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タイラー・コーエン「遺伝が大半の社会的結果を決定する:グレゴリー・クラークのワーキングペーパー」(2021年3月2日)

[Tyler Cowen, “The Gregory Clark working paper,” Marginal Revolution, March 2, 2021 ]

この論文はみんなにぜひ知ってもらいたい.アブストラクトを抜粋しよう:

経済学・社会学・人類学では,「社会的な結果を主に左右するのは,親の投資と共同体での社会順応だ」という信念が支配的だ.本研究では,1750年から2020年までのイギリス人40万2,000名の血筋を用いて,単純な相加的遺伝学モデルよりもそうした仕組みの方が結果をよりよく予測するのかどうかを検証する.富の継承を除いて,あらゆる事例で遺伝学モデルの法がよりよく予測する.だが,遺伝学モデルでは,複数世代にまたがる地位の長期的存続には,生殖において強い遺伝的な選別が必要となる.これは,近年まで不可能と考えられてきた.しかし,1837年から2020年までの長きにわたってそうした選別と整合する強い証拠もある.このように,ここでの結果は,遺伝と文化の興味深い組み合わせの産物なのである.

論文のタイトルは「誰がためにベルカーブは鳴る:1750年から2020年までのイギリス人40万人の血筋から遺伝が大半の社会的結果を決定することが示される」だ.どういう文脈があるのか知らない読者は,グレッグのホームページにいけばいくらかわかる.

タイラー・コーエン「高等教育について思わず考えさせられる一節」(2021年3月1日)

[Tyler Cowen, “Higher education sentences to ponder,” Marginal Revolution, March 1, 2021]

個人指導への WTP(支払い意欲)は,大学に通う年間の平均正味コストのおよそ 4.2%を占める.他方,キャンパスでの社交活動への支払い意欲は平均正味コストの 8.1% を占める.支払い意欲には大きな多様性があり,社会経済的な集団で系統的に異なっている.我々の分析からは,経済的に不利な学生たちの方が大学の社交生活から引き出せる価値が大幅に少ないことが示されている.ただし,これは主に時間とリソースの制約に起因している.

上記は,Aucejo, French, & Zafar による新しい NBER ワーキングペーパーからの抜粋.

タイラー・コーエン「警官の人種・性別で取り締まり方は異なるか」(2021年2月14日)

[Tyler Cowen, “Diversity in policing,” Marginal Revolution, February 14, 2021]

黒人アメリカ人に警官が発砲する事件が人々の耳目を集めるなか,警官と市民それぞれの人種と性別によって両者のやりとりにちがいが生じるかどうかを知るのが重要となっている.Ba et al. の研究はこれまでのデータにあった制約を克服して,ヒスパニック系警官と黒人警官は白人警官にくらべて市民を呼び止めたり逮捕したりする回数がはるかに少ないことを見出している.この差は,とくに相手が黒人市民の場合に顕著だ.こうしたちがいは,シカゴ市内の黒人が多数を占める地域でもっとも大きくなっている(the Perspective by Goff を参照).また,女性警官も男性警官にくらべて実力を行使する回数が少ない.こうした結果は,警官隊の内部がますます多様になることに効能があることを支持している.

この抜粋は,Science に掲載された Bocar A. Ba, Dean Knox, Jonathan Mummolo, & Roman Rivera の新論文から.Via Anecdotal.

タイラー・コーエン「買い手独占じゃないんだよなぁ」(2021年2月9日)

[Tyler Cowen, “Monopsony it ain’t,” Marginal Revolution, February 9, 2021]

連邦最低賃金を15ドルにしようって提案は覚えてるかな?

連邦議会予算局が推定した平均値では,雇用が140万件,すなわち 0.9% 減少する(…)

議会予算局の報告書から抜粋した.

タイラー・コーエン「韓国の最低賃金引き上げ」(2021年1月22日)

[Tyler Cowen, “The South Korean minimum wage hike,” Marginal Revolution, January 22, 2021]

法定最低賃金の大幅引き上げがもたらした影響に関する,論争を呼びそうな研究が火曜に公表された.来年度の標準賃金を決める交渉が行われているさなかでの公表で,雇用主と従業員の対立を呼びそうだ.

2018年に,低所得労働者たちの賃金水準〔最低賃金〕が 〔前年比で〕16.4パーセント引き上げられた.これが及ぼした影響を分析した韓国経済研究所の研究者たちによれば,多くの低賃金雇用が消失した一方で,すでに雇用されていた人々はより高い給与を享受している.同研究所は,韓国のトップ企業ロビーである the Federation of Korean Industries とつながりがある.

最低賃金は年度ごとに更新される.現在のレートは,時給 8.590ウォン($7.10)だ.2018年に,レートは前年の 6,470ウォンから 7,530ウォンへと,16.4パーセント引き上げられた.これは,過去17年間でもっとも急激な引き上げだった.

韓国経済研究所の報告によれば,この引き上げの対象となった労働者たち――2018年の法廷最低賃金未満の給与を2017年に受け取っていた人々――のあいだでは,雇用率が他の所得グループに比べて実に 4.6パーセントポイント低くなっているという.

このグループの 15.1パーセントほどが,2018年に無職者となっている.

同研究の計算では,失業事例の 27.4パーセントから 30.5パーセントが,最低賃金引き上げで雇用主たちが雇用削減を後押しされたことに起因するという.

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タイラー・コーエン「15ドル連邦最低賃金?」(2021年1月21日)

[Tyler Cowen, “Federal minimum wage of $15?” Marginal Revolution, January 21, 2021]

決定打がでた.連邦最低賃金をいまの倍にすれば――2009年からずっと $7.25 だったのを15ドルまで引き上げれば―技能や経験がほとんどない労働者の雇用機会が大幅に減少する件の,決定打だ.労働統計局から出ているデータによれば,2019年(パンデミック以前),47の州において,全労働者の少なくとも4分の1は時給 $15 未満で働いている.20の州では,全労働者の半数が時給 $18 未満で働いていて,さらに 30の州では,時給換算の賃金の中央値が $19 未満だ.

こうした統計からは,$15 が賃金下限としてすごく高いことがわかる.雇用主たちがいまの従業員たちを全員雇用し続けようとすれば,全米の労働力のうちものすごく大きな割合の賃金を引き上げる必要がある.でも,最低賃金引き上げの対象になる労働者たちがあまりに多すぎて,いまのまま雇用が維持されることはなさそうだ.かわりに,低賃金労働力の雇用数はしぼむだろう.

非党派の議会予算局が,この直観を裏付けている.その推計によれば,全米の最低時給が $15 に引き上げられたら失業者が 130万人増える[コーエンの註記: しかもこれはパンデミック以前の推計だ].また,この政策は企業収益も減少させ,消費者物価を引き上げ,GDP を減らすだろうと,議会予算局は結論している.

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タイラー・コーエン「アメリカでの総需要不足?」(2021年1月16日)

[Tyler Cowen, “Our aggregate demand shortfall?” Marginal Revolution, January 16, 2021]

Ben Casselman から:「(…)大半の経済数値とちがって,実のところ小売業の売り上げはパンデミック以前の水準を上回っている.〔2020年〕2月に比べて 2.6%増,前年に比べると 2.9%増になっている.雇用みたいなきれいな話になっていない.」
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タイラー・コーエン「泥棒して受け渡し金を要求するマカクザル」(2021年1月15日)

[Tyler Cowen, “Money-maximizing macaque thieves demand ransoms,” Marginal Revolution, January 15, 2021]

バリのウルワツ寺院では,猿たちが商売にはげんでいる.寺院をうろつく長い尾をもつマカクザルたちは悪名高い.油断している観光客たちに強盗をはたらき,厚かましくも彼らの持ち物にしがみついて,受け渡し金として食べ物が渡されるまで離そうとしないのだ.

研究者たちによれば,寺院のマカクザルたちは,カモとなる観光客の持ち物のうちどれにいちばん価値があるのか判断して,この情報を活用してみずからの利益を最大化するのだという.

目ざといマカクザルたちは,人間どもが引き換えに食べ物をよこす見込みがいちばん大きい品物を好んで標的にする.たとえば電子機器がそうした標的だ.逆に,ヘアピンや空のカメラバッグのように,とられても観光客が諦める品物は狙わない.そう語るのは,ジャン=バプティスト・ルカ博士だ.博士はカナダのレスブリッジ大学心理学部の准教授で,この研究の筆頭執筆者だ.

マカクザルたちが盗む価値の高い品物には,携帯電話・サイフ・度付き眼鏡などが挙げられる.「貴重品をハンドバッグにしまってジッパーを閉めてしっかり首からかけておくように寺院のスタッフが忠告しても,観光客のなかには上の空で聞き流している人がいるものです.そうした観光客から引ったくる専門家に,ここのマカクザルたちはなってしまっています」と博士は言う.

マカクザルたちと寺院の観光客たちのやりとりを研究者たちが273日以上かけて撮影しつづけたところ,より価値の高い品物にはもっといい見返りを――たとえばもっとたくさんの食べ物を――マカクザルが要求するのがわかった.

泥棒マカクザル・観光客・寺院スタッフのあいだでなされる交渉は,4~5分以上も続く場合がよくある.品物が返されるまでにかかった最長時間は25分で,交渉に17分が費やされた.より価値の低い品物の場合には,より少ない見返りを受け入れてマカクザルたちは物々交換のやりとりを首尾よく終わらせることが多い.

記事の全文はこちら.via David Curran.

タイラー・コーエン「娘がいる方が離婚しやすい?」(2021年1月13日)

[Tyler Cowen, “Daughter-driven divorce?” Marginal Revolution, January 13, 2021]

息子がいる夫婦よりも,娘がいる夫婦の方が離婚しやすいのだろうか? オランダの住民登録データとアメリカの調査データを用いて,本稿では次の点を示す:娘がいる夫婦の方が離婚するリスクは高くなるが,それは娘が13歳から18歳のときにかぎられる.このように年齢が限定される研究結果は,時期に関係ない息子選好・出産時における性選別という説明と食い違う.本稿では,十代の娘がいる家庭における人間関係の緊張と考慮した説明を提案する.副次標本の分析から,性別役割の考え方が娘とパートナーと異なっている見込みが大きい親たちほど子供の性別による離婚リスクが大きく異なっていることが見出される.また,十代の娘がいる家庭における人間関係の緊張を示す調査の証拠も本研究は見出している.

この抜粋は,Jan Kabátek % David C Ribar による新論文から.via 優秀なる Kevin Lewis

タイラー・コーエン「今と昔:キャピトルヒルでの銃撃事件」(2021年1月6日)

[Tyler Cowen, “That was then, this is now,” Marginal Revolution, January 6, 2021]

1954年3月1日にアメリカ国会議事堂で銃撃事件が起きた.犯行に及んだのは,プエルトリコのナショナリスト4名だった.国会議事堂下院議場の「婦人傍聴席」(訪問客用のバルコニー)から,彼らはセミオート拳銃で30発を発砲した.プエルトリコを合衆国支配から独立させる自分たちの要求に注目を集めるのが,彼らののぞみだった.

犯行に及んだナショナリストたちは,プエルトリコの旗を掲げ,第83回議会で集まっていた下院議員たちに向かって発砲をはじめた.議員たちは,移民法をめぐって議論している最中だった.5名の下院議員が負傷,そのうち1名は重傷を負ったが,全員がのちに回復している.犯人たちは逮捕され,連邦裁判所で裁判にかけられ長期刑を言い渡された.長期といっても,刑期は長く実質的に終身刑だった.1978年と1979年に,大統領ジミー・カーターにより彼らは赦免され,4名全員,すなわち Lolita Lebrón, Rafael Cancel Miranda, Andres Figueroa Cordero, Irvin Flores Rodríguez がプエルトリコに帰国した.

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