タイラー・コーエン 「小銭って要る?」(2018年3月20日)

1セント硬貨にしても、5セント硬貨にしても、製造コストが額面を上回っている。しかしながら、硬貨全体で見るなら、造幣局は儲かっている。2017年のデータによると、硬貨の製造に伴って4億ドル近くの儲けが出ているのだ。
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1セント硬貨だとか5セント硬貨だとかの額面の小さい小銭の発行をやめてしまうべきなんだろうか? 「何とも言えない」というのが私の答えだが、「やめるべきじゃない」というのがジェイ・ザゴースキー(Jay L. Zagorsky)の答えだ。

真っ先に指摘しておくべきことがある。造幣局は、需要に応じて硬貨を発行しているに過ぎないのだ。額面の小さい小銭に対する需要は、急速な勢いで増えている。過去10年の間に、1セント硬貨(ペニー)と5セント硬貨(ニッケル)の発行枚数は、ほぼ倍増しているのだ。世論調査でも、1セント硬貨や5セント硬貨への人気は高い。

1セント硬貨にしても、5セント硬貨にしても、製造コストが額面を上回っているのは確かだ。2017年のデータ(pdf)によると、1枚の1セント硬貨を製造するのに1.8セントの費用がかかる一方で、1枚の5セント硬貨を製造するのに6.6セントの費用がかかる。しかしながら、硬貨全体で見るなら、造幣局は儲かっている。同じく2017年のデータによると、硬貨の製造に伴って4億ドル近くの儲けが出ているのだ。1ドル分の硬貨を製造するのと引き換えに、45セントの儲けが出ている計算になる。多くの経営者が羨(うらや)む利益率の高さだ。

1セント硬貨&5セント硬貨は、客寄せのための目玉商品(ロスリーダー)みたいなものだと考えるといい。儲けが大きい他の硬貨への需要を生むのに一役買っているのだ。1セント硬貨&5セント硬貨の発行をやめてしまうと、硬貨はどうやら役に立たないらしいという考えが国民の間で広まる可能性がある。そのせいであらゆる硬貨が使われなくなってしまったら、どうなるか? 造幣局がこれまでのように4億ドルの儲けを得られなくなってしまうのだ。

・・・(中略)・・・

額面の小さい硬貨に煩(わずら)わされているようなら、キリのいい価格設定にして、1セント硬貨(あるいは、5セント硬貨)のお釣りが出ないようにすればいい。キッチンカー(移動販売)やレストランの中には、お会計の能率を上げるために既にそうしている(キリのいい価格設定を試みている)例もある。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙のこちらの記事より。「やめるべき」派の一人であるヘンリー・アーロン(Henry Aaron)の言い分も紹介されている。ちなみに、身の回りから1セント硬貨を――たまに5セント硬貨も――一掃するために、自分なりにこつこつと励んでいたりする。下からの民営化と言えるだろう。ゴミ箱とか雨樋(あまどい)とかのために使える資源を増やすのが最終目標だ。


〔原文:“Should America retire the penny and the nickel?”(Marginal Revolution, March 20, 2018)〕

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