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ビル・ミッチェル「日本式Q&A – Part 5b」(2019年12月5日)

Bill Mitchell, “Q&A Japan style – Part 5b“,  Bill Mitchell – Modern Monetary Theory, December 5, 2019

Part 1 Part 2 Part 3 Part 4 Part 5a

これは通貨発行権のある政府による様々な債券発行オプションの帰結に関しての、2部構成の議論の最終パートである。基本的な現代金融理論(現代貨幣理論、MMT)の立場は、通貨発行権のある政府における不必要な債務発行の慣行(これは固定為替レート、金本位制の日々からの残滓[hangover]である)の放棄だ。通貨発行権のある政府は、その能力を利用して全般的な幸福を促進するべきであり、金融市場における投機的行為のリスクを下支えして軽減することで企業の福祉に寄与することには何の正当な理由もない。ただし、現実世界の層(政治など)を導入すると、一部の純粋なMMTタイプのオプションが使用できないことが分かる。以下の質問はまさに日本におけるそうしたケースを紹介したものである。政治的制約を考えると、政府が債務を発行する場合、中央銀行の行動には次の2つのオプションのいずれかを選択する必要がある。(A)流通市場(既発債券市場)ですべて購入する。 (B)債務を非政府部門に残す。この最終パートでは、その選択に影響し得る考慮事項をいくつか論ずる。

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ビル・ミッチェル 「日本の国民経済計算―消費税増税で経済成長は崩壊する」(2020年2月18日火曜日)

Bill Mitchell Japan national accounts – sales tax rise, growth collapses – as night follows day Bill Mitchell – Modern Monetary Theory, February 18, 2020

当ブログのエントリー Japan about to walk the plank – again (September 30, 2019)(和訳リンク)で、日本政府は、 2019年10月1日に 消費税率を8%から10%へ引き上げようとしているが、

そもそも増税は非政府部門の支出と成長を損なうものなのだから、もともとの増税が全く不必要だったということに変わりはない。

と述べた。

日本政府は、財政均衡論を振りかざすテロリストのような人たちの餌食になってしまったのだ。テロリストたちは執拗に、(赤字国債を発行すると)財政破綻する、債券市場から見放されると主張して、それを国民に浸透させようと嫌がらせを続けてきた。だがおかしな主張だ!日本銀行は、過去何年間も政府の負債(国債)を買い上げ続けているではないか。

現実問題として、世界情勢は不安定になっている(米中貿易摩擦、欧州の景気後退、ブレグジット、そして最近起きている新型コロナウィルスの影響)日本政府はもっと財政出動するべきだった。

昨日(2020年2月17日)発表の日本の国民経済計算のデータでは、愚劣な経済政策がどれだけ重く国民経済にのしかかっているかを如実に示している。

日本政府が消費税増税(1997年、2014年、2019年)をするたびに、実質GDPの伸びは落ち込み、不景気になっている。
2019年の第4四半期(10月から12月)の日本の成長率は、なんと年率マイナス6.3%にまで落ち込み、一般消費は驚愕のマイナス11.1%、一般投資に至ってはマイナス14.1%という結果になった。

巨大な台風19号の影響も景気後退の要因のひとつであったことは確かだろうが、消費税増税が引き金になったことは疑いようのない事実である。

スペイン出身の哲学者ジョージ・サンタヤーナが、1905年に出版した The Life of Reason: The Phases of Human Progress 第一巻で、

過去に学ばない者は、過ちを繰り返す

と述べた通りになっている。

日本政府が、負債を減らそうという無駄な努力のために消費税を上げた二日後、わたしは このブログ記事 「Leading indicators are suggesting recession(2019年10月3日付)」 をエントリーした。

“世界景気後退に伴い、日本の輸出部門(製造)が低迷しているのだから、日本政府ができる最後の手段は、国内部門へのマイナスの力(例えば消費税)を弱めることだけだった。
これからの数か月でどれくらいのダメージがあるか目撃することになるだろう。“

そして、わたしたちは目撃した。

昨日内閣府から発表された最新の「国民経済計算(GDPデータ)」には憂うべき結果が表れている。

まず最初のグラフには、2007年の第1四半期(1-3月)から四半期ごとに、そして年間の実質GDPの伸び率が示されている。

1. 前年同期比では、2019年のGDP成長率は第四四半期は1.61%落ち込んでいる。経済関連の記事では、年間比率では6.3%落ち込んでいる、と報道されており、メディアは実際より成長率が悪化している印象を与えている。

年率に換算するというのは、四半期の結果が今後3期にわたって続くと予想して出すものだから、マイナス1.61%を4倍して年間で約マイナス6.3%になる。

11月に政府が景気刺激策を発表したので、現実はそこまで酷くならないだろう。

2. 年間の成長率は、マイナス0.38%だった。

2014年にも「消費税」不況があるのが見て取れる。新自由主義政策の無能ぶりが直接現れた結果だ。

国内需要が受けた打撃

家計最終消費支出は年間でマイナス2.1%、第4四半期(10月から12月)でマイナス3%。

民間企業設備投資の全年同期比は、年間でマイナス2.9%、第4四半期(10月から12月)はマイナス3.7%。

政府の最終消費支出は前期比で年間プラス2.23%(1.9%)、第4四半期で0.22%(マイナス0.4%)と増加しており、公的固定資本形成の伸び率が前期比で年間6.4%、第4四半期で1.13%なのでまだよかったが、もし増えていなければもっと落ち込んでいただろう。

次のグラフは、2007年第1四半期から2019年第4四半期の民間最終実質消費支出を表したもので、青い縦棒が年間の結果で、赤い折れ線が四半期の結果である。

このグラフは、学生たちに政府が経済政策で介入した際の効果を見せることができる大変すばらしい資料だ。リーマンショックと2011年の東日本大震災の影響の後にも関わらず、民間最終消費支出は、2014年初頭まで順調に伸びている。

消費税増税には消費を減らす効果があるのは予測可能だった。2014年の増税以来、消費意欲が回復するまで消費の伸びは抑制されている。

そして、巨大台風に見舞われて成長率は後退した。その後政府のサポートがあり、家計最終消費支出はある程度回復を見せた。しかし、10月1日に再び消費税が増税され、2014年によく似た軌道を描いている。

民間投資に関しても同様の動きになっている。

財政刺激政策は、民間の安心感を取り戻して支出を促し、企業が生産を拡大する意欲を高める「好循環」を促す。

こうした押し上げは、主流派経済学が執拗に主張する「財政赤字が拡大すれば非政府部門は投資を減らす」という説とは逆の動きである。歴史はそうではないことを示している。

次のグラフは、2007年第1四半期(1月から3月)から2019年第4四半期(10月から12月)における年間と四半期の民間の実質投資支出の推移を表している。

次のグラフは、1994年から2019年第4四半期(10月から12月)までの民間非居住者投資率(GDP換算率)の推移を表している。

2019年の第4四半期に、16.2%から15.8%に落ち込んでいる。分母であるGDPも同様に落ち込んでいるのは、重要な動かぬ事実である。

消費税増税の悪影響 – 日本が繰り返し見る悪夢

我々オーストラリア人にとっても、日本の無意味な消費税増税について考えるのは意義のあることである。

2014年4月に、安倍政権は、消費税率を5%から8%に上げた。

消費税増税後、政策転換の直接的な結果として、民間消費が急激に落ち込んだ。方針を変えない限り、どんどん悪い方向に行くとわたしは予測した。

そして本当に悪い方向へ向かってしまった。消費者は消費を控え、消費者支出が静止した影響で民間投資も停滞した。

こちらは1994年第1四半期(1月から3月)から2019年第4四半期(10月から12月)にわたる、年間の実質GDPのグラフである。赤い部分は、消費税増税による不況を表している。

3回の消費税増税が示しているのは、不況に陥ると新たな財政刺激策が次に続いているということだ(金融政策は全体に「緩やか」である)。

そして3回とも、財政出動が増えた後、勢いよく継続的な経済成長基調に戻っている。

これ以上明白なことはない。

上記の(消費税後に起きた)GDP成長の転換については、以下のブログのエントリーで分析している。

1.Japan thinks it is Greece but cannot remember 1997
 (2012年8月12日)  
2.Japan’s growth slows under tax hikes but the OECD want more
 (2014年9月16日)
3. Japan returns to 1997 – idiocy rules! (2014年11月18日)
4. Japan – signs of growth but grey clouds remain (2015年5月21日)
5. Japan about to walk the plank – again (2019年9月30日)

2002年に何が起きたのかと思われる方もいるかもしれない。当時の日本の不況は、大幅な輸出の減少(この期間、米国が不況に陥ったことを思い出そう)に見舞われ、純公共支出が引き締められたために起きた。その影響で、民間投資支出額も下がり、貯蓄率が増加した。国債格付けの判断とは関係がなかった。

輸出と公共投資が回復すると、国債の格付けが低いままでも経済は力強くなっていった。

そして、2007年の金融危機に見舞われる。

成長に寄与するもの

次のグラフは、2019年第3四半期(※グラフでは直前四半期)から第4四半期(※グラフでは現四半期)の実質GDPの伸び率に寄与する主な支出分類別の変化を表している。

消費税増税は民間消費に直接影響し、民間投資には間接的に影響するので、主要支出項目に悪影響を及ぼした。

なぜ、純輸出が第4四半期で伸びているのか不思議に思う人もいるかもしれない。輸出の伸びはゼロだが、(消費増税の影響で)輸入が落ち込んだせいだ。それはもちろん成長の海外流出が減少していることを意味する。

消費者とビジネスの動向

内閣府は消費動向調査を毎月発表している。最新の2020年1月29日(調査は1月15日に行われた)に公表された消費動向調査によると:

1.消費動向指標 (季節ごとに調整される)は20年1月の時点で39.1で、
先月と同じである。
2.消費者意識調査の項目はすべてプラスである

暮らし向き:37.8 (前月より0.6ポイント下落)
収入の増え方:39.9(前月より0.3ポイント下落)
雇用環境:41.8(前月より0.5ポイント上昇)
耐久消費財の買い時判断:37.0 (前月より0.4ポイント上昇)

これを見ると消費税増税後に再び家庭の消費が回復するように見える。

内閣府は毎月の景気動向指数も公表している。

最新のレポート(2020年2月7日)には、2019年12月の状況が[悪化を示している] と記載されている。

次のグラフは、1985年1月から最近までの「一致指数」の推移だ。 Guide for Using Composite Indexes and Diffusion Indexes景気動向指数の手引き) で説明されている。

基本的に、総合指数は、景気変動の速度と大きさ(量)についてのもので、一致指数は、景気循環と一致させて景気の状態を明らかにするものである。一致指数が伸びているときは景気成長の時期に入ったことを示しており、下がっているときは景気後退に入ったことを示す。一致指数の変動を見ると景気成長や景気後退の速度がわかる。

一致指数は2019年9月に100.4だったが急激に落ち込んでいる。消費税増税が施行されてから、一致指数はさらに95.3(10月)94.7(11月)94.7(12月)に落ち込んでいる。

結論

最新の日本の国民経済計算データから、金融政策と財政政策について学ぶことができる。

1.財政政策は、どちらの方向にも作用する。完全雇用に満たない経済状況で、財政の赤字削減をすると経済成長を妨げる(逆の場合も同様)

 2.  金融政策は、貨幣経済における実質消費をほとんど刺激することはない。また、財政赤字を減らす政策によるマイナスの影響を是正することはできない。日銀は相変わらず金融緩和を続けており、金利はゼロに近いが、今のところGDP成長にはほとんど影響していない。 

今後の予定

今日はアテネに滞在しているが、パリに移動する。

2月のイベント

  • 2020年2月18日火曜日  パリ レセプション フランス元老院 リュクサンブール宮殿
  • 2020年2月19日水曜日  フランスの財務省でプレゼンテーション  
    9時から12時まで(非公開) 記者会見
  • 2020年2月20日木曜日  パリ フランスの元老院の委員会でプレゼンテーション リュクサンブール宮殿 8:30-10:30
  • 2020年2月20日木曜日  ロンドン GIMMS(Goer Initiaives Modern Money Studies) 主催のプレゼンテーション MMT教育  午後 ― 
    詳細リンク https://gimms.org.uk/event/bill-mitchell-steve-hall-seminar-london/ 
  • 2020年2月21日金曜日  マンチェスター GIMMS主催のプレゼンテーション マンチェスター大学 https://gimms.org.uk/event/bill-mitchell-steve-hall-seminar-manchester/ (チケット残りわずか)

英国で行われる公共イベントのサポートをお願いします。

1. 2020年2月20日 ― 私はロンドンで最近の政治的な出来事について、そして進歩派の政治勢力を再建するためにMMTを理解することが必須であるという内容のスピーチをする。犯罪学研究者のスティーブ・ホールが、西洋で起きているポピュリズムについて解説する。
このイベントはロンドン中心部にあるユナイト労働組合(Diskus Theatre)で、13:30から17:00に開催。詳細

2. 2020年2月21日 ― 同上の内容をマンチェスターで行う。
このイベントはマンチェスター大学のBarnes Wallis Building (The Harwood Room)で13:30から16:30に開催。詳細

3. 2020年2月22日 ― GIMMSの協力でMMTed がロンドンで3時間のMMTのマスタークラスを開く予定。時間は14:00から17:00。
非公開の教育目的のセミナー。MMTの視点からマクロ経済の理解をしたい人向け。詳細についてはこちら MMT Masterclass, London

まだ席があります。

本日はここまで!

ビル・ミッチェル「日本式Q&A – Part 3」(2019年11月6日)

Bill Mitchell, “Q&A Japan style – Part 3“,  Bill Mitchell – Modern Monetary Theory, November 6, 2019.

Part1はこちら

Part2はこちら

これは今週の4部構成シリーズの第3部で、日本の諸派が提起した現代通貨理論(MMT)についてのいくつかの重要な質問に関するガイダンスを提供する。今日、私は東京にいる。日本のメディアでMMTを宣伝するために、1日の記者会見とテレビ撮影を行う予定だ。私はすでに(昨日)記者会見で非常に明確に論じた。彼ら(メディア)が日本の人々に我々の考えを正しく表してくれることを願っている。

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ビル・ミッチェル「日本式Q&A – Part 2」(2019年11月5日)

Bill Mitchell, “Q&A Japan style – Part 2“,  Bill Mitchell – Modern Monetary Theory, November 5, 2019.

これは今週の4部構成シリーズの第2部で、日本の諸派が提起した現代金融理論(MMT)についてのいくつかの重要な質問に関するガイダンスを提示する。私はこれまでに京都で2つのプレゼンテーションを行ってきたが、今日は東京で日本の国会の聴衆に演説し、日本の主要なメディアからのインタビューを受ける予定だ。多くの人からMMTに関する一連の質問への回答を求められたが、(内容が大幅に重複する場合)個々の人に個別に対処するよりもこうして記事にする方が、MMTの本質、及び現実世界においてこれらの基本原則が複雑に絡み合っているニュアンスをよりよく学び、理解するにあたって有用かつより効率的な方法だと思われる。私のプレゼンテーションでも、上記の問題に取り組むが、しかしながら、誰もがMMTの理解を進めることができるように、文面で分析を提供することは生産的だと考えた。これらの回答は最も完全で正確なものというわけではなく、より詳細な点については、リンク先のブログ投稿を参照いただきたい。今回の質問は、「グリーン・ニューディールとジョブ・ギャランティ(就業保証)」についてである。

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ビル・ミッチェル「日本式Q&A – Part 1」(2019年11月4日)

Bill Mitchell, “Q&A Japan style – Part 1“,  Bill Mitchell – Modern Monetary Theory, November 4, 2019.

これは今週の4部構成シリーズの第1部であり、日本のさまざまな関係者が提起した現代通貨理論(MMT)についてのいくつかの重要な質問に関するガイダンスを提供する。日本でのMMTに関する公開討論は(他の地域と比べて)比較的進んでいる。MMTに関して日本国会(議会)で議会質問と答弁があり、また中央銀行と政府の経済担当高官がMMTについてのコメントを行なっている。そして、幅広い政治スペクトルの政治活動家たちが(日本の財政緊縮への反対を表明する主要な方法として)MMTを議論し、推進している。 MMTの基本は現在、日本では広く理解されているため、関連する議論はより詳細な疑問・質問に移行している(特に政策への適用に関して)。このため、今回の日本への訪問の一環として、さまざまな問題についていくつかのガイダンスを提供するよう求められた。私はプレゼンテーションの中でこれらの話題を取り扱っているが、しかしその上で、誰もがMMTの理解を進めることができるように、文面で分析を提供することは生産的だと考えた。これらの回答は最も完全で正確なものというわけではなく、より詳細な点については、リンク先のブログ投稿を参照いただきたい。

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ビル・ミッチェル「シンプルな”名刺”経済」(2009年3月31日)

Bill Mitchell, “A simple business card economy”, Bill Mitchell – Modern Monetary Theory, March 31, 2009

一部の読者が、現代金融経済がどのように機能しているかについて、経済学者が隠れ蓑にしている全ての専門用語を廃しつつ、簡単に説明するよう私に求めてきた。以前私は、別のブログ記事の一部で、現代の金融経済の実際の運用を理解するのに必要になる重要な洞察全てを提供することができる、とあるシンプルな”財政ゲーム”を紹介した。この世の全てのモデルと同様、それは様式化に過ぎない。しかし、基本的な結論と理解を変えるような追加の複雑性は何もない。なので、後に参照目的でこのモデルを見つけやすくするために、単体のブログ記事としてモデルを再度紹介しておこう。それでは読んでほしい!

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ビル・ミッチェル「中央銀行のオペレーションを理解する」(2010年4月27日)

Bill Mitchell, Understanding central bank operations“, Bill Mitchell – billy blog, April 27, 2010.

私はつい先ほど、月曜深夜にワシントンに到着した。短い旅なので、時差ボケをより良く防止するために、ニューカッスルの標準時に則って行動している。というわけで、ワシントン時間20:00に仕事を開始し、夜明け頃に終わる予定だ。YouTubeのナイトシフトで一晩中時間をつぶすことになるだろう……おっと(オーストラリア時間では)日中だ。機中で、数ある中でもとりわけ、ニューヨーク連銀によって数年前に書かれた金融政策と準備預金の ”分離” に関する論文を読んだ。これは実務レベルに関して有用な論文だ。というのは、準備預金に関する多数の重要ポイントと、中央銀行が準備預金をどのように操作しているか、あるいは無視しているかという方法論を取り上げているからだ。今回のブログ記事はこれを題材としよう。

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ビル・ミッチェル「バランスシート不況と民主主義」(2009年7月3日)

Bill Mitchell, “Balance sheet recessions and democracy“, Bill Mitchell – billy blog, July 3, 2009.

 

常連読者から、東京を本拠地とするエコノミストであるリチャード・クーが書いたレポートが送られてきた。当該レポートでは、長引く不況と民主主義の関係についていくつかの興味深い問題提起がなされている。クーは、いわゆる ”失われた10年” において日本で起こったことを描写する言葉として “バランスシート不況” という用語を創造したことで、ここ10年あるいはそれ以上に渡り、ある意味有名になった。彼は現在の世界経済危機についてもその分析を適用している。彼は現代金融理論家(modern monetary theorist)ではないが、大規模財政介入の必要性と、量的緩和邦訳)の無益さを理解している。このブログ記事では、その全てについて論じる。

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ビル・ミッチェル「貨幣乗数 ― 行方不明にて、死亡と推定」(2010年7月16日)

Bill Mitchell, “Money multiplier – missing feared dead“, Bill Mitchell – billy blog, July 16, 2010.

 

 

今日はブログ記事を書くつもりではなかったのだが、気が変わった。短い記事を一つだけ書こうと思う。主流派経済学者によって今なお生き残り続けている教条的主張として、「中央銀行が未だにマネーサプライをコントロールしており、貨幣乗数は生きているが、少しの間消えているだけなのだ」というものがあるように思う。この最近の主流派のポストは、金融システムとその運用機関に関して、主流派マクロ経済学者が未だ継続中の誤った主張の典型例である。貨幣乗数は死んだわけではない、というのが事実だ――私はそれを確信を持って言える。なぜなら、貨幣乗数などそもそも存在したことがないということを知っているからだ!

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ビル・ミッチェル「明示的財政ファイナンス(OMF)は財政政策に対するイデオロギー的な蔑視を払拭する」(2016年7月28日)

Bill Mitchell, “Overt Monetary Financing would flush out the ideological disdain for fiscal policy“, Bill Mitchell – billy blog, July 28, 2016.

3人の金融機関系の経済学者(二人はBIS、一人はタイ中央銀行)が書いたHelicopter money: The illusion of a free lunch (2016年5月24日)という記事がある。この記事では、明示的財政ファイナンス(OMF)、つまり中央銀行の金融的キャパシティで財政赤字拡大を実現し、非金融主体への政府債務を発行しない政策について ”話がうますぎる” 、 ”大きな代償を支払うことになる” と論じられ―― ”金融政策を永久に喪失することになる” と要約されている。彼らが行っている議論は、現代金融理論(MMT)の提唱者が20年以上に渡って発表してきた研究と極めて整合的である。その研究は今、主流派の銀行システム分析の打破を始めている。

しかし、彼らが導いた結論はオリジナルのMMT提唱者たちには支持されない。MMT提唱者たちは、OMFを極めて望ましい政策方針と見なしている。政府が本来備えている金融的キャパシティをよく表現するものだからだ。さて、件の記事では、”フリーランチ”という言葉が何を意味するかのついての疑問も提示している。このフリーランチという言葉は、マネタリストであるミルトン・フリードマンによって広められた(ただし、彼の発案ではない)。経済学におけるこの言葉は、「政府の介入はコストを生ずる」という主流的見解とセットで使用されている。しかし、今一度“フリーランチというものはない”という言葉の本当に意味するところを検討すれば、我々が(実物資源制約を強調する)MMTの体系に非常に近い形で扱っているということが分かり、また、通貨発行権を持つ政府(currency-issuing governments)に適用されている金融的制約の誤謬も明らかになる。

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