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タイラー・コーエン 「一国の通貨にはいかなる特徴を備えた図柄を描き込むべきか?」(2005年12月17日)

●Tyler Cowen, “What is currency good for?”(Marginal Revolution, December 17, 2005)


素敵なレストランで友人とディナー。楽しいひと時を終えて勘定を払いにレジへと向かう。財布から200フラン紙幣を取り出すとそこにはエイズウイルスが描かれている。

・・・てな事態がスイスで現実のものとなるやもしれない1。とは言え、中央銀行には拒否権があるとのことなのでどうなるかはまだわからない。詳しくはこちらを参照されたい(フラン紙幣の新デザイン案の画像もいくつか紹介されている)。ところで、スイスの通貨は昔からお気に入りの一つだ。中でも一番のお気に入りはオイラー紙幣(数学者のレオンハルト・オイラーの肖像が描かれた旧10フラン紙幣)。物理学者や数学者の肖像が描かれている紙幣の例についてはこちらを参照のこと。

ついでにもう少し一般性のある問いについても検討してみるとしようか。一国の通貨に描かれる図柄はどんな特徴を備えている(どんな役割を担う)べきだろうか? 考え得る候補をいくつか列挙するとしよう。 [Read more…]

  1. 訳注;2005年にスイスで新紙幣の導入にあわせてデザインコンぺが開催され、紙幣の図柄としては一風変わったデザインの作品がグランプリを獲得したことがある。この話題については本サイトで訳出されている次の記事も参照されたい。 ●マーク・ソーマ 「アートとしてのお金」(2018年11月25日) []

タイラー・コーエン 「紙幣の肖像として一番出番が多い人物は誰?」(2004年6月22日)

●Tyler Cowen, “Whose face appears on the most banknotes?”(Marginal Revolution, June 22, 2004)


答えはエリザベス女王(エリザベス2世)。合計で32カ国の紙幣にその肖像が描かれた経験ありとのことだ。2位以下は誰だかわかるだろうか? 結果は以下の通り。

2. クリストファー・コロンブス(12カ国の紙幣に登場)
3. シモン・ボリバル(4カ国の紙幣に登場)
4. ジョージ・ワシントン(4カ国の紙幣に登場)
5. ウラジミール・レーニン(2カ国の紙幣に登場)

データの出所はフォーリン・ポリシー誌2004年7・8月号の31ページだ。

——————————————————————————————————-【訳者による補足】エリザベス女王の肖像が描かれた紙幣の情報についてはこちらのページ(英語)に詳しくまとめられている。折角なので数ある中からほんの一例として以下に二枚ほど画像を紹介しておくとしよう。一枚目に描かれているのは8歳時のエリザベス2世(王女)、二枚目に描かれているのは85歳時のエリザベス2世(女王)。いずれもカナダの20ドル紙幣。

タイラー・コーエン 「紙幣の中から橋を出してみせよう」(2014年12月18日)/ アレックス・タバロック 「紙幣の中から姿を消した『彼』」(2008年7月7日)

●Tyler Cowen, “The culture that is Dutch”(Marginal Revolution, December 18, 2014)


笑いすぎてお腹が痛いとはこのことだ。

全部で7種類あるユーロ紙幣にはそれぞれに異なる建築様式――ルネサンス様式やバロック様式といったヨーロッパを代表する建築様式――の橋が描かれているが、いずれも抽象例であり架空の橋だ。実在する橋ではなく架空の橋が描かれている理由はEUに加盟するいずれかの国に存在する橋を描いてしまうと他の加盟国からやっかみの声があがる可能性があったためである。「欧州中央銀行は実在する橋を紙幣の図柄に使いたくなかったようですが、紙幣の中から橋を引っ張り出してきて実在の橋にしちゃえば(実際に作ってしまえば)どうだろう? 面白いんじゃなかろうか? そう思ったんです」。(橋の設計を請け負った)ロビン・スタム(Robin Stam)氏は本紙の取材に対してそのように答えた。

記事の全文はこちら。ちなみに、見出しは「ユーロ紙幣に描かれている架空の橋がオランダにて建設される運びに」となっている。ユーロ圏を立ち行かせるための大まかでいわく言い難いメタファーにでもなるんじゃないかね。

情報を寄せてくれたJoel Cazaresに感謝。

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● Alex Tabarrok, “Evidence of Absence”(Marginal Revolution, July 7, 2008)


この度中国で(北京オリンピックの開催を記念して)額面が10元の記念紙幣が発行されることになった(Metafilter経由で知った情報)。何かが足りないのだがおわかりになるだろうか?1 裏返してもやはり「彼」はいない(描かれていない)らしいよ。

  1. 訳注:答えは毛沢東の肖像画。中国の紙幣は1元札、5元札、10元札、20元札、50元札、100元札の計6種類あるが、すべてに毛沢東の肖像が描かれている。 []

タイラー・コーエン 「カナダにおける通貨イノベーション ~通貨の刷新に明け暮れるカナダの造幣局~」(2012年4月11日)/ アレックス・タバロック「カナダの通貨にゃ敵わない」(2017年7月8日)

●Tyler Cowen, “The continuing course of Canadian monetary innovation”(Marginal Revolution, April 11, 2012)


カナダの通貨当局(造幣局)はじっとしていられないようだ。まるで落ち着きのない子供のように、通貨の刷新に明け暮れているのだ。プラスチック製の紙幣(ポリマー紙幣)の導入に踏み切ったかと思うと、ペニー硬貨(1セント硬貨)の製造中止を決定。そして今度は暗闇で光る25セント硬貨でお楽しみあれときた。

今回新たに発行される記念硬貨には恐竜の姿が描かれている。暗闇に置くと鱗に覆われた肌の下に隠れている骨格が光って浮かび上がってくる仕組みになっている。

片面に二種類の図柄が描かれている世界初の硬貨と言えそうだ。ちなみに、もう片方の面にはエリザベス女王の姿が描かれているが、女王陛下は暗闇に置いても光りはしないとのことだ。

素材は白銅。市中に流通している25セント硬貨よりもかなり大きめのサイズとのことだ。

記事の全文はこちら。情報を寄せてくれたEva Vivaltに感謝。

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●Alex Tabarrok, “Canadian Money is Better than US Money”(Marginal Revolution, July 8, 2017)


カナダの通貨はアメリカの通貨よりも優れている。まず紙幣。カラフルで水を通さず透明な箇所もあってホログラム入り。すごいよね。次に硬貨。(スターリングシルバーとニオブを素材とする)ニオブ銀貨の(月夜に吠えるオオカミの姿が描かれている)「ウルフムーン」硬貨。誰だって欲しくなろうというものだ。「いや、まだ足りない」とばかりにこの度カナダ王立造幣局はカナダの建国150周年を記念して暗闇で光る硬貨の発行を決めたようだ。まあ、2012年に発行された(暗闇に置くと骨格が光って浮かび上がってくる)かの恐竜硬貨は越えられないけどね。

タイラー・コーエン 「2万ドル=2万1350ドル ~『一物一価の法則』の例外?~」(2011年9月1日)/「10万枚のペニー硬貨がばら撒かれた噴水 ~ケンブリッジの道端にお金が落ちていたらしいよ。・・・もう持ち去られちゃったけど。~」(2018年9月17日)

●Tyler Cowen, “Markets in everything the law of one price?”(Marginal Revolution, September 1, 2011)


現金に投資するというのは資産運用の方法としては保守的だと見なされているが、今夜メルボルンで開催されたばかりのオークションでそのような見方に異議が差し挟まれた。アートとしての現金は銀行に預けられた現金よりも時として高い価値を備えている。そんな一か八かの賭けに出た強気の買い手が現れたのだ。

ドイッチャー&ハケット社が手掛けるオークションで一発目の品として登場したのは合計2万ドルの札束。『Currency』(「カレンシー(通貨、お金)」)と命名されたアート作品だ。最終的に1万7500ドルで落札。落札者は落札価格の22%の手数料も負担する必要があるため、合計で2万1350ドルの支払いということになる。

新札の100ドル札を100枚積み重ねた札束が二つ。それが『Currency』だ。本作品の制作を手掛けたのはシドニー在住のアーティストであるデニス・ボーボア(Denis Beaubois)氏。オーストラリア・カウンシルから受け取った助成金2万ドルが原資となっている。

落札価格は1万5000ドル~2万5000ドルの範囲に収まるのではないか。ドイッチャー&ハケット社は事前にそのように予測していたというが、本作品に備わる価値を測りかねていたらしいことが伝わってくる。作者であるボーボア氏によると、本作品は法貨(現金)としても使えるとのことだ。

落札者はスイス銀行じゃないみたいだね。記事の全文はこちら。情報を寄せてくれたZac Grossに感謝。

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●Tyler Cowen, “Ain’t no $20 bills on this Cambridge sidewalk…not any more…”(Marginal Revolution, September 17, 2018)


今はもう使われていない噴水に大量にばら撒かれたペニー硬貨。その額はしめて1000ポンド。れっきとしたアート作品だが、その寿命はわずか1日で尽きてしまった。

10万枚のペニー硬貨1が(イギリスの)ケンブリッジのキーサイドにある噴水にばら撒かれたのは土曜日の午前8時(夏時間)のこと。48時間はそのまま放置される予定となっていた。

しかしながら、翌日(日曜日)の午前9時(夏時間)までにペニー硬貨は一枚残らず持ち去られてしまった。ところが、今回のアートプロジェクトを手掛けた「In Your Way」によると窃盗事件扱いはしないとのことだ。

「実に挑発的な結果となりました」と語るのはアート・ディレクターを務めるダニエル・ピット(Daniel Pitt)氏。

噴水にばら撒かれた10万枚のペニー硬貨は(芸術支援団体である)「アーツ・カウンシル・イングランド(ACE)」による(宝くじの収益金を原資とする)助成を通じて調達されたもの。本作品を含めて計5つの作品が週末に市内各地に展示されたという。

「1000ポンド噴水」の制作を担当したのはケンブリッジを拠点に活動するアーティストのアンナ・ブラウンステッド(Anna Brownsted)氏。「本作品の目的は鑑賞者から反応を引き出すことにありました。一種の挑発ですね」とはブラウンステッド氏の言だ。

記事の全文はこちら。Adam, S. Kazan経由で知ったものだ。

  1. 訳注;「1ポンド=100ペンス」なので10万枚のペニー硬貨の総額は1000ポンドということになる。 []

タイラー・コーエン 「不滅の詩」(2009年9月5日)/「所有からの逃走? ~落札されてもeBayに出品され続ける黒い箱~」(2010年1月20日)

●Tyler Cowen, “How to achieve artistic immortality”(Marginal Revolution, September 5, 2009)


・・・(略)・・・科学の力を借りて「不滅」の詩の制作を志すカナダ出身の作家がいる。

その作家の名はクリスチャン・ボック(Christian Bök)。カルガリー大学の英語学科の准教授にして実験詩人。ボックの計画は暗号化した自作の詩を人類が生息できない環境でも生き抜けるだけのタフさを備えた「極限環境微生物」のDNAに埋め込むというもの。

細菌のDNAに暗号化されたテキスト(例えば、『イッツ・ア・スモールワールド』の歌詞)を埋め込む試みは他で既にやられているという。しかしながら、ボックの詩には(テキストを埋め込む対象となる微生物の体内において)タンパク質(ボックの表現では「第二の詩」)を作り出す設計図も含まれており、その点で前例のない試みだという。

(カナダ最大の日刊紙である)グローブ・アンド・メール紙に掲載された記事より。全文はこちら。執筆者はアン・マキロイ(Anne McIlroy)。「アミノ酸配列を決める塩基配列ごとに一文字のアルファベットを割り当てる」ため、語彙の数はかなり制約されるとのこと。「不滅の語」に値する50程度の単語を選び出すのに難儀しているらしい。ボックの略歴についてはこちらを参照されたい。ツイッターもやってるようだよ。

ところで、あちこちのブログを見て回っての大まかな印象だが、カナダの新聞記事を取り上げている例はまだまだ少ないようだね。

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●Tyler Cowen, “Markets in everything: the uncollectible artwork”(Marginal Revolution, January 20, 2010)


フェリックス・サルモン(Felix Salmon)が報じている

『A Tool to Deceive and Slaughter』(『欺瞞と虐殺のためのツール』)はカレブ・ラーセン(Caleb Larsen)の手になるアート作品であり、ただ今eBayにて出品中だ。数日中に落札されないようであれば――最低落札価格は2500ドル――、すぐにもeBayに再出品される。無事落札されたらどうなるかというと、やはり再びeBayに出品される。嘘じゃないよ。売買契約書にもはっきりと次のように記載されている。

【本作品の名前は『A Tool to Deceive and Slaughter』(2009年制作)。7日ごとにオークションサイトであるeBayに自ら出品を繰り返す黒い箱。eBayに自動的に接続する装置が内蔵された黒い箱(黒い立方体)と「作品が1週間ごとに自分で自分を売りに出す」というコンセプトが組み合わさった作品。】

タイラー・コーエン「写実的なアートを好むひとはBrexitを支持する」(2018年10月9日)

Tyler Cowen, “Preference for realistic art predicts support for Brexit“(Marginal Revolution, October 9, 2018)

これはノア・カール、リンジー・リチャード、アンソニー・ヒースのペーパーの概要の一部だ。

個人の性格特性の違いを対照として〔実験を行ったところ〕、 4枚の写実的な絵画すべてを好みだと回答した被験者は、ゼロまたはひとつしか好みではないと回答した被験者に比べて、Brexitを支持する確率が15-20%高い傾向にあることがわかった。この結果は、大卒者と高卒者の〔Brexit支持率の〕違いと類似しており1  、被験者の支持政党アイデンティティを対照にした場合では強固であった2

素晴らしいケヴィン・ルイスの記事から。

  1. 訳注:Brexit支持率は大卒者で低く、高卒者で高い []
  2. 訳注:Brexit支持率は英国保守党支持者で高く、労働党支持者で低い []

タイラー・コーエン「科学研究のコスパは悪くなっているのでは」

[Tyler Cowen, “Science is getting less bang for its buck,” Marginal Revolution, November 16, 2018]

『アトランティック』のパトリック・コリソンとマイケル・ニールセンによる記事
[Read more…]

タイラー・コーエン 「絵画の『完璧』な複製が可能になったとしたら」(2004年5月31日)

●Tyler Cowen, “What if paintings were fully reproducible?”(Marginal Revolution, May 31, 2004)


ファビオ・ロハス(Fabio Rojas)がこちらのエントリー〔拙訳はこちら〕で名画の出来のよい「コピー」は安くで――オリジナル(原画)よりも格段に安い値段で――手に入ると指摘しているが、チャールズ・マレー(Charles Murray)も同様の主張を展開している

どんなサイズの絵画であれ原寸大の「完璧」なコピーを作り出すことを可能にするテクノロジーは既に存在している。色の明度や一本一本の線を「完璧」に再現するというだけにとどまらない。まったく同じキャンバスだったり石膏ボードだったりに素早い筆使いで生み出された三次元の凹凸や質感を「完璧」に再現することもできるし、ニスを塗って出る光沢だって――お望みならばひび割れ(亀裂)だって――「完璧」に再現できるのだ。「完璧」という言葉にはさらに別の意味も込められている。世界の中でも選りすぐりの目利きで最上の訓練を積んでいるアーティストでもどちらがオリジナルでどちらがコピーかを五分五分の確率でしか見抜けないという意味でも「完璧」なのだ。

テクノロジーの現状が誇張されている面はあるものの、「絵画が録音された曲のようになったとしたら(絵画の複製が曲を録音するのと変わらないくらい容易になったらとしたら)どうなるだろうか?」という問いそれ自体は依然として重要だ。 [Read more…]

タイラー・コーエン 「精巧な3Dの複製画はアート市場の撹乱要因となるか?」(2013年8月26日)

●Tyler Cowen, “Will accurate 3-D reproductions disrupt art markets?”(Marginal Revolution, August 26, 2013)


アムステルダムからこんなニュースが届いている。

オランダのアムステルダムにあるゴッホ美術館が最先端のコピー技術である3Dプリント技術を活用して所蔵するゴッホの秀作数点の「三次元」の複製画の作成に乗り出している。同美術館の館長を務めるアクセル・リューガー(Axel Rüger)氏は語る。「次世代の複製画と言えるでしょうね。3次元の世界に足を踏み入れたわけですから。素人目にはオリジナル(原画)と見分けがつかないことでしょう。ただし、素人でも絵に詳しいようであれば注意深く目を凝らせば見分けられるでしょうね」。

「三次元」の複製画のお値段は1点2万2000ポンド1。名画が印刷されたポストカードやポスターに比べると値が張るが、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)やアメリカの億万長者が数千万ポンド払ってでも手に入れたいと思うような作品に接することができる機会を少しでも増やしたいというのがゴッホ美術館としての願いとのこと。

これまでに3Dスキャナーでの複製に成功した(ゴッホの)作品は以下の通り。『花咲くアーモンドの木の枝』(1890年制作)、『ひまわり』(1889年制作)、『収穫』(1888年制作)、『荒れ模様の空の麦畑』(1890年制作)、『クリシー大通り』(1887年制作)。ゴッホの全作品を網羅した3D版のカタログの作成も計画されているとのことだ。

パソコンの画面越しでは「三次元」の複製画の出来栄えを判断するのは難しいが、少なくとも現段階では騙されない(オリジナルと複製画を見分けられる)自信がある。50ドル賭けてもいい。仮に騙されるようでも(オリジナルと複製画の見分けがつかないとしても)、私には(複製画を手に入れるために)2万2000ポンドもの大金を払う気はないね。記事の全文はこちら。複製画も一点だけ紹介されている。そうそう。絵画(をはじめとした芸術作品)の精巧な複製が技術的に可能になった場合にどんな展開が予想されるかをタバロックとの共著論文でしばらく前に分析した(pdf)ことがあったっけ。

情報を寄せてくれたのはTed Gioia。ツイッター上でお気に入りの一人だ。

  1. 訳注;2013年8月当時の為替レートは1ポンド=150円前後だったので、1ポンド=150円で計算すると2万2000ポンド=330万円ということになる。 []