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ピーター・ターチン「2020年」(2020年6月1日)

2020
June 01, 2020
by Peter Turchin

アメリカが燃えている。全米各地の数十の都市に、1968年のマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺事件が原因となった暴動以来、観察されていなかったレベルでの夜間外出禁止令が出されている。ほとんどの解釈は、既に6日続いている暴力の波の直接的な原因に焦点を合わせている。実際、ジョージ・フロイドがゆっくりと絞め殺されていく映像を、怒りと悲しみを感じずに視聴するのは難しい。しかし、私の仕事は、いうなれば、事件の表層からは解しかねる、深い構造的原因を調べることだ。 [Read more…]

ピーター・ターチン「伝染病と危機時代の相関関係」(2020年4月15日)

Correlation between Crisis Periods and Epidemics
April 15, 2020
by Peter Turchin

前回のエントリ『コロナウィルスと我らの不和の時代』を投稿してから、私は世界史における主要な伝染病の一覧を、ウィキペディアのような媒体と、学術論文の両方で目を通している。危機の時期と疫病の勃発には強い(ただ完全ではない)関連性があることを私は知っている(2008年の論文を見てほしい)。問題はこの相関関係がどのくらい強いかだ。

以下は、私が発見したデータを元にして纏めた表だ。ただこれは、主要な伝染病は不和の時代の間に勃発する傾向があるという仮説の決定的な分析ではない。以下の比較検証は、十分に体型立ったものではなく、非常に定性的なものであり、明確にヨーロッパ中心バイアス(すくなくとも西ヨーロッパ中心バイアス)がある。ただ、ここはブログであって、非常に高い厳密性が要求される学術論文ではない(Seshatの危機のデータベース1 が完全に構築された時には、我々は正規の研究を行う予定だ)。

いずれにしても、以下は私の暫定的なアイデアだ。コメントを歓迎する!

危機の時代 場所 伝染病とパンデミックの名称
青銅器時代後期の破局(紀元前12~11世紀) 地中海東部と中近東

エジプトの疫病

トロイでのアカイア人の間における疫病

疫病でよって人口が減少したクレタ島

ペリシテ の疫病

イスラエル王国とユダ王国の悪疫

ペロポネソス戦争(紀元前5世紀) 地中海東部・中部

アテネの疫病

ローマでの周期的な悪疫

ローマ帝国の危機(2~3世紀) ローマ帝国

アントニヌスの疫病

キプリアヌスの疫病

ギリシャ・ローマ古代期後期の危機(6世紀) 東ローマ帝国

ユスティニアヌスの疫病(第一次ペスト大流行)

オーマヤド・カリフ王朝の没落(8世紀)

奈良時代の天災(8世紀)

中東と地中海

日本

第二期ユスティニアヌスの疫病(746~747年にピーク)

 

735~737年の日本の天然痘の大流行

14世紀の危機 アフロ・ユーラシア 黒死病(第二次ペスト大流行)
17世紀の世界的危機 全世界

第二派黒死病(ロンドンとウィーンの大災禍を含む)

コロンブスの航海

アメリカ大陸の人口減少

ヨーロッパでの梅毒の大流行

革命の時代(1789~1919:「長い」19世紀) 全世界

コレラの大流行

第3次ペスト大流行

スペイン・インフルエンザ

アシュドド2 におけるペリシテ人の疫病:ピーター・ヴァン・ヘイレンによる油絵(1661年)

  1. 訳注:Seshatは全世界のアカデミアを繋いで、歴史の定量データを集めるために創設されたターチンが代表を務める研究機関。 []
  2. 訳注:イスラエル南部の都市 []

ピーター・ターチン「公衆衛生政策はCOVID-19を止めるのにどのくらい効果的か」(2020年3月23日)

[Peter Turchin, “How Effective Are Public Health Measures in Stopping Covid-19?“, Cliodynamica, March 23, 2020]

読者の多くが知っているように、私はウィーンにあるComplexity Science Hub (CSH)で研究グループのリーダーの地位を引き受けることになった(同時に引き続きコネチカット大学の教授でもあるので、今私はコネチカットにいる)。

1週間前、オーストリア政府はCSHにCOVID-19の流行に対応するより良い政策を策定する助けになるような研究を行うように依頼した。それに、私は政府が実際に科学者に手助けを求める(そして、そのような手助けをすぐに行うことができる研究機関をもっている)ことはとても素晴らしいことに思える。いずれにせよ、CSHは一旦他の研究をやめて、全ての研究能力を我々の社会が直面するコロナ危機に対処することに用いることにした。

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ピーター・ターチン「実質賃金の上昇が止まった理由Ⅱ:経済的影響要因の絡み合いを切り開く」(2013年8月7日)

Cutting through the Thicket of Economic Forces (Why Real Wages Stopped Growing II)

前回のブログのエントリ〔訳注:本サイトでの翻訳はここ〕で、私は、1970年代に実質賃金の上昇が止まった原因について問題提起を行った。経済学者や政治評論家によって、多くの解き明かしが論じられている(ただ、彼らは所得と所得不平等の関係性について焦点を絞る傾向がある)。例えばデビッド・レオンハルトはここ10年間の所得低迷の原因に、14の可能性をリストアップしている。ティモシー・モアも以前に一連の記事で1970年代以降の所得不平等の上昇の理由として似たたようなリストを挙げて論じている。

上記画像引用元

前回のブログのエントリで言ったように、よくあるアプローチは可能性がある要因をそれぞれ個別に検討するものだ。しかしながら、このアプローチでは、要因の相対的重要性を計量することができない。その上、社会は複雑な動態システムとなっており、様々な要因が非線形フィードバックの網を経由して相互に関連している。これを平易な言葉に翻訳するなら、あらゆる事象は他の全ての事象に影響を与える可能性がある、との意味だ。これは考慮せなばならない。賃金と所得の動態を理解するには、我々は最終的に経済学の領域を超える必要がある。

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