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タイラー・コーエン 「紙幣の中から橋を出してみせよう」(2014年12月18日)/ アレックス・タバロック 「紙幣の中から姿を消した『彼』」(2008年7月7日)

●Tyler Cowen, “The culture that is Dutch”(Marginal Revolution, December 18, 2014)


笑いすぎてお腹が痛いとはこのことだ。

全部で7種類あるユーロ紙幣にはそれぞれに異なる建築様式――ルネサンス様式やバロック様式といったヨーロッパを代表する建築様式――の橋が描かれているが、いずれも抽象例であり架空の橋だ。実在する橋ではなく架空の橋が描かれている理由はEUに加盟するいずれかの国に存在する橋を描いてしまうと他の加盟国からやっかみの声があがる可能性があったためである。「欧州中央銀行は実在する橋を紙幣の図柄に使いたくなかったようですが、紙幣の中から橋を引っ張り出してきて実在の橋にしちゃえば(実際に作ってしまえば)どうだろう? 面白いんじゃなかろうか? そう思ったんです」。(橋の設計を請け負った)ロビン・スタム(Robin Stam)氏は本紙の取材に対してそのように答えた。

記事の全文はこちら。ちなみに、見出しは「ユーロ紙幣に描かれている架空の橋がオランダにて建設される運びに」となっている。ユーロ圏を立ち行かせるための大まかでいわく言い難いメタファーにでもなるんじゃないかね。

情報を寄せてくれたJoel Cazaresに感謝。

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● Alex Tabarrok, “Evidence of Absence”(Marginal Revolution, July 7, 2008)


この度中国で(北京オリンピックの開催を記念して)額面が10元の記念紙幣が発行されることになった(Metafilter経由で知った情報)。何かが足りないのだがおわかりになるだろうか?1 裏返してもやはり「彼」はいない(描かれていない)らしいよ。

  1. 訳注:答えは毛沢東の肖像画。中国の紙幣は1元札、5元札、10元札、20元札、50元札、100元札の計6種類あるが、すべてに毛沢東の肖像が描かれている。 []

アレックス・タバロック「問題:子供2人のうちどちらも女の子である確率は?」

Alex Tabarrok “A Girl Named FloridaMarginal Revolution, July 9, 2008


レナード・ムロディナウの”The Drunkard’s Walk: How Randomness Rules our Lives”(邦訳「たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する」田中三彦 訳)を読んだ。この本はモンティ・ホール問題,ベイズ理論,可用性バイアス,コントロール幻想等々を取り上げている。これらについて馴染みがない人にとっては,この本はこの上なく面白いものだろう。

他方,私としてはこの本から新たなことをたくさん学んだとは言えない。とは言え,それでもこの本には楽しませてもらった。うまく書かれてるし,興味深いネタに溢れているのだ(偉大な数学家であるポール・エルデシュは,ドアを変更すべきということを信じるのを拒んだ1 というのは知ってたかい?)。確率論や統計入門を教えている人にとっては,授業を活気づける良い例題をたくさん発見できることだろう。

私が目を引かれた問題は次のようなものだ。ある家庭に2人の子供がいると仮定する。両方とも女の子である可能性はどれだけか。そう,これはとても簡単。女の子である確率は2分の1,それぞれの確率は独立だから2人とも女の子である確率は2分の1×2分の1=4分の1だ。

それでは少なくとも1人の子供が女の子である場合,2人とも女の子である確率はどれだけか。 [Read more…]

  1. 訳注;モンティ・ホール問題を参照。 []

タイラー・コーエン 「カナダにおける通貨イノベーション ~通貨の刷新に明け暮れるカナダの造幣局~」(2012年4月11日)/ アレックス・タバロック「カナダの通貨にゃ敵わない」(2017年7月8日)

●Tyler Cowen, “The continuing course of Canadian monetary innovation”(Marginal Revolution, April 11, 2012)


カナダの通貨当局(造幣局)はじっとしていられないようだ。まるで落ち着きのない子供のように、通貨の刷新に明け暮れているのだ。プラスチック製の紙幣(ポリマー紙幣)の導入に踏み切ったかと思うと、ペニー硬貨(1セント硬貨)の製造中止を決定。そして今度は暗闇で光る25セント硬貨でお楽しみあれときた。

今回新たに発行される記念硬貨には恐竜の姿が描かれている。暗闇に置くと鱗に覆われた肌の下に隠れている骨格が光って浮かび上がってくる仕組みになっている。

片面に二種類の図柄が描かれている世界初の硬貨と言えそうだ。ちなみに、もう片方の面にはエリザベス女王の姿が描かれているが、女王陛下は暗闇に置いても光りはしないとのことだ。

素材は白銅。市中に流通している25セント硬貨よりもかなり大きめのサイズとのことだ。

記事の全文はこちら。情報を寄せてくれたEva Vivaltに感謝。

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●Alex Tabarrok, “Canadian Money is Better than US Money”(Marginal Revolution, July 8, 2017)


カナダの通貨はアメリカの通貨よりも優れている。まず紙幣。カラフルで水を通さず透明な箇所もあってホログラム入り。すごいよね。次に硬貨。(スターリングシルバーとニオブを素材とする)ニオブ銀貨の(月夜に吠えるオオカミの姿が描かれている)「ウルフムーン」硬貨。誰だって欲しくなろうというものだ。「いや、まだ足りない」とばかりにこの度カナダ王立造幣局はカナダの建国150周年を記念して暗闇で光る硬貨の発行を決めたようだ。まあ、2012年に発行された(暗闇に置くと骨格が光って浮かび上がってくる)かの恐竜硬貨は越えられないけどね。

アレックス・タバロック 「作品を長持ちさせる秘訣 ~『シティ』のケース~」(2016年8月25日)

●Alex Tabarrok, “The Economics of Building Art to Last”(Marginal Revolution, August 25, 2016)


マイケル・ハイザー(Michael Heizer)と言えば巨大なアート作品の制作を専門とする彫刻家だ。そんな彼の作品の一つが『シティ』。ネバダ州の砂漠に鎮座する作品であり、1972年に制作が開始。未だ完成には至っていない。噂によるとワシントンD.C.の(国立公園である)「ナショナル・モール」だとか(メキシコの古代遺跡である)「テオティワカン」だとかに匹敵する規模と言われているが、確かなことは誰にもわからない。というのも、「訪問客が歓迎されていないことは明らかである。道路から隔たった場所に制作されていることに加えて土壁に囲まれてもいるために、不法侵入の危険を冒さない限りは地上からその一部でさえも一瞥できない」格好になっているためだ。数枚の「盗撮」写真が出回っているくらいだ。

ところで、ニューヨーカー誌にハイザーにまつわる興味深い記事が掲載されている。長持ちする作品作りに向けたハイザーの用意周到ぶりにはあっぱれと言うしかない。

『シティ』の大部分は岩や砂、あるいはコンクリートからできている。いずれもハイザーが現地で調達するなり一から製造するなりしたものだ。どこにでもある素材を使っているのには戦略的な理由があるとのこと。やがてきたる「破壊活動」に備えるためだというのだ。「仲の良い友人でもあるリチャード・セラは軍事用の鋼を使って作品を制作している最中みたいですが、きっとそのうち溶かされちゃうでしょうね。そう思うのはなぜかですって? インカにオルメックにアズテックですよ。数ある古代遺跡に眠っていた類稀なる芸術品の数々がどんな運命を辿ったか思い出してください。どれもこれも片っ端から盗まれてしまいました。徹底的に打ち壊され、バラバラに切り離されてしまいました。金(ゴールド)なんかは溶かされちゃいました。我が『シティ』も同じようにメチャクチャにしてやろう。そう企む連中がいたとしてもすぐに悟ることでしょう。『シティ』を標的にしても労多くして益少なしと。」

アレックス・タバロック 「今年度(2018年度)のノーベル経済学賞を手にしたのはウィリアム・ノードハウスとポール・ローマーの二人」(2018年10月8日)

●Alex Tabarrok, “The Nobel Prize in Economics Goes to William Nordhaus and Paul Romer!”(Marginal Revolution, October 8, 2018)


申し分ないチョイスだ! ノードハウスは環境経済学の発展に貢献した功績を讃えて、そしてローマーは経済成長論の発展に貢献した功績を讃えての受賞となった。ローマーの業績についてはMRUniversityの教材用ビデオで解説済みだ。(内生的成長理論をはじめとした)経済成長の話題やチャーター都市構想1についてだけではなく、経済学の教育ツールの開発を手掛けた「起業家」としてのローマーの一面についても解説している。ビデオが制作されたのはMRUniversityが船出したばかりの頃で随分前のことになる。そのため、(ビデオを制作して以降にローマーの周辺で巻き起こった)あれやこれやの小ネタには触れられていない。とは言え、ローマー本人から「あのビデオは気に入っているよ」とのお言葉を頂戴している。というわけで、今年はノーベル経済学賞の解説エントリーを書く必要はなさそうだ。

だがしかし、コーエンは別だ(例年通り腕を振るってノーベル経済学賞の解説エントリーを書き上げている)。コーエンによるノードハウスの業績解説はこちら〔227thday氏による訳はこちら〕、ローマーの業績解説はこちら〔拙訳はこちら〕をご覧あれ。

  1. 訳注;ローマー本人がチャーター都市構想をテーマに語っているTEDトーク(日本語字幕付き)はこちら。 []

アレックス・タバロック「テクノロジーの文化的継承:試行錯誤で学習…はしないけど改善はするみたい」

[Alex Tabarrok, “Improving But Not Learning by Doing,” Marginal Revolution, October 4, 2018]

名著『人類が成功した秘訣』で,ジョー・ヘンリックは知性がもたらしたのではない複雑な技術製品や営みの事例をいくつも挙げている.そうした製品や営みを産み出したのは,仕組みをろくに理解しないまま文化的に世代をまたいで継承されてきた無数のささやかな改善の積み重ねだ.Derex et al. は,この文化的な世代継承仮説を検証するたくみな実験を披露している.
[Read more…]

アレックス・タバロック 「『かような条件が課されていたとしたらグラフェンも発見されずじまいとなっていたことでしょう』 ~ノーベル賞受賞者がイギリスの移民政策に喝!~」(2012年12月31日)

●Alex Tabarrok, “Restrictions on high skill immigration to Britain”(Marginal Revolution, December 31, 2012)


インデペンデント紙より。

イギリス政府による新たな移民制限策――EU域外からの移民労働者を対象とした最低年収要件の導入(年収3万1000ポンドを超える外国人労働者に限ってイギリス国内での就労を認める)および留学ビザ発給の厳格化――は有能な学者がイギリス国内の研究機関で働く機会を閉ざすことになる。そのように語るのはロシア生まれの物理学者であるアンドレ・ガイム博士。ガイム博士は画期的な「超素材」であるグラフェンを発見した功績により2010年にノーベル物理学賞を受賞しているが、ガイム博士は本紙の取材に対して「私をはじめとした研究チームの面々が(就労ないしは就学目的で)イギリスに入国しようとする時に(移民の制限を目的とした)かような条件が課されていたとしたらグラフェンも発見されずじまいとなっていたことでしょう」と語っている。

イギリスへの移民の年間の純流入数は20万人を超えているが、その数を「数万人単位」にまで減らすことを目的として今年度(2012年度)から移民の受け入れに関して新たな条件が課されることになった。その結果としてイギリスの研究機関で科学上の大発見がなされる見込みが薄くなりつつあるとガイム博士は警告する。

・・・(中略)・・・

ガイム博士は現在54歳。博士がイギリスの地に初めて足を踏み入れたのは1990年代初頭に遡る。当時の博士はロシア国籍の持ち主。イギリスにやって来たのはノッティンガム大学で博士研究員(ポスドク)として働くためだった。当時の年収は現在の価値に換算すると2万7000ポンド程度。当時の段階で年収3万1000ポンドという最低年収要件が課されていたとしたら博士はイギリスに入国できなかった(イギリスで博士研究員として働けなかった)ことになる。

ちなみにだが、ガイムは歴史に名を残す並み居る科学者の中でも個人的にお気に入りの一人だったりする。ノーベル賞(受賞理由は「グラフェンの発見」)もイグ・ノーベル賞(受賞理由は「カエルの磁気浮上」に成功)もどちらも受賞しているのはガイム只一人だけなのだ。たまげた話だよ

アレックス・タバロック 「ノーベル賞受賞者による街角での科学教室」(2012年7月14日)

●Alex Tabarrok, “Street Corner Science”(Marginal Revolution, July 14, 2012)


(1988年度の)ノーベル物理学賞受賞者であるレオン・レーダーマン(Leon Lederman)が路上で通行人から寄せられた質問(科学上の質問)に逐一回答する「街角での科学教室」を開いている1。素晴らしい試みだ。同様の試みに乗り出す経済学者の登場が待たれるところだ。ただし、通りの角ごとに別々の経済学者を置く必要があることは言うまでもないであろう。

ちなみに、今回の情報はMetafilter経由で知ったものだ。

  1. 訳注;ちなみに、残念ながらレーダーマンはつい先日(2018年10月3日に)亡くなっている。 []

アレックス・タバロック 「科学の世界に再び舞い戻ってノーベル賞を受賞」(2014年10月8日)

●Alex Tabarrok, “The Nobel Prize in Chemistry”(Marginal Revolution, October 8, 2014)


今年度(2014年度)のノーベル化学賞を共同受賞した一人であるエリック・ベツィグ(Eric Betzig)はハワード・ヒューズ医学研究所が創設したジェネリア・ファームで研究チームのリーダーを務めている。壮大な外観のジェネリア・ファームは米バージニア州アッシュバーンの近郊に鎮座している。講演にお呼ばれしたこともあってジェネリア・ファームの内部にはこれまでに何度か潜入した経験があるのだが、その際にベツィグが開発した超高解像度の顕微鏡が化学、生物学、脳科学といった分野の研究にいかなる影響を及ぼしているかをまざまざと思い知らされたものだ。ベツィグが開発した新型の顕微鏡の助けを借りれば生きた細胞のダイナミックな動きを目にすることができる。その顕微鏡で捉えられた「映像」をご覧になりたければこちらのページでいくつか確認できるので是非ともチェックされたい。画面を下にスクロールすると染色体が分離する様子を捉えた映像(アニメじゃないよ!)も見れるのでそちらも忘れずご覧あれ。

ベツィグは実に変わったキャリアの持ち主だ。ベル研究所で6年にわたり研究に従事。その後はというと科学の世界から足を洗って製造業の分野に転身することに。父親が経営する工場で機械の開発に携わることになったのだ。父親の工場で働き出してから10年ほど経過した頃に科学の世界に再び戻りたいとの思いが湧き上がってきたものの、(父親の工場で働いていた)10年の間に発表した論文の本数はというと・・・ゼロ。科学の世界に戻りたくともおいそれと居場所を得られようはずもなかったわけだ。そこでベツィグは実家のコテージでああでもないこうでもないと頭を捻りに捻った。科学者としての職を得るためにアイデアの発見に努めたわけであり、その時に思い付かれたアイデアがノーベル賞受賞への道を切り開くことになったというわけだ。

今回の件で情報を寄せてくれたMonique van Hoekに感謝。

(追記)今年度(2014年度)のノーベル化学賞の対象となった(蛍光顕微鏡にまつわる)テクニックの詳細についてはデレク・ロウ(Derek Lowe)によるこちらの記事を参照されたい。

アレックス・タバロック「男子の方が数学・科学に比較優位がある?」

[Alex Tabarrok, “Do Boys Have a Comparative Advantage in Math and Science?” Marginal Revolution, September 17, 2018]

疑問の形をとっていても,このタイトル「男子の方が数学・科学に比較優位がある?」はきっと性差別的に見えてしまうだろう.「タバロックは,男子の方が女子よりも数学と科学に秀でてるって言いたいの?」 いや,ぼくが言わんとしてるのは,男子の方が劣ってるかもしれないってことだ..
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