショックだ。COVID-19の長期的な影響は、影響を受けた社会的制度のレジリエンス(復元力)に何よりも左右される。 [Read more…]