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サイモン・レン=ルイス「独立している中央銀行は助言役でありうるか?」

[Somon Wren-Lewis, “Could independent central banks be advisory? ” Mainly Macro, September 4, 2017]

いまや財政審議会(あるいは独立財政機関)は先進国でありふれたものになった〔財政審議会とは政府から資金提供されるが政府から独立し財政問題について公的な助言を行う機関のこと〕.こうなると,新たな疑問がわいてくる――「こうした審議会がみんな助言役なのはどうしてだろう,中央銀行は金融政策をみずから行っているじゃないか?」 財政政策に関しては助言を〔政府外の組織に〕委任している一方で [1],金融政策に関しては管理運営を委任している.今回のポストでは,政策手段の変更方法の管理に関心を集中して,政策目標の管理は脇に置く.話を明快にするために,政府はなおも金融政策(e.g. インフレ目標)と財政政策(e.g. 5年後の赤字目標)の最終的な目標を管理していると想定する.

〔中央銀行にくらべて〕財政審議会はなじみが薄い.そこで,この問いに答えるにあたって,こう訊ねてみよう――「どうして財政審議会には財政政策の実施権限が与えられていないんだろう?」 もちろん,権限と言っても,ここでは政府支出や税の詳細を管理することを言っているのではなくて,政府が予算で達成を目指すべき赤字見通しの目標設定のことを言っている.この問いへの答えにはいくつも候補がある.これについては前によそで書いた

だが,これを逆側から訊ねる手もある.ぼくが記憶するかぎりでは,こう問うた人はいない――「どうして,諮問機関としての独立中央銀行はないんだろう?」 たとえばこんなことを想像してみよう.イギリスで,金融政策委員会の会合が終わるやすぐさま(しばしの間だけ秘密裏に)勧告する金利を財務大臣に助言する.すると財務大臣はただちに(1時間以内か,それとも1日以内にか),その勧告された金利を受け入れるかなにか別の案をやるか決定する.そのあと,財務大臣の意思決定と金融政策委員会の勧告が公表される.

すぐさま出てくる論点が2つある.第一に,この種のシステムがアメリカで機能しうるのは,連銀の勧告を受け入れるか大統領みずからの意思決定を強制する権限を議会が大統領に与えた場合にかぎられる.一方,ユーロ圏では,欧州中央銀行が経済金融問題委員会に勧告を与えねばならなくなるだろう.これは実際の用をなさないかもしれないし,望ましくもないかもしれない.第二に,当然ながらこのかたちの委任は中央銀行に〔金融政策の実施・運営の〕完全な権限を与えるのに比べて弱いし,このかたちが採用されていない理由はまさにこの点にあるのかもしれない.

それでも,中央銀行の公的助言を受け入れるように財務大臣が受ける圧力を過小評価するのは,イギリスのような国にとって失敗となるだろう.もし,与えられた勧告と異なる決定を下したなら,財務大臣あるいは財務相がその責を全面的に引き受けることになるだろう.さらに,それが失策となったときには多大な政治的コストを招くことになる.そうした状況では,中央銀行の助言を却下したところでえられるものはほとんどないと政府が考えるのは無理からぬことだろう.中央銀行の助言を却下したあげくに失策をやらかしたとなれば〔政治的に〕大打撃を受けるわけだが,他方で,金融政策委員会が失敗したとしても,その助言を受け入れた最終責任をやはり同程度に政府は免れない.もし,ほぼいつでも中央銀行の勧告を政府が受け入れることになるのだとしたら,完全な権限を与えてしまえば少なくともなにか失策がなされたときに政府まで巻き込まれずにすむだろう.

この推理が正しいなら,金利のゼロ下限で経済を安定化させる主要な役割を金融政策が果たすのを受け入れつつも中央銀行の独立性に反対する論を唱える人たちにとって,難しい問題が生じる.もちろん,かつて多くの政府は金融政策を管理していた.受け取る助言が政府外に秘密になってさえいれば政府としては不満もなかった.だが,その助言が公開されると――公開されるべきだという点はみんな賛成だろうけど――政府が中央銀行の助言を却下するリスクをわざわざ招くことはけっしてない以上,形式上こそ助言役とされる中央銀行が金融政策を事実上所管しはじめるのではないだろうか? その場合,金融政策を管理する独立の中央銀行が民主的でないといってそんなに騒ぐ理由があるだろうか? ここでも,ぼくが言っているのは月ごとに金利変更を管理することを言ってるのであって金融政策の目標(インフレ目標や名目 GDP 目標)の話ではないということは強調しておこう.そうした目標は民主的に決定されるべきだとぼくは思う(イギリスではそうなっているけれどアメリカやユーロ圏ではちがう).それに,そうした目標が達成されなかったときに中央銀行は意味のあるかたちで説明を問われるべきだとも思う.ただ,金利設定という日々の業務に関して言えば,これを民主的な管理下に置いても得られるものがそんなにあるようには思えない.

[1] 独立機関に助言を委任していない場合には,助言は政府内部の公務員から出されるだろう.


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