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タイラー・コーエン 「どうしてアメリカは『世界の警察官』の役割を引き受けたのだろうか?」(2004年7月15日)

●Tyler Cowen, “Why did we become the world’s policeman?”(Marginal Revolution, July 15, 2004)


いつも活気に満ち溢れているジェーン・ガルト(Jane Galt)が自明に見えてその実底の深い疑問を投げかけている。

・・・どうしてアメリカは「世界の警察官」の仕事を引き受けるに至ったのだろうか? 他の先進国は軍備の増強からは手を引いて福祉国家の建設に力を入れる方向に向かったわけだが、どうしてアメリカもその流れに乗らなかったのだろうか? アメリカはソ連の脅威から一番遠いところにあった国ではなかったろうか?

「アメリカが『世界の警察官』の仕事を引き受けたのは帝国主義的な動機からだ」というありきたりな回答には賛成できない。アメリカが自国の国益(経済的な利害)を促進するために時として汚い所業に手を染めたことがあることは確かだが、その他の国と比べてどうだろうか? 私にはそのような例は驚くほど少ないように思えるのだ。アメリカは「帝国主義的な」任務を概してかなり「利他的な」かたちでこなしてきている。イデオロギー的な理由からかあるいは地域の安定を保つ(例えば、中東地域の平和を保つ)ためという理由からか、ともあれ「利他的な」かたちでその任務をこなしてきているのだ。中東の平和を保とうと試みるのは石油の供給を途絶えさせないためだというのはその通りだろうが、その結果として誰が得をするかというとアメリカなんかよりも産油国の方がずっと大きな恩恵を被るのだ。どうしてアメリカは超大国として歩む道を選んだのだろうか? どうしてアメリカは超大国としての地位を自らの利益のために徹底的に利用し尽くそうとしてきていないのだろうか?

たとえ世界中の国々から嫌われようとも(実際のところはどうかというと議論の余地があるだろうが、とりあえずそうだ1 ということにしておこう)、「世界の警察官」という仕事を引き受けることで他の国よりも一段高い地位に登ることができる。アメリカ人の目にはそう映っている。それに加えて、アメリカの指導者にしても普通の国民にしてもその多くが「世界の警察官」として振舞うことは俗に言う「正義(正しい行い)」(“right thing to do”)であり、アメリカにはその役割をうまくやり遂げるだけの能力があると考えている。さらには、「世界の警察官」を務めることで経済的な恩恵をいくらか手にすることにもなる。例えば、アメをちらつかせるかムチで脅すかして他の国々に市場の開放や米国債の購入を迫ることができる。相対的に(他の国と比べて)高い地位に就くことができるし、「正義」だし、経済的な恩恵もいくらかある。こういった3つの理由が束になるや「世界の警察官」になることの魅力はかなりのものとなる。最後のとどめになるが、人は状況を自らの思うがままにコントロールしていると感じたいという心理的な傾向が強いということもある。例えば、飛行機に乗るのが怖いという人が多いのは飛行中のリスクは自分ではコントロールできないと感じるためだ。10代の自分の子供をコントロールしようと試みている親もいることだろうが、面白半分でそうしているというわけでもないだろう。

最後の点に関しては別のもっとシンプルな次の疑問に答える助けにもなるだろう。再選を目指す大統領はどのくらいいるだろうか? 「ほぼ全員だ」というのがその答えだ。再選したからといって(大統領を二期務めたからといって)収入的にいい話かというとそうではないし、おそらく幸せになれるというわけでもないだろう。それにもかかわらず、ホワイトハウスを去る大統領たちの大半はかなり落胆しているように見えるものだ。大統領たちも状況(一国)をコントロールしているという感覚に浸りたいのだ。

結論としてどういうことが言えるだろうか? 好むと好まざるとにかかわらず、アメリカが近いうちに「世界の警察官」の仕事から手を引くなんてことはないだろう。

  1. 訳注;「世界の警察官」として振舞うことで世界中の国々から嫌われる羽目になる []

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