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タイラー・コーエン 「20世紀における最も重要なアート作品とは?」(2008年8月4日)

●Tyler Cowen, “Portrait of David Galenson”(Marginal Revolution, August 4, 2008)


デビッド・ガレンソン(David Galenson)に「20世紀における最も重要なアート作品は何か?」という問いを投げかけると躊躇することなく次のように答えることだろう。『アビニヨンの娘たち』(パブロ・ピカソが1907年に制作した絵画)。

話は第一位(最も重要な作品)だけにとどまらない。第二位(その次に重要な作品)以下のランキングについても順々に確信を持って答えてくれることだろう。

・・・(略)・・・ガレンソンによると、彼が頼りにする統計学的なアプローチ(定量的な分析手法)は20世紀美術について従来とは大きく異なるまったく新しい解釈――美術史家に眉をひそめられるに違いない解釈――を投げかけているとのこと。それぞれの作品が美術史の教科書(計33冊)に掲載されている頻度(回数)などの情報(数値データ)がその根拠となっているという1

記事の全文はこちら。ガレンソンについては本ブログでも過去に何度か取り上げている。詳しくはこちらの検索結果を辿っていただきたい。ガレンソンのホームページはこちらだ。

  1. 訳注;美術史の教科書(計33冊)への掲載回数に照らして作品の重要度を測ると、第一位は(文中にもあるように)『アビニヨンの娘たち』(掲載数は28回)。ちなみに、第二位は『第三インターナショナル記念塔』(ウラジミール・タトリン構想の鉄塔案)で掲載数は25回。第三位は『スパイラル・ジェティ』(ロバート・スミッソン制作の巨大なランド・アート)で掲載数は23回。第四位は『一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか』(リチャード・ハミルトン制作のコラージュ)で掲載数は22回。第五位は『空間における連続性の唯一の形態』(ウンベルト・ボッチョーニ制作のブロンズ彫刻)と『ゲルニカ』(ピカソ制作の絵画)が同着で掲載数は21回。 []

タイラー・コーエン 「あのアーティストが最高傑作を仕上げたのはいつ頃?」(2005年10月5日)

●Tyler Cowen, “When do creators do their best work?”(Marginal Revolution, October 5, 2005)


ランダル・ジャレル(Randall Jarrell)もウォレス・スティーヴンズ(Wallace Stevens)について同様の評価を下している。曰く、「スティーヴンズはアメリカ出身の詩人として他に類を見ない珍事をやってのけている。アメリカ出身という限定を外して歴史上のすべての詩人に範囲を広げてみても前例がほとんど見つからないような珍事だ。長い人生(75年の生涯)の最後の1、2年の間(亡くなる1~2年前)に最高傑作にしてこれまでに無い新しさを備えた何とも奇妙な作品(詩)をいくつか書き上げているのだ」。

それとは対照的に、

ジャン=リュック・ゴダールは50年以上にわたる監督人生を通じて数多くの映像作品を残しているが、評論家の間ではゴダールの作品の中で一番の重要作(最高傑作)は1960年に公開された『Breathless』(邦題『勝手にしやがれ』)という点で幅広い意見の一致が見られている。『Breathless』はゴダールが30歳の時に監督した作品であり、長編映画としてはデビュー作にあたる。

どちらの文章もデビッド・ガレンソン(David W. Galenson)の『Old Masters and Young Geniuses: The Two Life Cycles of Artistic Creativity』からの引用だ。本書と関係の深いワーキングペーパーはこちら。ガレンソンは他にも興味深い論文をたくさん書いている。詳しくはこちらの一覧を参照のこと。

私からの質問:50歳を過ぎてから極めて重要な業績を残した経済学者って誰かいる? 仮に「いる」としてそれは最高傑作と言えるだろうか? 仮に「いない」というのであれば「40歳を過ぎてから~」に質問を変えるとどうなるだろうか? コメント欄を開けておくので思い付く人物を書き込んでもらえたら幸いだ。答えるのは簡単じゃないとは思うけど。

タイラー・コーエン 「至る所に市場あり ~アートとしての欠陥品~」(2011年7月1日)

●Tyler Cowen, “Markets in everything”(Marginal Revolution, July 1, 2011)


とあるアーティストが世界中の工場から「意図的な失敗作」を取り寄せているらしい。

「欠陥品をあえて作ってくれないか」。アーティストのジェレミー・ハッチソン(Jeremy Hutchison)が世界各地の工場に向けてそのような注文を出したという。

ハッチソンによる説明は次の通り。「世界各地の工場に製品を作ってくれと注文したんです。ただし、どこかに欠陥を抱えた製品を作ってくれと頼んだんです。どこかに欠陥があるためにまったく使い物にならない製品を作ってくれとお願いしたんです。具体的にどんな欠陥かという点については私が決めるのではなく工場で実際に製品を作っている労働者に決めてもらいたいと思っています。現場の労働者がどんな判断を下そうとも(どんな欠陥品が送られてこようとも)返品せずにきちんと代金を支払うつもりです」。

ハッチソンが受け取った欠陥品の中には「歯の無い櫛」なんかも含まれているとのことだ1

  1. 訳注;ハッチソンが受け取った欠陥品(「アートとしての欠陥品」)の一覧についてはこちらのページを参照されたい。 []

タイラー・コーエン「アートコレクションの現在」(2017年5月23日)

Tyler Cowen, “Art Collection Today“(Marginal Revolution, May 23, 2017)

この本「Art Collection Today(アートコレクションの現在)」の著者はダグ・ウッダム氏で、副題は「芸術熱狂者すべてに市場の眼識を」である。

私はこの本のすべてが好きだ。著者は経済学博士号を取得していて、マッキンゼーのパートナーおよびクリスティーズの重要な役職に就いていたというところにも留意してもらいたい。 [Read more…]

タイラー・コーエン「絵画売却額における性別差」(2014年11月22日)

Tyler Cowen, “The art sale gender pay gap“(Marginal Revolution, November 22, 2014)

ジョージア・オキーフの絵画が4400万米ドルで落札され、女性画家としての最高額を更新した。それまではジョアン・ミッチェルの絵画で、1190万米ドルだった。フランシス・ベーコンは1億4240万米ドルで落札されたことがある。なので、

オキーフ絵画の高額売却にもかかわらず、男性画家と女性画家の価格差は大きいままだ。〔絵画における〕価格の男女差は、だいたい男性1ドルに対して女性84セントだ。絵画の「最高売却額の差」は現在は男性1ドルに対して女性31セントである。オキーフの絵画が落札されるまでは、男性1ドルに対して女性8セントであった。

オリバー・ローダー氏の記事から。

タイラー・コーエン 「正しいキャリアに踏み止まる術」(2014年9月3日)/「タトゥーがあると職探しに不利に働く?」(2014年9月3日)

●Tyler Cowen, “How to stay on the right career path”(Marginal Revolution, September 3, 2014)


「労働市場におけるコミットメントデバイス」とも言う。

(アメフトのプロリーグであるNFLのチームの一つである)セントルイス・ラムズの選手登録枠(ロースター)の一番最後(53人目)の枠に新人のイーサン・ウェストブルックス(Ethan Westbrooks)が滑り込むことになった。マイケル・サム(Michael Sam)に競り勝ってディフェンスラインのポジションを手に入れた格好になる。

ウェストブルックスの経歴は注目に値する。今から3年前の2011年当時、サクラメント・シティ・カレッジでアメフト選手としてプレーしながらあの「トイザらス」でも働いていたというのだ。そして今年(2014年)に入ってNFLの門をくぐることになったというわけだ。ウェストブルックス本人の言によると、今回めでたく一番最後の選手登録枠に滑り込むことができたのは「やる気を鼓舞する一風変わったツール」のおかげでもあるとのこと。「顔に入れたタトゥー」のおかげでもあるというのだ。

ウェストブルックスが目の下にタトゥーを入れたのは2011年のことだが、もう二度と普通の仕事なんかしたくないと思ってそうしたとESPN社のリポーターであるニック・ワゴナー(Nick Wagoner)の取材に対して答えている。「顔にタトゥーの入った求職者」にならないためにはNFLで結果を残す(アメフトのプロ選手として成功する)しかない〔そのように自分を追い込んだ〕、というわけだ。

記事の全文はこちら(ウェストブルックスの顔写真付き)。G. Patrick Lynch経由で知ったネタだ。

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●Tyler Cowen, “What does a tattoo signal?”(Marginal Revolution, September 3, 2014)


タトゥーが入っていると就職に不利に働くかどうかという話題については少し前に取り上げたばかりだが、さらにもう一歩踏み込んだ研究がお出ましだ。ウェストバージニア大学で博士号を取得したばかりのケイトリン・ハーガー(Kaitlyn Harger)女史の手になる論文がそれだ。ハーガーの論文ではフロリダ州の囚人のデータを対象に出所後の元囚人のその後が追われているが、ハーガーが手元に集めたデータは一味違っている。タトゥー入りの囚人とそうじゃない囚人とが区分けされているのだ。

どうやら多くの企業(雇い主)はタトゥーの入った求職者の採用には乗り気ではないようだ。例えば、アメリカ陸軍なんかも「ボディアート」(タトゥー)に関する内規を見直して禁止事項を増やしたばかりだ。ハーガーの論文によると、タトゥーの入った元囚人はタトゥーの入っていない元囚人よりも合法の職にありつくのが難しくて食い扶持(ぶち)を稼ぐために再び犯罪に手を染める傾向が高い――再犯率が高い――との結果が示唆されている。

ハーガーの論文では次のような注目すべき結果が報告されている。囚人全体の平均だと出所してから5000日(およそ14年)もすると再び刑務所に逆戻りしてくる傾向にあるが、タトゥー入りの囚人全体の平均だとその半分の日数(およそ7年)で刑務所に逆戻りしてくる傾向にあるというのだ。

Free Exchangeブログより。全文はこちら

タイラー・コーエン 「ポートランドの商人? ~タトゥーの著作権侵害で提訴~」(2005年2月17日)

●Tyler Cowen, “The Merchant of Portland?” (Marginal Revolution, February 17, 2005)


(オレゴン州にある)ポートランド在住のアーティストが(全米男子プロバスケットボールリーグである)NBAのデトロイト・ピストンズでフォワードを務めるラシード・ウォーレス(Rasheed Wallace)を相手に訴訟を起こした。提訴したのはウォーレスの右腕に「エジプト風のタトゥー」を彫った人物(提訴理由は著作権侵害)。NIKE(ナイキ)のバスケットシューズのCM(テレビコマーシャル)でウォーレスの右腕にある「作品」を映すのをやめてほしいとのこと。CMの放映中止と損害賠償の支払いを求めているが、(著作権を侵害したとの理由で)「肉1ポンド」(違約金)が支払われればそれで納得するとのことだ。

記事の全文はこちら1。ウォーレスの右腕に彫られたタトゥーの画像集はこちら

  1. 訳注;リンク切れ。代わりに例えばこちらの記事(英語)を参照されたい。 []

タイラー・コーエン 「タトゥーを彫るとしたらデザインはどうする?」(2010年11月13日)

●Tyler Cowen, “A theory of optimal tattoos”(Marginal Revolution, November 13, 2010)


本ブログの熱心な読者の一人であるDavid Stearnsから次のような質問を頂戴した。

体のどこかにタトゥーを彫るとしたらデザイン選びはどうしますか? 「未来の自分」も喜んでくれるに違いないようにするにはどんなタトゥーを入れたらいいでしょう? 好きなアート作品を模写します? それともピーター・リーソンに倣って1経済学絡みのタトゥーを入れます? 家族の名前を彫るだとか「誰にも見られないように脇の下とかに小さな点のタトゥーを入れる」とかいう回答は無しの方向でお願いします。

彫るとすればお気に入りの旅行先である国の地形を象(かたど)ったタトゥーにするだろうね。私の場合はメキシコとかブラジルとかになるだろうが、どちらの国も一目でわかる形をしてもいる。お気に入りの旅行先のタトゥーを入れていたら誰かに旅行の思い出話を聞いてもらういい口実になってくれるだろうし、国のかたちのタトゥーを目にしても(タトゥーそのものへの嫌悪感を別にすれば)不快な思いをする人なんてそんなに多くないだろうしね。タトゥーで既存のアート作品を再現しても低俗に見えちゃうだろうね。ケルト模様(幾何学模様)のタトゥーもありだろう。他には犯罪者っぽく見えるタトゥーを入れるという選択肢もある。少なくとも私に関しては思い描く人生設計とうまく調和しそうにないが、犯罪者っぽく見えるタトゥーのおかげで得をする人も中にはいることだろう。

ダン・アリエリー(Dan Ariely)によるタトゥー論(こちら)もあわせて参照あれ。

  1. 訳注;「経済学への関心は海賊への興味とほぼ同じくらい古いものだし、しかもずっと深い。右腕には、需要供給曲線の刺青をしているのだ(17歳のときに入れた)。」(ピーター・T・リーソン(著)/山形浩生(訳)『海賊の経済学』, pp. 2) []

タイラー・コーエン 「私の背中売ります ~キャンバスとしての背中~」(2017年2月2日)

●Tyler Cowen, “Back markets in everything those new service sector jobs”(Marginal Revolution, February 2, 2017)


ティム・シュタイナー(Tim Steiner)氏の背中に彫られた見事なタトゥー。そのデザインを請け負ったのはとある著名なアーティスト。その所有者は(シュタイナー氏ではなく)ドイツ人のアートコレクター。シュタイナー氏が亡くなると、タトゥーが彫られた部位(皮膚)が剥がされて額に入れて飾られる決まりになっている。存命中は(背中のタトゥーが見えるように)シャツを脱いだ状態であちこちのギャラリーで座って過ごすことになるという。

「アート作品を背中に背負っているんです。私はその作品の運搬人なんです」とシュタイナー氏。現在40歳。(スイスの)チューリッヒ出身で前職はタトゥーパーラーのマネージャー。

話は10年前に遡る。シュタイナー氏がその当時付き合っていた恋人がベルギー出身のアーティストに出会ったのが事の始まり。そのアーティストの名はヴィム・デルボア(Wim Delvoye)。豚にタトゥーを入れた作品で物議を醸し名を売ることにもなったアーティストだ。

その恋人はデルボアから「新作を描くための『人間キャンバス』になってもいいという人物を探している」と伝えられたという。誰か興味を持ってくれそうな人を知らないかと尋ねられたというのだ。

・・・(略)・・・シュタイナー氏の背中に彫られたタトゥーの作品名は『TIM』。2008年にドイツ人のアートコレクターであるリク・ラインキング(Rik Reinking)氏が15万ユーロ(13万ポンド)で買い取った。シュタイナー氏は15万ユーロの3分の1にあたる5万ユーロを受け取ったという。

「私の皮膚はあれ以来リク・ラインキング氏のものなんです」とシュタイナー氏。「私の背中はキャンバスなんです。私という人間は背中に背負った作品を一時的に収めておく額なんです」。

シュタイナー氏が亡くなるとタトゥーが彫られた背中の部位(皮膚)を剥がした上でその箇所を額に収めてラインキング氏のプライベート用のアートコレクションに加えられる契約内容になっているという。

そんなのゾッとするばかりじゃないかという声に対してシュタイナー氏は次のように応じている。「ゾッとするという感覚は相対的なものなんですよ」。

記事の全文はこちら。相変わらずキレキレのティム・ハーフォード(Tim Harford)――快著である『Messy』(邦訳『ひらめきを生み出すカオスの法則』)の著者――経由で知ったものだ。

タイラー・コーエン「チェスでは人間-機械の協力の時代が終わってしまった?」(2018年12月7日)

[Tyler Cowen, “Is the age of man-machine cooperation over in chess?,” Marginal Revolution, December 7, 2018]

AlphaZero がめざましい戦績を見せているさらなるデータを考えると,そう考えるべきなんじゃないかと Charles Murray が Twitter でぼくにそう訊ねてくれた.いまのところ,答えはもちろん「イエス」のようだ:AlphaZero に好きにやらせて人間から手出しをさせないでおけばいい.工場ネタのジョークみたいなところが少しある:「あそこに犬がいるのは人間を機械から遠ざけておくためだよ.そんで,人間は犬を守ってるわけ.」(というか逆かな?)
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