タイラー・コーエン 「ライバルの数が多いほど競争心は萎える?」(2009年1月5日)

●Tyler Cowen, “Do we compete more against fewer competitors?”(Marginal Revolution, January 5, 2009)


こんな記事が目に留まった。

大勢(おおぜい)の競争相手(ライバル)がひしめく部屋(試験会場)でテストを受けねばならなかった体験があるようなら、これから紹介する研究結果に共感してもらえるかもしれない。争わねばならないライバルの数が多いほど、やる気も競争心も萎(な)えてしまう可能性があるらしいのだ。心理学者のチームが行った様々な実験で、同様の結果が確認されている。標準テストが実施される部屋(試験会場)が混雑している(受験者の人数が多い)ほど、テストの平均点が低くなる傾向にある。それだけではない。学生たちに簡単な一般常識テストを出題して、速く解けた順の上位20%に入れば賞金を出すと伝えた実験で、「テストを受ける人の数は、あなた以外に全部で100人います」と言い添えた場合と、「テストを受ける人の数は、あなた以外に全部で10人います」と言い添えた場合とでは、後者の場合の方が学生たちのテストを解くスピードが速かった。かけっこで上位10%に入れば賞金が1000ドルもらえるとしたらどのくらい本気で走るつもりかを学生たちに尋ねた実験で、「かけっこに参加する人の数は、あなた以外に全部で500人います」と言い添えた場合と、「かけっこに参加する人の数は、あなた以外に全部で50人います」と言い添えた場合とでは、後者の場合の方が学生たちのやる気が高かった。学生たちに架空の就職面接なりFacebookの友達集めコンテストなりに参加してもらって、「勝者」になるには上位20%に入る必要があると伝えた [1] … Continue reading実験では、競争相手が多くなりそうだと予想されると、学生たちの競争心(対抗意識)は薄まる傾向にあった。ライバルの数が多いほど競争心が萎えてしまうのは、自他の比較が難しくなるからではないか [2] 訳注;比較すべき相手の数が多くて、具体的に誰を意識して争ったらいいか決めかねる、という意味。、というのが件の心理学者のチームが下している結論である。

上の引用文で紹介されている実験結果がまとめられている論文は、こちら。具体的なコンテキスト(文脈)の違いに応じて、結果も違ってくる可能性がありそうだ。上に引用した記事では、社会科学の分野の興味深い研究成果が他にも色々取り上げられている。例えば、犬には癒し効果があるらしい(そう聞いても、私は特段驚きはしなかったけれど)。

(追記)「見えざる競争(姿を目視できない相手との競争)」をテーマにした拙記事は、こちら

References

References
1 訳注;架空の就職面接の場合は、面接を受けた志望者のうち20%が内定をもらえると伝える。Facebookの友達集めコンテストの場合は、集めた友達の数が多い順の上位20%に入れば賞金がもらえると伝える。
2 訳注;比較すべき相手の数が多くて、具体的に誰を意識して争ったらいいか決めかねる、という意味。
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