●Tyler Cowen, “The Kitchen Test”(Marginal Revolution, January 31, 2011)
ニューヨーク・タイムズ紙に論説(“Innovation Is Doing Little for Incomes”)を寄稿したのが、その私の論説にクルーグマンがコメントを加えている。私の主張1に同意するかたちでクルーグマンはキッチン(台所)における技術革新のペースが低下している事実を指摘しているが、それにあわせて彼自身が90年代中頃に執筆した記事(“Wonders of technology not so wondrous”)を引用している――この記事のことをあらかじめ知っていたら私も先の論説の中で引用していたことだろう――。その結論は次のようになっている。
アメリカ人の日常生活に生じた変化を比べてみた場合、適当と思われるいかなる基準で測っても、1918年から1957年までの40年間に生じた変化のほうが1957年から現在(1996年)までの40年間に生じた変化よりもずっと劇的なものだったのだ。
90年代中頃のクルーグマンがそうだったようだが、私は今でも1950年代の装備と何ら変わらないキッチンで料理をしている。だからといって特に何の問題もない。電子レンジは嫌々ながら使用しているが、今から8年前にナターシャ2とはじめて出会った頃はその使い方が全然わからず、ナターシャとヤナ3から「これは刮目すべきことですぞ」と言われたものだ。ともあれ、料理をしていて不便と感じたことはない。
キッチン周辺のテクノロジーの変遷についてはアレクサンダー・フィールド(Alexander J. Field)がちょっと長めの大変優れた論文(“What Can We Learn from the Carousel of Progress?(pdf)”)を執筆している。彼の結論はこうだ。
1930年代に開発された食器洗い機(一般家庭に広く普及するになったのは1960年代のはじまりのこと)や1950年代に開発された生ごみ処理機(一般家庭に広く普及するようになったのは1960年代後半以降のこと)、そして1970年代に開発された電子レンジといったケースを除くと、過去80年の間にキッチン用品の世界では正真正銘の画期的な発明は生まれていないと言えよう。
フィールドの判断では自動缶切りマシーンや電動ナイフは「画期的な発明」のうちには入らないというわけだ。
クルーグマンのこちらのエントリー――19世紀に生じた劇的な技術革新が話題となっている――もあわせて参照されたい。
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