タイラー・コーエン 「既読本だらけの本棚 vs. 未読本だらけの本棚」(2007年2月25日)

●Tyler Cowen, “The Black Swan: read vs. unread books”(Marginal Revolution, February 25, 2007)


自宅にある本棚は、既読本でいっぱいにすべきだろうか? それとも、未読本でいっぱいにすべきだろうか? 詰め込む本の冊数については各自で好きなように加減してもらうとして・・・なんて付言するのは、本ブログの熱心な読者には余計なお節介だろう。

あなたの本棚が既読本でいっぱいなようなら、何かを参照したり何かを思い出したりするためにその本棚を用立てることになろう。既読本だらけの本棚は、言ってみれば「プルーストのマドレーヌ」 [1] … Continue readingみたいなものだ。それとは対照的に、あなたの本棚が未読本でいっぱいなようなら、本棚に手を伸ばすたびに、ワクワクする発見をすることもあれば、ポンコツを手にして苦い思いをすることもあるだろう。本棚からどれか一冊を取り出して読むたびに、生き方だったり愛のかたちだったりについて予想もしない形で見直す機会に恵まれることもあれば、途方もない落胆を味わうこともあるかもしれない。

ちなみに、私の自宅にある(こじんまりとした)本棚は、既読本でほぼ埋め尽くされている。未読なのは、『Gone With the Wind』(邦訳『風と共に去りぬ』)と、『Shantaram』(邦訳『シャンタラム』)の二冊だけ。遠方に旅する時に飛行機の中で(長時間の空の旅の最中に)読もうと思って、どちらにもまだ手を付けずにいるのだ。ところで、白状すると、私の「本物の本棚」は自宅とは別のところにあったりする。近所の公立図書館にあるのがそれだが、あそこにある「本物の本棚」は未読本でいっぱいだ。

あなたがオーストリア学派の一員と自任している経済学者で、「ナイト流の不確実性」という定量化できない概念の重要性を心得ているようなら、本棚に未読本がぎっしり詰まっていてもらいたいところだ(「ナイト流の不確実性」という曖昧な概念を操作可能なレベルにまで落とし込む術がここに、というわけだ)。もしも既読本だらけのようなら、「お前の人生嘘っぱち」って詰(なじ)られても仕方ないだろう。天誅(てんちゅう)がすぐにも下るに違いない。絶対に逃れられない天誅が。

今回取り上げたような話題についてもっと突っ込んで考えてみたいようなら、サプライズ(予想外の出来事)がテーマになっている刺激的な一冊であるナシーム・タレブ(Nassim Taleb)の『The Black Swan:The Impact of the Highly Improbable』(邦訳『ブラック・スワン』)を読んでみるといいだろう。

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1 訳注;記憶を呼び覚ますきっかけになるもの、という意味。いわゆる「マドレーヌ効果」ないしは「プルースト現象」のことを指しているものと思われる。
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